意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「自民党パーティ券裏金問題」です。裏金ルートを生み出さないため、デジタル化を!自民党の派閥の政治資金パーティをめぐり、裏金問題が事件化されました。本来、政治家への企業、団体からの献金は禁止されています。代わりに政党助成制度として、人口に250円を乗じた総額を議席数、得票総数に応じて、各政党に政党交付金として分配する仕組みを作りました。けれども今、政治資金パーティという名目で、企業などからまとまったお金を受け取れる抜け道が出来上がってしまっています。政治資金パーティは、自民党に限らず、野党も開催しています。収支報告書には、1回20万円以下の支払いは不記載可。しかし、20万円は決して少額ではありません。また、政治資金の現金でのやり取りをいまだに容認している先進国は日本だけです。他国はクレジットカードか小切手のみで、金の往来を明瞭にしています。もう一つ問題なのは、収支報告書がいまだに手書きで、あとでPDFファイル化すれば構わないということ。やり取りがデジタル化されれば、不明瞭なお金はすぐにわかります。収支報告をオンラインで簡単に行えるフォーマットがあるにもかかわらず、国会議員が関係する政治団体の2022年分の収支報告書がオンラインで提出されたのは6%以下でした(日経新聞調べ)。前明石市長の泉房穂さんは「選挙にお金がかかるというのは嘘。人々に響く政策を演説できれば有権者は選んでくれます」と話していました。政治学者の岩井奉信(ともあき)さんも「本来お金はかからなくて済むものなのに、かけている現状がある」とおっしゃっています。裏金の問題を今後生み出さないためには、政治資金のデジタル決済一本化、収支報告書は共通のデジタルフォーマットを使用。また、地域の企業もお金で政治家を動かそうと考えない。有権者は政治と金の問題に慣れきってはいけないと思います。アメリカでは、政治の透明性を高めるために、ロビー活動は登録制にして、誰が誰に陳情したかわかるようにしています。日本人は、個で動くことが苦手で、コミュニティの中のしきたりを変えようとすると異端視されがちです。けれども、組織隠蔽のようなことからは抜け出さないと前に進めないと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2024年1月24日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2024年01月20日タレントの堀ちえみが16日に自身のアメブロを更新。病院を受診して少し悪かった数値を明かした。この日、堀は「本日はリウマチ科の受診」と病院を受診したことを報告し「採血をしてから結果待ちで、そのあと診察がありました」と説明。「CRP(炎症反応)は今日は0.35」と採血の結果を明かし「0~0.3が標準値なので、ほんの少しオーバー」と述べつつ「私にとってはかなりいい数値」だといい「去年に1を切り、この冷える冬にまさかの0.35」「嬉しいな」とつづった。続けて「中性脂肪・コレステロール・尿酸・血糖値・肝臓の数値も、正常値ど真ん中」と報告しつつ「強いて言えば、腎臓に関係する値が少し悪い」と告白。「これは薬の量が多いのと、その中の痛み止めの影響」と明かし「これは許容範囲です」とコメントした。また「先生と相談して出た結果が、一度減らせる薬を、半分の量にしてみましょうということでした」と述べ「何ヶ月か様子を見て、また体調が元に戻るようであれば、薬を元に戻せば良いだけなので、そうしてみることにしました」と報告。「少々不安ではありますが」と心境を明かしつつ「薬は減らせるなら、減らしていくのが理想的です」とつづった。さらに、医師に「このまま私のリウマチは治ったりしないですか?」と尋ねたというも「この病気は波がありますからね」と返答があったことを説明。「このままおとなしくしておいておくれ、リウマチよ」と述べ「油断しないで、出てきたらまた対応して。病気は全て退治と対峙。これからもずっと、自分の身体と向き合っていこう」と前向きにつづった。最後に「遅い昼食。焼き鮭定食に野菜サラダを付けました」と堪能した料理の写真を公開し「主人は鶏の唐揚げ」と夫・尼子勝紀さんが注文したメニューも紹介。尼子さんについて「カロリーや、脂肪というものを気にしていない」といい「せめて白米はもち麦ご飯にして!とお願いしました」と明かし「気遣いだよ 分かってね」と呼びかけ、ブログを締めくくった。この投稿に読者からは「検査お疲れ様です」「検査結果が良好で良かったです」「安心しました」などのコメントが寄せられている。
2024年01月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「台湾総統選挙」です。三つ巴の選挙戦。対中関係の行方に世界が注目。1月13日に台湾総統選挙が行われます。中国・習近平体制は、香港同様、台湾も一つの中国に組み込もうとしています。これに対し、現在の蔡英文政権は中国との対立を鮮明にしてきました。台中の緊張が高まっていることから、世界が選挙の行方に注目しています。ただ、台湾は昔から中国とは密接な関係にありました。台湾からすれば「メインランドは我々」。中国が貧しかった時代には、台湾の方が先に経済発展し、世界に認められました。その後、中国が目覚ましく発展し、台湾企業も中国との貿易がなければ生き残れない状況になってしまいました。総統選に立候補しているのは3名。与党・民進党の頼清徳氏は蔡英文政権の副総統。医師から政治家になった人です。最大野党・国民党の侯友宜氏は新北市長で元警察官僚のトップ。第3の候補者、野党第2党・民衆党の柯文哲氏は前台北市長で、若者に人気があります。3人の支持率は拮抗しており、ほぼ25~30%。野党は候補を一本化しようという呼びかけがありましたが、柯氏が拒否して三つ巴となりました。争点の一つは対中国のスタンス。3人とも現状維持を謳っています。頼氏は、台湾独立を唱える蔡英文氏の右腕ですが、「対等で尊厳を保つ前提のもと、対話や交流を行う」と慎重姿勢を示しています。国民党は台湾独立には反対ですが親中まではいかず、若干距離を置きたいという立場。民衆党の柯氏は「国民党は中国に対して従順すぎ、民進党は戦いすぎる」と、中間的姿勢を表明しており、「中国との公式な交流の再開が必要」と語っています。習近平主席は11月の米・バイデン大統領との会談で、「平和的な統一を目指す」と話しました。実際に台湾の政治家を中国に招待しています。しかしこれは、中国の発展を見せて取り込んで、親中政権を樹立し、内側から一つの中国を成し遂げようとする選挙への介入だと、台湾政府は反発しています。近隣地域で、民主主義を謳うのは日本と韓国と台湾のみです。個人の自由を重んじる社会の価値を共有する数少ない仲間。台湾の自由が失われると、世界はますます中国やロシアのような独裁的価値観が広がってしまいます。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2024年1月17日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2024年01月14日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「所得税定額減税」です。一時的な処置で将来改善するのか。長期的な政策を!岸田政権は、2024年度の税制改正で、所得税3万円、個人住民税1万円の定額減税を行うことにしました。6月よりスタートすることになります。岸田首相は、総裁選の頃は「分配なくして成長なし」と謳っていました。様々な優遇策により国民の暮らしが良くなるという期待感がありました。ところが実際には社会保障費の負担が増え、ガソリンや小麦などの価格高騰もあり物価高が進んでいます。それでも給料は上がらず、生活は苦しいまま。岸田首相は「税には手をつけない」と話していましたが、方々から批判を受けて急に減税に転換しました。ですが、その額は限定的で、期間も1年ですから、一時的な痛みを取り除くことにしかなりません。’24年の総裁選を乗り切るために、自民党内の様々な声を聞く姿勢を示そうと、場当たり的に決めた策のようにも見えてしまいます。経済政策に整合性がとれていないのは、国民としては不信感が募ります。ただ、ロシアとウクライナの戦争が解決を見ないうちにガザでも戦争が始まり、予想以上に深刻な円安が続いており、デフレからなかなか脱却できない。誰がトップでも難しい政策運営を強いられている状況ではあります。デフレを抜け出すには、賃金を上げることが求められます。ただ、経営者の側からいえば、賃金を上げればその分、社会保障費の負担も増えてしまう。本当に賃上げしたいなら、社会保障費の方も、優遇なり減額なりしていかないと企業も簡単には上げられません。個人や企業が稼いだ国民全体の所得に対して、税金と社会保障費の負担の割合を示す「国民負担率」というのがあります。’23年度は46.8%になる見通しです。統計を取り始めた1970年度は24.3%でしたから、実質的にだいぶ負担が増えているのですね。65歳以上の人の割合が国の人口の21%を超える「超高齢社会」に、日本は2007年から突入しています。2060年には人口の約40%が65歳以上になると予測されます。減税をしても成長には繋がりません。この先どのようなビジョンを描いているのか。岸田政権には原点に立ち返り、未来を見通した政策をとってほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2024年01月03日ananで連載中の堀潤&五月女ケイ子「社会のじかん」の特別編。いよいよ本格的に始まる、「移民との共生社会」について、堀潤さんが解説します。いよいよ本格的に始まる、移民との共生社会コロナ禍が一段落して、人の移動が激しくなりました。2024年は街の景色として「海外の人が増えたな」というのを実感し始める年になると思います。日本人の人口は14年連続で減少しており、’23年1月時点で前年に比べ約80万人減、1968年以降最大の減少数、減少率です。47都道府県全てで減少に転じたのは初めてのことでした。この流れはこれからも続き、日本の総人口が1億人を切る未来も考えなければなりません。少子高齢化が進み、社会保障費の増大は避けられません。’23年夏に発表された’21年度の社会保障給付費は過去最高の138.7兆円。国の年間予算が106.6兆円でしたから、驚く金額です。財政赤字を膨らませながら、社会保障も回していかなければならないことになります。そんななか、海外から日本に転入する外国人の数が急増しています。3か月以上日本に滞在する外国人住民は約300万人、コロナ禍で一時減りましたが、3年ぶりに増加しました。政府は、生産年齢人口の減少と労働力不足を外国人労働者を受け入れることで解決しようとしています。これは、実質的には移民政策です。そのための在留資格として、’18年に「特定技能」を創設。特定技能外国人を受け入れる深刻な人手不足が認められた分野は、介護、ビルクリーニング、建設、造船、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業など多岐にわたります。さらに、スタートアップへの投資も強化しており、今後も一層、海外からチャンスを求めて、技術者など大勢の人が転入してきます。国立社会保障・人口問題研究所によると、2067年には人口の約10%が外国人になると推計されており、東京都に次いで、大阪府や愛知県で外国人の数が増えています。これまでは、特に外国人労働者を多く雇用する“工場のある街”に外国人住民が集まっていましたが、これからは大都市近郊の街でも、当たり前のように目にするようになるでしょう。外国人住民は、国籍も肌の色もさまざま。文化も生活スタイルも異なる人々を同じ街の住民として、きちんとコミュニケーションをとる努力をしなければ、疑心暗鬼を生み、やがては暴力に発展しかねません。9月には埼玉県川口市でトルコの少数民族クルド人と住民のトラブルがありました。ただ、一部の乱暴な外国人がいたとしても、それが全てではありません。SNS上のデマを信じ、偏見を持っていては分断が深まるだけです。日本は、本当の意味での“内なるグローバル化”を進めなくてはいけないと思います。ごみの捨て方から、公民館の使い方、自治会の再編成なども必要になるでしょう。外国の人と話すときには、易しい日本語を使うことも心がけたいですね。もしも自分が海外に移住したら、その街の人にどう接してもらえたら安心して暮らせるのか。外国人というだけで、疎まれたり差別をされたら、憎しみの気持ちが湧いてしまいます。逆の立場をぜひ、想像して接してみてください。外国人住民にないのは選挙権だけ、私たちと同じように税金や社会保障費を支払います。日本の暮らしを底支えする隣人であるということを忘れないようにしましょう。五月女ケイ子解読員から一言NYではどんな職業にも外国人がいるイメージ。仏料理に日本人シェフがいるように、寿司職人に外国人が普通にいるようになったら、“ローカルグローバル”が進んだと感じられそう。みんな同じ人間として見ることが大事ですね。KEY WORD:人口減少と外国人の流入増人口減少に歯止めがかからない状況が続く日本。’23年1/1時点の住民基本台帳をもとに総務省がまとめた国内に住む日本人は、1億2242万3038人。前年に比べ80万523人、2009(平成21)年をピークに14年連続、調査を始めた1968(昭和43)年以降で最も減った。一方、外国人住民は前年の270万4341人に比べ、28万9498人増加。出典/総務省ほり・じゅんジャーナリスト。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX)などに出演中。スーダンを取材した写真展「#BlueForSudan」が2024年1月14日まで宮城県・多賀城市立図書館(9:00~21:30TEL:022・368・6226)にて開催中。そおとめ・けいこイラストレーター。雑誌や書籍、広告で活躍。オンラインストア「五月女百貨店」では、楽しいオリジナルグッズを多数販売。カレンダーやポチ袋も好評発売中。使える面白LINEスタンプも各種展開している。※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年12月31日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本版ライドシェア」です。移動手段の不足。地域ごとに事情が異なることに留意。海外ではUberのように、一般車が有料で人を乗せるライドシェアリングサービスが広まっていますが、日本ではタクシー業界を守るため、「白タク」行為は禁じられています。ところが、最近ライドシェアを解禁しようという動きが出ています。この背景は、都市部と地方では少し事情が異なります。まず、観光都市や大都市では、今タクシーの台数が不足しています。コロナ禍でドライバーもタクシーの台数も減り、さらにタクシー配車アプリの普及により、流しのタクシーも減少。急速にインバウンドが戻ってきているのに、観光客の足回りが枯渇している状況なんですね。一方、地方においては、そもそもタクシーのニーズが少ないところにコロナ禍でさらに台数が減り、日常生活での人々の移動手段がなくなってしまいました。そこで、必要な時に空いている自家用車を使い送迎ができるように、ライドシェアを解禁したらどうかといわれています。すでにライドシェアの実験が始まっている地域もあります。福島県浪江町では駅前に大きなタッチパネルを設置し、道の駅や病院など行き先を指定すると、近くを走る乗り合いバスが迎えに来てくれるんですね。過疎高齢化が進む地域でライドシェアを導入し、住民の暮らしを守ろうとする取り組みは大歓迎です。ただ、都市部の参入には賛否両論あります。あるタクシー業界の方は、ライドシェアを解禁するにしても、安全に人を乗せる技量を持つ第二種免許を取得している人に限定してもらえないかと話していました。鎌倉や湘南など、車の渋滞に悩まされ、市民の移動に支障が出てくるような観光都市もあります。市街地は自家用車の乗り入れを禁止し、バスで移動してもらうパーク&ライド方式をとり、解消しようという意見もあります。行政と民間と市民社会が、自分たちの地域をどういう交通社会にしたいのかを考えることが求められます。大事なのは何をゴールに定めるかです。一度緩和した規制を元に戻すのは難しいので、タクシーの供給が足りないからライドシェアを解禁すればいいと安易に捉えない方がいいでしょう。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年12月27日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年12月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「旧統一教会解散命令」です。一件落着ではない。与党はこの問題にメスを入れて。10月、文科省は旧統一教会(宗教法人世界平和統一家庭連合)に対する解散命令を東京地方裁判所に請求しました。信教の自由は民主国家にとって非常に大切な問題ですから、解散命令請求を行ったというのは、日本の歴史の中でも重い決断だったと思います。旧統一教会は約30年前に悪徳な霊感商法により、一度注目されましたが、昨年、元総理大臣が殺害されるという事件も相まって再び注目を集めました。信徒が多額な献金を請求され、暮らしそのものが破壊されたり、宗教2世が自由も人権も奪われていたり。さらに、教団と政治家が強く結びつき、政治家たちを様々な形で支援していたこと。教団の本拠地が外国にあるなど、総合的に見て、「公共の福祉」に反すると判断されたんですね。これらの問題は、宗教法人資格を剥奪して終わり、ではありません。与党はもっと自分たちの業界にもメスを入れてほしいと思います。なぜなら、特定の宗教法人の意向が、政治家たちの発言や行動に影響を与えていたとすれば、それこそ民主主義国家としての信頼を根底から覆すことになります。しかし、旧統一教会問題への世間の関心は次第に薄まり、解散命令が問題の幕引きに使われたところもあるのは見過ごせません。宗教2世の子供たちが、自由に活動する権利を奪われたり、親の信仰によって制限される問題は、放置してよいものではありません。子供の権利を誰が守ればいいのか、議論をもっと深めていかなければならないでしょう。解散命令が請求されるまでに、文科省は宗教法人法に基づき、宗教法人に対する質問権を行使しました。これが規定されたのは平成8年ですが、行使されたのは今回が初めてです。これまでにも問題はあったはずなのに、行使を阻むものが何かあったのではないかという疑問も残ります。霊感などで不安をあおり、寄付を必要不可欠と思わせる不当な勧誘行為や、家や資産を売却してまでも献金するよう要求することを禁止する「被害者救済法」が昨年成立したのは前進でした。しかし、政治と宗教の問題、宗教2世のケアなど、課題は山積しています。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年12月20日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年12月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イスラエルとハマスの戦闘」です。戦闘の拡大理由は政治の側面から背景を見る必要が。パレスチナ自治区のガザ地区で痛ましい戦闘が続いています。10月7日にイスラム組織のハマスがイスラエルを襲撃し、人質を取りました。これに対し、イスラエルが激しい報復を繰り広げています。これまでにも度々衝突はありましたが、これほどの大規模な戦闘は初めてです。イスラエルとパレスチナの対立理由は、遡れば2000年以上の昔からありますが、歴史的背景を語ると「解決の難しい問題」で終わってしまいます。本件は政治の側面から見ることも肝要だと思います。今年前半、イスラエルのネタニヤフ政権は国民の支持を失っていました。国の権限を強化するため司法改革に手をつけようとしており、国民からの批判が高まり、大規模デモが続いていたのです。4月には、イスラム教徒の聖地であるエルサレムのアルアクサ・モスクで、イスラエル警察とパレスチナ人が衝突。10月にはイスラム教徒しか礼拝が許されていない礼拝所に5000人近いユダヤ教徒が押し寄せました。それが引き金となり、ハマスは今回の襲撃を開始したという報道もあります。ハマスがイスラエル攻撃に向けて準備をしているという情報は、エジプトなどを通じてネタニヤフ首相の耳に入っていたといわれています。諜報能力に長けたイスラエル国防軍がなぜ襲撃を許したのか。危機を利用して、政権基盤を安定させようとするショック・ドクトリンを疑う声もあります。今回の戦闘に刺激を受けるように、イランから支援を受けている、イエメンの武装勢力フーシ派や、レバノンに展開しているイスラム組織ヒズボラもイスラエルに攻撃を開始。イランとイスラエルの緊張状態が高まり、第3次世界大戦に広がるのではないかと懸念する人もいます。問題は、イスラエルでもパレスチナでも大勢の民間人が被害に遭っていることです。双方合わせて死者は1万1000人を超えており、女性や子供たちが犠牲に。国際法で禁じられているはずの学校や病院なども攻撃されています。国連の休戦決議採択後もイスラエルの攻撃は拡大。ようやく11月22日に4日間の戦闘停止が合意されましたが、国連の抑止力が失われていることが明白になりました。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年12月13日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年12月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ユニセフ」です。その先も暮らしていけるようにする、大事な教育支援。「ユニセフ」(国際連合児童基金)は、子どもたちが公平なチャンスを得られる世界を目指し活動している、国連の機関です。現在、約190の国と地域で活動しており、資金は民間からの寄付と各国政府からの拠出で賄われています。ユニセフというと、飢餓や貧困に苦しむ子どもたちに食糧や医療を届けるというイメージが強いかもしれませんが、活動はそれだけではありません。災害や紛争が起きた地域での緊急支援、人道支援のほかに、教育など、長年そこで暮らしていくために必要なサポートも行っているんですね。先日、ルーマニアに取材に行ってきたのですが、ルーマニアには、ウクライナから大勢の人が避難してきています。ウクライナでは、多くの男性は徴兵され国外に出られないので、ほとんどが母子避難。避難先の外国でシングルマザーとして暮らしていかなければならず、言葉や教育の問題が出てきます。ユニセフのルーマニア事務所では、難民の母子が住める寮を運営したり、ルーマニア政府と「マルチ・サービス・センター」という施設を作り、教育支援を行っています。ここでは、幼稚園児から高校生まで275名を受け入れ、ウクライナにいる先生とオンラインで繋ぎ、離れていても授業を受けられるようにしています。また、避難先のローカルコミュニティから差別や反発を受けないように、現地の公立学校と一緒に、ルーマニア語の教育を受けられる機会も作っているんですね。ところが残念ながら現在、ユニセフの資金が不足しており、来年3月以降、施設を維持する目処が立っていません。今はウクライナに限らず、世界各地で紛争が起こったり災害に見舞われており、支援を必要としている子どもの絶対数が増え続けています。例えばアフリカのマリでは、880万人を支援するために、約180億円の資金が必要なのですが、3分の1程度しか集まっていません。ユニセフの活動は、私たちの生活と無関係に思えるかもしれませんが、ユニセフが培ってきた支援のノウハウは、日本で起きている社会課題の解決にも応用できるものです。メディアももっと注目し、ユニセフへの理解が広まるといいなと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年12月6日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年12月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「年収の壁」です。日本経済の成長が負担感を減らす一番の近道です。厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員に扶養されている配偶者で、一定の収入のない人は、第3号被保険者といって、厚生年金保険や健康保険などの社会保険料の負担が発生しません。そういう被扶養者がパートやアルバイトで一定額を超えた収入を得ると適用外となり、社会保険料が引かれ逆に手取りが減ってしまうため、働く時間を抑えようとします。それが「年収の壁」です。従業員101人以上の企業で週20時間以上勤務する場合の「106万円の壁」と、「130万円の壁」があります。現在、政府は社会保険の適用範囲を段階的に広げており、昨年10月から、従業員数が100人超の企業は、パートでも社会保険の加入が義務付けられ、新たに45万人が対象になりました。しかし、今は空前の人手不足。日本商工会議所のアンケートによると、中小企業で「人手が足りない」と答えた企業は過去最悪の68%に。さらに、今年の10月から全国の最低賃金が約1000円に引き上げられたため、企業は人手を減らさないと回らなくなり、年収の壁を考える人は、働く時間をもっと抑えなければいけなくなります。この状況を受け、岸田政権では、壁の範囲を超えて働いても不利益にならないような策を打ち出しました。ただそれは、賃上げなど、手取り収入を減らさない取り組みを実施している企業に対して助成金を出す形なので、誰もが優遇されるわけではありません。あくまでつなぎの政策であり、2025年の年金法改正に向けて、抜本的な見直しを進めようとしています。国民年金第3号被保険者制度ができたのは1985年。専業主婦の世帯が多く、「夫が働き、妻子を養う」という家族像をモデルに設定していましたが、家長の収入が減り、共働きでないと経済的に苦しい家庭が増えている現代にはそぐわないところがあります。扶養控除をなくし、全ての働き手が負担するのが分かりやすいですが、男女の賃金格差を考えたら、女性には収入が少ない上に負担増になります。最も問題なのは、ここ30年は日本経済が成長しておらず、国民の社会保障費の負担感が増していることなんですね。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年11月29日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年11月29日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「地球温暖化対策の現在地」です。温暖化対策見直し。経済逼迫で、EV転換に遅れの兆し。イギリス政府は、2030年にはガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する政策を打ち出していましたが、それを5年延期すると発表しました。脱炭素社会に向けて、電気自動車(EV)への移行をいち早く推進していたのですが、まだ価格も高く、インフレが続いており国民の負担が重いため、現状では車の買い替えは難しいと判断。この背景には、コロナ禍やウクライナの戦争の影響も大きくありました。EVへの転換はEUの中でも温度差があります。ドイツは日本と同様に自動車が基幹産業で、ガソリン車が経済を支えてきました。ですから、フランスやイギリスがEVを推進することにものすごく反発の声を上げてきました。日本の自動車メーカーもEV開発を推し進めていますが、世界に後れをとっています。三菱自動車は2012年に中国の企業と合弁会社を立ち上げ、EVで中国進出をしようとしていましたが、技術的にも競争に勝てないと、撤退を決めました。世界のEV市場は上位をテスラや中国、韓国など日本以外のメーカーが占めています。9月に国連でSDGsサミットが開かれましたが、グテーレス事務総長は、SDGsの目標達成は危機的状況にあり、順調に進展している目標はわずか15%、多くは逆行していると指摘しました。世界の平均気温の上昇を1.5°C減らす目標だったのが、実際には2035年度までに1.5°Cを超え、2100年までに2.5°C上昇することがわかりました。海面上昇のスピードもこの10年の間に2倍になっています。今求められる対策は、温室効果ガスの排出量を大幅、かつ迅速、持続的に削減することです。しかし実際には、数十億から数兆円の資金が必要になることから、難しいといわれています。この間にも、今年は世界的に観測史上最も暑い夏となり、山火事や干ばつ、大きな洪水が幾度となく起きています。災害によってあらゆるものが壊され、復興にも、温暖化対策にも資金を注ぎ込まないといけません。各国は安全保障のために国防費を積み増しており、日本もそれに倣う形で防衛費を上げようとしていますが、正直なところ、戦争をしている場合ではないんですね。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年11月22日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年11月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「G20ニューデリー・サミット」です。露中首脳は不参加。インドの存在感が増し、世界が変貌。9月にインド・ニューデリーでG20サミットが開催されました。5月に広島で開かれたG7では、参加国の結束を確認しましたが、G20では全く状況が変わっていました。まず、インドが強い指導力を発揮し、難航するだろうといわれていた共同声明を取りまとめました。それはウクライナ侵攻を続けるロシアを直接批判することを避けた、ロシアに配慮した内容でした。プーチン大統領は欠席し、代わりにラブロフ外相が参加。習近平国家主席も欠席しました。ロシアと中国の首脳がG20の場に来ないというのは、G20を軽視しているというメッセージにもなります。これまではG7の先進諸国が中心になり、国際秩序協調策として、開発途上国も加わったG20が開かれていましたが、潮目が変わりました。インドはG20の場で、国名を「インディア」ではなく「バーラト」という現地の呼び名に変えたいと世界に発信。議長席のプレートや晩餐会の招待状には「BHARAT」と表記されました。これは、イギリス植民地時代の呼称を使わず、欧米支配からの脱却、新しい時代の幕開けであることを世界に宣言しているといえます。世界はこれまでのような、欧米かそれ以外かというシンプルな形では語れなくなりました。日本は中国ともロシアともアメリカとも隣り合わせていますから、今後どういうスタンスを取るのかが問われることになります。鍵を握るのはアフリカや中東、東南アジアの国々。それらの国々との連携は必須でしょう。アフリカや中東の国々とロシアとの接近は始まっていますから、それが深まるほど、自由主義や民主主義は後退していきます。機会があれば、読者の皆さんもぜひ、東南アジアやアフリカを訪れてみてください。現在の発展している姿に驚くと思います。また、BBCやCNN、AFPやロイターなど、日本語でも発信している世界のメディアに触れて、世界情勢に敏感になっていただきたいです。国際感覚を持って世の中を見ておかないと、あっという間に時代に取り残されてしまいます。それは、どこに危険があるのかも予測できなくなる、とても怖いことだと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年11月15日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年11月12日夫婦は、愛と信頼関係によって成り立つもの。パートナーを人として思いやり、リスペクトし合う関係性が、理想といえるでしょう。2023年11月6日、お笑いトリオ『ネプチューン』の名倉潤さんが投稿したのは、まさに『夫婦愛』という言葉がぴったりな写真でした!名倉潤&渡辺満里奈の『ラブラブペアルック』に反響同月4日に、55歳の誕生日を迎えた名倉さん。当日は残念ながら仕事があったため、翌5日に、自身の家族や友人家族に誕生日会を開催してもらったのだとか!Instagramに投稿された写真には、大切な人たちに祝福されて嬉しそうにする名倉さんと、妻であり、タレントの渡辺満里奈さんの姿が。名倉さんは誕生日ケーキだけでなく、素敵なプレゼントをもらったそうです。渡辺さんが用意したプレゼントが、一体なんだったのかというと…!そして奥さんのプレゼントはお揃いのセーター令和のバカップルとても嬉しかったです奥さん家族には感謝しかありません。本当に日頃から友達家族、スタッフ、応援してくださってる皆様にも感謝しかありませんゴーゴーおっさん頑張りますnagrat1968ーより引用※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る Jun Nagura(@nagrat1968)がシェアした投稿 なんと、渡辺さんが贈ったのは、ウサギがデザインされた色違いのセーター!まさかのペアルックのプレゼントに、名倉さんは照れながらも感謝を述べ、自分たちを『令和のバカップル』と称しました。結婚から18年経っても、名倉さんと渡辺さんの愛はまったく薄れない模様。むしろ、身近で相手をより知ることで、絆が深まっているのかもしれませんね。多くの人によって理想の夫婦関係といえる、名倉さん夫婦。投稿を見た人たちから、祝福の声が寄せられています!・本当に素敵。自分もこういう夫婦になりたい!・名倉さん、お誕生日おめでとうございます!どれも素敵なお写真で、ニッコリとしちゃった。・ペアルックのセーター、すごくかわいい~!お2人とも似合っていますよ!名倉さんは結婚記念日を迎えるたびに、必ずプレゼントと一緒に、渡辺さんへの手紙を添えているのだとか。良好な夫婦関係の構築に必要なのは、しっかりと相手へ愛を示す行動なのかもしれませんね。[文・構成/grape編集部]
2023年11月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「岸田内閣副大臣・政務官女性ゼロ」です。地域の女性議員を増やすことから。意識の変革を望む。9月13日に第2次岸田第2次改造内閣が発足されました。副大臣26名、政務官28名全てが男性議員。副大臣・政務官制度が導入された2001年から、女性がゼロだったのは初めてのことです。今回の内閣改造では5人の女性閣僚が生まれ、過去最多に。しかし、首相含め20人の大臣のうちの5人ですから、日本のジェンダーギャップは、ますます世界から後れをとるということが明らかになりました。政治は、多様な背景を持つ当事者たちが関わることが大切だと思います。暮らし方や働き方、人生経験など、バックグラウンドが多様であれば、さまざまな政策を実現可能にします。こども家庭庁を作っていながら、子ども中心の政策がなかなか見えてこないのは、政治の中枢が多様ではなく、当事者たちの声が届いていないせいでしょう。今回の人事は自民党が抱える構造的な問題もありますが、実は自民党内部からも「女性候補者が足りない」という声はよく聞かれます。党内の女性局と青年局の討論会では、地域の女性候補者の掘り起こし支援に力を入れてほしいという要望が上がっていました。地域が変わらないと中央も変わっていきません。地方議会は男性中心で、古くからの地元の名士に支えられ、地盤のある候補者に代々引き継がれていくケースが少なくありません。令和3年12月末現在、地方議会の女性の割合は特別区議会で30.7%、政令指定都市の市議会が20.7%、市議会全体では16.8%、都道府県議会で11.8%、町村議会で11.7%でした。かつて、熊本県議会で、乳児を連れて議会に入ろうとしたら止められバッシングを受けた女性議員がいました。一方、オーストラリア連邦議会では、議場で授乳することも認められています。声を上げて自分たちの権利を勝ち取り、社会を変えていくパワーが諸外国にはありますが、日本はどうしても「仕方がない」と呑み込んでしまうことが多い。ジェンダーギャップの問題は日本経済の衰退や政治の硬直化、政策の非多様性などを生んでいます。今年の統一地方選挙の女性候補者は前回よりも500人増えました。この変化の兆しを伸ばしていけたらと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年11月8日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年11月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「BRICS」です。新たに6か国が参加。共通通貨が生まれる可能性も。「BRICS」とは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国で作られたアライアンスです。8月に開かれたBRICSの首脳会議で、新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が2024年の1月から加わることが発表されました。アラブの主要国が入ることにより、世界の石油取引高の約90%を占めるという大きなインパクトを生むことになります。BRICSではドル決済に代わり、世界の基軸となる新しい共通通貨を生み出そうという動きが出ていました。中国の人民元を広げようとする動きもあります。もし、脱ドルの動きが実現化すれば、ドルの価値は下がるでしょうし、日本への影響も計り知れません。もしも、ドル決済から離れることができ、経済的にも軍事的にも援助してもらえるとなれば、今後BRICSに参画を希望する国がアフリカや中東からますます出てくるのは明白です。その動きの象徴的な国がエジプトでした。エジプトポンドは、対ドルで見ると、この1年で半分くらいの価値に急落してしまいました。これにはロシアによるウクライナ侵攻が大きく影響しています。エジプトは小麦の多くをロシアから輸入していました。戦争によりロシアからの輸入に制限がかけられ、小麦の価格が高騰。自国の産業の育成がうまくいっていなかったこともあり、経済危機を迎えていました。ですから、BRICSのようなアライアンスに属することは必須だったのです。エジプトは日本にとっても重要な国です。日本に石油を運ぶには、エジプトのスエズ運河を通らねばならないので、ある種生命線のような場所です。岸田首相は4月にエジプトの大統領と首脳会談を行い、これまで以上に強いパートナーシップを築くことを話し合いました。欧米諸国が指導力を発揮していた頃から、世界の勢力地図は大きく変わってきています。中国やロシアなど権威主義的な国がアフリカや中東諸国を引き込み、アライアンスを拡大しつつあります。この綱引きの中、日本がどのようなイニシアティブを発揮するのかが問われています。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年11月1日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年10月29日スーツ姿で自宅から現れたのはA氏、堀ちえみ(56)の“3人目の夫”だった。「堀さんがA氏と結婚したのは11年。その8年後に堀さんはステージ4の舌がんが判明し、手術を受けましたが、その闘病生活をさせたのがA氏でした。A氏は21年にパチンコ機業界最大手のS社の関連会社であるB社の代表取締役兼取締役に就任。“年収は数億”とも言われていたのです」(芸能関係者)A氏は社長就任の翌月に、東京都内の5階建て住宅を購入。延べ床面積は200平方メートルを超える豪邸だ。堀は、その新居のリフォームの様子を、楽しげにブログで公開していた。だが堀夫妻の人生が暗転したのは今年9月末のこと。A氏が取締役を解任され、代表取締役も退任することになったのだ。「今年開催された堀さんの復帰コンサートのチケットを会社の経費で購入して人に配ったり、社員にチケットを購入するように迫ったりしたことが問題視されたとも囁かれています」(パチンコ業界関係者)本誌はA氏に直撃取材を試みた。――B社の社長を解任された理由について聞かせてください。「解任については現在、弁護士さんと相談しておりまして、今後、係争することになると思います。いまはお話しできません」――堀さんはチケットに関する疑惑については、ブログで否定されていましたが?「妻も今回の報道にはショックを受けています。チケットを部下に買わせたことなどは、事実無根です」――今後は再就職されるのでしょうか?「急なことでしたし、裁判の準備もあるので、(再就職の)予定はありません。これ以上はお話しできないので失礼いたします」その後、取材を進めるとS社の社員に話を聞くことができた。A氏のことも良く知る人物だった。「今回の解任騒動で社内も騒然としました。9月21日と聞いていますが、AさんがS社の社長室に呼ばれ、突然役員の解任を言い渡されたとか。Aさんは納得できず、“S社の社長を訴える”と言っているそうです。チケットの件ですが、確かにAさんは堀さんの名古屋公演に、従業員たちを関係者席に招待したそうです。ただAさんは『あくまで希望者を呼んだだけで、チケット代などもらっていない』と主張しています」こんな騒動のなかでも、堀の理想の我が家づくりは進んでいた。《今日は午前中、ファミリールームに変貌する、ダイニングキッチンに置くソファーの納品日。》(A氏の10月15日付のブログ)不動産登記簿によれば、A氏は自宅購入の際に、あわせて1億円近くのローンを組んでいた。「堀さんは12月に自身初となるディナーショーを開催します。しかし収入は全盛期におよばず、ご主人の収入が絶たれたいま、ローン返済も苦しくなり、自宅を手放さざるをえなくなる可能性もあります」(前出・芸能関係者)またしても襲ってきた人生の荒波を堀は乗り越えることができるか。
2023年10月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国立科学博物館クラウドファンディング」です。クラファンは一時的な対処法。研究にもっと力を。国立科学博物館は、運営資金の不足を解消するために8月にクラウドファンディングを立ち上げ、目標額の1億円を1日で達成し、2週間余りで7億円超の資金を集めました。“国立”と名前がついていますが、独立行政法人で、独自に運営を任されています。標本や資料は500万点に及び、展示されているのは約2万5000点。多くはつくば市にある収蔵庫に置かれています。化石や動物の骨、剥製、植物など、古く貴重な標本を保存・管理するには莫大なお金がかかり、コロナ禍や光熱費の高騰などにより資金に窮していました。大きな役割は、標本資料の収集と保管、展示・学習支援、調査研究などです。資金不足により、新しい事象が発見されても現場に行けないというような状況にも陥っていました。現在、日本の研究の現場は大変弱っており、文部科学省科学技術・学術政策研究所が調べた「科学技術指標2023」によると、他の論文に引用される回数をカウントする注目論文の数が、日本はイランに抜かれて13位になりました。かつては4位でしたが、20年の間に次第に順位を下げていったのです。イランは国際的に制裁を課せられているので、自前のインフラ、サービスを作る必要があり、科学分野に積極的に財政を投じてきました。それにより、研究者のレベルが底上げされ、日本を追い越していきました。クラウドファンディングは、資金集めの持続可能な方法ではありません。国がきちんと科学分野に投資できないのは問題だと思います。また、科学博物館側も所蔵品をツアー形式で見せたり、企業研修に使うなど、稼ぐ方法は見つけられると思います。研究者が経営につくのではなく、マーケティングやPRのプロを経営陣に呼ぶなど、改革の必要があるのではないでしょうか。すぐに成果に結びつく研究が求められがちですが、草の根的な基礎研究が国の将来を支えます。クラウドファンディングによって、科学博物館に関心を寄せる人が増えたことはすごく良かったと思います。国立科学博物館のクラファンは11月5日まで行っています。研究がその国の国力につながるという意識が広がることを願います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年10月25日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年10月19日歌手の堀ちえみ(56)の夫・A氏が、パチンコ機業界大手企業B社の関連会社C社の代表取締役を解任されていたことがわかった。堀といえば、’19年にステージ4の舌がんが判明し、舌の約6割を切除する手術をしたほか、同年4月にも初期の食道がんが見つかり手術をしている。大手術から4年が経った今年2月には、闘病生活を乗り越え、手術後初となるライブが行われた。闘病生活などについて発信してきたAmebaブログ『hori-day』はブログランキング総合4位、フォロワー数は35万人を超える人気ぶりで(’23年10月16日時点)、今年12月には初のクリスマスディナーショーも控えている。そんな堀の闘病生活を献身的に支え、堀が自身のブログでも頻繁に感謝の思いを綴っているA氏は、’11年に堀とお互い再婚同士で結婚。’21年6月からはC社の代表取締役兼取締役を務め、「年収は数億円」とも囁かれていた。また、A氏が手掛けたパチンコ機が様々なパチンコメディアで表彰され、受賞者インタビューも受けていた“やり手”だったのだが、一部ではこんな噂も……。「実は、今年開催された、奥さんの堀ちえみさんの復帰コンサートのチケットを会社の経費で購入して人に配ったり、自社の社員にはチケット購入を強めに迫ったりするなど、奥さんを思うあまりか“公私混同”するような行為が問題視されていたようです。解任の理由もそのことだと言われています」(パチンコ業界関係者)C社の法人登記簿謄本を確認すると、確かに今年9月30日付で取締役「解任」、代表取締役「退任」の文字が。同社に事実関係を確認した。ーーA氏の解任は事実?「そうですね、はい」ーー解任の理由は?「プライバシーに関わる問題なので、お答えはしていません」ーー奥様の堀ちえみさんのコンサートチケットを経費で購入する、社員へチケットの購入を迫るなどの行為が問題視されたとも聞いているが?「お答えはできないです」ーー取締役は「退任」ではなくて「解任」になっている「そうですね。登記簿の方をご確認いただければと」ーー確認しています。退任じゃないということは、何かしら事情があるということですよね?「……そうですね」それ以上は、会社としてはプライバシーに関わることだから回答できないとしたが、チケットにまつわる疑惑について否定することもなかった。社長を“クビ”になったA氏だが、すでに新しい動きを見せている。なんと解任翌日の10月1日からAmebaで本名名義のブログを開設していたのだ。そこには、堀とのデートの様子などを綴っている。今後は妻にブログのやり方をサポートしてもらう番なのかも?
2023年10月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「認知戦」です。私たちも知らずに戦争の最前線に立たされています。認知戦とは、世論を操作したり、偽の情報を拡散して、人の認知領域に働きかける情報戦のこと。陸、海、空が第1~3の戦場、第4の戦場は宇宙、第5の戦場はサイバー空間。認知戦はその次の第6の戦場と呼ばれています。元をたどれば、プロパガンダ戦は昔からあります。第2次世界大戦時にはナチス・ドイツがラジオ局のトップに配下の人間を送り込み、ヒトラーは正しいという世論を形成しました。テレビ、ラジオ、新聞しかない時代はそれだけの労力を要しましたが、今は、インターネットやAIを使い、精巧なフェイクニュースを簡単に作れるようになっています。認知戦の恐ろしいところは、誰が主体となって仕掛けているのかが不明なまま、その国の政治指導者の決断を左右させていく大きなパワーを持っているということです。中国人民解放軍は、積極的に認知戦に関与しているといわれています。たとえば、台湾で不安を煽るような動画が拡散されました。「強盗に襲われました。みんなも気をつけて」と病院のベッドから自撮りした動画が拡散されます。一見認知戦と何の関係が?と思うかもしれません。しかし、こういう動画が大量に流されることにより、「台湾は治安が悪い」「今の政府に任せていたら、未来はないのではないか」という考えを刷り込んでいきます。これがフェイクニュースだと見破ったのは、台湾のCofactsというファクトチェックグループでした。選挙の直前など、ある一時期に膨大な量の動画が流されていたことで判明しました。カナダのトルドー首相は、2019年と2021年の総選挙に、中国、イラン、ロシアが介入した恐れがあると捜査を開始しました。アメリカでトランプ大統領が誕生した舞台裏ではロシアの関与が疑われています。私たちは認知戦の最前線に立たされているということを自覚してください。バズったニュースを目にしたときには、「誰発信?何目的?本当かな?」といったん立ち止まりましょう。知らず知らずに誰かに仕掛けられて、自分たちの政府を自分たちで倒すことになりかねない危険を孕んでいることを、どうか忘れないでください。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年10月18日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年10月14日石山アンジュさんと堀潤さんが考える、“シェアライフが導く未来”。ここでは、シェアリングエコノミーを取り入れた暮らし、“シェアライフ”の概念について解説していただきました。シェアライフとは?石山アンジュ(以下、石山):「シェアリングエコノミー(共有型経済)」は、実は世界でも確固たる定義はないんですね。私の解釈ではわかりやすく言うと“分かち合い”。昔、ご近所さんでお醤油の貸し借りをしていたのと同じことを、スマートフォン1台で、インターネットを介して行う。今はお醤油を必要としている人、持っている人、作りたい人が可視化できる時代です。瞬時に100人と分かち合うことも、海外の人と分かち合うことも可能になりました。堀潤(以下、堀):需要と供給がマッチングされるだけでなく、そのお醤油が他の家を回ることで、そこにコミュニケーションが生まれます。消費したり流通するだけでなく、価値が膨らんでいくというのもシェアライフの面白さですよね。石山:そうですね。モノに限らず、時間や空間、移動手段、得意なことなど、さまざまなものをシェアできるようになりました。これまでは企業がモノやサービス、情報を生産して、消費者が買うという一方向でした。それが、個人と個人がつながり、あらゆるものを共有して双方向にやりとりできる。それによって、個人がさまざまな形で社会に参画できたり、得意なことを無数の世界の人と共有できるようになるというのは大きな違いですね。堀:すごく共感します。僕はNHKというマスメディアにいましたが、10年前に辞めて、「8bitNews」という市民参加型ニュースサイトを立ち上げました。これは誰もが発信者になれるニュースのシェアです。社会課題にまつわる根深い問題のひとつが、“政治や企業が解決するもの”と当事者意識を持てない人が多いことだと思います。より多くの人が当事者意識を持って、積極的に関わっていくためには、消費者や受信者ではなく、発信者・生産者になることが一番の近道なんじゃないかなと思ったんです。石山:本当にそうですね。シェアリングエコノミーは、企業や自治体、社会に合わせて個人が動くのではなく、“個人が主体”というのが基本ベースにありますね。堀:これまではメディアや企業が価値ありと判断したものだけが世の中に流通していました。でも、素人と言われてきた人も、何かしらの専門家なんですよね。100人いれば100通りの価値がある。私が好きなもの、私がいいと思うもの、それらをシェアし合うのはすごく楽しい世界だと思います。石山:シェアライフは、働き方や生き方も自由に変えていくウェルビーイングな生き方、幸福感を得られる可能性を秘めています。石山アンジュさん1989年、神奈川県生まれ。デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事。著書に『シェアライフ新しい社会の新しい生き方』『多拠点ライフ』。TVのレギュラー番組も多数。堀 潤さん1977年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。NPO法人「8bitNews」代表理事、「GARDEN」代表。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX 月~金曜7:00~)、『JAM THE PLANET』(J-WAVE 水・木曜19:00~)などに出演中。※『anan』2023年10月18日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・村田真弓取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年10月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「福島原発処理水の海洋放出」です。決定のプロセスに大きな難あり。地元との対話を!8月24日、福島第一原発に溜まってしまった処理水の海洋放出が始まりました。処理水を溜めたタンクは1000基以上積み上がり、廃炉作業で出た放射性廃棄物を保管するための場所も潰しており、一刻も早く処分しなければならない状況にありました。処理水とは、放射性物質に汚染された水を、ALPS(アルプス)という多核種除去設備を使い、ストロンチウムやセシウムなどを何重も濾過し、海水で希釈したものです。安全基準は、IAEA(国際原子力機関)が保証しており、今回の海洋放出に踏み切りました。一度に大量には流せませんから、少しずつ30年以上かけて処分する予定です。処理水の海洋放出は、「漁業関係者を含む、関係者の理解なしには行わない」と約束していたにもかかわらず、実際には地元の漁師さんにも、いわき市長にも、政府と東京電力どちらからも直接の連絡はなく、実行されてしまいました。決定のプロセスに、地元の方々が関われなかったことは残念ですし、保管スペースがなくなったことを理由に、土壇場で一部の人たちだけで決めてしまい、政府の決定事項として説明もなしに海に流し始めるというのは、非常に乱暴だったと思います。放出開始とともに、中国は日本の水産物の輸入を全面禁止すると発表。農林水産大臣は「想定外だった」と発言しましたが、見積もりが甘すぎたのではないでしょうか。そもそも地元の理解すら得られていないのですから、政治的に緊張関係にある相手国が不安視するのも無理はありません。このコミュニケーション不足は、処理水の安全性の科学的根拠以前の問題です。これまでも国や東京電力は、福島原発事故に至る経緯や事故後の対処において、隠蔽や改竄を行ってきました。福島県富岡町には、東京電力が設立した「廃炉資料館」があります。そこでは事前に改善のチャンスがあったにもかかわらず、安全を過信して事故を引き起こしてしまったという検証もされていますので、ぜひ一度訪れてみてください。平時は安全だとしても、何か起きた時にはすぐさま伝える。疑心暗鬼を払拭する伝達の仕組みを作らなければ、理解も信頼も得られません。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年10月11日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年10月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国際博覧会」です。世界が分断されているからこそ、互いを知る好機に。2025年4月から「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が開催されます。国際博覧会では、世界中から最新の科学技術が持ち込まれ、それぞれの国の文化や風土に触れることができます。大阪・関西万博の開催には賛否両論ありますが、世界が分断されているいま、科学や文化というテーマで皆が集えるのは、平和国家・日本としてもとても大きな意義があると思います。今回の万博のテーマは“いのち輝く未来社会のデザイン”。展示を見るだけでなく、アイデアを交換し、人類共通の課題解決に向けて技術や知恵を共有、発信する場にしようとしています。国際博覧会は1851年にロンドンで始まり、最新の機械や薬品、芸術品が展示されました。日本は1867年の2回目のパリ万博に、江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ参加、日本が世界に後れをとっているという危機感を抱き、グローバル国家に変わるきっかけになりました。日本が国として初めて参加したのは1873年のウィーン万博です。強烈なインパクトを残したのは、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)。77の国と4つの国際機関が参加。116の展示館が建てられ、183日間で入場者数は6400万人を超えました。目玉はアメリカの宇宙開発で、「月の石」の展示が注目を浴び、いまでは当たり前になっている、携帯電話や電気自動車なども展示されました。今回の大阪・関西万博では、空飛ぶクルマやiPS細胞で作られた臓器をお披露目することになりそうです。これまでの万博は、参加人数や経済効果で成功を測られましたが、大阪・関西万博で掲げているのは持続可能な社会、SDGsですから、新しい経済の価値や文化の意味を打ち出せたらいいなと思います。僕も創設メンバーを担った「国連を支える世界こども未来会議」も開催されます。いまは円安で、気軽に海外に行かれないので、万博で外国の文化に触れられるのは大きな体験になります。税金の無駄遣いと否定するのでなく、「こんな万博にしたら?」と個々に発信したり、考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年10月4日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年09月30日「松本(潤)さんから、遠慮なんかしなくていいからどんどん来てくれって言われたんです。最初のうちはどうしても遠慮をしてしまっていたのですが、テストをしているうちにだんだん慣れてきちゃって(笑)。強くなっていきました」そう撮影の様子をふり返る広瀬アリス(28)。大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合・毎週日曜20時〜ほか)で広瀬演じる於愛(おあい)の方の初登場は、人違いをして家康(松本潤)のお尻をたたくシーンだった。於愛の方が登場すると、場が和みほっとする。広瀬自身も「演じていて彼女の明るさにすごく救われました」と話す。しかし、愛されキャラの於愛の方が第36回では一転して、これまでにない悲哀の表情を見せた。「実は、過去を引きずりながらも、自分の感情を押し殺して殿にお仕えしていた。そして、自ら愛を与えようと頑張っていたけれど、実際にはこの上ない愛情を殿から受けていた。そういったこれまで描かれてこなかった事情が、たくさん表現されている回だと感じました」於愛の方を演じ終えて、改めて役柄について思うことはーー。「彼女は瞽女(ごぜ)と呼ばれる目の悪い人たちに食料や衣服を与えたりと、愛にあふれた存在。だからこそ周りからたくさん愛されていた。もしもっと長生きされていたら、瀬名さま(有村架純)すら超えるすごいお方になっていたかもしれません。演じながら、この方の年を重ねた姿が見たかったなと。誰もが引きつけられる女性だと感じました」長年の夢だった大河ドラマ出演を経験して、現在の心境についてこう話す。「10カ月ぐらいお仕事を離れていて、復帰作が大河でしたが、この作品で本当によかったです。時代劇の経験があまりないなか、所作もそうですし、笛の練習など、いろんな稽古を重ねてイチから役をつくっていく過程で、改めてお芝居ってどういうものだったか、というのが学べました。自分の中で大きな財産となりました」得難い経験を経て、これからも広瀬アリスは羽ばたき続ける!
2023年09月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ワグネル」です。戦争の形に変化。民間軍事会社の需要が増える世界。ワグネルとはロシアの民間軍事会社(プライベート・ミリタリー・カンパニー)です。創設者のプリゴジン氏はもともとレストランやケータリングの事業を行っていましたが、プーチン大統領と特別な関係を築くことに成功し、巨大な軍事組織グループを起こし急拡大しました。ワグネルはウクライナ侵攻の第一線で戦っていましたが、プーチン大統領に都合よく使われていることに対して反発。6月にモスクワに向けて進軍、途中で撤退しました。仲裁を担ったのはベラルーシのルカシェンコ大統領といわれています。ワグネルを配下に収めておくことで、有事に対処できる力を得ようとしました。しかし、8月にプリゴジン氏を乗せた飛行機が墜落し、死亡が確認されました。今年の3月の時点で、ロシアには民間軍事会社が37社あります。日本では作れませんが、世界にはこうした会社が増えています。ロシアはこれまで民間軍事会社を使って侵略行為や非人道的行為をしてきましたが、国家の正規軍ではないので、「国はやっていない」と言い逃れできたんですね。また、マリを筆頭に多くのアフリカ諸国がワグネルを雇っていました。気候変動や紛争により治安が悪くなり、正規の治安部隊だけでは対処できなくなったときに民間軍事会社に頼るのです。それらの国は貧しいので、現金の代わりに鉱物資源の採掘権などを与え、ワグネルは巨大な資金源を得て、ますます力を持つようになっていきました。一方、今月にはイギリス政府はウクライナ侵攻での民間人の殺害などを理由に、ワグネルをテロ組織に指定する議案を議会に提出。所属したり支援することを禁じようとしています。現代の戦争は決して、国家と正規軍だけが行っているものではありません。兵器も民間のドローン技術や、スペースX社の「スターリンク」が通信を支えていたりします。戦争の形が、実戦とサイバー攻撃や認知戦のハイブリッドとなり、戦闘員が軍人なのか民間人なのか境界線がわからなくなってきています。世界の戦争の変化を私たちも知っておかないと、日本の安全保障を考えるのにピントのずれた議論をしてしまいかねません。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年9月27日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年09月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「NATO東京事務所」です。急浮上した案件。実施する前に丁寧な説明を求む。岸田首相は、7月にリトアニアで開催されたNATOの首脳会議に出席しました。NATOは「北大西洋条約機構」であり、地理的に日本は離れていますが、NATOには価値観や安定・繁栄のためのルールを共有する「パートナー国」という枠組みがあり、今会議にも日本や韓国、ニュージーランド、オーストラリアが招かれていました。実は、東京にNATOの連絡事務所を置く案が浮上しています。今年5月、NATOのストルテンベルグ事務総長が、インド太平洋地域との連携を強化する必要があるなどとして、事務所の開設に向け日本政府と協議中であることを明らかにしました。この背景には、サイバー戦が激しさを増しているというのがあります。特にロシアや中国などが、ハッキングだけでなく、インフルエンサーに直接働きかけて、その国を乱すようなプロパガンダに加担させたりという「認知戦」を仕掛けています。その防衛には、国際的に広く協力し合わなければならず、NATOはサイバー防衛の出先機関として、東京にアジア初の事務所の開設を望んでいるのです。これに対し、フランスのマクロン大統領が「NATOはあくまで北大西洋条約機構であり、インド太平洋地域まで展開するものではないだろう」と、設置案に異を唱えました。マクロン大統領は中国やロシアとも独自の外交を行っており、世界協調を促しているので、東京事務所の設置で中国やロシアを刺激したくないという狙いがあるのだと思います。連絡事務所を設置したからといって、日本がNATO加盟国になるわけではありません。ただ、本格的にコミットすることになり集団的自衛権の義務も発生すれば、NATO諸国が攻撃を受けたときに日本も対処せざるを得なくなり、戦争に引きずり込まれるリスクは拭えません。フランスの反対により、今回は見送られましたが、東京事務所案は引き続き検討されると、NATO事務総長はコメント。しかし、この件は国会できちんと議論されていません。岸田首相には国民に向けてきちんと説明をしていただきたいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年9月20日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年09月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米俳優労組ストライキ」です。AI登場による人間の権利の問題。他人事ではない。アメリカの俳優の労働組合によるストライキが7月14日に始まりました。脚本家組合のストライキも5月から行われており、AP通信によると俳優労組の組合員のうち約6万5000人が参加。脚本家組合は約1万1500人。この2つの組合が同時にストライキを打つのは63年ぶりのことです。これにより俳優は撮影やプロモーション活動には参加できず、ハリウッドでは多くの撮影現場がストップしています。動画配信サービスの急速な拡大を受け、組合は、配信作品に対する報酬の引き上げを求めています。また、今回の交渉の大きなポイントはAIなんですね。AIの進歩により、さまざまなものが手軽に作れるようになってしまいました。アイデアを打ち込めば生成AIによって脚本ができてしまったり、俳優の写真データを複製することでいくらでも動画が作れるようになってしまいました。その動画の著作権は誰に帰属するのか。AIで作れるようになったことで、これまでなら受け入れられなかったような低い対価で仕事を受けざるをえない可能性も出てきます。ルール作りがまだできていないなか、技術だけがものすごい速さで発達してしまう危機感。人間が作るものへの権利をちゃんと保証してほしいと訴えているのです。生成AIに関する規制作りを求めて、組合は映画会社や配信会社と交渉を続けてきましたが決裂し、ストライキに入りました。本来は日本でもそうした議論が必要なのですが、まだ起きていません。また、これは映像業界だけの問題ではありません。コンサルティング会社マッキンゼーの生成AIに関するレポートによると、2030~2060年の間に半数以上の仕事が自動化されるそうです。まず、マーケティングやプログラミング、コンサルタント業やPR業などが変わるだろうといわれています。エンターテインメントはアメリカを支えてきた基幹産業の一つであり、アメリカの文化そのもの。それを破壊しないでくれ、という訴えはとてもよくわかります。人間の手で生み出すものにどういう報酬の仕組みを作るのか。皆で知恵を出し合っていかないといけないのだと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年9月13日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年09月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「岸田総理、中東歴訪」です。各国が陣営に取り込もうと必死。日本の勝算は?岸田総理は7月にサウジアラビア、UAE、カタールを訪問しました。この3か国とバーレーン、オマーン、クウェートは互いの防衛と経済発展のために「GCC(湾岸協力理事会)」を1981年に設立。日本とGCC諸国との結びつきは極めて強く、輸入額は15兆円以上、その多くがエネルギーです。また、車や鉄鋼、建設用機械など約2兆円規模の輸出を行っています。GCCに対しては、中国は昨年末に共同でサミットを開催し、安全保障分野やエネルギーでの協力を約束しました。ロシアは7月にGCC諸国と共同声明を発表。エネルギーの供給で合意を交わし、関係を強化しています。アメリカは6月にブリンケン国務長官がGCC・米国合同閣僚会議に出席し、連携を確認するなど、各国が自分たちの陣営に引き入れようと必死なんです。GCC諸国はいまは化石燃料でもっていますが、それらの需要が減少する将来を見据え、EUとの結びつきを強めて、再生可能エネルギー分野の研究開発を積極的に行っています。今回の岸田総理の中東訪問は、経済界からの強い要請があり実現しました。日本は2006年ごろからGCC諸国と自由貿易協定を結ぼうと協議を始めていましたが、10年近く交渉が進まない状態でした。それは、サウジアラビア皇太子の、ジャーナリスト殺害への関与や、女性に対して抑圧的など国際的に批判が集まるような人権問題が起きていたため、交渉が途絶えていたのです。他国に後れをとってはならないと、経団連が政府に協議の再開を求め、今回総理は企業団を多く引き連れ、大企業だけでなく、中小企業の技術の売り込みなども打ち出しました。日本の技術が、以前のような存在感を示しているとは言い難いですが、注目を集めているのはアニメやゲームなどのコンテンツ分野です。特にサウジアラビアはゲーム産業に投資し、eスポーツ事業に本格的に参戦しています。GCC諸国は、日本にとっては大切な貿易相手国。しかし、人権意識など、自由主義国とは違う価値観を持つ権威主義的な国々と、透明性のあるフェアな関係を築けるのか。非常に難しい舵取りを迫られているんですね。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年9月6日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年09月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「世界の難民情勢」です。想像を絶する数の難民が急増。世界安定の危機に。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)本部が6月に発表した年間報告書によると、2022年末の時点で、紛争や迫害などにより、故郷を追われて強制移動をさせられた人が1億840万人になりました。1年間で1910万人増え、これはこれまでで最大の増加になります。国境を越えて逃れた人を「難民」、国内で移動を強いられた人を「国内避難民」と呼びますが、1億840万人のうち6250万人は国内避難民で、全体の60%を占めます。国内で逃げているのなら、難民よりも安心のように感じるかもしれませんが、それは大きな間違いです。国外に逃げられるのは、それだけ経済力や人脈があったり、その距離を移動する余力のある人たち。それすらない人が住まいを追われて、命からがら別の地域に逃げています。その原因が紛争だった場合、激しい紛争地域は国連の支援チームも退避せざるを得ず、食糧や医療の支援を受けられないまま国内に留め置かれている膨大な数の人たちがいるのです。難民の数が急増した理由は、ウクライナ侵攻、スーダンの紛争、その他中東やアフリカ各地、ミャンマーなど、世界中で分断が深まっているためです。また、気候変動による干ばつや水害で移動せざるを得なくなった人もいます。難民の最大の受け入れ国はトルコで360万人。ドイツも210万人を受け入れています。徒歩で隣国に逃れるケースも多く、全難民の20%は貧困国に移動しています。つまり、逃げた先でも、十分な生活も支援も得づらい状況が生まれているんですね。移動先できちんとした職を得られず、生活基盤を築けない場合、武装勢力で働くほかに道がないという最悪の事態も発生しています。スーダンでは、紛争が落ち着いていた時期に教育支援を受けていた子どもたちが、戦闘が激しくなると、新たな戦闘員を確保するために武装勢力にリクルートされるという悲劇が起きています。それは世界的に戦争や紛争の可能性が高まるということで、先進国にとっても無関係な話ではありません。持続可能な世界のために、この難民問題には真正面から取り組む必要があると思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月30日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年08月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「改正入管法」です。難民認定率の低い日本。審査方法を再構築するべき。「出入国管理及び難民認定法」、通称「改正入管法」が6月に成立しました。この改正案は2年前に国会に提出されましたが、長期間入管で留め置かれたスリランカ人女性が、十分な治療を受けられずに亡くなったことを機に、日本の難民認定の制度が問題視され、廃案になりました。ところが、今国会でほぼ同じ内容の法案が再提出され、可決されたのです。改正入管法では、難民認定3回目以降の申請は「相当の理由」がなければ、本国への送還が可能になります。長期に留め置くのが問題なのであれば、帰っていただこうというスタンス。しかし、内戦や迫害など、本国にいては身に危険が及ぶため日本に逃げてきたかもしれない人に対して、強制送還することは正しい判断なのでしょうか?最も問題なのは、難民申請者が本当に難民なのか、不法入国者なのか、適切に判断できているのか不透明だということです。入管の難民認定審査(一次審査)で不認定となり、不服を申し立てた人を二次審査するのが難民審査参与員。法律や国際情勢に関する学識経験を有する人が任命されます。現在110名いますが、1人あたりの審査件数に大きな偏りがあることがわかりました。ほとんどの参与員が年間数件~40数件だったのに対し、NPO法人名誉会長だった柳瀬房子さんだけが’22年だけで1231件審査を行っており、「難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど確認できません」と発言。これに対し、ほかの参与員から異論が集中しました。難民審査は総合的な国際状況をもとに判断しなければなりませんし、申請者は自分を証明するものを何も持たずに逃げてきている場合もあり、本人を特定するのには時間もかかります。年間1000件以上の申請を的確に審査できるのでしょうか?難民申請中は働くこともできませんが、審査が長引けば家族を養うために違法でも働かなければ生きていけない矛盾も抱えています。日本は国連の難民条約に加入しており、難民を受け入れる立場です。今回、準難民というグレーゾーンを設けたことは評価できますが、その前に難民を審査する仕組みを立て直す必要があると思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年08月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「孤独・孤立対策推進法」です。社会全体の課題。官民連携により急ピッチで進む。今年の通常国会で「孤独・孤立対策推進法」が成立しました。孤独や孤立は、「個人の努力が足りない」ものでも、「仕方のない問題」でもありません。社会全体の課題で、社会で解決しなければいけないと、本腰を入れることになりました。この法律は、国主導でできたものではありません。長年孤独・孤立対策や貧困対策などを進めている「自立生活サポートセンター・もやい」や、24時間365日無料・匿名チャット相談を行っている「あなたのいばしょ」など、現場の窮状を知るNPO法人の方々が、前政権時代から「官民で連携してほしい」「国が司令塔となってほしい」「自治体が積極的に対処できるよう目標を定めてほしい」と働きかけていました。これにより、一昨年、孤独・孤立対策担当大臣が生まれ、本法律が成立に至ったのです。基本理念には、「孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要」と書かれています。基本的施策には、国民の理解増進や相談支援の推進、地方公共団体と支援関係者の連携・協働の促進などが盛り込まれました。地方公共団体には孤独・孤立対策地域協議会を設置する努力義務を課し、それを作らない地方公共団体には注意ができるようになります。自殺者数はコロナ禍を機に一気に増えました。令和4年の自殺者数は2万1881人で、前年よりも4.2%増。女性は3年連続で増え続けています。最近では、奨学金の返済苦を理由に自殺をしたと考えられる人が、昨年10人いたという嘆かわしいニュースもありました。女性や子供、若者が孤立しやすい状況のなかで自殺者数が高止まりしており、対策は急務だと、スピーディに法案が可決されました。イギリスや韓国でも自殺者数は増えており、孤独や孤立対策の必要性が謳われるようになりました。日本が世界に先駆けて、この問題に取り組むことにより、そのノウハウを世界に提供できる可能性も出てきます。いま世界の分断は進んでいますが、同じ問題を抱える国同士、国際協調が進み、課題解決がなされることを願います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。※『anan』2023年8月9日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年08月05日