睡眠中に呼吸が止まってしまう病気、睡眠時無呼吸症候群。ひどくなると身の危険にもかかわるといわれているこの睡眠障害が、成人の気管支喘息と関係があるということが明らかにされました。その研究結果をご紹介します。睡眠障害と喘息の関係睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気のことです。ひどい場合は、心筋梗塞や動脈硬化を引き起こすこともあると言われています。また、睡眠中に呼吸が止まってしまうため、息苦しくなって夜、目が覚めることが多くなり、その結果、深く眠ることができず、日中の行動に支障が出てくる場合もあります。今年1月に睡眠時無呼吸症候群と気管支ぜんそくの間に、なんらかの関係があるという研究結果が発表されました。調査を行ったアメリカの研究者によると、「喘息にかかることが睡眠時無呼吸症候群を引き起こす危険因子になる」のだそうです。喘息は危険因子になるその研究によると、喘息にかかっている被験者のほうが健常者よりも数年後に睡眠時無呼吸症候群になる確率が高かったいうのです。ただ、「その原因が何か?」というところまではまだわかっていないようで、今後の研究でそのメカニズムが明らかになることに期待が集まっています。睡眠時無呼吸症候群は、寝ているときに症状がみられる病気なので、自分では気がつきにくいと言われています。そのため、家族など、自分以外の人に「寝ているときの呼吸がおかしい」「いびきが突然止まる」などと言われて、初めて病院にかかり睡眠時無呼吸症候群と診断されたという人も多いようです。睡眠時無呼吸症候群がもたらす危険睡眠時無呼吸症候群の人には下記のような症状が見られるそうなので、自分は大丈夫と思っている人も一度チェックしてみましょう。・睡眠中に呼吸が止まる・いつもいびきをかいている・よく夜中に目が覚める・よく寝汗をかく・起床時に熟睡感がない・日中に眠気やだるさを感じる睡眠時無呼吸症候群で怖いのは、本人に「熟睡できていない」という自覚がないことです。特に自覚のないまま日中を過ごしていることがあるので、昼間に眠気に襲われたり、集中力をかいて思わぬ事故を起こす可能性があります。実際に、睡眠時無呼吸症候群の患者は交通事故を起こす率が高いという報告もあるようです。周囲から指摘されたり、上の項目で当てはまる点が多い場合は、一度、お医者さんに相談してみたほうがよいかもしれません。photo by Lisa Marie Cannon
2015年08月09日誕生月だけで性格や運勢がわかる占い、多いですよね。Twitterでもよく話題になっています。ところが、誕生月からわかるのは、精神的なものだけではないのです!なんと、このたび健康上のリスクがわかってしまうことが判明。しかも、ちゃんとした研究で明らかになりました。自分がかかりやすい病気は気になりますが、ちょっと信憑性が気になりますよね。さっそく、研究内容を見ていきましょう。■170万人の病気データ分析で関連性発見この研究は、コロンビア大学メディカル・センターで准教授を務めるニコラス・タトネッティ博士が中心となって行われ、医学専門誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』に発表されました。研究チームは、ニューヨークの大学付属病院で1985~2013年の28年間に治療を受けた170万人分のデータを調査。そこから出てきた1,688種類の病気を、コンピューターのアルゴリズムを使って分析しました。途中で、1,600種類以上の病気は誕生月とは関係がないと判断され、除外。しかし、9種類の心臓病を含む55種類の病気に関しては、偶然では片付けられない確率で、誕生月と関連性があることがわかりました。調査結果によると、病気のリスクがもっとも低いのは5月生まれの人。一方、もっとも高いのは10月生まれの人となりました。■デンマークでも似たような研究結果が病気と誕生月の関連性に気付いたのは、タトネッティ博士がこれ以前に行っていた、ADHD(注意欠陥・多動性障害)や喘息のリスクと生まれた季節との関連性の研究がきっかけ。ただ、今回の研究でも、ADHDや喘息と生まれた月には高い関連性が見られました。データによると、喘息にかかるリスクが一番高いのは、7~10月生まれ。また、ニューヨークで11月に生まれた人は、ADHDに対してもっとも高いリスクを示しました。興味深いことに、デンマークの同様の研究でも同じような結果が出ています。デンマークで肺の病気にかかるリスクがもっとも高いのは、5~8月生まれ。この季節は、ニューヨークの7~10月の日照量と似ている時期に当たるそうです。ADHDの場合、11月生まれの人がもっとも関連性が高く、ニューヨークと同様の結果になりました。さらに、誕生月と9種類の心臓病との関係も調べたところ、3月生まれは心房細動(不整脈)、うっ血性心不全、僧帽弁逆流症に対するリスクが一番高いことがわかりました。■どの月生まれでも余計な心配は無用!でも、3月生まれや10月生まれだからといって、心配する必要はないようです。これらは、あくまで傾向。研究チームによると、誕生月による病気のリスクは、食べ物やエクササイズなどの生活習慣と比べると全体としてそれほど大きくはない、ということです。研究チームは今後、こうしたデータ分析をアメリカ国内外の他の都市に拡大して行い、季節の移り変わりや環境によって結果がどう変わるかを比較したいとしています。誕生月によってかかる病気がなぜ違うかを突き止めることにより、誕生月によるリスクのギャップを埋めることを目指しているのです。同じ誕生月でも、生活習慣は一人一人違います。データが全ての人にあてはまるわけではありません。どの月生まれでも、健康的な生活習慣を心がけましょう。(文/松丸さとみ)【参考】※Data Scientists Find Connections Between Birth Month and Health-Columbia University Medical Center
2015年06月15日とめたくてもとめられない――それが咳の厄介なところですよね。明日は朝が早いからしっかり寝ないと、と思っても咳がずーっとでていて眠れないなんてこともよく聞く話です。この厄介な咳にはどんな種類があるのでしょうか?睡眠を妨げる厄介な咳就寝時や睡眠中に突然出る咳というのは厄介で、辛いものですよね。せっかく気持ちよく寝ていたのに、目が覚めてしまって、翌日の寝不足につながったり……。ただ、「咳」と一言でいっても、咳にはいろいろな種類があるということをご存知ですか? 何が原因で起こっている咳なのかをしっかりつきとめることで、改善につながります。逆に、「何となく風邪かな」など、勝手な自己判断をしてしまうといつまでたっても症状はよくなりません。代表的な咳の疾患を以下にあげます。ご自身の症状にあてはまるものがないか一度、チェックしてみてください。代表的な3種類を紹介咳には主に、(1)咳喘息、(2)気管支喘息、(3)アトピー咳嗽の3種類があります。それぞれどのような症状がでるものか、解説したいと思います。(1)咳喘息・風邪の後にではじめることが多い。・痰はほとんどでない。・数カ月から数年など、長期間続く。・冷気を吸い込むなど、体温変化に伴い、咳が増悪する。(2)気管支喘息・ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸困難を伴う。・咳喘息から1~4割の人が気管支喘息に移行する。(3)アトピー咳嗽・咳喘息と似ているが、夜間や朝方ではなく、日中の温度変化で咳が誘発されることが多い。咳喘息のチェック項目とは?まず、大切なことは咳が長引くようであれば、自己判断をせず、まずお医者さんに相談しましょう。病院での治療や診査がどのように行われるのか簡単にご紹介します。咳喘息の診断基準は、7つのチェック項目があると言われています。咳が8週間以上持続しているか、胸部レントゲン写真で異常がみられないかなどをチェックします。7項目すべてを満たす場合は、咳喘息と診断されます。治療は、一般の咳止めや風邪薬は有効ではないと考えられているので、気管支拡張剤や吸入ステロイド剤が使われるようです。睡眠の妨げにもなる厄介な咳。悩まされている方はすぐに病院でチェックしてもらい、快眠ライフを手に入れましょう!Photo by Ryan Boren
2014年12月23日(画像はイメージです Fernando de Sousa)テルアビブ大学が発見2014年10月28日、テルアビブ大学は、喘息患者あるいは喘息発作を繰り返す人はそうでない人に比べて25%以上の割合でビタミンD欠乏症が見られたことを明らかにしました。研究成果はAllergy誌に2014年10月3日からオンライン版で公開されています。喘息とビタミンD炎症と気道の狭窄を主症状とする喘息は最近増加傾向にあります。喘息は治ることはありませんが、アレルゲンやその他の喘息発作の引き金になるものを避けることと薬物治療で管理することは可能になっています。ビタミンDは免疫調整作用を持つことから、喘息などの免疫に関連する疾患に有効であると信じられています。今まではビタミンDと喘息の関連を調べた研究はほとんどありませんでした。研究内容研究者はイスラエルのクラリス健康サービスにある約400万人分のカルテを分析しました。2008年から2012年までにビタミンDの測定が行われている308,000人のデータを抽出。その中で、喘息である人は21,237人(6.9%)でした。ビタミンDの測定率は全体の測定率5.7%と差はありません。分析の結果、ビタミンD不足は喘息の増悪のリスク比が25%上昇することが明らかになりました。喘息の増悪のない人では健常人とビタミンDの状態と違いはありませんでした。考察ビタミンDは太陽を浴びることで身体の中で合成されます。皮膚科の医師たちは紫外線の問題から他の方法でビタミンDを増やすことを勧めています。ビタミンDを増やす方法としては魚、卵、肝油、強化牛乳があります。またサプリメントも選択肢の一つです。今回の研究からはビタミンDが不足すると喘息が増悪することが示唆されました。薬剤でコントロールできないような喘息患者に遭遇した場合は血中ビタミンDを測定することを勧めています。【参考】・テルアビブ大学プレスリリース・Allergy掲載文献
2014年11月03日アステラス製薬とアストラゼネカは9月29日、タレントの乙葉さんと書道家の武田双雲さんを招き、喘息(ぜんそく)疾患啓発活動「チェンジ喘息! Voiceプロジェクト」発表会を都内にて行った。トークショーではおのおのが体験を交え、喘息への理解を呼びかけた。○喘息症状が出やすくなる秋10月、11月と季節の変わり目を迎え、日中の気温の差が大きくなってくる秋。この季節は喘息症状が悪化しやすく、患者にとってはつらい季節の到来となる。喘息は慢性的な気道の炎症が原因で起こり、気温差のほかにも花粉や風邪など、さまざまな原因で症状が悪くなってしまう。主な治療としては、気道炎症を抑制することが重要とされている。同プロジェクトは、喘息の症状が悪化しやすい秋に合わせてこれまでにも定期的に実施。喘息患者がその症状や不安をなくし、適切な治療を受けるために、医師に症状や不安を「声」にしてしっかりと伝える大切さを啓発していくことを目的としている。主催社を代表してあいさつしたアストラゼネカ マーケティング本部の太田篤氏は「喘息患者は近年、増加傾向にある」と、患者数の現状を話した。その上で「タバコの煙やお香など、普通の人にとって何気ないものが発作のきっかけになる。症状が出るかもしれないという不安などから、喘息によって生活の質が低下してしまっている。発作が起こらない、症状ゼロを達成するために、正しい情報を多くの人に理解してもらいたい」とプロジェクトの趣旨を語った。続いて、アステラス製薬 プロダクトマーケティング部の藤田英一氏がプロジェクトの概要を説明。「喘息患者さんの思いや声を集めて共有することで、患者さん一人ひとりが医師に症状を相談しやすくなる」ようにと、患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)向上を目的に特設のウェブサイトを開設した。サイトでは、患者さんの体験をもとにしたショートムービーが見られるほか、喘息患者さんが抱えるさまざまな声や思いなどを「五-七-五」のリズムで自由に表現し、投稿する「みんなの喘息川柳コンテスト」を開催。12月1日17時まで同サイト内で募集し、来年1月に発表を予定している。○大体の患者さんはシャイトークショーには、8歳で喘息を発症したという乙葉さんと、妻と娘が喘息だという武田双雲さん、喘息治療の第一人者で国際医療福祉大学 教授 山王病院 アレルギー内科の足立満医師が登壇した。乙葉さんは、「以前は季節の変わり目や風邪をひいたりすると、すごく不安になっていた」と、喘息との長い付き合いを振り返った。「前は症状が出てから病院に行っていたけれど、今は症状が出る前に相談をするようになった。朝と夜の吸入治療が毎日の日課になっていて、それでこの季節も安心して過ごせる」と、治療が変わったことで気持ちも変わったと話した。家族が喘息だという武田さんは、「初めて妻の症状を目の当たりにしたとき、妻よりも不安になってしまった」と、自分に症状がないだけに不安が大きかったという。台風が喘息症状の悪化につながるケースもあるが「今日も妻が『台風来てるよ』と(体の状態から)教えてくれた。天気予報よりも敏感かも」と驚きつつも、「夫や父として、いろんなストレスを取り除いてあげるような存在でありたい」と、家族を思いやる胸の内を明かした。「大体の患者さんはシャイ」という足立先生は、「喘息の治療は、対処から予防に変わってきている」と治療方法の変化を説明。「限られた診療時間ではあるが、忙しそうだから……などと医師に遠慮することなく、予兆などの症状や不安をしっかり伝えてほしい。それが、患者さんにあった治療法につながる」と、不安を「声」に出して伝えることの大切さを訴えた。トークの最後には、「みんなの喘息川柳コンテスト」にちなみ、3人それぞれが考えた喘息川柳も披露された。トークの後は、武田さんが特別に書のパフォーマンスを披露。したためられた書「チェンジ喘息!」は、「喘」の「口」がハート型になっているユニークなものとなった。武田さんは「喘息という言葉をポジティブなものにしようと思った。ハートは大好きですよ」と語り、書の自己採点を聞かれると「満点です! 」と、笑顔を見せた。乙葉さんも「ハッピーな気持ちになれる書だったので、すごくステキ」と絶賛していた。
2014年09月30日理化学研究所(理研)と東京理科大学は5月16日、ダニ抗原などのアレルゲンで誘導される喘(ぜん)息が、アレルギーを起こす白血球「好塩基球」から産生される「インターロイキン(IL)-4)」を介した「2型自然リンパ球(NH(ナチュラルヘルパー)細胞)」との共同作業によって起こるという新しいメカニズムを明らかにしたと共同で発表した。成果は、理研 統合生命医科学研究センター サイトカイン制御研究チームの久保允人チームリーダー(東理大 生命科学研究所 分子病態学研究部門教授兼任)、東理大 総合研究機構 戦略的環境次世代健康科学研究基盤センターの本村泰隆研究員らの共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間5月16日付けで米科学誌「Immunity」オンライン版に掲載された。アレルギー反応は、発生メカニズムによって5つのタイプに分類されており、「免疫グロブリンE(IgE)抗体」によって引き起こされるものを「I型アレルギー」と呼び、気管支喘息や花粉症、アレルギー性鼻炎などがその代表例だ。IgE抗体は「肥満細胞(マスト細胞)」や好塩基球が持つ受容体に結合することで、アレルゲン特異的にアレルギー反応を起こす。好塩基球は白血球の中でも、塩基性色素により暗紫色に染まる大型の好塩基性顆粒を持つものを指すが、白血球全体の0.5%以下しか存在しないため、長い間その機能や生物学的特性は謎のままだった。近年、アレルギーはIgE抗体を介したマスト細胞や免疫細胞の1つであるT細胞による反応系が存在しなくても起きることがわかってきている。このような抗原特異的な反応とは無縁なアレルギーには、好塩基球や免疫システムの最前線で働く新しいタイプのリンパ球「自然リンパ球」が関与している可能性が示され、注目されているところだ。アレルギーを強く誘導するアレルゲンとして働くことが知られているタンパク質分解酵素「システインプロテアーゼ」は、ダニ抗原やパイナップル由来のなどに含まれるタンパク質分解酵素であり、気道などに過剰に侵入した際、気道上皮を壊すことによって、アレルギーを誘導する「IL-33」を気道内に放出する。そして、放出されたIL-33が直接自然リンパ球の1つNH細胞に働き、喘息を引き起こすという仕組みだ。しかし、喘息の発症に関わる好塩基球の働きなど、詳細なメカニズムはわかっていなかった。研究チームは、マウス生体内で起こるアレルギー反応における好塩基球の役割を解析するため、好塩基球を持たない細胞特異的欠損マウス「Bas-TRECK」と、好塩基球由来のIL-4だけを欠く遺伝子改変マウスが実験に用いられた。通常、システインプロテアーゼ(ここでは、パイナップル由来の「パパイン」が利用された)を点鼻投与すると、3日以内に肺に炎症の原因となる白血球の1種である「好酸球」が大量に集まり、粘液「ムチン」の産生が誘導されて喘息症状が現れるという具合だ。しかし、Bas-TRECKマウスにパパインを投与しても喘息症状が現れず、肺への好酸球の集積やムチンの産生も顕著に抑制されたのである。同様の喘息症状の抑制は、好塩基球由来のIL-4だけを欠くマウスにおいても認められた。これらから、好塩基球から産生されるIL-4の重要性が示されたのである。喘息における肺への好酸球の集積は肺に存在するNH細胞から産生されるケモカイン「CCL11」、ムチンの産生はNH細胞から産生される「IL-5」や「IL-13」などによるものだ(画像1)。そこでまず、好酸球の集積やムチンの産生過程におけるIL-4の役割が調べられた。その結果、好塩基球からIL-4が産生されないと、NH細胞からCCL11やIL-5、IL-13の産生が抑制されると共に、炎症に関わるさまざまな遺伝子の発現が抑制されることが判明したのである(画像2)。また、Bas-TRECKマウスに野生型マウス由来の好塩基球を移入したところ、喘息症状の抑制が解かれて症状が現れた。一方、同マウスにIL-4を産生できない好塩基球を移入したところ、喘息症状は現れなかった。これらの結果から、NH細胞の活性化には好塩基球から産生されるIL-4が必要であり、システインプロテアーゼで誘導される喘息は、好塩基球から産生されるIL-4を介した好塩基球とNH細胞の共同作業が必要であることが明らかになったのである。現代社会で、アレルギーは日常生活に支障をきたすほどの影響があり、生活環境を見直す必要が生じるなど、非常に大きな社会問題を引き起こしているが、T細胞やIgE抗体を必要としないアレルギーや、システインプロテアーゼなどのタンパク質分解酵素がアレルゲンとして喘息を引き起こす能力を持つことなどアレルギーの実態が解明されつつもある。今回の成果により、システインプロテアーゼによって引き起こされる喘息の発症メカニズムに好塩基球やNH細胞など新しい免疫細胞の関与が明らかになった形だ。また、同時にアレルギー反応にもさまざまな側面があることが示された。今後、これら細胞を標的とした新しい視点からのアレルギー治療法の開発や、さまざまなアレルギーの原因や症状に適合した治療法の構築が期待できるとしている。
2014年05月16日5月30日、気管支喘息とCOPDの専門医団体である日本喘息・COPDフォーラム(以下JASCOM/ジャスコム)と、外資系製薬メーカーのグラクソ・スミスクライン株式会社の共催で、「肺がん検診を生かしたCOPDの早期診断」と題されたセミナーが開催された。「がん」「心疾患」「脳血管疾患」が数十年以上も日本人の死因の上位を占める一方、年々増加中なのが「COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease/慢性閉塞性肺疾患)」という疾患だ。同疾患の死亡者数は、2010年で約16,000人。日本人の死因の第9位へと上昇している。同セミナー内で公演を行った、JASCOM COPD領域代表である東京女子医科大学統括病院長の永井厚志氏によると、COPDとは、慢性気管支炎や肺気腫など、気道や肺胞などに炎症が発生し、長期にわたって気道が閉塞状態になる病気の総称のこと。徐々に呼吸機能が低下していき、進行度合いによっては呼吸不全に陥り、死にいたるという。厚生労働省の調査などによれば、2010年の時点で死亡者数は約1.6万人と年々増加傾向にある。推定患者数530万人に対し、治療中の患者はわずか17.3万人。治療していない患者の多さがあげられる。これは、COPDの主な症状が「せき、たん、息切れ」などのため、単なるかぜと片付けられたり、ごくありふれた症状で見過ごされがちなため、疾患発見の遅れにつながっているからだ。厚生労働省の専門委員会がまとめた「健康日本21」では、2022年度までに、COPDの認知率を現状の17%から80%まで引き上げることを目標としている。また、COPDは肺がんをはじめ、さまざまな併存・合併疾患の誘発リスクがあるという。COPD患者は、患者でない人に比べて5倍も肺がんに罹患しやすいことがわかっているとのこと。軽症であっても肺がん罹患率は高く、若年齢でも無視すべきで疾患ではない。さらに、COPDと肺がんが併存しているケースでは、肺がんのみの患者の7倍も死亡率が高くなるそうだ。特に「長期の喫煙暦がある人は、COPDを疑うことが重要です」と永井先生。現実的に見て、日本におけるCOPD患者の9割は喫煙者であることからも、肺がんの罹患・死亡リスク軽減のためには、COPDの主原因である喫煙をやめるための治療・啓蒙活動などの取り組みが重要となる。さらには、「いかにCOPDを早期発見・治療するか」といった医療システムづくりも大きなカギを握っているといえる。現在の肺がん検診は簡易なこともあって、受診率は比較的高いものの、発見率はきわめて低い。この問題に対し、東京女子医科大学八千代医療センター呼吸器外科教授の関根康雄氏は、主因のひとつに胸部レントゲンの精度の低さがあるとした上で、それを補うことが可能な、問診票のCOPDを示唆する質問項目があるにもかかわらず、有効活用されていない点を指摘する。こうした現状に対し、関根氏は、「肺がん検診の問診票を利用したCOPDスクリーニングによる患者発見の新たな仕組みづくり」への取り組み例として、「千葉モデル」を紹介。これは、千葉市医師会、千葉市、ちば県民保健予防財団が共同で立ち上げた「千葉COPD肺癌スクリーニング研究会」による、「全国初の体系的なCOPD患者抽出とフォローアップシステム」である。具体的には、千葉市における住民・企業の肺がん検診において、COPD患者発見に適した形の検診表を作成。年齢や喫煙暦、呼吸器の症状など、4つの問診項目すべてにあてはまる人については、CTなどの精密検査を行うことで、COPD患者の絞込みを行うというものだ。これにより、COPD患者の早期発見および治療が促進されるとともに、患者に対する定期的な検診も可能となることから、肺がん患者の早期発見および治療にも有効な手段といえる。実際、取り組み開始から3年目となる平成22年度には、肺がん検診を受けた89,100人のうち、問診内容から要精密検査となったリスク患者が1,170人(1.3%)、さらに実際に精密検査を受診した551人のうち、138人がCOPD/肺気腫と診断されているとのこと。今後の展望については、「まずは千葉市で実績をつくり、呼吸器学会などの後押しを受けながら全国へ広めていきたい」と関根先生。早期の実現を願うとともに、一般レベルでも、セルフメディケーションの観点からCOPDへの認識を深めていくことが大切だといえる。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年05月31日メドピア株式会社は、同社が運営する医師コミュニティサイトMedPeerにて、「小児喘息治療のステロイド製剤使用状況」について調査を実施。約半数の医師がコルチゾールを選択することがわかった。日本アレルギー学会によって発表されている「小児気管支喘息の薬物療法における適正使用ガイドライン」では、経静脈的ステロイド投与の選択肢としてコルチゾール(ヒドロコルチゾン)、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンが併記されている。それを受けて同社では、医師の所属する施設における、ステロイド製剤の選択、使用状況を調査した。その結果、「まずはコルチゾールを使用しプレドニゾロンに変える」が20%、「コルチゾールを使用する」が18%、「まずはコルチゾールを使用しメチルプレドニゾロンに変える」が8%となり、第一選択としてコルチゾールを挙げた医師は計46%となった。コルチゾールを選んだ理由として、「即効性がある程度期待できるコルチゾールをまず使用する」、「内因性副腎皮質ステロイドへの影響が少ないコルチゾールを利用」といったコメントが見られる。また、「継続的に使用する場合はプレドニゾロンを使用する」といったコメントもあり、小児へのステロイド投与については、副作用の観点から慎重な意見が多いようだ。同調査は、一般内科、総合診療、呼吸器内科、アレルギー科、感染症科、小児科、小児外科、耳鼻咽喉科、救急医療科、家庭医療の医師を対象に実施。調査期間は2012年3月21日~3月27日。有効回答数は 1,079件。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年05月04日