退廃的、エロティック、グロテスク……そんな言葉がぴたりと合ってしまうアートが集まる展覧会が東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれています。会場には、幽霊や地獄図などグロテスクなものから、背景を知ってじわじわと感じるものなど、人間の欲望や闇を描き出した“あやしい”作品がテンコ盛り。この春注目のスポットをレポートします!「生人形」がお出迎え…【女子的アートナビ】vol. 202『あやしい絵展』では、幕末から昭和初期にかけての日本美術を中心に、広告や挿絵、西洋美術なども含めた160点の作品を紹介。美しいだけでなく、退廃的で神秘的、妖艶、エロ、グロなど、人間の欲望やディープな闇の部分を映し出した「あやしい」雰囲気をまとうアートが集まっています。展示は、まず1章のプロローグからスタート。最初の部屋に入ると、薄暗い空間のなかで赤い着物を身につけた一体の人形が待ち受けています。これは生(いき)人形と呼ばれるもの。何か怖~い人形なのかと思ってしまいそうですが、そうではありません。生人形は、幕末から明治にかけて縁日や社寺などの見世物で使われていました。本物の人間のようにリアルに作られていて、今見ると少々怖い感じもしますが、当時はとても人気があったそうです。生人形と同じ空間にいるのが、こちらの猫作品。暗い展示室で見るとけっこうギョッとします。声優の平川大輔さんがナビゲーターをつとめる音声ガイドを聞くと、この猫がときどき登場して、あやしい作品の背景なども教えてくれます。エロティックで退廃的続く2章では、明治から大正にかけての作品が展示されています。ここで注目したいのが、ラファエル前派の画家ダンテ・ガブリエル・ロセッティが描いた官能的な作品《マドンナ・ピエトラ》。マドンナ・ピエトラとは、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの詩のなかに登場する人物で、自分に恋する者を石に閉じ込めてしまう冷酷な女性です。このような美しくあやしげな女性は、西洋でファム・ファタル(宿命の女・魔性の女性)と呼ばれ、多くの芸術作品に登場。ラファエル前派などが描いたこれらの作品は、当時の日本の芸術家たちにも影響を与え、アートや文学作品に登場するようになります。表面的な美に抵抗2章では、表面的な「美」に抵抗した作品も展示されています。例えば、北野恒富の《淀君》は、豊臣秀吉の側室であった淀君が、落城寸前の大坂城で息子の秀頼を守ろうとしている姿を描いた作品。着衣が乱れ、表情はかたく、美しい女性像として描かれていません。本作品では、表面的な美しさではなく、内面にある意志の強さなどが表現されています。最後の3章エピローグでは、大正末から昭和にかけて出版された雑誌の口絵や小説の挿絵などが展示されています。関東大震災後に大きく変化した東京では、都市文化が発展。モダンなファッションが流行し、前衛的な芸術家たちも活躍します。出版界では、エロ、グロものが人気を集め、探偵小説や怪奇小説が登場。この展示室では、当時人気だった小村雪岱や高畠華宵などが描いた“あやしい”雰囲気の挿絵や表紙絵を見ることができます。ぜひ会場で!明治期に西洋の文化や技術が急激にもたらされた日本では、芸術の分野でも、日本の古典と西洋文化が入り混じった“あやしい”雰囲気の作品が数多く生み出されました。単純に美しいだけではない、心に刺さる作品の数々を、ぜひ会場でご覧になってみてください。Information会期:~5月16日(日)会場: 東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開館時間: 9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)*入館は閉館30分前まで※本展会期中に限り9:30開館(ただし「MOMATコレクション」、コレクションによる小企画「幻視するレンズ 」は10:00開場)※臨時夜間開館日:金・土曜日以外の以下の日程も20時まで開館4月25日(日)、4月29日(木・祝)、5月2日(日)、5月3日(月・祝)、5月4日(火・祝)、5月5日(水・祝)、5月9日(日)、5月16日(日)*入館は閉館30分前まで休館日: 月曜[ただし5月3日は開館]、5月6日(木)観覧料: 一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料
2021年04月18日大正から昭和初期にかけて活躍した画家・デザイナー、小村雪岱(こむら せったい)の展覧会が三井記念美術館で開かれています。日本画の制作から舞台芸術まで手がけた雪岱は、今ならマルチアーティストと呼ばれるような人。彼の作品はセンス抜群で、令和の時代に見てもしびれます。どれほどステキなのか、作品と会場の様子をご紹介!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 195三井記念美術館で開かれている『特別展 小村雪岱スタイル』では、画家や装幀家、舞台美術家としても活躍した小村雪岱(1887-1940)のクールな作品が集結。肉筆画から、木版画、挿画、装幀本まで100点以上が紹介されています。さらに、彼の作品に影響を受けた現代のデザイナーやクリエイターたちの新作も展示。木彫りやガラス作品などの工芸品も見ることができます。小村雪岱って?小村雪岱は商業美術の世界で活躍した天才デザイナー。出身は埼玉県の川越で、東京美術学校(現・東京藝術大学)で日本画を学び、卒業後は美術系の出版社に入社。2年後に退職して泉鏡花の小説で装幀を担当し、評判となります。その後、資生堂意匠部に入社してデザインを担当。今でも使われている「資生堂書体」の基礎を築きました。36歳で退職したあとは装幀や新聞連載の挿絵、歌舞伎や映画などの舞台装置の原画制作など、多方面で活躍しました。センスよすぎ!会場にはたくさんの作品が並んでいますが、特にステキなのが木版画の数々。必見作品のひとつ目は木版画の《おせん雨》。1933年に東京朝日新聞で連載された邦枝完二の小説『おせん』の挿絵として描かれたものです。小説の舞台は江戸時代の明和期。三美人のひとりとして有名な茶屋の看板娘おせんをめぐる悲恋のストーリーで、この挿絵では、しつこく言い寄る若旦那から逃げる場面が描かれています。(画面右下で黒頭巾をかぶっているのがおせん)絵の半分以上が傘で埋めつくされ、その上をシャープな雨の線が走り、円と直線の配置が秀逸。モノクロームのシンプルな作品ですが、今の時代に見てもとってもおしゃれ。連載当時も雪岱の挿絵が人気となり、新聞の発行部数も増えたそうです。ちなみに、展覧会図録の裏表紙にも本作品がデザインされていて超クールです!想像力をかきたてられる!必見作ふたつ目は、雪岱が装幀を手がけた泉鏡花の小説『日本橋』の見返し絵をもとにした連作原画の版画3点。作品テーマは日本橋界隈の風景です。《青柳》では人物のいない室内の様子が高い視点から描かれ、畳の上に三味線と鼓が並んでいます。柳の葉と畳の緑がさわやかなのですが、ぽつんと置かれた和楽器がちょっと意味深。いろいろと想像力をかきたてられます。《雪の朝》も美しい作品です。降り積もった新雪と家の明かりが描かれ、凛とした空気感が伝わります。必見作三つ目は、『サンデー毎日』に連載された吉川英治の小説『遊戯菩薩』の挿絵原画。黒く塗りつぶされた背景に繊細な線で男女が描写されています。小説のストーリーを知らなくても、この登場人物たちのいる世界に引き込まれていきそうです。会場には、雪岱が装幀を手がけた本もたくさん並んでいます。どれもおしゃれなデザインで、ジャケ買いしたくなるものばかり。センスの良さが光っています。商業美術の分野で活躍した人の作品は、散逸しているケースもあり、展覧会でまとめて見られる機会はあまりありません。ぜひこの貴重なチャンスに、雪岱の多彩なアートワークをご覧になってみてください。Information会期 : ~4月18(日) ※会期中、一部展示替えあり※事前予約制時間 : 11:00~16:00 (入館は15:30まで)休館日 : 月曜日(※2月22日は開館)、2月28日入館料(税込): 一般¥1,300、大学・高校生 ¥800、中学生以下無料※70歳以上¥1,000会場:三井記念美術館
2021年02月25日株式会社アングローバルによるセレクトショップ、ザ ライブラリー(THE LIBRARY)が、多面的な表現方法を持つ画家の小村希史とコラボレーションしたイベント「He絵nka」を5月24日から6月2日まで開催する。イベントでは、ザ ライブラリーのために小村が描き下ろした絵画とTシャツをラインアップ。その他、新しくローンチされるドローイングのアートブックやカセットテープをタブロイドのspecial issueと共に展開。表参道店では5月24日から26日限定で原画の油彩や水彩画も販売する。【プロフィール】小村希史 / Marefumi Komura画家。東京を拠点に活動。これまでの主な展覧会に、2018年「大きな船」/Big Ship」(The Mass)、2017年「銀座/Ginza」(Morioka-shoten)、2016年「Flower Huddle」(The Mass)、2014年「3331Art Fair – Various Collectors’Prizes」(アーツ千代田3331、東京)、2013年「Why not love for Art? ||」 (東京オペラシティ―アートギャラリー)【イベント情報】He絵nka会期:5月24日〜6月2日会場:THE LIBRARY各店舗・オンラインストア※表参道店にて原画の油彩、水彩画を販売(5月24日〜26日の3日間)
2019年05月21日資生堂アートハウスが、9月26日から2017年6月末まで館内設備更新工事に伴い一時休館することが決定し、休館前最後の企画展として、「三人の人間国宝による色絵磁器」と「小村雪岱と資生堂書体」が、7月12日から9月25日まで同時開催される。「三人の人間国宝による色絵磁器」展は、磁器の表面に色の付いた文様を施す「色絵磁器(いろえじき)」の技法で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された3人による作品展。資生堂が1975年から1995年にかけて主催した「現代工藝展」のメンバーである十三代 今泉今右衛門と藤本能道、昨年から資生堂が主催している「工藝を我らに」展のメンバーである十四代 今泉今右衛門に焦点をあてる。会場では、鍋島焼の一種である色鍋島の伝統を継承、発展させた十三代 今泉今右衛門の作品をはじめ、その気品を継承しつつ、現代の色鍋島を展開する十四代 今泉今右衛門、また、上絵具を混色する技法を導入し、写実的な作風を確立した藤本能道の作品約35点が資生堂アートハウスの収蔵品から選ばれて展示される。1616年に日本で最初の磁器である有田焼が誕生し、記念すべき400年にあたる今年開催される本展は、現代における色絵磁器の逸品を見るまたとない機会となる。同時開催の「小村雪岱と資生堂書体」展は、今年設立100年を迎えた資生堂意匠部(現 宣伝・デザイン部)の創設期のデザイナーで、資生堂のイメージ形成に大きく寄与した日本画家の小村雪岱の作品をはじめ、そこから触発された様々な言葉や文字、あるいは詩文などが、現代の宣伝・デザイン部デザイナーが描いた資生堂書体によって展示される。また、会場では雪岱による装幀本が併せて展示され、書籍を彩るための文字のデザインにも優れた足跡を残した雪岱の創作世界に迫る。なお、会期中には、十四代 今泉今右衛門とMIHO MUSEUMの館長で静岡文化芸術大学の名誉教授である熊倉功夫をゲストに迎えた対談「有田焼四百年と今右衛門」が開催される他、学芸員によるギャラリートーク、子どものためのワークショップ「日本画を描く、うちわ絵を描く」が行われる。スケジュールなどの詳細は、資生堂アートハウスのオフィシャルページから確認出来る。【イベント情報】「三人の人間国宝による色絵磁器」(同時開催:「小村雪岱と資生堂書体」)会場:資生堂アートハウス住所:静岡県掛川市下俣751-1会期:7月12日~9月25日時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)料金:無料休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合その翌日)夏季休館:8月15日~18日
2016年07月06日