頭痛、発熱、月経痛時等に処方されることの多い「ロキソニン」と「カロナール」。どちらも解熱鎮静作用がありますが、この2つの違いは一体何なのでしょうか?現役薬剤師のかえでら実子さんに違いや使い分けかた、注意点を教えてもらいました。ロキソニンとカロナールの違い朝晩はめっきり冷え込むようになり、日中も寒い日があったりと秋どころか冬の気配すら感じるようになってきましたね。この時期は1日の中での気温差が大きく、寒暖差の激しさに体がついていかずに風邪をひいてしまうかたが多い印象です。最近では、風邪かなと思っても、万が一を考え病院を受診するかたが増えてきたかと思います。とはいえ、多少の熱や頭痛で病院を受診する時間を確保するのは難しい場合もあるでしょう。そんな時には市販薬やお手持ちの薬で対応されるかと思います。その中でも使い分けがよくわからない…とよくご相談いただくのが、ロキソニンとカロナールです。まずは大まかな表にまとめてみました。では、ひとつずつ詳しく解説していきます。ロキソニンについてロキソニンは市販のものと病院から処方されるものがありますが、基本的には両方とも同じ成分です。市販薬には胃を守る成分や、効果をより強くするプラスの成分が入っているものがありますが、今回はそういったものが入っていない処方薬と同じ配合の「ロキソニンS」についてお話します。ロキソニンの主要成分はロキソプロフェンという薬品名で、NSAIDS(エヌセイズ)と呼ばれる非ステロイド性の抗炎症解熱鎮痛薬です。痛みや炎症をひきおこすプロスタグランジンという成分を抑えることにより効果を発揮し、熱を下げたり痛みを軽減させることができます。ただ、15歳未満の子どもには使うことができません。また妊娠後期28週以降のかたの使用は、流産や胎児の心臓や血圧に影響する可能性があるため禁止されています(28週目未満のかたもなるべく避けるほうがよい)。ロキソニンは頭痛や発熱、喉の痛みや筋肉の痛みに効果があります。しかし、胃の痛みには効果がなく、逆にロキソニンの副作用である胃腸障害により症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。また、ロキソニンは喘息症状をひきおこすこともあるため、以前に喘息の診断をうけたことがあるかたは使用を控えるようにしてください。カロナールについてカロナールの成分名はアセトアミノフェンという名前で、ロキソニンなどのNSAIDSとは別の種類のお薬です。市販薬ではタイレノールやバファリンルナJといったものがあります。痛みの原因となるプロスタグランジンを作りだすシクロオキシゲナーゼという酵素を阻害することで、発熱や痛みを抑えます。また体温を調節する機能に作用し、血管や汗腺を広げることで体の外へ熱を逃がし、熱を下げることもできます。カロナールはロキソニンと違い、子どもや妊婦のかたでも服用できます。重大な副作用もほとんどないため使いやすいお薬ですが、ずっと続けて服用していると肝機能に影響がでる可能性もあるので注意してください。ロキソニンとカロナールの使い分けかたロキソニンとカロナールはどちらも熱をさげたり痛みを抑える効果がありますが、ロキソニンのほうが鎮痛解熱作用は強いです。また、カロナールには抗炎症作用がほぼないため、痛みが激しいときや炎症を伴う痛みの場合はロキソニンを使用するほうがいいもしれません。大人のかたで症状が熱のみの場合は、まずカロナールを服用してみてください。1時間たっても熱が下がらない時は、服用時から6時間以上あけてロキソニンを服用してみてください。それでも下がらないときはウイルスや菌のはたらきを抑える必要があるかもしれないので、病院の受診をおすすめします。痛みの個人差が大きい月経痛についても同様です。では、ドラッグストアで購入できる解熱鎮痛薬をいくつか簡単に紹介します。ロキソニンS12錠入り(第一三共ヘルスケア株式会社)病院から処方されるロキソニンと同じ成分量が入っています。空腹時に服用すると胃が痛くなったりムカムカしたりする可能性があるので、なるべく何か食べたあとに服用するようにしましょう。また5日間服用しても効果が感じられないときは、病院を受診するようにしてください。また、こちらのお薬は薬剤師のいるお店でしか買えないのでご注意ください。<商品情報>ロキソニンS12錠入り価格:¥713(税込)編集部調べバファリンルナJ12錠入り(ライオン株式会社)1錠にアセトアミノフェンが100㎎配合されており、7歳以上のお子さんから服用することができます。年齢によって1回に飲む錠数が違うので注意してくださいね。<商品情報>バファリンルナJ12錠入り価格:¥594(税込)編集部調べ風邪をひかないようにするのが大切最後にこのご時世ならではのお話を少し。「新型コロナウイルスに感染した時にカロナールが処方されたけど、ロキソニンは使わないほうがいいの?」と疑問に思われたかたもいらっしゃるかもしれません。新型コロナウイルス感染時にロキソニンを服用してはいけないというはっきりしたエビデンスは今のところありません。しかし、まだ詳しいことがわかっていない感染症ということもあり、念のため安全性の高いカロナールが使われることが多いようです。カロナールを服用して解熱しない場合や喉が痛いときはロキソニンを服用しても大丈夫です。心配のあまりつらい症状を我慢することがないようにしてください!ロキソニンとカロナールの違いを説明しましたが、これらのお薬の登場がないということが一番!手洗いうがいを忘れずに、感染症対策をしっかり行い、これから年末にかけての忙しい時期を元気に乗り切れるようにしましょう!<筆者情報>かえでら実子さん某薬科大学卒業後、ドラッグストアや調剤薬局に勤務し、調剤業務や在宅医療に携わる。趣味は美容とイラスト。現在ネイルの勉強中で、先日ネイリスト検定3級を取得。文・かえでら実子
2023年10月15日2022年8月7日現在、日本全国で新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の感染者が急増しています。それに伴って、解熱鎮痛剤『カロナール』が医療機関で不足する事態に。『カロナール』を製薬している、あゆみ製薬株式会社は、出荷調整の実施を発表しました。後藤茂之厚生労働相は記者会見を開き、過度な買い占めを控えるよう医療機関や薬局に呼びかけるなど、協力を仰いでいます。病院で『カロナール』を譲ったおじいさんが…?患者との会話についてTwitterに投稿したのは、大学病院で働いている@nursesan1310619さん。投稿者さんの働く病院に通院している90代のおじいさんは、投稿者さんに向かってこのように伝えました。今、『カ…なんとか』って薬が足りねえんだろ?俺みたいな年寄りにはいいから、妊婦さんや子供たちに薬を回してくれよ。『カロナール』が不足しており、出荷調整がかかった話は、ワイドショーでも報じられています。また、ほかの解熱剤と比べて効果がゆるやかな『カロナール』が高齢者だけでなく、子供や妊娠中の人も服用できる薬であることも、報じられています。きっと、おじいさんはその話題を耳にし、「貴重な薬を自分がもらうのは、申し訳ない」と思ったのでしょう。心優しいおじいさんの申し出を聞き、心から感謝をした投稿者さん。そして、『いつもの薬』を出したのです。解熱剤…ではなく、去痰(きょたん)薬を…。90代のおじいちゃんが、「今、カ…なんとかって薬が足りねぇんだろ?俺みたいな年寄りには良いから、妊婦さんや子供達に回してくれよ。」って言ってくれた。ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分です。これ、今日のお薬です(去痰薬) #カロナール — とある大学病院の男性看護師 (@nursesan1310619) August 5, 2022 そう、おじいさんは、世間で不足しているのがいつも自身に処方されている薬と勘違い!きっと、ニュースで耳にした『カなんとか』を、たんを出しやすくする薬『カルボシステイン』と勘違いをしていたのでしょう。結果的に間違いだったとはいえ、おじいさんの「不足している薬を、困っている人に譲ってあげたい」という思いやりの心は本物。コントのように落ちてしまった温かいやり取りに、多くの人が笑い声と、称賛の声を上げました。・かっけえ!将来は、こういう高齢者になりたい。・いい話かと思ったら!まさかのそういうオチかい!・おじいちゃんが優しい上にかわいくて、めちゃくちゃ笑顔になれた。このエピソードを読んだ人たちからは、「自分も、こういう思いやりの心を持った人になりたい!」という声が相次いでいます。おじいさんの行動によって、ネットを通して『優しさの輪』が広がったのではないでしょうか![文・構成/grape編集部]
2022年08月07日