サカイクで『蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~』を連載中の島沢優子さんが、大阪にて『オシムの遺産(レガシー)彼らに授けたもうひとつの言葉』刊行記念イベントを開催します。イベントのゲストとしてサカイクで『あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]』を連載中の池上正さんを迎えます。ふるってご参加ください。<開催概要>・日程6月16日(金)19時~(OPEN /18:30START/19:00)・会場大阪・梅田ラテラル・チケット観覧:前売 ¥2,000 / 当日 ¥2,500配信:¥2,000■観覧前売りチケットはLivePocket or 当店HP予約から※入場はLivePocket 整理番号順→HP予約→当日の順となります。※要1オーダー¥500以上■配信チケット※受付期間は6/28(水)まで。アーカイブは6/28(水)23:59まで視聴可能※画質の調整が可能。ご自宅の通信環境に合わせてお楽しみください※配信内容の録画やスクリーンショット、再配信などの行為は禁止チケット購入はこちらをご確認ください>>・出演島沢優子さん(スポーツライター、『オシムの遺産』著者)池上正さん(NPO法人I.K.O市原アカデミー代表)【MC】ケチャップ河合さん・イベント詳細2003年からの4年間で、日本サッカーの発展に多大な影響を与えたイビチャ・オシムさん(享年80)。そんなオシムさんから人知れずフォロソフィー・言葉を受け継いだ11人、彼らに迫った書籍『オシムの遺産(レガシー)彼らに授けたもうひとつの言葉』。今回は著者の島沢優子さんと、ゲストには書籍でも取り上げられ、過去にジェフユナイテッド市原で育成年代コーチを務めた池上正さんをお招き。オシムさんが残したモノとそれらが今後日本サッカーにもたらす事とは?質問コーナーあり。お気軽にご参加ください。※下記の画面が表示されて詳細に行けない方は、画像右上の×印(赤枠部分)を押してください。
2023年06月02日コロナ禍で緊急事態宣言が出されている地域もあり、練習試合や大会がなくなってサッカーが存分にできていない状況が続いています。こんなときは、サッカーのスーパープレーを見て家の中でサッカーを楽しみませんか?この度発売されたJリーグメモリーズ&アーカイブス [DVD]は、開幕から最近まで、Jリーグ27年間の歴史の中からスターたちのスーパープレーを集めた傑作選。歴代のスターたちはどのように得点を奪ってきたのか、ゴールシーンだけはでなく攻撃の起点となった場面からも収録した内容で、プロを目指す子だけでなくサッカーファンも楽しめる内容となっています。若き日の三浦知良選手や中田英寿さんのインタビュー、ストイコビッチやエムボマらJリーグ初期を支えた海外選手のゴールシーン、小野伸二選手や中村俊輔選手、中村憲剛選手らのアシストシーンまで、後世に語り継ぎたいプレーを多数収録。<主な登場選手>・ヒーローインタビュー三浦知良、川口能活、中田英寿、久保竜彦、中山雅史、長谷部誠、本田圭佑、長友佑都、楢崎正剛、イビチャ・オシム監督・ゴール&アシストシーンレオナルド、ジョルジーニョ、ジーニョ、スキラッチ、ドゥンガ、ストイコビッチ、エジムンド、ポンテ、エムボマ、森保一、前園真聖、遠藤保仁、朴智星、岡崎慎司、小野伸二、佐藤寿人、中村俊輔、中村憲剛、大迫勇也、槙野智章、鄭大世、酒井宏樹、山口蛍、柿谷曜一朗、南野拓実、大久保嘉人、原口元気、宇佐美貴史・連携シーンNボックス(ジュビロ磐田)、香川真司&乾貴士(セレッソ大阪)など今回は抽選で、2名様にプレゼントします!▼応募はコチラからJリーグメモリーズ&アーカイブスDVDプレゼントに応募する>>応募期間:2021年5月20日(水)~5月26日(火)18:00■ご連絡事項※当選は発送をもって代えさせていただきます。※応募時に記載いただく個人情報は、株式会社イースリーが管理し、頂いた個人情報をプレゼントの発送とそのご連絡の場合に限り利用することとし、他の目的に利用する場合は別途お客様の承認に基づき利用するものとします。※賞品のお届け先は、日本国内に限らせていただきます。※本キャンペーンは、WEBからのご応募に限ります。
2021年05月19日ゲームは好きだけど、複数人で協力するプレーがまだできない。一人でできるドリブル練習の方が集中できる子どもたち。U‐6世代ならそんなもの?今は個人のスキルを身につけさせた方がいいのか、それとも仲間との協力プレーを意識させる方法はある?と指導者よりご相談をいただきました。先日配信した、「日本での指導の順番が海外とは逆」という記事でお伝えした課題は、サッカーを始めたばかりの年代にも言えるのだそう。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが送るアドバイスを参考にして、子どもたちに仲間と協力するプレーを意識づけてあげてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<ボールを蹴るのは上手いけど、手で投げたりキャッチが苦手な子が多い。全身をうまく使えるようになる方法を教えて<お父さんコーチからの質問>U‐6世代を指導している者です。まだまだ集中力が続かない年代なので、楽しんでもらうことをモットーにしているのですが、自分が得意でなかったり、あまり好きではないメニューになるとどうしても気が散りがちです。ゲームは好きですが、複数人で協力し合うプレーなどがまだまだ苦手で、一人でできるドリブルなどのほうが集中できるようです。この年代では個人のスキルを身につけさせることが先決でしょうか。仲間との協力を意識させるようになる練習やウォーミングアップなどがあれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。いただいたメールを読んで、ジェフ時代にオシムさんに言われた言葉を思い出しました。当時私はジェフの普及事業として、ホームタウンにある小学校や幼稚園などを巡回して授業をする「サッカーおとどけ隊」の内容を考えていました。クラブハウスでスタッフと相談していると、オシムさんがやってきたので、「どんなことをしたらいいか考えている」と話したら、一言だけおっしゃいました。「子どもたちにサッカーのやり方を教えるのではなく、サッカーすることを教えなさい」と。■6歳でもプレーを止めて考える時間を与えようサッカーをするといえば、一番楽しいのはゲームです。ゲームをしながら、子どもがサッカーというスポーツを理解していく手助けをしてみましょう。この連載直近の回で「チームの底上げ」や「判断を伴う練習」というテーマでお伝えした、スペインリーグのビジャレアルの育成方法を憶えていますか?日本人コーチの佐伯夕利子さんが育成のトップで活躍されているこのクラブでは、子どもたちにゲームを楽しんでもらいながら、サッカーの成り立ちを理解(認知)させます。考えながら動くことは難しいので、その状況ではどんな選択肢があるかをわかってもらうために「一回止まって考えてみようよ」と呼びかけます。6歳でも、試合を止めて、一緒に考えてみます。一見すると、とても大変そうですが、少しずつやっていくと子どもとさまざまなコミュニケーションがとれるようになります。そんな時間をとれば少しずつ変わってきます。ビジャレアルは、これを3歳児からやっているのですから、日本の6歳児も十分できるはずです。私もこれを実践しています。大阪で「サッカープレーパーク」という無料のスクールを実施していますが、集まるとまずゲームです。様子を見ながら、プレーを止めて対話する時間をつくります。答えは言いません。「どうして、ここにいったの?」「なぜこうなったのかな?」周りを見ていなかった。パスするのを忘れた......ハッキリだったり、ぼそぼそだったり、いろんな声が聴こえてきます。子どもたちの意見は一切否定せず、私の意見も言います。「そうか。オッケー。コーチはね、こうするといいかなって思ったよ。そんなことも考えながらプレーしてごらん」詰問するような言い方ではなく、あくまでリラックスした状態で、伝わりやすい言葉を選んで話します。6歳くらいだと、ボール保持者にぶつかっていく子どももいます。「みんな、知ってる?ソーシャルディスタンス。あるよね?コロナに感染しないようにしてるよね。サッカーもそういうふうにしよう。サッカーの試合、思い出してみて!自分からぶつかっていく人はいないよね」子どもたちはゲラゲラ笑います。全員ではないにしろ、少しイメージできます。ディフェンスが間にいてパスができないとき、どうする?「ドリブルで少し移動してからパスを出す」そんな答えが出てきます。そうやって、子どもが自分で気づいて、自分で学んで理解していくと、パスが早く出始めたり、自分でひとりでドリブルでいってしまうことが減ったりします。■「パスした方がいい理由」を見つけられるように導くサッカープレーパークでは、小学1年生から中学1年生まで一緒にサッカーをします。ある日のこと。小学1年生でドリブルばかりする子がいました。サッカーの初心者では当然です。そこで止めて、私はみんなに声をかけました。「ねえ、君さ、自分の味方がだれか理解していますか?えっと、この子の味方の人?」周りにいた子が一斉に手を挙げました。「ほら、こんなにいるよ」ドリブルをしていた6歳の小学1年生に尋ねます。「君はドリブルしていたね。コーチが前にいたね。右のほうに味方がいるよね。ドリブルをしていた君は、コーチにボールをとられたね。どう?味方にパスする?ドリブルする?どっちのほうがいいと思う?」すると、次にボールをもったとき、その子はドリブルをしながら周りを見たのです。パスもするようになりました。このように頭で理解をさせるのが非常に大切です。コーチの方は子どもたちに「パスしろ!」と言いますが、どうしてパスしたほうがいいのかを子どもたちは理解していません。「ああ、だからパスしたほうがいいんだ!」と子どもたちが納得できるように、その答えを自分で見つけられるような指導をコーチのほうもしていません。そういった指導でも、もし子どもがパスしたとしたら、それはパスをしないと怒られてしまうからだと私は思います。私の孫はいま小学3年生です。先日、通っているサッカースクールの子たちでチームを作って大会に出ました。全員顔見知りではなく、互いに恥ずかしがっていました。孫は特に内気な子で、コーチにベンチから大声で名前を呼ばれるとびっくりしてミスをしてしまいます。ほとんどがポジションが悪くて失敗するのですが、それが重なるとどんどん下を向いていきます。その大会の後、私のプレーパークにもやってきました。私は子どもたちに「ナイス」「お、いいね」とほめることしかしないので、帰宅後に「今日はいっぱいほめられて楽しかった」と母親である私の娘に言ったそうです。リラックスして楽しくプレーしていれば、いいプレーはたくさん出て来るようになります。■褒めながらプレーの幅を広げていく声かけ(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ご相談者様いわく「協力し合うプレーなどがまだまだ苦手」とのことですが、少しでもみんなで協力してできたことがあったらほめてください。自分でドリブルしてうまくできたことを「すごいね」などとほめてしまうと、それだけしかできなくなります。「ドリブルうまいね。良かったよ。でも、こんなときはどうする?」そんなふうにプレーの幅を広げていくことが指導者の役目です。これまでは、6歳や小学校低学年は個人のスキルを身につけることに重点が置かれていました。でも、決してそうじゃないことがわかっています。みんなでサッカーをすることがどういうことなのか。ここをぜひ理解させましょう。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年07月31日大会の登録人数ルールでどうしても2人登録できない。ほかのコーチからは2人だけ外すのはその子たちのショックが大きいから、4人いる女子を全員外したらいいんじゃない?との言葉が......。選手選びについて教えて。とのご相談をいただきました。みなさんならどうしますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送りますので参考にしてください。(取材・文:島沢優子)(写真はイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<引っ込み思案で活気がないチーム。子どもたちに自分で考えてチャレンジさせる指導はある?<お父さんコーチからの質問>池上さんこんにちは。大会への登録について池上コーチのお考えを聞かせてください。私はコーチ歴3年で、地域の少年団コーチをしています。U‐10の大会があるのですが、大会は16名登録なので4年生が7名で3年生が11名の計18名の選手たちのうち、どうしても2名登録できません。そこでほかのコーチに言われたのが、大会は4年生がメインなので、今回は3年生の女子4名を外したらいいんじゃない?ということでした。このような場合、2名だけ外すとその子たちのショックが大きいという理由で女子を全員外す方が良いのでしょうか?池上コーチならどんなふうに選手を選びますか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。基本的に4年生がメインなのだから、そこを中心で編成するのはいいと思います。ただし、気になるのは3年生に女の子がちょうど4人いるからいっぺんに外せば14人になる。16名の登録人数に収まるよねという考え方です。■どうして「女子」を外すのか。無意識の中の差別意識これは女性蔑視になります。「大会は4年生がメインなので、今回は3年生の女子4名を外したらいい」恐らくなんの差別意識はないのかもしれませんが、無意識で言ってしまうところがこの問題の根の深いところだと感じます。他のコーチが言ってきたと書かれていて、そこで「これは性差別ではないか」といった議論があったふうでもありません。であれば、女性蔑視の風潮が蔓延しているということになります。それ自体、良くないことです。全員プレーさせたいと思っているならば、このチームは18人いるから、9人ずつで2チーム編成できます。私はそれが最も良い方法だと思います。このように大会出場チームを複数にするとき、よく問題になるのが引率する大人の手が足りないという問題です。この点を再度、大人がよく話し合ってください。どうしても無理ならば、8人プラス交代選手になります。その場合は、3年生から4人だけ選ぶとよいでしょう。3年でも、「4年生の試合を体験したほうがいいね」とコーチのみなさんが思える子どもを4人選びます。その場合、4年生の大会に出てもしっかりプレーできる子を選んでください。連れて行っても、ボールをとれない。運べない。4年生のなかに入ってみたけれど、満足にプレーできなかった、まったく通用しなかったとなって子どもが悲しくなるような状態になりそうな子は選ばないようにします。そういった観点で選ぶと、7+4で11人になります。交代要員が3人いれば、順番に休憩できるでしょう。■「力不足だから仕方ない」ではない。大人がやってはいけないこと一方、マックスで16人連れていくとなると、4年と3年で合わせて18人なので残るのがたった2人になってしまいます。その場合、その二人を連れて行って、「外から応援してね」と言うのか、それとも「試合には来なくていいよ」なのか。判断は非常に難しいものになります。そこを、「4年生の試合だから、今回は4人だけ連れていくね」であれば、4人だけなら孤立感はなくなります。3年生が同じようなレベルなら、半分ずつ連れていけばいいでしょう。今回の大会はこのメンバー。でも、次回のこの大会は残りのメンバーを交代で連れていくよ、という言い方です。やってはいけないのは、4年生の大会なのに3年生を優先して4年を外すこと。それが6年生になって最後の大会を迎えると、みなさん「最後の学年だから勝ちたい」とおっしゃいます。ところが、下の学年からそんなふうに下級生を登用して出場機会を奪っていると、6年生になっても出られない子が出てきます。つまり、試合経験を積ませてあげていないので、モチベーションもあがらないし、上達しません。よく大人は「試合に出られなかったのは君の力不足で仕方がない。頑張って上手くなってからだしてあげる」という言い方をしますが、試合でプレーしたほうが上手くなるのに、その機会を平等に与えていないのは大人のほうです。いつもみんなを試合に出すよ。そんな姿勢でやっていれば、その子もうまくなります。なかなか伸びない子がいたとしても、その子が試合に出るのが当たり前にしていれば、「ぼくらのチームは全員試合に出るんだから、あの子を助けてあげよう」とカバーする気持ちが生まれます。上手い子しか使わない。チームの足を引っ張る子は使わない。そんなチームでは、子どもの自発的にカバーする気持ちは芽生えません。6年生が全員出ていてもおかしくありません。親や子から文句が出ることはないです。でも、6年生になってみんなを出すには、下の学年からそのような全員出場を貫くことが重要です。そういった全員が経験する積み重ねが6年生にもつながります。つまり、チームの底上げができるのです。■元日本代表監督オシムさんの底上げ方法(写真はイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)それはプロでも同じです。私はイビチャ・オシムさんのトレーニングを目の前でみてきました。その時代クラブに在籍した25人の選手たちは、みんなが同じように練習をしていました。結局どの選手もそん色がない状態になりました。当然試合の機会も全員同じようにありました。「あの選手、大丈夫なの?」と心配された選手が、ゲームに出るといいプレーをします。底上げができているので、全員が上手くなる。なるほど、そんなふうになるんだと感動しました。みなさんも、オシムさんのように選手にわけへだてなく接してあげてほしいです。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2019年08月30日ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督に率いられる新生日本代表がいよいよ始動する。62歳という年齢を感じさせない馬力と一切の妥協を許さない信念を刻みながら、ハビエル・アギーレ前監督の解任から時計が止まっていた日本サッカー界を力強く前進させる。○日本サッカー協会内で始まる緊急工事の目的新生日本代表が大分市内でスタートを切る3月23日から、東京・文京区にあるJFAハウス内でも緊急工事が行われる。空き部屋のひとつを改修してデスクと映像機器を設置し、簡単な応接間も設ける。日本サッカー協会(JFA)の霜田正浩技術委員長が、苦笑しながら目的を明かす。「監督専用の部屋を作ります。毎日ここで仕事をしたいと言う代表監督は初めてなので」。これまでにもスタッフがミーティングを行うための大部屋はあったが、ハリルホジッチ監督は就任直後からJFA内に常駐したいと希望していた。歴代の日本代表監督がJFAハウスを訪れた頻度は、多くて週に1回。これだけを見ても、62歳の新指揮官の熱血ぶりが伝わってくる。自宅のあるフランスから13日に来日して正式にサインを交わし、翌14日にはJ1のFC東京対横浜F・マリノスを視察。15日からはJFAハウス内で3日連続、合計して10時間を軽く超えるスタッフ会議を開催し、18日には自らの希望でナビスコカップ予選リーグの川崎フロンターレ対名古屋グランパスに足を運んだ。時差ぼけは大丈夫なのかと思わず心配してしまうほど、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でフランス国籍をもつハリルホジッチ監督は精力的に動き回っている。○「日本代表の心臓」遠藤保仁を選外とした理由霜田技術委員長に対して、ハリルホジッチ監督はこう語っている。「勝利をつかむために完璧主義者に徹したい」。自身および周囲に対して一切の妥協を許さない。プロフェッショナルな姿勢を貫く指揮官は、19日の代表メンバー発表会見におそらく忸怩(じくじ)たる思いで臨んだはずだ。昨夏のワールドカップ・ブラジル大会や準々決勝で敗退した先のアジアカップ、開幕以降のJ1の全試合やACLなどのすべてを映像でチェック。その上で31人のメンバー、12人のバックアップメンバーを選出したハリルホジッチ監督は、偽らざる本音ものぞかせていたからだ。「もっと多くの時間をかけ、(日本人について)もっともっと多くのことを知ってから最初のリストを作ることが、本来のやり方だったと思う」。それでも、独自色の一端をのぞかせてもいる。ワールドカップおよびアジアカップのメンバーからそれぞれ20人を選んだ一方で、歴代最多の152キャップを誇るMF遠藤保仁(ガンバ大阪)を外した点だ。「皆さんもご存じのように、私はワールドカップ・ロシア大会への準備のために日本に来た」。ハリルホジッチ監督はそのキャリアに敬意を表しながら、長く日本の心臓に君臨してきた遠藤をリストに加えなかった理由を自ら明かした。○スター選手へ向けられた指揮官の"メッセージ"昨シーズンのJリーグMVPを獲得した遠藤は、いま現在も卓越したパフォーマンスを披露している。ハビエル・アギーレ前監督にも重用された。ロシア大会開催時で38歳となる年齢が考慮されたこともあるが、遠藤の選外にはもうひとつの意図が込められていると見ていいだろう。都内のホテルで13日に行われた就任会見で、ハリルホジッチ監督はこう宣言している。「私はチームがスターだと思っている。個々の能力をダメにしてはいけないが、スター選手もチームのために仕事をしてもらうということだ」。ザックジャパンはさまざまな意味で、FW本田圭佑(ACミラン)のチームだった。本田が発信し続けた「ワールドカップ優勝」と「自分たちのサッカー」がいつしか独り歩きして、ブラジル大会を迎えたときにはチームマネジメントが機能不全に陥っていた。ハリルホジッチ監督はアルジェリア代表を率いていたときに、チームの和を乱した主力選手を容赦なく外している。もちろん遠藤や本田がチームから浮いている、あるいは献身的ではないと指摘しているわけではない。それでも、遠藤を招集しなかったことは、ロシア大会を目指す日本代表に「アンタッチャブルな選手は存在しない」というハリルホジッチ監督の"メッセージ"となったはずだ。○自分自身への自信を失っている選手とは就任会見ではこんな言葉も飛び出している。「選手の何人かは自分自身への自信を失っているようだ」。指揮官の言う「何人か」が、MF香川真司(ドルトムント)やDF長友佑都(インテル)を指していることは明白だ。「個人的に話をして、勇気づけなければいけない」という目的も込めて、けがでプレーできない長友をあえて日本に呼び寄せてもいる。香川はどうなのか。けがこそしていないが、復帰した古巣でも精彩を欠く。日本代表においても攻撃面で結果を求めるあまり、守備意識がおろそかになることが少なくなかった。ハリルホジッチ監督の基本布陣は「4‐3‐3」と予想され、27日のチュニジア代表戦(大分銀行ドーム)は中盤を守備的な三角形型に、31日のウズベキスタン代表戦(味の素スタジアム)では攻撃的な逆三角形型で組んでくるだろう。香川が出場するとすれば前者でトップ下、後者ではインサイドハーフとなる。それでも躊躇(ちゅうちょ)したプレーが続くようならば、ハリルホジッチ監督の構想から一時的に外れる可能性も出てくる。実際、指揮官はこうも語っている。「現代のフットボールは『技術』『フィジカル』『戦術』『メンタル』で高いレベルを求められる。先発は確定していないし、招集メンバーも毎回変わるかもしれない」。○バックアップメンバーに見える独自の人選ハリルホジッチ監督が初めて作成したリストは、バックアップメンバーが記されていた点で異例だった。けが人が出た場合に入れ替わる選手のなかには、フロンターレの新人DF車屋紳太郎、大卒2年目のMF谷口彰悟らが名前を連ねている。さらなる独自色を出す準備が進んでいる証しといっていい。リオデジャネイロ・オリンピック出場を目指す、U‐22日本代表を率いる手倉森誠監督とも意見を交換しているハリルホジッチ監督はこうも語っている。「その時点でベストのパフォーマンスを見せている選手が、日本代表に呼ばれる。オリンピック代表でいい選手がいれば、問題なく受け入れていきたい」。代表監督の仕事に熱すぎるほどのエネルギーを注ぐ姿勢はフランス人のフィリップ・トルシエ監督を彷彿(ほうふつ)とさせ、「ピッチの上で我々のアイデンティティーを見つけていきたい」という抱負は「日本人化」を謳(うた)ったボスニア・ヘルツェゴビナ出身のイビチャ・オシム監督ともダブる。「最初の試合はすべてを注いで勝利に導き、『これが私たちの道だ』というものをお見せしたい」。還暦を超えているとは思えない馬力と、揺るぎない信念を感じさせる発信力とで周囲を力強くけん引しながら、ハリルホジッチ監督は「結果=勝利」と「改革=世代交代」の二兎を新生日本代表に追い求めていく。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 藤江直人(ふじえ なおと)日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。
2015年03月21日サッカー界では、「リーグ戦とカップ戦は別物」と言われている。約9か月にわたる長く険しいリーグ戦と、決勝トーナメントに入ると試合間隔が広がり、決勝を除き大半のゲームで日本代表を欠くリーグカップの成績は、決して比例しないというわけだ。ヤマザキナビスコカップ 開催情報事実、過去19大会でリーグ戦とヤマザキナビスコカップの二冠を達成したシーズンは3度しかない。組み合わせの妙もあるが、リーグ戦1位と2位によるファイナルとなると1度しか実現していない。対して、16チーム以上がリーグ戦に参戦した1996年以降、リーグ戦で2ケタ順位のチームがナビスコカップファイナルに進出したのは8度もある。今季、ベスト4のJ1リーグの順位を見ると(第27節終了時点)、清水エスパルスの6位を筆頭にFC東京8位、柏レイソル9位、鹿島アントラーズ13位となっている。さらに2008年王者・大分トリニータと2009年覇者・FC東京が翌年J2降格の憂き目に遭うなど、ありがたくないジンクスまでサポーターの間で囁かれもした。2005年、G大阪をPKで下し、ジェフ千葉を優勝に導いた当時のイビチャ・オシム監督は「リーグ戦とカップ戦は違うもの。リーグ戦は高い質を維持することが求められるが、カップ戦は多かれ少なかれ運が左右する面がある」と本質を見抜いている。名将は決勝前夜にこうも言った。「G大阪はリーグ戦でずっと首位にいるが、リーグ戦の気持ちを一瞬にして切り替えて明日の決勝に臨めるかがポイントになる」。もちろん、リーグ戦中位・下位チームがナビスコカップで有利だというわけではない。ただ、リーグ戦がマラソンの適性が求められるのに対し、ナビスコカップ、特に決勝では短距離の爆発力が求められるのだ。強いだけではJリーグカップの女王は、微笑まない。ヤマザキナビスコカップは10月13日(土)に準決勝が行われ、第1戦を2-1で勝利したFC東京は敵地で清水と、同じくホームで3-2と先勝した鹿島は柏のホームに乗り込み、2年連続決勝を目指す。チケットは発売中。
2012年10月05日