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ウーマンエキサイトをご覧の皆さん、こんにちは。tomekkoです。クズ文豪シリーズへのコメント、ご感想いつもありがとうございます!リクエストもよくいただくので毎月次は誰の人生と作品を紐解こうかとワクワクしながら書かせていただいております。さて、このシリーズを始めた当初から書きたいけど書きづらいな〜どうしようかな〜と思っていた文豪さんがおりまして…。ご存知三島由紀夫!!美しい日本語の表現、耽美で雅で悲劇的。そしてどこか妖しい薫りが立ち込めるような作品性。谷崎潤一郎とどっちが好きかと聞かれたら…悩みに悩んで決められないくらい好きなんです。とはいえ人生をじっくり知ろうとしたことはなく、どうしても作品のテーマの強烈さと亡くなり方の壮絶さのため、ご本人もさぞかし家族を泣かせたクズ系譜であろうと(ひどい)勝手に思い込んでいました。そんな三島由紀夫をついに書いてみよう、と調べ始めてすぐに、作品から勝手に抱いていた私のイメージは大間違いだったことに気づきました。意外にも家族思いな一面が!官僚を3代務める家柄で本人も幼少期から学業優秀。三島自身も一年間ではありますが大蔵省(現財務省)の役人だったこともあるんです。ま、ここまでは文豪あるあるじゃないですか。なんなら家柄と神童だったという事実はクズ文豪を生成する必須素材のような気がしてきます…。でも三島は違うんです。生涯を通してめっちゃくちゃ純粋で硬派。それ故に晩年は政治的思想に傾いていってしまったのではないかと思われます…。他のクズ文豪と大きく違うな、と感じたのが子どもたちへの思いやり。割腹自決という凄惨な最期を選んだ三島ですが、自分が亡くなった後にも毎年子どもたちにクリスマスプレゼントが届くように百貨店に先んじて手配をし、子ども向け雑誌の定期購読料も先々の分まで先払いしておいたそう。家庭を顧みず酒や賭け事に溺れたり女にだらしなかったり…その挙げ句勝手に死んでしまう(なんなら女を巻き添えにする)ような文豪たちを見てきてのこのエピソード…ちょっと胸に来るものがありませんか?自衛隊駐屯地で檄文を撒きクーデターを煽動する演説の後に切腹して自決するという激しい行動の裏で、家庭の小さな幸せを大切にする心の持ち主でもあったんですね。現代の感覚でも「クズ」という枠に入らなそうな三島由紀夫をどんな切り口で紹介したら楽しめるかなぁ…と考えたのですが、今回は三島由紀夫の『審美眼』に注目してみたいと思います。三島由紀夫 独特の美意識とは?兎にも角にも、三島の特徴は独自の『美』をとことん追求していたこと。それは自分のペンネームへのこだわりにも見られます。16歳という若さで『花ざかりの森』で文壇デビューし、天才が現れたと絶賛された三島。当時は本名を使っていましたが、若すぎることを案じて周囲からペンネームの使用を勧められました。万葉仮名ふうに当て字の名前にすること、そして漢字の見た目から来る印象、並びの美しさ、柔らかさにまでこだわって“由紀夫“となった経緯には既にこの歳から言葉に、響きだけでなく字面の並びにも理想の美を求めて見ていたことがわかります。そんな三島は、実は昭和を代表する名女優や俳優を見出した究極の審美眼を持っていました。たぶん彼はあのまま生き続けていたら文豪としてだけでななく、プロデューサーとしての名声もほしいままにしていたんじゃないかな。中でも有名な方を紹介してみましょう。幼少期は祖母の影響で能や歌舞伎に触れ、その流れで古典文学をこよなく愛し、日本中世の御伽草子や能の筋書きをベースに、自身でも戯曲や創作歌舞伎を次々と発表し上演しました。この時の役者の中で、三島が出会った超弩級の新人が若き日の坂東玉三郎さんです。美輪明宏に「君は、大物になる」とつぶやいた元々梨園出身でもなく歌舞伎で主役を張る家柄ではない14代守田勘弥の養子として育てられた少年を、三島由紀夫は自作の歌舞伎『椿説弓張月』でヒロインの白縫姫に大抜擢。三島は若き日の玉三郎さんを「薄翅蜻蛉(うすばかげろう)のよう」と評し、これまた自作の『サド侯爵夫人』を「将来君がやる作品だから持っていなさい」と手渡したそう。現在の消えてしまいそうな儚い少年美を愛でつつ、将来凄みのある立女形に育つことも見越したその審美眼…恐れ入ります!!もうひとり、三島由紀夫と親交のあった有名な方は、美輪明宏さんです。銀座のゲイバーでアルバイトしていた16歳の頃から、三島だけでなく各界の著名人たちを虜にしていた美輪さん。『仮面の告白』が大ヒットし、周囲から先生先生とチヤホヤされていた三島に、当時アルバイトしていた美輪さんは指名されても媚びることがなかったそう。類稀な美貌だけでなく、遊郭育ちもあってか常連の文豪たちのジョークにも洒脱な切り返しをする頭の良さで既に売れっ子だった美輪さんですが、フランス語で歌ったシャンソン『ばら色の人生』を聴いた三島がいたく感動し「君は、大物になる」とじっと見つめてつぶやいた、そのたった一言が千万の言葉よりも嬉しかったと後に美輪さんは語っています。自決の前には、300本もの薔薇の花束を手に楽屋を訪れ、「もう君の楽屋には来ないからね」と言って、最前列でコンサートを聴いて去っていったそうです。その後…あの自決事件は起こるのです。他にも岸田今日子さんや若尾文子さんのような往年の名女優も多く見出した三島ですが、あまりに美しい話ばかりなので、一つクズ繋がりのエピソードを入れておこうかな…。太宰治に直接「嫌い」と言い切る!そう、クズ文豪代表である太宰治先生!当然っちゃ当然だけど、こういうタイプ苦手そうですよねー。既に売れっ子作家だった一回り以上歳上の太宰の退廃的な生活態度を批判していました。(そりゃそうだ)直接会いに行くことになり、酔って持論を展開する太宰に直接「嫌い」と言い切った三島も三島ですが、「こうして会いに来てるんだから、やっぱり好きなんじゃないか」と平然と返す太宰もいかにも太宰らしくていいですね(事実どうだったのかはわかりませんが…。)でも本当は、この嫌悪感は同族嫌悪に近いものだったのではないか、と言われています。太宰の弱さにイラッとするのは、三島自身も元々は虚弱体質で男らしいへのコンプレックスも強かったようです。(三島は後年 鍛え上げて筋肉自慢の肉体を手に入れました!)こうして見てくると三島由紀夫という人は、並外れた頭脳と鋭敏な感性を持つがゆえに異様に繊細で、言葉や表現に対しても人に対しても究極の美を追求し過ぎる…要するに極端で危険なタイプだったように思えます。(…だから天才なんですけどね) 作品もまた何を紹介しようか悩むほど名作揃いなんですが、悲劇的な愛や美を求めるお話が多いのでとっつきにくい方も多いかもしれません。でも、三島は劇作家としても素晴らしいので本をあまり読まない方でも接しやすい古典をベースにした戯曲も多いんです。もし初めて三島作品に触れるなら珍しくコミカルでハッピーな創作歌舞伎『鰯売恋曳網』が軽めでおすすめですよ〜。
2023年12月07日日生劇場が来年2023年に開場60周年を迎えるのにあわせて6月22日、60周年記念主催公演の制作発表会見が開催され、記念ロゴも発表された。会見には三島由紀夫作『午後の曳航』演出の宮本亞門、オペラ『メデア』演出の栗山民也、音楽劇『精霊の守り人』演出の一色隆司らが出席した。オペラでは、ルイージ・ケルビーニ作曲の『メデア』(演出:栗山民也)の日本初演、日生劇場では実に53年ぶりのヴェルディ作品となる『マクベス』(指揮:沼尻竜典、演出:粟國淳)、そして三島由紀夫の同名小説のオペラ化作品で、ベルリンにて1990年に初演されたドイツ語版の日本初演となる『午後の曳航』(演出:宮本亞門)の3作品を上演する。『メデア』演出の栗山は、ロシアによるウクライナ侵攻で、市民が避難していたウクライナの劇場が爆撃された事件に触れつつ「劇場というのは、人々が集い、人間について、そして世界について考え、学び、夢を見る場所だと思います」と悲痛な表情で語る。栗山民也そして『メデア』という作品について「紀元前に書かれた物語ですが、現実にいましっかりと息をしている物語であり、普遍性を感じます」と評し、本作を読むと、必ずピカソの「ゲルニカ」が頭に浮かぶと明かす。「画の中に死んだ我が子を抱きしめて空を呆然と見つめる母のスケッチがありますが、その目は縦になっています。人間の怒りと悲しみ、その究極をピカソはそう描いたんだと思います。いまの日本は、すごくわかりやすいことを受け入れる時代になってしまったと思いますが、不条理や矛盾に満ちているのが人間の姿だと思います。表と裏、悲劇と喜劇、愛することと憎むこと、正気と狂気――それが『メデア』の中心だと思います。オペラのみなさんの才能を借りて心に残る作品にしたいと思っています」と意気込みを口にした。宮本亞門『午後の曳航』演出の宮本はこれまでも『金閣寺』や『ライ王のテラス』などの三島作品を手がけてきたが「僕は三島由紀夫さんが大好きです。一切表裏を出すことなく、露骨に醜いもの、美しいものを出していくという姿に、いつも勇気をもらっています。いつかやりたかった『午後の曳航』がやっとできることに興奮しています」と笑顔で語る。そして、作品について「とても痛いです。恐ろしいです。そして美しいです。人間の本質を露骨に出している作品ですので、現代人の悩みそのものと言えるかもしれません」と語った。この他、60周年記念作品として、ファミリーフェスティヴァル2023として、上橋菜穂子のベストセラーを原作に音楽劇『精霊の守り人』(演出:一色隆司)、人気画家、絵本作家ヒグチユウコ作品の初舞台化となる舞台版『せかいいちのねこ』(脚本・演出・振付:山田うん)、日生劇場主催のバレエ公演として初の子役オーディションを実施する谷桃子バレエ団『くるみ割り人形』~日生劇場版~(芸術監督:髙部尚子)が上演される。取材・文=黒豆直樹60周年記念公演ラインアップ■NISSAY OPERA 2023『メデア』2023年5月27日(土)・28日(日)指揮:園田隆一郎 / 演出:栗山民也 / 管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団■NISSAY OPERA 2023『マクベス』2023年11月11日(土)・12日(日)指揮:沼尻竜典 / 演出:粟國淳 / 管弦楽:読売日本交響楽団■東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA 2023提携『午後の曳航』2023年11月23日(木・祝) ~26日(日) 予定指揮:アレホ・ペレス / 演出:宮本亞門 / 管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団<日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2023>■音楽劇『精霊の守り人』2023年7月29日(土) ~8月6日(日)原作:上橋菜穂子作『精霊の守り人』(偕成社)/ 脚本:井上テテ / 演出:一色隆司(NHKエンタープライズ)■舞台版『せかいいちのねこ』2023年8月19日(土)・20日(日)原作:ヒグチユウコ作『せかいいちのねこ』(白泉社)/ 脚本・演出・振付:山田うん / 出演:人形劇団ひとみ座、Co. 山田うん■谷桃子バレエ団『くるみ割り人形』~日生劇場版~2023年8月25日(金)~27日(日)演出・振付:谷桃子 / 芸術監督 改訂演出・振付:髙部尚子 / 出演:谷桃子バレエ団
2022年06月23日三島由紀夫作『薔薇と海賊』が2022年3月4日(金)東京芸術劇場シアターウエストにて開幕した。美しい言葉の応酬と台詞量に、気づけば夢のような世界へと引き込まれているあっという間の3時間だ(休憩2回含)。童話作家・楓阿里子(霧矢大夢)は、娘の千恵子(田村芽実)に自分の童話の登場人物であるニッケル姫の扮装をさせて暮らしていた。ある日、楓家に、自分をその童話の登場人物であるユーカリ少年だと思い込む青年・帝一(多和田任益)が、後見人の額間(大石継太)に連れられてやってくる。白いドレスのニッケル姫/千恵子に会い、帝一は大興奮し、「このお家に住みたいな」と言い出す。はじめはたしなめていた阿里子も、帝一とのめくるめく童話の世界についての会話がはずみ、ふたりは急速に心を通わせていく。霧矢は、純潔を重んじる阿里子の凛とした佇まいで存在感を放つ。対する多和田は、自分を勇気あるユーカリ少年だと信じる無邪気さをまっすぐに演じる。帝一の上下白のスーツは純真さの表れだろうか。三島由紀夫の美しいせりふが、ふたりの童話をめぐる会話の端々から零れ落ち、舞台を彩っていく。しかし楓家にはほかに、朝帰りばかりの夫(須賀貴匡)とその弟(鈴木裕樹)が暮らしており、帝一の登場によってふたりの阿里子への思いも揺らいでいく。この兄弟と、千恵子、額間、手伝いの勘次(飯田邦博)と定代(羽子田洋子)、楓家に出入りするセリ子(篠原初実)とチリ子(松平春香)などが、それぞれの人生観を吐露しながらドタバタと物語を動かしていく。その様子は滑稽で喜劇的だ。客席からは何度も笑い声が起こる。初演は1958年に文学座にて。三島由紀夫の書いた言葉は時代を感じさせるが、童話そのものみたいに彩り豊かだ。そのせりふを誠実に届けようとする俳優達により、言葉の宝石が舞台に散りばめられる。舞台は白い半透明のカーテンで囲まれ、阿里子の純潔の向こう側が見え隠れするようでもある。洗練された衣装、鮮やかで上品な照明、おとぎ話の世界から聞こえてきそうな音楽、目に焼き付く映像……ファンタジックな世界観と、各登場人物の生々しさを両立させる大河内直子の演出が、童話のような独特の世界に観客を誘う。三島自身が中心となり結成した劇団浪曼劇場が1970年に上演した際には、三島自身が客席で涙を流しながら観ていたそうだ。そして全公演が終了した2日後に命を絶った。死の直前にあえてこの喜劇を上演した三島。彼が望んだ「夢の世界」を阿里子と帝一が背負っているのかもしれないとも思える、胸に刺さる幕切れが印象的だった。上演は3月13日(日)まで。チケットぴあにて、各公演3日まで指定席前売券、各公演3時間前まで当日引換券を販売中。3/10(木)はライブ配信もあり、視聴チケット販売中。その後、大阪公演あり。【取材・文】河野桃子
2022年03月08日戦後の日本文学界を代表する三島由紀夫没後50年となる今年。9月、日生劇場において4日間限りで『MISHIMA2020』が上演された。彼の人生、作品、思想に刺激を受ける4名の演出家、加藤拓也、熊林弘高、長久允、野上絹代が、それぞれの目線で演出する三島作品をオムニバス形式で上演。2020年に旭日小綬章を受章した麻実れい、世界的ダンサーでありながら本作で圧倒的な芝居を見せつけた菅原小春をはじめとする、日本の第一線で活躍する才能あふれる俳優とクリエイティブスタッフが集結。原作の魅力を受け継ぎながらも、現代の視点で『真夏の死』『班女』『憂国』『橋づくし』の新たな4作品を生み出した。【動画配信】三島由紀夫没後50周年企画「MISHIMA2020」 追加アンコール配信 チケット情報さらに本公演ではライブ配信を実施。クリエイティブディレクターを鈴木健太(劇団ノーミーツ)が務め、劇場の臨場感ともまた違った映像ならではの熱気、スピード感で、三島の世界へと引き込んだ。ライブ配信の好評を得て、公演終了の3日後にはアンコール配信がスピード決定。徐々に『MISHIMA2020』の熱は広がり、そしてこのたび、三島由紀夫の命日となる11月25日より“追加アンコール配信”が2週間限定でスタートした。また、今回の追加アンコール配信は、作品をより深く堪能できるようにと、1作品ごとに視聴可能。 本編終了後、演出家のスペシャルインタビューやWEB上で上演脚本が視聴できる特典付きだ。お得な2本セット、4本セットの販売に加え、 公演プログラム付きのチケットも販売。さらに公演サイトでは、未公開舞台写真も公開。様々な角度から、新たな“三島”を楽しんでほしい。
2020年11月26日筑摩書房が、三島由紀夫没後50年特別企画として、1991年に刊行した『三島由紀夫レター教室』(ちくま文庫)を、小沢健二デザインによる特別帯をつけて販売することを発表した。小沢書下ろしエッセイを両面に掲載した特別帯は、11月11日(水)頃の書店着荷分から本に巻かれて全国順次発売となる。またそれに先がけ、メモリアル・イヤーにちなんだ2020部の限定版帯付き本を、10月31日(土)より全国86店舗の協力書店にて先行発売する。小沢は雑誌『オリーブ』92年9月号で、「私が文を学んだ本」として『三島由紀夫レター教室』を紹介している。当時これをきっかけにして「突然話題沸騰どうやら小沢健二さんのお気に入り本らしい」という帯が巻かれ、大きな話題を呼んだ。小沢健二書下ろしエッセイでは、『三島由紀夫レター教室』が「なんて贅沢な行為。なんと「反社会的」な行為。なんて地下活動的な、秘密裡な行為。編集されて、冷静に、平静に進んでいく世の中の下に、トンネルを掘るような。」と表現された。2020部限定版帯は、壁を破るかのような切り抜き、袖や裏面にまでびっしりと書きこまれたエッセイ、斜めにカットされた変形帯……。文庫版の帯としてはこれまでに見たこともない、異例の仕様となっている。『仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』など硬派な純文学作品で知られる三島だが、本作は氏のもう一つの顔、極上エンタメ作家としての代表作のひとつ。1966年に週刊誌『女性自身』に連載されたこの異色小説は、メールやラインが主流となった現代において、さらに光を増すような魅力がつまっている。新たな帯は、この時代の空気の中で新たな価値を発掘し発信するものとなっている。■2020部限定版取り扱い書店(全国86店舗)北海道 紀伊國屋書店札幌本店北海道 MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店宮城 丸善仙台アエル店群馬 ブックマンズアカデミー前橋店埼玉 BookDepot書楽千葉 丸善津田沼店東京 紀伊國屋書店新宿本店東京 ジュンク堂書店池袋本店東京 丸善丸の内本店東京 三省堂書店池袋本店東京 三省堂書店神保町本店東京 東京堂書店神田神保町店東京 丸善お茶の水店東京 丸善日本橋店東京 ブックファースト新宿店東京 八重洲ブックセンター本店東京 紀伊國屋書店国分寺店東京 ジュンク堂書店吉祥寺店東京 MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店東京 紀伊國屋書店玉川高島屋店東京 ジュンク堂書店立川高島屋店東京 ブックファーストルミネ町田店東京 有隣堂アトレ目黒店東京 八重洲ブックセンタールミネ荻窪店東京 啓文堂書店吉祥寺店東京 紀伊國屋書店西武渋谷店東京 文教堂書店二子玉川店東京 くまざわ書店調布店東京 TSUTAYA三軒茶屋店東京 大盛堂書店駅前店東京 HMV&BOOKSSHIBUYA東京 タワーレコード新宿店東京 文喫六本木東京 ヴィレッジヴァンガード下北沢東京 HMV&BOOKSSPOT新宿東京 タワーレコード渋谷店東京 スーパーブックスあおい書店春日店神奈川 有隣堂横浜駅西口店神奈川 紀伊國屋書店横浜店神奈川 丸善ラゾーナ川崎店神奈川 八重洲ブックセンター京急上大岡店神奈川 紀伊國屋書店ららぽーと横浜店神奈川 有隣堂ルミネ横浜店神奈川 ACADEMIAくまざわ書店橋本店新潟 知遊堂亀貝店富山 明文堂書店富山新庄経堂店富山 喜久屋書店高岡店富山 BOOKSなかだファボーレ店石川 金沢ビーンズ明文堂石川 うつのみや金沢香林坊店愛知 三省堂書店名古屋本店愛知 ジュンク堂書店名古屋栄店愛知 MARUZEN名古屋本店愛知 TSUTAYAウイングタウン岡崎店愛知 TSUTAYA春日井店京都 MARUZEN京都本店京都 大垣書店イオンモールKYOTO店京都 ふたば書房御池ゼスト店京都 大垣書店烏丸三条店京都 大垣書店イオンモール京都桂川店京都 ふたば書房山科駅前店大阪 紀伊國屋書店梅田本店大阪 ジュンク堂書店大阪本店大阪 MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店大阪 ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店大阪 ジュンク堂書店難波店大阪 ブックファースト梅田2階店大阪 梅田蔦屋書店大阪 大垣書店高槻店大阪 田村書店千里中央店大阪 HMV&BOOKS心斎橋大阪 HMV&BOOKSSPOT伊丹空港兵庫 ジュンク堂書店三宮店兵庫 ジュンク堂書店姫路店岡山 喜久屋書店倉敷店岡山 啓文社岡山本店広島 ジュンク堂書店広島駅前店広島 啓文社西条店福岡 ジュンク堂書店福岡店福岡 丸善博多店福岡 喜久屋書店小倉店福岡 HMV&BOOKSHAKATA熊本 蔦屋書店熊本三年坂鹿児島 ブックスミスミオプシア店沖縄 ジュンク堂書店那覇店沖縄 HMV&BOOKSOKINAWA(※在庫状況、販売方法などは各書店にお問い合わせください)■小沢健二デザイン帯付き『三島由紀夫レター教室』(普及版)2020部限定版の見た目そのままに、表紙カバーの一部も印刷して再現した大型の帯(ダブルカバー仕様)となっている。2020年11月11日より全国順次発売(※地域により差があります)■書誌情報タイトル:『三島由紀夫レター教室』ちくま文庫著者:三島由紀夫体裁:文庫判/240ページ本体価格:620 円(税別)
2020年10月23日三島由紀夫が残した4作品を、4人の演出家が舞台化する企画公演『MISHIMA2020』が9月21日(月・祝)に開幕する。戦後の日本文学界に鮮烈な爪痕を残した作家、三島由紀夫。壮絶な最期に多くの人が言葉を失った日から、ちょうど50年の月日が流れる。半世紀を経てもなお、多くの読者を魅了してやまない彼の作品を、大いにフィーチャーした企画公演が行われる。タイトルは『MISHIMA2020』。ここに集結したのは、三島作品に影響や刺激を受けながら創作を重ねる新進気鋭の演出家4名だ。全員が、三島の死後に生まれた世代。現代の感受性で三島作品を読み解き、舞台の上でそれを視覚化させる。日程を前後半に分けて、2作品ずつ上演する今回の試み。前半日程では野上絹代が手掛ける『橋づくし』と、長久允が手掛ける『憂国』を上演。後半日程は加藤拓也が手掛ける『真夏の死』と、熊林弘高が手掛ける『班女』を上演する。野上絹代作・演出『橋づくし』出演左から伊原六花井桁弘恵野口かおる高橋努長久允作・演出『憂国』(『(死なない)憂国』) 出演左から東出昌大菅原小春出演陣も実に個性豊かだ。『橋づくし』では、『ウエスト・サイド・ストーリー』でヒロイン・マリア役に抜擢された伊原六花が悲願の舞台に上がる。『憂国』では東出昌大と、NHK大河ドラマ『いだてん』で圧巻の演技を見せたダンサー・菅原小春が共演。『真夏の死』では数多の映画やドラマできらめく存在感を見せる中村ゆりと、劇団「ハイバイ」での怪演が光る平原テツが相まみえ、そして『班女』では、ありとあらゆる劇世界を軽やかに渡ってきた麻実れいと、ジャンルを超えて確かな実力を発揮する橋本愛、NHK朝の連続テレビ小説『エール』でも誠実な演技を見せた中村蒼が顔を揃える。なお、9月21日(月・祝)と27日(日)、PIA LIVE STREAMでのオンライン配信も決定。クリエイティブディレクターの鈴木健太と、アートディレクター・グラフィックデザイナーの田中せりによる、こだわりの映像に期待が集まる。公演は9月27日(日)まで日生劇場にて。加藤拓也作・演出『真夏の死』(『summer remind 』)出演左から中村ゆり平原テツ熊林弘高作・『班女』近代能楽集より 出演左から麻実れい橋本愛中村蒼三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020』・『橋づくし』/『憂国』9月21日(月・祝)17:00・22日(火・祝)12:00、16:00・『真夏の死』/『班女』 近代能楽集より9月26 日(土)18:30・27日(日)12:00、16:00会場:日生劇場ライブ配信日程『橋づくし』/『憂国』:9月21日(月)20:00『真夏の死』/『班女』:9月27日(日)16:00PIA LIVE STREAMにて各公演2日後の23:59までアーカイブ配信あり(視聴券は各公演2日後の20:00まで販売)文:小川志津子
2020年09月20日三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020』が9月21日(月・祝)から上演される。4人のクリエイターによるオムニバス形式で上演される本企画で、長久允が作・演出する『憂国』(『(死なない)憂国』)に出演する東出昌大に話を聞いた。【チケット情報はこちら】4つの作品がつくられ、2作品ずつ上演される本企画の中で、東出が出演する『(死なない)憂国』は、三島由紀夫の『憂国』を元に、コロナ禍でライブハウス消滅の危機に瀕する夫婦を描く作品。「原作の『憂国』は二・二六事件にまつわる話で、中尉である信二が、仲間を討伐するくらいならと切腹し、妻・麗子も自決する物語、つまり“死”を終着点にしています。今回の僕らの『(死なない)憂国』は、信二と麗子にとって唯一の生き甲斐であるライブハウスを、信二が警察官として取り締まらなければいけなくなり、(原作のように切腹はせず)ライブハウスに向かいます。だけどやっぱりそれでいいのか悩み、生きるとはなんぞや、死ぬとはなんぞや、というところに進んでいくストーリーです」(東出)と、大胆なアレンジが加えられるようだ。東出といえば大の三島ファンだが、台本はどのように受け止めたのか。「すごい台本だと思いました。ぶっ飛んでるのにまとまっていて。『早く稽古場に入りたい!』って心の底から、震えるほどに思いました」。作・演出は、映画監督、映像作家の長久允。「長久さんは舞台初演出なのですが、“感情”や“生きている”ということを大事に演出される方だという印象です。今は、“気持ちのままにお芝居をする”ということが最上なのではないかという話を菅原(小春)さんと3人でしながら稽古しています」。ふたり芝居で、麗子を演じるのは世界的ダンサーの菅原小春だ。「菅原さんは、舞台で台詞のあるお芝居をするのは初めてらしいのですが、こんなに“自分の言葉”として台詞を喋れる女優さんがいるのかと、目を見張るような思いでいます」と絶賛。「毎日稽古が楽しくて」と笑顔を見せる。東出が「稽古初日から3人で、作品について深く掘り下げる議論を重ねてきました。そこで出てきたものを反映したお芝居もあります。だからリアルで生々しい芝居になると思います。」と語る『(死なない)憂国』と、野上絹代 作・演出の『橋づくし』は9月21・22日に、加藤拓也 作・演出の『真夏の死』(『summer remind』)と、熊林弘高 演出「『班女』近代能楽集より」は9月26・27日に、東京・日生劇場にて上演。9月21・27日に配信もある(アーカイブ配信あり)。チケット発売中。取材・文:中川實穗
2020年09月17日「ぴあ」調査による2020年3月20日公開のぴあ映画初日満足度ランキングは、日本を代表する作家のひとり、三島由紀夫と東大全共闘の討論会の模様を記録したドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が第1位になった。ランキングは以下の通り。1位『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』89.1点2位『恐竜が教えてくれたこと』89.0点3位『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒BIRDS OF PREY』88.8点4位『一度死んでみた』88.6点5位『もみの家』87.5点6位『弥生、三月-君を愛した30年-』85.1点7位『21世紀の資本』81.7点8位『人間の時間』70.7点1969年5月、作家の三島由紀夫は東京大学駒場キャンパスの教室で、1000人を超える学生たちと向かい合っていた。旧体制の打倒のためには手段を選ばないと声をあげる東大全共闘のメンバーの招きでキャンパスを訪れた三島は、警察が警備を申し出るも断り、単身、彼らと向かい合う。そこで三島は何を語ったのか? 映画はテレビ局が保管していた“世界にただ一つ”の映像で構成されている。劇場は40代以上の年配の観客の姿が多かったが、親子連れや、10~20代の観客の姿も目立った。上映後の出口調査では「三島さんも学生たちも“覚悟”を見てとることができました。現代の人にはないものだと思います」「いまの時代に公開したことに意義があると思う。議論する大切さ、自分と違う考えの人と面と向かった話し合うことの大切さについて考えたい」「三島さんも学生も“言葉の熱量”が違う!」などの感想が寄せられた。三島と学生たちの討論は50年以上に渡って語り継がれてきた“伝説”だが今回、映像がスクリーンで上映されたことで「三島が学生たちとフランクに話していることが意外だった。神格化しすぎていたのかも」との声も。本作の公開をきっかけに“伝説”の歴史的評価に変化があるのか? この討論からまた新たな議題や対話が生まれるのか? 劇場では観たばかりの映画についてロビーで感想を交わしたり、対話する観客もおり、盛り上がりを見せていた。(本ランキングは、3/20に公開された新作映画8本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)直近1か月の満足度ランキング結果■3月13日、14日公開作品のランキング1位『ビッグ・リトル・ファーム理想の暮らしのつくり方』92.5点2位『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』88.0点3位『シェイクスピアの庭』86.1点4位『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』83.6点5位『ムルゲ 王朝の怪物』82.0点6位『コロンバス』81.0点■3月6日公開作品のランキング1位『ジュディ 虹の彼方に』89.4点2位『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』88.8点3位『仮面病棟』87.8点4位『星屑の町』85.7点5位『酔うと化け物になる父がつらい』82.2点■2月28日、29日公開作品のランキング1位『劇場版 SHIROBAKO』93.6点2位『架空OL日記』93.0点3位『仮面ライダージオウNEXT TIMEゲイツ、マジェスティ』92.8点4位『娘は戦場で生まれた』92.5点5位『ママをやめてもいいですか!?』90.5点6位『子どもたちをよろしく』89.3点7位『黒い司法 0%からの奇跡』88.8点8位『PMC:ザ・バンカー』87.5点9位『初恋』87.1点10位『レ・ミゼラブル』86.5点
2020年03月23日三島由紀夫の小説を原作にした2018 PARCO PRODUCE 三島×MISHIMA 『命売ります』が東京・サンシャイン劇場にて12月9日(日)まで上演中だ。【チケット情報はこちら】開幕を迎え脚本・演出を手掛けるノゾエ征爾は「三島由紀夫の驚きのパンクな小説。を演劇化したらこんな風になったと、別に奇をてらったようなことは何もしていませんが、ともかく面白な原作に面白な役者が乗っかったらこんなんになりました」、主演の東啓介は「三島由紀夫でありながらノゾエさんの脚本・演出で、とてもエンターテイメントな作品に仕上がっていると思います。山田羽仁男という人物が愛されるよう、僕はひたむきに演じていきます。キャスト、スタッフ全員で作り上げてきましたので、是非劇場でご覧ください!」、上村海成は「『半分、青い。』等、最近やらせていただいた役とかなり違うタイプの役柄で、しかも初のストレートプレイなのでとてもドキドキしていますが精一杯演じます!お客様に観ていただくのがとても楽しみです!」とそれぞれコメントを寄せた。ある日ふと「死のう」と思い立ち「命売ります」という新聞広告を出した羽仁男(はにお)のもとに、訳ありの人々が次々と訪れる物語。原作が「週刊プレイボーイ」に連載されたエンターテインメント小説ということもあってか、羽仁男を取り巻く人物たちはキャラが濃く、それを上村や馬渕英里何、莉奈、樹里咲穂、家納ジュンコ、市川しんぺー、平田敦子、川上友里、町田水城、ノゾエ、不破万作、温水洋一という個性的なキャスト達がより一層ポップに立ち上げる。そんな彼らに命を買われる羽仁男は、若く、“いい生活”をしている、いわゆるエリート。演じる東の抜群のルックスも相まって、登場人物がずらりと並ぶオープニングでも一人浮き上がって見え、そんな彼こそが自分の命を売っているのだという異常さが引き立つ。何度命を買われても生き残ってしまう羽仁男。生きたくないから命を売っているのに、その出会いや体験が彼を変えていくのを観ていると、なんとも言えない気持ちになる。オムニバスのように進んでいく物語は一つひとつが一癖ある展開なのだが、劇中でふと歌われる歌の歌詞がそれとは真逆のストレートさで、目の前の出来事の別の面を見せる。ポップで笑えて楽しい舞台だが、命とは、生きることとはなんだろうかということを考えずにはいられない、ちょっと不思議な感覚が味わえる作品だ。公演は、12月9日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて、12月22日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:中川 實穗
2018年11月27日2018 PARCO PRODUCE “三島×MISHIMA”シリーズの第二弾『命売ります』が11月24日に開幕。原作は三島由紀夫が1968年に「週刊プレイボーイ」に連載したエンターテイメント小説で、ある日ふと「死のう」と思い立った27歳の羽仁男(はにお)が新聞に「命売ります」という広告を出す。すると訳ありげな人間たちが次々現れ――という物語。脚本・演出はノゾエ征爾。その通し稽古に潜入した。【チケット情報はこちら】東啓介が演じる主人公・羽仁男と関わる人々は、上村海成が演じる吸血鬼の母親のために羽仁男の命を買う高校生・薫や、馬渕英里何が演じる間貸しする女・玲子、莉奈が演じる謎の老人の妻・るり子、樹里咲穂が演じる吸血鬼の女、家納ジュンコが演じる図書の貸出係の女など、役柄を並べるだけでも面白そうな本作。さらに、最初に羽仁男に接触する謎の老人を温水洋一、るり子を愛人にしている男を不破万作が演じるほか、市川しんぺー、平田敦子、川上友里、町田水城、ノゾエがさまざまな役柄で登場する。組まれたセットは上下2段で等間隔に並んだ扉と、同じく床に等間隔に並んだ長方形の台で、スーパーマーケットの売り場のようにも見える。オープニングではそこにキャストたちが等間隔に並び、オリジナルの曲を全員で歌った。「妻といい仲になって、嫉妬した愛人から殺されてほしい」など、依頼内容はどれも個性的。羽仁男は毎回命を懸けて遂行するもなぜか生き残ってしまうため、オムニバスのように次々と出来事が描かれていく。命を買いに来る人たちはユーモラスでありながら切実で、依頼のひとつひとつに人間の欲望や業がカラフルに詰まっている。そして個性的なキャストたちの芝居により、そこに人間の持つおかしさや愛おしさ、そして残酷さが感じられた。そのなかで東は、死が迫り妙に生き生きしたり、死にたいのに死ねず苛立ったり、出会いと別れを繰り返すうちにある変化が訪れたりと、あらゆる依頼を渡り歩く姿が危うくセクシーだ。エンタテインメント小説と呼ばれる原作とノゾエによる演出の掛け算で、物語はポップに進んでいく。だからこそ浮き上がってくる三島由紀夫の死生観は、芝居に笑わされながらも心にグイグイと迫ってくるため、観終わった後には何とも言い難い気持ちになった。ぜひ劇場で味わってほしい。公演は12月9日(日)まで東京・サンシャイン劇場、12月22日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:中川 實穗
2018年11月26日東出昌大の3年ぶり2度目の主演舞台となる『豊饒の海』が11月7日より東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕した。本作は、三島由紀夫が自決する直前まで書いていた全四部からなる長編小説を、てがみ座・長田育恵が一つの演劇作品として練り直したもの。演出は、ロンドンで活躍するマックス・ウェブスターが担い、三島作品への新たな挑戦として、注目を集めている。ここでは、7日に行われた同劇場にて初日前会見と芝居の一部を披露する公開フォトコールについてレポートする。【チケット情報はこちら】元々、三島由紀夫の作品を愛読していたという東出は、今回は三島作品の「美」の象徴とも言うべき主人公・松枝清顕役に挑戦。公演に向けての意気込みを問われると、「三島作品というものを全く汚すことなく舞台上に表出させることができるという確信がある」と自信を覗かせた。東出演じる清顕の生まれ変わりである飯沼勲役を演じる宮沢氷魚は、「豊饒の海を全て舞台化するという無謀な挑戦ではあったが、稽古を通して素晴らしい作品になり、皆さんにお届けできるのがすごく楽しみになっていたので、初日を迎えられて嬉しい」とし、同じく生まれ変わりの安永透役を演じる上杉柊平は、「この作品は、僕にとっても、観に来られる皆さんにとっても、人生に持って帰っていただけるものと自信を持って言える」と各々作品の仕上がりについてアピールした。また、次々と生まれ変わる清顕の人生を見届ける本多繁邦を、青年期・中年期・老齢期に分けて3人の俳優が演じるのも本作の試みのひとつ。青年期を演ずる大鶴佐助が「興奮と恐怖が入り混じった気分であるが、言葉と頼もしい共演者を信じて、瞬間瞬間を楽しんでいきたい」と語ると、中年期を担う首藤康之も、「ひとつひとつの美しい言葉を、丁寧に喜びを持って発していきたい」と語った。老齢期の本多は、生前の三島と親交があり、実際に三島手ずから演出指導を受けたことがある笈田ヨシが演じる。「三島先生に最後にお会いしたときに、いろいろと先生のご決意などを伺い、それ以来早48年間の年月が流れ、先生の祥月命日である11月にこの芝居をやらせていただくのは、感無量である」と感慨にふけった。マックスの手により、四部作を通して三島が描いた人間の生きていく姿、その崇高さ、美しさが表現されているという本作。東京公演は12月2日(日)まで上演。その後12月8日(土)・9日(日)と大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演予定。チケット好評発売中。
2018年11月14日三島由紀夫がその思想と死生観のすべてを注ぎ込んだ長編小説であり、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺をする直前に、最終巻の原稿を渡したことでも知られる『豊饒の海』。この小説は『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の全4巻から成るが、根底に一貫して流れているテーマは“輪廻”だ。今回の公演では、文学作品の核心をすくいとり、舞台化する手腕に定評のある長田育恵が翻案と脚本を担当。さらに、昨年オールドヴィックシアター(ロンドン)のアソシエイトディレクターに就任したばかりの新鋭、マックス・ウェブスターが演出を手掛ける。長編小説をひとつの舞台作品として再構築するなか、三島の美しく深遠な世界観が、どのように立ち現われているのかに注目だ。いよいよ本日11月7日(水)に初日を迎えた本作で、華族の家に生まれ、幼馴染みの令嬢・聡子を愛しながらも、二十歳で世を去る松枝清顕を演じるのは東出昌大。物語が進むにつれ、清顕が転生する(と思われる)人物は別の役者が演じるが、もちろん東出の登場は序盤だけではないだろう。どういう形で舞台上に存在するのかも見どころだ。清顕の親友で、生涯を通して彼の転生に触れてゆく本多繁邦には、大鶴佐助(青年時代)と首藤康之(中年時代)、そして笈田ヨシ(老齢時代)と魅力的な配役が叶った。他にも、宮沢氷魚、上杉柊平、神野三鈴、初音映莉子ら盤石の役者たちがそろい、舞台を引き締める。本作のポスターには、海でたたずむ東出の写真と共に、「又、会ふぜ。きつと会ふ。」の文字が。その清顕の言葉がどんな意味を持つのか、ぜひ客席から見届けたい。12月2日まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAまで上演され、12月8日(土)・9日(日) には森ノ宮ピロティホールにて公演を行う。文: 佐藤さくら
2018年11月07日『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の4冊からなる、三島由紀夫の長編小説『豊饒の海』。その舞台化が、てがみ座の長田育恵の脚本、ロンドンを拠点に活躍するマックス・ウェブスターの演出により実現する。そこで美しき夭逝の青年・松枝清顕を東出昌大が、清顕の魂を受け継ぐ若者・飯沼勲を宮沢氷魚が演じる。【チケット情報はこちら】三島作品を愛読するという、三島ファンである東出は『豊饒の海』というタイトルを聞いた時、「その壮大なスケールに戸惑い、恐れのようなものを感じました」と明かす。また宮沢も「4作全部ということで、これをどう舞台化するのか。その疑問はなかなか拭えませんでした」と続ける。だが今ふたりは、不安よりも楽しみの方が大きいのだと言う。その理由が……。ひとつは演出のウェブスターの存在。本稽古前にワークショップを行った際、彼がこう切り出したそう。「僕はみんなよりもちょっと有利な部分がある」と。その時のことを東出は「日本人は“三島”というのを神格化している部分があるけれども、彼はそれを知らずに原作を読み、舞台化出来ると思ったそうなんです。さらに“やることは人間のドラマを描くことだ”と。まさしくそうだと思いますし、血の通った人間のドラマとして描くことで、より生き生きとした『豊饒の海』が出来るのではと思います」と期待する。さらにもうひとつの理由が、大胆に翻案した長田の脚本だ。「長田さんが本当に上手に、4作の素晴らしいところを汲み取ってひとつの作品にしてくださいました。まるで新しい作品にも思えるほどです」と宮沢。さらに東出も「原作は三島の遺作であり最高傑作なので、文学的な表現がブイブイ」と笑い、「ただ今回は舞台だけで絶対に伝わると思いますし、初見の方でも安心して観ていただけると思います」と太鼓判を押す。それぞれ演じる清顕、勲という人物をどう捉えているのか問うと、東出は「4作全部読んでもわからない。それが正直なところです。でもそのわからないってところが、多分に魅力的に映る人物なのだと思います」と、謎めいた清顕像を三島ファンらしく紐解く。また宮沢は、「勲は覚悟がはっきりしていて、ピュアで、正義感に溢れた人物。そういった部分は大事にしていきたいですし、青年から大人になっていく、その変化もうまく表現していけたらなと思います」と難役への意欲を見せた。彼らの肉体を通し、三島の魂がどう体現されるのか。11月の開幕が待ち遠しい。公演は11月3日(土・祝)から12月2日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、12月8日(土)・9日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:野上瑠美子ヘアメイク(東出):廣瀬瑠美ヘアメイク(宮沢): 川端富生スタイリスト:林 道雄
2018年09月27日映画音楽の作曲家として活躍する岩代太郎が、企画・原作・音楽を担当し、全編音楽を書き下ろした、奏劇「『ライフ・コンチェルト』ある教誨師の物語~死刑執行までのカウントダウン」が東京・紀伊國屋ホールにて8月29日に開幕した。プレビュー公演前のゲネプロに潜入した。【チケット情報はこちら】死刑囚たちが刑の執行までの残された日々と向き合い、死を語り合うという役目を担う教誨師(きょうかいし)。國村隼演じるベテラン教誨師(きょうかいし)の牧師・元村由紀夫が、自分の後任に、高田翔(ジャニーズJr.)演じる塩野智嗣を選ぶところからはじまる本作。最初こそ死刑囚とのやり取りもぎこちなかった塩野だが、大森博史演じる死刑囚・古戸健治、また長谷川京子演じる死刑囚・大島玲子との交流を重ねることで、教誨師という役割の難しさに気づいていく。そして元村、塩野が出会う、黒川智花演じる死刑囚・大島の娘である瑠璃。大島玲子と瑠璃が抱えるある秘密が、元村、そして塩野の人生についての根幹を揺るがしていく。國村演じる元村は終始静かな口調ながら、塩野、死刑囚ら、瑠璃に語りかけるセリフには、現行の死刑制度、そして自身の死生観までをも考えさせられる。その國村演じる元村から、教誨師の後任に選ばれる塩野という難しい役割を与えられた高田は、演出の深作健太から話し方やタイミング、目線についても細かい指導を受け、体を動かしながら確認し、自身が演じる塩野に落とし込もうとする姿が印象的だった。またこの日、原作の代弁者という立場の語り役を担ったのは、舞台を中心に多岐に活躍する染谷俊之。客席と舞台上をつなぐナビゲーターとしての役割に真摯に取り組んでいた。本作、「奏劇」は今までに無い舞台創造のかたちへの挑戦として岩代が提案する、演奏と演劇を合わせたスタイル。舞台上にはグランドピアノ、また東京フィルハーモニー交響楽団のメンバーによるカルテット(弦楽四重奏団)がシーンにあわせて豊かな音色を響かせるのも見所だ。公演は9月3日(月)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。語り役は、8月30日、31日、9月3日(月)を染谷俊之、9月1日(土)13時30分、2日(日)13時30分を伊東健人、9月1日(土)17時30分を石川界人が務める。チケットぴあでは各公演の前日23時59分まで当日引換え券を発売中。
2018年08月31日映画『あゝ、荒野』などの映画音楽の作曲家として活躍する岩代太郎が、企画・原作・音楽を担当し、全編音楽を書き下ろした、奏劇「『ライフ・コンチェルト』ある教誨師の物語~死刑執行までのカウントダウン」の上演が決定した。【チケット情報はこちら】今までに無い舞台創造のかたちへの挑戦となる、演奏と演劇を合わせた「奏劇」。岩代は「多くのサウンドトラックを手掛けながら、時には台詞よりも雄弁に語る音楽の有様を知り、新しい音楽の可能性を探求したいとの衝動を抱きました。台詞のように奏でられる旋律、旋律のように語られる台詞。かつて「オペラ」の新しい可能性を探求した先に「楽劇」があったように、「演奏」と「演劇」の挟間で新しい可能性を探求したい。その想いから生まれた新しい舞台芸術のカタチを私は「奏劇(そうげき)」と名付けました。どうぞ新しいクリエーションの息吹をご覧下さい」と、コメントを寄せた。ストーリーは、ベテラン教誨師(きょうかいし)の牧師・元村由紀夫が、自分の後任に、屈折した少年期を元村に支えられ現在は牧師の塩野智嗣を選ぶところからはじまる。死刑宣告後もいつ執行されるのかを知らされることはない死刑囚たち。その執行までの残された日々に向き合い、死を語り合うという役目を担うのが教誨師(きょうかいし)だ。自身も病に犯されながら、全身全霊で死刑囚への教誨に向き合う牧師・元村役には岩代たっての希望で出演が実現した國村隼。屈折していた過去を持ちながら、元村の意思を継ぎ教誨師の道へ足を踏み入れることになった塩野役には高田翔(ジャニーズJr.)が選ばれた。元村と塩野が向き合うふたりの死刑囚・古戸健治役には大森博史、大島玲子役に長谷川京子、そして大きくストーリーを動かすことになる死刑囚 大島の娘・瑠璃役には黒川智花と、映画・ドラマや舞台で活躍する役者が揃った。さらに音楽は岩代が信頼する東京フィルハーモニー交響楽団のメンバーによるカルテット(弦楽四重奏団)の生演奏と、演劇×演奏の豪華な共演が実現。また指揮・ピアノは岩代太郎が務め、語りとして染谷俊之の出演が決定している。演劇と音楽の新しい形を作り出す奏劇「『ライフ・コンチェルト』ある教誨師の物語~死刑執行までのカウントダウン」は8月29日(水)から9月3日(月)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。チケットの一般発売に先駆けて、ぴあではチケット先行予約を実施中。受付は7月9日(月)午後11時59分まで。
2018年07月03日俳優・東出昌大が、11月より上演される三島由紀夫原作舞台「豊饒の海」で主演を務めることが決定。若手からベテランまで、東出さんとMISHIMAの世界を共に創りあげる共演者も発表された。本舞台は2018PARCO PRODUCE “三島×MISHIMA”シリーズの第1弾で、この秋、三島氏の絶筆の書である「豊饒の海」と、エンターテインメント性にあふれた「命売ります」の2作品の舞台化に挑む。第1弾を飾る「豊饒の海」は、第一部「春の雪」、第二部「奔馬」、第三部「暁の寺」、第四部「天人五衰」の全四作からなる長編小説だが、今回舞台では、全四作を一つの舞台作品として創作するという、前代未聞の意欲作。てがみ座主宰の長田育恵が脚本を手掛け、ロンドンのオールドヴィック・シアターのアソシエイト・ディレクターで、ロンドンのネクストジェネレーションのトップを走るマックス・ウェブスターが「メアリー・ステュアート」以来、3年ぶりに日本で演出。三島由紀夫文学作品を大胆翻案する。主演を務めるのは、現在主演映画『OVER DRIVE』が公開中、今後も『パンク侍、斬られて候』『菊とギロチン』『寝ても覚めても』など出演作の公開が続々と控えている人気俳優の東出昌大。三島由紀夫の「美」の象徴とも言うべき松枝清顕役という大役に挑む。今回、初舞台となった2015年上演の「夜想曲集」以来、3年ぶり2度目の舞台出演となる東出さんは、「思春期より三島由紀夫の虜になり、その作品の多くを読んできた私は、『豊饒の海』の舞台化を聞き震えました。役者になって最大の試練になると思います」と心境を明かし、「持てる全てを注ぎ込みます。三島世界の再現を、楽しみに待っていて下さい」と力強いメッセージを寄せている。また、清顕の影を追い続ける男・本多繁邦を、本作では青年時代、中年時代、老齢時代と3人の俳優が演じる。まず老齢の本多は、ベテラン俳優の笈田ヨシ。中年時代の本多は、バレエダンサーの首藤康之。そして若年時代の本多は、芥川賞受賞作家・唐十郎を父に持つ若手俳優の大鶴佐助がキャスティング。3つの黒子を持つ清顕の生まれ変わりとして登場するのは、ドラマ「コウノドリ」へに出演が話題となり、今年7月マームとジプシーの新作「BOAT」で初主演&初舞台を踏む宮沢氷魚、『一週間フレンズ。』『リバーズ・エッジ』などに出演する上杉柊平ら若手俳優が抜擢。さらに、神野三鈴、初音映莉子と実力派女優も参加する。第一部から第四部、それぞれが小説として完結しているが、この四作を通して通奏低音のごとく響くのは、「輪廻」という言葉。第一部「春の雪」で、「又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」ということばを残し、20歳で生命を落とした男・松枝清顕。彼の影に取り憑かれた男・本多繁邦。本多の人生に松枝清顕の生まれ変わりとして登場する3つの黒子の人々。四作を通して、夢と転生を描く壮大な物語だが、「清顕」を追い求めた本多にとって、彼の存在はなにを象徴していたのか、そしてなぜそこまで清顕に執着したのか――。60年後、晩年の本多は清顕との恋が成就せず、仏門に身をおいた聡子を訪るが、聡子は「清顕など知らない」と言う。全てが夢だったのか?自分のこれまでの清顕への執着は何だったのか?というのが「豊饒の海」の結末。本舞台では、清顕という美に憧れ続け、取り残されてしまった人間、本多繁邦を軸に、三島氏が最後に描いたこの「豊饒の海」という世界を、いまを生きている我々の人生という「普遍」の世界に投じていくという。2018 PARCO PRODUCE “三島 × MISHIMA”「豊饒の海」プレビュー公演は11月3日(土)~5日(月)、本公演は7日(水)~12月2日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演。12月8日(土)~9日(日)森ノ宮ピロティホールにて上演。(cinemacafe.net)
2018年06月27日新国立劇場が30代の演出家を迎えて送るシリーズ「かさなる視点―日本の戯曲の力―」。第1弾は、近年高い評価を得てきた演出家・谷賢一が三島由紀夫の長編戯曲『白蟻の巣』に挑む。2月中旬に行われた通し稽古に足を運んだ。【チケット情報はこちら】三島がブラジルを訪れた経験を基に執筆し、昭和30年に刊行された本作。日本で名家に生まれるも没落し、ブラジルのコーヒー農園の経営者に収まった刈屋義郎(平田満)と妙子(安蘭けい)の夫婦、住み込み運転手で過去に妙子と心中未遂事件を起こした百島(石田佳央)とその事件を知りつつも彼と結婚した若き妻・啓子(村川絵梨)、農園の経営を任されている大杉(半海一晃)、女中・きぬ(熊坂理恵子)の6人が表面上は穏やかに暮らす邸宅。啓子のある“企み”に刈屋が乗ったことから、少しずつ屋敷を覆う空気、彼らの関係性が変化してゆく。谷はこの戯曲を選んだ理由として「感情の火柱が非常に太く、それがぶつかり合い、火花を散らしている」とその魅力を語ったが、登場人物たちの会話には表面上、奇妙な静けさが漂っている。この空気を担っているのが、平田演じる“旦那様”刈屋と安蘭が演じる妻の妙子の佇いである。刈屋は、妻と若き運転手の過ちを、彼特有の“寛大さ”で許しており、まるで何事もなかったかの様に、妙子と百島、啓子らとテーブルを囲む。妙子はどこか定まらない視点とじっとりとした口調が特徴的で、自らを「もう死んだ女」と語り、生ける屍のようにただ、そこにいる。妙子は夫の赦しを「寛大さの牢獄」と表現するが、谷は「優しさ、許し、寛大さがもたらす息苦しさ、辛さ、呪縛は、個人主義的に現代を生きる我々に響くテーマになる」と語る。そんなこの家の空気に唯一、まともに刃向かっている存在であり、刈屋をして「あんたは生きているよ」と言われるのが、百島の若き妻・啓子だ。彼女は百島と妙子の間の過去にもがき苦しみ、それを何でもない事の様に笑い話として話す刈屋に激しく詰め寄り、ある“策”を弄する。彼女の激情が、止まっていた時を動かし、少しずつそれぞれの心情、本音が蠢き、“牢獄”を飛び出していくが……。全編を通して印象的なのは俳優陣の声!刈屋の無関心と同義の諦念、妙子の死人の様な口調、啓子の激情、夫・百島の迷い、いつか再び日本の地を踏む事を叶わぬ“夢”として語る大杉…。それぞれの感情が見事なまでに彼らの声に乗せられて、“美しき不協和音”とも言えるような奇妙な音色を奏でる。昭和30年に書かれた戯曲は旧字体で書かれており、会話も決して現代の口語的とは言えないのだが、実際に通し稽古で展開される俳優陣のやり取りは、古臭さも不自然さも全く感じさせず、静かに、しかし、生き生きとした感情が伝わってくる。「三島特有の美しい言葉は魅力ですが、言葉はあくまでも氷山の一角。その裏に漂うドロドロとした感情、ピリピリとした関係性が伝われば」――そんな谷の言葉通り、ブラジルの明るい太陽の下で、たっぷりと湿気を含んだ、べっとりとした感情の戦いが繰り広げられていた。公演は3月2日(木)に開幕。取材・文・撮影:黒豆直樹
2017年02月24日三島由紀夫が残した最高傑作戯曲の一つ「黒蜥蜴」が、来年1月より上演されることが決定。主演“黒蜥蜴”役には中谷美紀、“明智小五郎”役には井上芳雄を迎えることも明らかになった。世界的宝石商・岩瀬庄兵衛は、愛娘・早苗の誘拐と岩瀬家の秘宝「エジプトの星」強奪を予告する女盗賊・黒蜥蜴に怯え、探偵・明智小五郎に警護を依頼した。岩瀬父娘は大阪のホテルに姿を隠したが、隣室には岩瀬の店の顧客、緑川夫人が泊っていた。実は彼女こそ黒蜥蜴だったのだ。黒蜥蜴は部下の雨宮を使って早苗をまんまと誘拐したものの、明智は機敏な処置で早苗を奪い返したのだった。それから半月後、厳重な警備が敷かれた岩瀬邸から、早苗が忽然と姿を消した。黒蜥蜴が家政婦ひなの手引きで、再び早苗を誘拐した。明智が駆けつけたとき、早苗と引換えに、「エジプトの星」を持参せよ、という紙が残っているきりだった。指示通り岩瀬は「エジプトの星」を黒蜥蜴に渡したが、早苗は戻らなかった。黒蜥蜴は早苗の美しさに魅せられていた。一方、そんな黒蜥蜴にひそかに恋焦がれている雨宮は、黒蜥蜴が明智を恋していることに気づき、嫉妬を感じる。その頃明智は、一度は黒蜥蜴の手にかかって殺されたと見せかけ、部下の一人に変装して本拠地に忍び込んでいた。彼もまた、純粋な美に生きる黒蜥蜴に恋していた。黒蜥蜴を捕える自信はあったが、世間の秩序の彼方に己れの倫理と美意識を築きあげている彼女を、一番深く理解し愛しているが故に葛藤する明智。本拠地には人間剥製の美術館があった。早苗もその一つに加えられようとしていた…。「黒蜥蜴」は、美貌の女盗賊“黒蜥蜴”と名探偵“明智小五郎”が繰り広げる耽美と闇の世界。怪奇小説を世に送り出した江戸川乱歩の傑作を、三島由紀夫が戯曲化した究極のエンターテインメントだ。今回主演の“黒蜥蜴”役には「ケイゾク」「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」など様々なドラマや映画に出演する中谷さん、黒蜥蜴の好敵手であり運命の恋人、探偵“明智小五郎”役にミュージカル界で活躍し、「わたしを離さないで」や、大河ドラマ「おんな城主 直虎」などドラマ出演も増えている井上さんが決定。さらに演出は、日本でも「テレーズ・ラカン」や「ナイン」、「ETERNAL CHIKAMATSU」など、数多くの作品を手掛けている英国人演出家・デヴィッド・ルヴォーが担う。今回の出演にあたって中谷さんは、「三島さんが巧みに描かれた文章を表現することは容易なことではないですし、とても大きな劇場で演じるということに恐れを抱き、逡巡もしたのですが、やはり心が動いてしまい、出演させていただくことを決めました」と出演決定理由を語り、ルヴォー氏演出だということで参加を決めたと言う井上さんは、「過去に『ルドルフ ~ザ・ラスト・キス~』での経験が素晴らしかったので、いつかまたご一緒したいという気持ちがあり、来日するたびに顔を見せに行き、『いつかまた一緒にやりたい』と言い続けてきました」と今回は念願の出演だと語っている。ルヴォー氏が1988年の初来日以来、日本で演出をし続けたいと願い、日本に魅了されている理由を、三島由紀夫作品と歌舞伎に出会ったことだと話す。黒蜥蜴についてルヴォー氏は、「まず目を見張るような絶世の美女でなければなりません。同時にある種の緊張感を持ち、何かに駆り立てられている女性で、謎めいており、この人のことを知りたいと、周囲に思わせる磁力の持ち主」、明智小五郎についても「完全にアウトサイダーであり、ハンフリー・ボガードのようなハードボイルドですが、まっとうなモラルも併せ持っています」と語っており、中谷さんと井上さん共に相応しい役どころだとコメントしている。舞台「黒蜥蜴」は2018年1月より日生劇場(東京)、2月上旬より梅田芸術劇場メインホール(大阪)にて上演予定。(cinemacafe.net)
2017年02月06日毎年上演される美輪明宏演出・主演による舞台が、今年は、三島由紀夫作、近代能楽集より『葵上・卒塔婆小町』に決まった。美輪×三島の幽玄的な世界が7年ぶりに立ち上がるとあって早くも期待が膨らむ。しかも、この演目の上演はこれが最後になるかもしれないと美輪は言う。その覚悟と作品への思いを聞いた。【チケット情報はこちら】美輪による『葵上・卒塔婆小町』を、三島は切望していたのだという。実現したのは、三島が亡くなった後の1996年。今度で5度目、7年ぶりの上演となる。不思議なことに、上演を決めた途端、未発表だった三島の肉声テープが見つかるというどこか因縁めいた出来事もあった。「それが亡くなられる9か月前のインタビューを録音したもので、演技論や小説のことなど、私によくおっしゃっていた話がそのまま入っていたんです。この舞台の宣伝のために出てきたとしか思えません(笑)」。そもそも三島が自身の作品を美輪に託したのは、その行間までをも表現し得る稀有な存在として認めたからだ。当初、なかなか当たらなかった三島の芝居は、美輪が『黒蜥蜴』に主演して、大評判を取るようになった。そこで次に三島が美輪に望んだのが、「近代能楽集」である。その短編戯曲集の中から、嫉妬心にかられて生霊となって不倫相手のもとに現れる女を描いた、小野小町と深草少将の伝説をもとに100歳の老婆の哀しい運命を描いた、この2作ならと美輪は答えた。「近代能楽集の中でも、このふたつはいちばん普遍性があると思ったからです。の描く不倫なんて、ギリシャ悲劇の時代から変わりません。美しく生まれついたがゆえに自分を美しいと言った男は死に、100年ごとに生まれ変わるという運命を背負うことになるはまさに“正負の法則”です。両方とも、愛、美、死、無常といったこの世の法則に則ったことが描かれているんです」。では、100歳の老婆から美しい小町へと早替りする美輪の演技術にも驚かされるはずだ。が、「腰を曲げて、歯の抜けたしゃべり方をする老婆からスッと美女になるのは、体力的にも大変なんです。これが最後になるかもしれないと思っています」と美輪。だからこそ、「三島という天才から託されたものを伝えていきたいと思います」と気持ちも募る。恐ろしくも切なく美しくドラマティックに。天才に信頼された美輪だから描けるエンターテインメントである。近代能楽集より『葵上・卒塔婆小町』は、3月26日(日)東京・新国立劇場中劇場より上演。その後各地を周る。取材・文:大内弓子
2017年02月02日三島由紀夫の最後の戯曲『ライ王のテラス』が、演出・宮本亜門、主演・鈴木亮平で、47年ぶりに上演されている。世界遺産「バイヨン寺院」を建設したカンボジア王の物語に三島が託したものは何だったのか。3月4日に開幕したばかりの舞台の模様を報告する。舞台『ライ王のテラス』チケット情報この戯曲が誕生したのは、三島がアンコールトムを訪れたことがきっかけだ。カンボジア最強の王と語り継がれるジャヤ・ヴァルマン七世の美しい彫像を目にした三島はすぐに、その完璧な肉体が病に冒されていく物語を着想したという。ゆえに、王を演じる鈴木に求められたのは、まずは肉体の美しさだった。幕が開くと、その期待は否応なく高まる。宮本が自らカンボジアでオーディションをして選んだダンサーたちが民族的な舞踊を見せながら、王が見事に戦勝した様子が影絵を使って語られるのだ。カンボジアの音楽が流れ、劇場が中世のカンボジアの空気に包まれるなか現れる凛々しい王の影。そしていよいよ、第二王妃(倉科カナ)と第一王妃(中村中)が待つところに、彫像のような肉体に仕上げた鈴木が登場する。説得力は十分である。しかし、真骨頂はそこからである。民のためにと「バイヨン寺院」の建設を始めるとともに病魔に冒される王。第二王妃は献身的に支え続けるも、王の美しさが蝕まれていくことに耐えられないと彼を避ける第一王妃が王の苦悩を深くする。舞台ではもちろん肉体自体を変えることはできない。にもかかわらず、その存在に何とも言えない心もとなさがにじむ。健やかで自信にあふれた大きな王から、瞬時に見せた鈴木のその変化。“演じる”ということが見せてくれるものの力を、改めて感じることができる。王の肉体が崩壊していくに従って、観世音菩薩を模したバイヨンが完成していく様を、三島は、自分の全存在を芸術作品に移譲して滅びてゆく芸術家の人生に重ねたのだそうだ。舞台の上で、なぜ自分は病になったのかと自問自答する王の姿は、人は何のために生きるのかと、観客に問いかけてくるようでもある。王の病を利用して国の転覆を目論む宰相(神保悟志)や、愛する息子が苦しむ姿を見ていられないと毒殺を企てる王太后(鳳蘭)の人間の業にも、揺さぶられる。宮本曰く、「人間の本質を見たくないところまでえぐり出す」という三島文学の魅力を、まさにナマの肉体が体現した舞台であった。公演は3月17日(木)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。取材・文:大内弓子
2016年03月08日『シェル・コレクター』で15年ぶりの映画主演を果たしたリリー・フランキーが、『紙の月』の吉田大八監督のもと、三島由紀夫の異色SF小説「美しい星」の映画化に主演。亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子と“宇宙人”家族を演じることが分かった。本作は、“ミシマ文学”の中でも異色作とされている1962年発表のSF小説。核戦争勃発の恐怖に脅える冷戦下を背景に、「自分たちは地球人ではない。宇宙人だ」と突然目覚めたとある家族が、「我々の手で人類を救わねば!」と使命に燃えて奮闘するさまを風刺たっぷりに描いた。戦争や大規模災害など、世界に終末の匂いが色濃く漂う度に版を重ね、2011年の東日本大震災以降も部数を伸ばし、現在54刷45万部のロングセラーとなっている。今回、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『クヒオ大佐』から『紙の月』まで、少々思い込みの激しい人々の誠実さと可笑しみを描きつづけてきた吉田監督が、自ら脚本も担当。学生時代に読んで以来、映画化を切望してきた原作の舞台を現代に移して大胆に脚色し、突如、宇宙人に覚醒したある家族が地球を守ろうと奮闘する話を作り上げた。そんな本作で、リリーさんが演じるのは、一家の父である“火星人”大杉重一郎。原作では「ごく短期間教鞭をとった以外は、大学卒業以来働いたことのない資産家で高等遊民」という設定だった中年男は、“当たらない”ことで有名なテレビのお天気キャスターに。家族にそれほど大きな問題もなく、若くて可愛い愛人もいて、ヘラヘラといい加減に生きてきたが、突如、情熱と使命感に燃える火星人に覚醒する。また、現在ドラマ「怪盗 山猫」で主演を務めている亀梨さんが演じるのは、長男・一雄。「モラトリアムを生きるシニカルな学生」という設定から、本作では大学卒業後も定職につかず、暗い野心をたぎらせるフリーターとなり、知性を司る水星人に覚醒。さらに、『シェル・コレクター』でリリーさんと共演している橋本さんは、「純潔に固執する潔癖症の女学生」という設定だった長女・暁子に。自分の美しさが最大のコンプレックスという圧倒的な正統派美人の女子大生に扮し、美を象徴する金星人に覚醒する。そして、山田洋次監督『家族はつらいよ』が控える中嶋さんが演じるのは、「大人しい献身的な専業主婦で木星人」という設定だった母・伊余子。なぜか彼女だけ覚醒せず地球人のままで、退屈と倦怠をもてあまし、怪しい“魔法の水”ビジネスにはまり込んでいくイマドキの主婦となる。地球という“美しい星”を舞台に繰り広げられる、大真面目に世界救済を模索する勘違い家族の珍道中。愛すべき彼らの大奮闘を期待して待っていて。<以下、キャスト&監督コメント>■吉田大八監督原作の精神を尊重しつつ、人類生き残りに有り金まるごと賭けて悔いなし、そんな宇宙レベルのエンターティンメントを目指します。物語の中心、大杉家のメンバーとして最高の4人が集まってくれたので、これからいったいどんな反応が起きて何が生まれるのか、想像するだけで恐怖のあまりワクワクします。公開までそのワクワクを時々思い出していただければ幸いです。あと、空で待ってる“スターマン”にちょっとだけ捧げます。■リリー・フランキー吉田監督作品は全部見ていて、大好きでした。そんな監督に主役のオファーをいただいて、嬉しさと驚きと、爽やかな印象のある気象予報士役が自分で良いのかな?と不安もあります。とはいえ「予報が外れてもアリなキャラクター」なら何とかなるかもしれません。そして何より、吉田監督がどのように映画を撮られるのか、その現場を見ることができるのが最大の楽しみです。学生のころから三島由紀夫のファンでしたが、脚本を読んでみたら原作とは異なる面白さが加わっていて、ワクワクしました。重一郎という役と自分は、思い込みの激しさが似ていると思います。UFOについて真剣に考えたことはありませんが、何かのきっかけで思い込んでしまうような存在な気はします。当然、宇宙人を演じるのは初めてですが、演技をするうちに、宇宙人を信じてしまいそうで怖いです(笑)。■亀梨和也脚本を読んで、いまの時代の問題意識が描かれており、僕自身もまさに実感しているものでした。役柄に関しては、年齢を重ねていく中で生まれていく責任感や何かを背負わないといけないという一雄の葛藤や焦りなどに共感しました。きっと僕だけではなく同世代の共通点なのかもしれません。無限の可能性を感じていた10代から年を重ねていく中で、自分の限界を広げてくれるものは自分の中だけではなく、仕事など巡りあわせによってどこにでもあるものだと感じています。今回は一雄という役に巡り合い、役を通して自分の可能性を広げていくことができたらと思います。そんな等身大(同世代)の役を演じることになりましたが同時に水星人でもありますので、しっかりとした水星人になれるように、もっともっと水星について勉強してみたいと思います(笑)!!■橋本愛吉田監督とは以前ご一緒させていただきましたが、今回は初めましての気持ちで臨みたいと思います。宇宙とか宇宙人とか非現実的なモチーフはあれど、そこからはあまりに現実的な人間臭さを感じました。頭の良い脚本と大胆で鋭利なテーマにくらっときていますが、美の昇華を一心に目指したいと思います。■中嶋朋子監督の『パーマネント野ばら』が好き過ぎます。いつか会えたら、話せたら!と思いつつ、その機会を得たらロクに話も出来なかったーー完全なるファンです。さらには、三島作品の「美しい星」!!!ですよ。まさか、この作品と関わりを持てる人生になろうとは!なんでしょう、大興奮です。あ、でも、私の役目は、地球人だからなぁ、地に足つけないとですね、かなり浮き足立ってますけど、私。“宇宙人”として考えると、合点がいくことって、世の中には結構ある。ちょっと「通じなそう」ってくらい、飄々としてる人。なにをされても、どうしてだか許せちゃう人。逆に、なにをされても腹が立つ人。いやがおうなく、目を奪われる人etc…。そっか、私の周りにいるあの人たちは“宇宙人”だったのだーーって。なんかほっとする。わかり合えないことが前提になると、なぜだか、俄然わかり合える気がしてくる、不思議だけど。ていうか、このキャストの方々は、“宇宙人”ですね。合点がいきます。私は地球人なので、その辺よーくわかります。『美しい星』は2017年5月、全国にて公開予定。(text:cinemacafe.net)
2016年03月01日野村萬斎が企画・監修を務める現代能楽集の第8弾で三島由紀夫の近代能楽集「卒塔婆小町」「熊野(ゆや)」を現代劇にまとめた「道玄坂綺譚」の制作発表会見が9月9日(水)に開催された。会見には萬斎さんに加え、キャスト陣から平岡祐太、倉科カナ、眞島秀和、水田航生、根岸拓哉、一路真輝、そして演出のマキノノゾミが出席した。三島が能楽の特性を生かしつつ、昭和の物語として描いた作品をさらに平成の現代に置き換えて描く。渋谷のネットカフェを舞台に、そこに長期滞在する年齢不詳の女、家出少女、金持ちの実業家が交錯し、現実と幻想の世界を行き来する。萬斎さんは「能楽は、故事に依りながら、現代劇では扱いにくい権力者を扱ったり、絶世の美女が出てきたり、キャラクターライズされた『ありえない!』という大胆な飛躍が魅力」と語り、本作に関しても「権力やお金の話など現代を映し出すと思います」と期待を寄せる。家出少女の熊野を演じる倉科さんは萬斎さんの言葉に「大変身だったり『ありえねー(笑)!』というのは確かにあると思います。融合して入り乱れる2つの物語をどう表現するのか?今から楽しみです」と意気込みを語った。平岡さんは「三島さんの『卒塔婆小町』を読んで、不思議なお話で理解しがたい展開もあるのですが、説得しようとせずに説得してしまうような言葉の美しさがあるのを感じました。三島さんの言葉が強く、ワンフレーズごとに情景が浮かんできます」と語る。演出のマキノさんは「2本を1本にするというのはめんどくさいんですが(笑)、お客さんに次に何が起こるのかを予測させない効果があると思います。つねに驚いて楽しんでいただければと思います」と語り、“ありえない”展開の表現に関しても自信をのぞかせていた。「道玄坂綺譚」は世田谷パブリックシアターにて11月8日(日)より開幕。(text:cinemacafe.net)
2015年09月09日デビュー長編小説「火花」が第28回三島由紀夫賞候補に挙がっていた又吉直樹(ピース)が5月14日(木)、都内で行われた『シンデレラ』のPRイベントに出席。イベント中に「落選」を知ったと言い、「せっかくなので次も書いていきたい」と次回作に意欲を燃やした。イベントが開催された時間帯に、まさに選考会が行われており、報道陣も「まだ結果は出ないのか?」と気もそぞろ。実際、選考には当初の予定を大幅に超える時間がかけられたそうで、又吉さんの「火花」は決選投票の2作品に残っていたのだとか。「編集さんやマネージャーさんが気を使ってくれて、イベントが終わった後で僕に伝えようとしたみたいです。でも、明らかに重い表情をしていたから『あっ、ダメだったんだな』と思った(笑)」と又吉さん。改めて「候補入りは嬉しい」と強調し、「気合いを入れて書いた作品なので、しっかりと読み込んでもらえたのが光栄」と誇らしげ。今後、芸人業と執筆業をどんな割合でやりたいか聞かれると、「いままで通り、芸人10。そしてプライベートで小説を書いていきたい」と抱負を語った。この日行われたのは、シンデレラにまつわるキーワード(12時、魔法、靴など)を使用した“シンデレラ川柳”コンクールの表彰式。又吉さんに加えて、元宝塚歌劇団宙組トップスターの大和悠河が駆けつけ、映画の世界観をイメージした衣装で、会場を沸かせていた。応募総数1,456通を数えた川柳について、「シンデレラの物語に憧れる気持ちと、現実の厳しさがコントラストになっていて、最初は笑いながら読んでいたが、たまに泣きそうになった」(又吉さん)、「働く女性の日々の苦労と、王子様にめぐり合いたい気持ちに共感できた」(大和さん)。大和さんが、又吉さんに「王子様らしいエスコート」を伝授する場面もあり、二人のギャップに笑いが起こっていた。『シンデレラ』は4月25日(土)に封切られ、国内ランキングで3週連続1位に輝き、興収は35億円を突破する旋風を巻き起こしている。全国で公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:シンデレラ 2015年4月25より全国にて公開(C) 2015 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
2015年05月14日日本文学の金字塔・三島由紀夫の不朽の名作を、宮本亜門の演出で贈る舞台「金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion-」。2月25日(火)、新キャストとなる主演の柳楽優弥、水橋研二、水田航生らキャストらが稽古場にて顔合わせ、稽古始めの台本の読み合わせの模様が公開された。生来の吃音から疎外感に悩みながら育った男・溝口、下肢に障害を抱えながらも不敵に溝口を挑発する柏木、そして溝口とは寺の同朋で、明るさの裏で自死を選ぶ鶴川。「生とは何か?」「美とは何か?」と自問する溝口と2人の友人を軸に、現代にも通じる若者の苦悩や閉塞感を描き出す本作。舞台は俳優の身体だけでなく、映像や声の演出で三島文学を表現し、正式招待された「リンカーンセンター・フェスティバル2011」でのニューヨーク公演では“Fusion Theater(融合劇)”と評され大きな注目を集めた傑作だ。今回の公演で新キャストに抜擢されたのは、主人公・溝口役には独特のオーラを放つ柳楽優弥、柏木役には実力派の水橋研二、鶴川役には昨年の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』での大抜擢でも注目を浴びた水田航生、さらに溝口の初恋の相手・有為子役とその有為子に存在を重ねるお花の師匠に市川由衣。今回の主演抜擢を受けて、柳楽さんは「今日は稽古初日ということで、めちゃめちゃ緊張していますので、頑張って乗り切ろうという思いです(笑)。初舞台は『海辺のカフカ』で蜷川幸雄さんの演出だったので、演出家の方はみんな、“恐い”という印象だったのですが、取材時にライターさんたちから『亜門さんは優しい』と聞いて、優しい演出家の方もいるんだと思いました(笑)。亜門さんを信じて稽古に励んでゆきます」と挨拶。三島文学のキャラクターとあって、かなりの難役になることが予想されるが「僕は、『僕の内界と外界との間の扉に鍵があり、うまく開いたためしがない。それどころか、その鍵は、錆び付いてしまっているのだ』という(小説の)一節に現れる、溝口の心の変化を精一杯演じていきたいと思います」と力強く語る。さらに役作りについて聞いてみると、「寺の坊主の役なので、役づくりのために、京都の宝泉寺に修行に行きました。座禅をしたり、太極拳をしたり、すごく緊張しました。今は一番“声”のことを意識しています。映画で声が小さいと言われるので(苦笑)。髪型は、今以上にスッキリします!坊主にします!」と明かした。本作は2011年に宮本さんが芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場の柿落し公演として創作されたもので、今回再演となるが宮本さんは「今回は、単なる再演ではなく、新しい役者さんもたくさん加わっていますし、自分にしかできない『金閣寺』を一緒に創り上げていきたいと思います」と話す。柳楽さんの起用理由については「非常に面白い役者さんです。溝口を演じるには、溝口に共鳴できるかどうかが重要なんですが、柳楽さんは溝口が好きなんだと聞きました。『海辺のカフカ』も観て思いましたが、柳楽さんにはそこに“存在”できる力がある。舞台では、その“存在”できる力が大切なんだと思います」とも。最後に、「初演時に比べると、それぞれ役の実年齢に近い方が揃っています。『金閣寺」は、テーマがとても深く、時期や自分の置かれている立場によって、見方が変わりますので、自分自身を見つめ直す機会となりうる作品だと思います。3年前とは情勢が変わっています。自分という人間は何ぞや、日本とは何ぞやということを、いま一度、感じ取って頂ければ」と語りキャスト・スタッフともに気合い十分といった様子だった。舞台「金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion-」は、赤坂ACTシアターにて4月5日(土)~4月19日(土)公演。(text:cinemacafe.net)
2014年02月26日