若くして世界の舞台へ挑戦する、NEXT世代のアスリートが続々。活躍の場はますますワールドワイドに広がっています。スポーツライターの小林信也さんに解説していただきました。世界が身近になった今を象徴するように、近年、早くから世界に目を向け、海外でトレーニングを行う選手が珍しくなくなっている。「より自分の好みやタイプに合う練習プログラムを求めて海外に行く、若いアスリートが増えています。陸上の大迫傑は、駅伝を主体とする日本のシステムではなく、マラソンに専念したいという思いから所属企業を退社して渡米。同じく陸上のサニブラウンは、日本人離れした体格や身体能力ゆえ、的確な指導を得られるフロリダ大学に留学し才能が開花しました。また、錦織圭がいたことでも知られるアメリカの全寮制スポーツスクール『IMGアカデミー』に進学する選手も多い。バスケットボールの田中力は16歳、テニスの望月慎太郎は12歳のときにスクールに参加し、共に世界に通用する実力をつけて注目されています」また、10代の頃から海外の一流チームでプレーをする選手も。「サッカーの久保建英は、’11~’15年に『FCバルセロナ』のユースに所属し、今年、18歳で名門『レアル・マドリード』に移籍が決定。水球日本代表の稲場悠介は、高校時代に水球の盛んなモンテネグロのプロチームで活躍。今年はルーマニアでプレーしています。彼らが本場で培った技術や経験が日本に還元されるのが楽しみです」大迫 傑[すぐる](陸上)1991年生まれ。大学卒業後は日清食品グループに入社、2015年のニューイヤー駅伝では1区区間賞を獲得する。その後渡米し、アメリカの中長距離チーム、ナイキ・オレゴン・プロジェクトにアジア人史上初めて加入。写真:長田洋平/アフロスポーツサニブラウン・アブデル・ハキーム(陸上)1999年生まれ。ガーナ人の父と日本人の母のあいだに生まれ、身長188cmという恵まれた体型を持つ。今年6月に行われたNCAA全米大学選手権の男子100m決勝では9秒97を記録し、日本記録を更新した。写真:アフロ田中 力(バスケット)2002年生まれ。米国IMGアカデミー所属。卓越したドリブルスキルとシュート力を持つ。史上最年少で日本代表候補に選出。6月にはバスケット男子日本代表が若手選手を招集する「第1次育成キャンプ」に参加した。写真:西村尚己/アフロスポーツ望月慎太郎(テニス)2003年生まれ。12歳でIMGアカデミーに留学し、16歳の現在ジュニア世界ランキング15位(6/18時点)。今年6月に行われた全仏オープンジュニア男子シングルスでは、日本男子として大会初の4強入りを果たした。写真:アフロ久保建英[たけふさ](サッカー)2001年生まれ。小学生の時にスペインに渡り、バルセロナFCの下部組織に入団。今年日本代表に初選出され、6月には、スペインのレアル・マドリードへ移籍することが発表された。“日本のメッシ”とも呼ばれる。Photo by Getty Images稲場悠介(水球)2000年生まれ。“ポセイドンジャパン”の愛称で知られる日本代表のエース。現在はルーマニアのチームに所属。昨年に行われた水球のワールドリーグ・スーパーファイナル、ジャカルタ・アジア大会では得点王に輝く。Photo by Getty Imagesスポーツライター小林信也さん雑誌やTVなどで活躍。『生きて還る 完全試合投手となった特攻帰還兵 武智文雄』(集英社インターナショナル)など著作多数。※『anan』2019年7月10日号より。取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2019年07月03日6月24日~25日の陸上日本選手権で男子100mと200mの二冠を達成し、一躍陸上界の主役に躍り出たサニブラウン・ハキーム(18)。雨の中のレースで10秒05を記録し、日本人初の100m9秒台へ期待も高まる。 ガーナ人の父譲りの、187cmの体躯を活かした走りが持ち味のサニブラウン。しかし彼を成長させた一番の立役者は、母・明子さんだという。城西中・高陸上部でサニブラウンを6年間指導した、山村貴彦監督が語る。 「彼の生活や食事については、お母さんが全面的に面倒を見てきました。栄養士さんを学校に呼んで、父兄向けに食事の指導をしていたのですが、お母さんは熱心に参加していました。あのお母さんなくして今のハキームはないです」(山村監督) 実は明子さん自身も、福岡・宗像高校時代に100m走と110mハードルでインターハイに出場したスプリンター。母校の恩師もこう語る。 「高校時代から喜怒哀楽のはっきりした子でね。応援席で本人より目立っているのも、彼女の熱血さゆえです。サッカー少年だった息子に陸上を勧めたのも、米国留学を後押ししたのも彼女だとか。どこまでも息子の可能性を信じているんでしょう」 前出の山村監督も言う。 「ハキームはフロリダ大学への進学が決まっていますが、国内以上の練習環境を、というお母さんの強い希望で決まったようです。三段跳びで2大会連続五輪金メダルのクリスチャン・テイラーなど、五輪選手を多数輩出している大学ですからね」 米国の大学は9月開始。それまでサニブラウンはオランダのクラブで練習する。 「そのクラブで練習しているクリスチャン・テイラーに、お母さんが自分でコンタクトを取り、紹介してもらったのです。すごい人脈と行動力ですよ」(山村監督) 8月に出場する世界陸上ロンドンで、100m9秒台、そして世界の頂点を狙うサニブラウン。その夢へのカギを握る、熱血ママにも注目だ。
2017年07月07日