11月24日に電車内で女性会社員に体液をかけたとして34歳の男性が器物損壊の疑いで逮捕されたという報道があったように、たまに、公共の場所で女性に体液をかけた男性が逮捕されたというニュースを目にします。体液といってもだいたいは精液なのですが、精液をかけた男性の容疑(被疑事実)は多くの場合「器物損壊」であり、「(準)強制わいせつ」ではありません。なぜわいせつの罪ではなくて器物損壊で逮捕・処分されるのかについて疑問を持つ方もいるかもしれませんので、今回はこの点について解説したいと思います。*画像はイメージです:■女性に精液をかける行為は両罪成立し得るまず、女性の衣服や持ち物に精液をかけた場合、器物損壊罪が成立します。器物損壊罪の「損壊」とは物の効用を害する一切の行為をいい、“感情的・心理的”に物の利用を不可能にする行為も含まれますので、器物損壊罪が成立するというわけです。法学部出身の方は、古い判例で食器に放尿した行為が「損壊」に当たるとされたものがあることをご存じかと思います。一方、精液をかける行為が強制わいせつ罪に当たるかという点については、同罪の成立要件である「暴行」と「わいせつ傾向(性的意図)」が問題になります。強制わいせつ罪の「暴行」とは、人の反抗を著しく困難にする程度の物理力の行使をいうとされていますが、裁判例では、「正当の理由なく他人の意思に反してその身体髪膚(はっぷ)に力を加うるの謂(いい)にして、固よりその力の大小を問うことを要するものに非ず」としたものや、「被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制するもので足りる」と判示したものがあり、物理力の強度よりも意思に反する程度に着目しているといえましょう。また、強制わいせつ罪の成立には行為者の性欲を満足させるという「わいせつ傾向(性的意図)」が必要とされていますが、精液をかける行為がもっぱら女性に対して報復または侮辱する目的で行われたといえないのであれば、「わいせつ傾向(性的意図)」もあるといえます。したがって、公共の場所で女性に体液をかける行為は、その態様や目的によりますが、器物損壊罪と強制わいせつ罪の両方が成立し得ます。 ■なぜ器物損壊罪のみで逮捕されることが多いのかこれには、「暴行」と「わいせつ傾向(性的意図)」の有無、立証難易、本人の前歴・余罪など様々な要因がありますので一概には言えませんが、まずは固い器物損壊罪の容疑(被疑事実)で逮捕するという理由があるでしょう。捜査の結果、強制わいせつ罪に切り替えることもありますし、強制わいせつ罪は成立するけれど今回は器物損壊罪のみで処分・処罰をするという判断がなされることもあります。 ■その他想定される疑問への回答(1)公然わいせつ罪にはならないの?成立し得ますが、公然わいせつ罪の規定はわいせつなものを見せられる人や健全な性秩序・精神的社会環境を保護していると解釈されているので、被害女性の観点からすると公然わいせつ罪で処罰することはなじまないといえるかもしれませんね。なお、公共の場で性器を露出した上で行う犯行態様であれば当然に公然わいせつ罪が成立します。(2)本人が「わいせつ傾向(性的意図)」を否定していたらわいせつ罪にはならないの?わいせつ傾向などの人の内心は、本人の外部的行動や客観的証拠から推測・認定できますので、本人の自白がなければ各種わいせつ罪で有罪にできないわけではありません。(3)器物損壊罪と強制わいせつ罪が成立した場合、それぞれの刑で処罰されるの?精液をかけるというひとつの行為が両方の罪に当たるときは、法定刑が重いほうの強制わいせつ罪の範囲で刑が言い渡されます(観念的競合といいます)。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】*梅さん / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月05日血液をはじめとする体液は、私たちの生存に絶対に不可欠なものですが、それらについて考えることはあまりないはず。でも、誰の体内に流れている体液には、どんな働きがあるのでしょう?11種類の体液について見てみましょう。■1:胆汁(たんじゅう)は1日に600ミリリットル分泌される肝臓でつくられ、胆のうに一時貯蔵、濃縮される黄褐色の液体が胆汁。色は濃い茶色から濃い緑色で、1日に600ミリリットル分泌され、脂肪を消化する大切な役割を果たします。■2:血液の量は成人で約6リットルもっとも重要な体液といわれる血液。成人の血液量は約6リットルで、酸素を細胞に送ったり、二酸化炭素のような代謝廃棄物を運んだり、感染症と戦う白血球、ブドウ糖、ホルモンなどの物質を体に送り込みます。また血液には、血小板や凝固因子と呼ばれるものが含まれていて、出血を止める働きをします。■3:月経血は約42年間にわたって出て行く女性は一生のうち、平均28日周期で約42年間月経があります。一回ごとの月経血量は40ミリリットル、その半分は血液で、もう半分は尿道の内壁、膣の粘液や分泌物です。月経血量が多すぎると貧血に。初潮は、子どもから大人への移行期にやってきますし、毎月の月経は、その女性が妊娠していないという証になります。■4:粘液は1日に1リットル作られている粘液は、粘液線で作られる透明のねばねばした液体で、気管支、胃、腸、尿、生殖器官、目、耳を守っています。粘液は殺菌酵素、抗体、粘性たんぱく質といった重要な物質を含んでいて、大人は1日1リットルの粘液をつくり出しています。また、呼吸器系の上皮が乾燥しないようにしたり、空気中の埃や感染性物質を除去したりする働きがあります。■5:膿(うみ)が出るのは健康の証拠傷が膿むとなかなか治らず、不快な日々を過ごさなければなりませんが、これは免疫システムがきちんと働いている証拠。白や黄色、または茶色い粘性のある膿は、感染した部位にたまります。これは、細菌、白血球、他のたんぱく質と細胞残屑から成っています。よくニキビのなかに見られますが、もっと深い場所で大きくなったものを膿瘍(のうよう)といいます。■6:精液5ミリリットルの中に約3億個の精子精液は男性の性器から射出される液体のことで、一般的には精子を含んでいて、女性の卵子と受精します。女性は生まれつき卵子の数が決まっていますが、男性は思春期から絶えず生殖体をつくり続けます。健康な男性の約5ミリリットルの精液には、平均3億個の精子があります。■7:唾液の分泌は1日平均1リットル唾液は、口のあたりにある唾液線で分泌されます。大人は食事のときをピークに、一日平均1リットルの唾液を分泌します。粘液と同じように、唾液にも抗菌性の酵素と抗体があります。そして、唾液で食べものを湿らせて、円滑に噛んだり、飲み込んだりできるようにします。■8:男性の汗は異性を惹きつける皮膚の汗腺から分泌される液体。1日にかく汗の量は人によって千差万別で、10分の1リットルから8リットルの間ぐらいです。汗は主として体温調節の手段ですが、男性の汗はフェロモンとしても機能するという説もあります。気温の高いときや運動時など、筋肉が熱くなる際に多くの汗が分泌されますます。また、緊張や吐き気によっても汗をかくことがあります。■9:涙は眼球を保護してくれている目の涙腺から分泌される体液。おもな役割は眼球の保護ですが、人間特有の現象として、悲しみや喜びといった感情によって、分泌されることもあります。また、タバコの煙や玉ねぎ刻むときに出るのは、目が受けた刺激を取り除くために涙が分泌されているため。大量の涙を流すと鼻水までが出てくるのは、涙が鼻涙管を経由して排出されるからです。■10:尿は1日1.5リットル生産される腎臓で生産され、膀胱に蓄積される液体の排泄物。血液中の水分や不要物、老廃物から成ります。1日に大人が生産する尿は約1.5リットル。人体の不必要な塩分と水分を取り除く機能があります。健康診断では必ず尿検査が行われ、尿中に糖が見つかれば、糖尿病の可能性があり、細菌が見つかれば、尿路感染症が考えられます。■11:例外だけど大切な嘔吐物一般的な体液とは違い、毎日生産されるものではありません。なんらかの刺激によって起き、乗り物酔いの嘔吐は、内耳の器官で調整されている平衡感覚が乗り物の揺れやスピードで自律神経が乱されることで起こります。有毒なものを体外に排出するために起きることもありますが、ほとんどの場合、食事したものを体の異常によって嘔吐します。*ふだんは有難みを感じることのない体液ですが、実は私たちの体を守るために、快適に暮らすために働いている物質なのです。どれひとつとっても、なくなったら困るものばかり。そう思うと、少なからず愛着がわいてくるのでは?(文/スケルトンワークス)【参考】※Eleven body fluids we couldn’t live without-The Conversation
2015年11月16日