小説家の染井吉乃さんが13日、亡くなった。幻冬舎のボーイズレーベル「ルチル編集部」の公式ホームページで発表された。ホームページは「読者の皆さまに謹んでお知らせ申し上げます」と書き出し、「2024年5月13日、小説家の染井吉乃先生がご療養中のところご逝去されました」と報告した。続けて「染井先生は、2009年『花冠のセオリー』でルチル文庫に初登場いただきまして以来、優しい筆致ときらめきに満ちた世界観で、数々の魅力的な作品を生み出してくださいました」と感謝。「ご療養の間にも、新作の原稿を完成させるため前向きに力を尽くしておられました」と伝えた。最後に「染井先生を応援いただいておりました読者の皆さま、これからも先生の作品を愛し続けていただけますよう、お願い申し上げます。編集部一同、謹んで哀悼の意を表するとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます」と締めくくった。染井さんは『虹の入江』(小学館)、『蜜月の条件 嘘つきの恋』(徳間書店)などのボーイズラブ小説を手掛けた。■報告全文読者の皆さまに謹んでお知らせ申し上げます。2024年5月13日、小説家の染井吉乃先生がご療養中のところご逝去されました。染井先生は、2009年「花冠のセオリー」でルチル文庫に初登場いただきまして以来、優しい筆致ときらめきに満ちた世界観で、数々の魅力的な作品を生み出してくださいました。ご療養の間にも、新作の原稿を完成させるため前向きに力を尽くしておられました。染井先生を応援いただいておりました読者の皆さま、これからも先生の作品を愛し続けていただけますよう、お願い申し上げます。編集部一同、謹んで哀悼の意を表するとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。ルチル文庫編集部
2024年05月14日お金持ちや身分の高い男性とのロマンティックな恋物語…と思われがちな、海外ロマンス小説。しかし翻訳家の山口真果さんによると、実は恋に加え、女性の背中を押す力も持つ物語なのだとか。イメージで表紙を開かないのはもったいない!めくるめくロマンス小説の世界を覗いてみましょう。アメリカではZ世代に人気が再燃。「ロマンス小説」って、いったい何?一般的にロマンス小説とは、欧米の翻訳恋愛小説の一ジャンルのこと。翻訳家の山口真果さんによると、「ロマンス小説は、【1】ヒロイン(主人公)とヒーロー(恋の相手)が、何かしらの障害を乗り越える恋愛物語で、【2】ヒロインは主体性があり、【3】紆余曲折がありながら最後は絶対にハッピーエンドになる、という構造の物語。ある意味、誰でも安心して読める恋愛小説だと思います」オースティンの『高慢と偏見』など、18~19世紀のイギリスから始まったロマンス小説の歴史。恋愛がテーマであることは変わらないものの、二人の前に立ちはだかる障害の種類や主人公と恋の相手の性別、そして結婚がゴールという結末など、定番のディテールは時代に合わせて変化。「かつては億万長者のマッチョな男性と経済的に恵まれないヒロインの間にある身分の差、のような設定が多かったのですが、最近は、例えば幼い頃に受けたDVによるトラウマを二人で乗り越えるなど、内面の葛藤を克服するプロセスが登場したりしています。またLGBTQを取り扱った作品も増え、白人女性だけでなく黒人やアジア系が主人公の作品が登場したりも。実はロマンス小説は昔から、恋愛だけでなく今を生きる女性の抱える葛藤や問題にもフォーカスしている側面があります。恋のハラハラドキドキを味わわせてくれながら、女性読者に対して“自由に生きていいんだよ”というメッセージも送ってくれている。書き手も読み手も圧倒的に女性が多い世界なので、シスターフッド的な繋がりを感じられることもあります」主人公と恋の相手を待つのは、幸せな結末であるというのも、ロマンス小説の良いところ。そこだけは絶対に変わらない。「幸せの絶頂で本を閉じることができる。それが確約されているので、どんな山あり谷ありでも安心して読むことができる。社会が不安定な今だからこそロマンス小説が支持されるのかもしれません」本は、何度も読み返せるところが最大の長所だと、山口さん。「自分に響いたセリフを読み返すことは、自分自身をエンパワーすることにも繋がります。力になる作品はロマンス小説の中にもたくさんありますので、ぜひお気に入りを見つけてみてください」王道あり、新感覚あり。山口さんおすすめ、珠玉の4 冊舞台は18世紀の英国、ヒロインの腹黒さが痛快!『没落令嬢のためのレディ入門』著・ソフィー・アーウィン訳・兒嶋みなこミラブックス1250円妹を守るため裕福な名士との結婚を狙う没落令嬢のキティは、母の旧友に手ほどきを受け可憐なレディに変身し、社交界の花に。しかし伯爵家の若き当主ラドクリフの反応は…。「お金も地位もないキティは、したたかに男を狙うのですが、ラドクリフは彼女に容赦ない。どうやったらこの二人がうまくいくのか、全然わからないのですが(笑)、驚きのストーリー展開です。ロマンス小説の定形が詰まっているので、初心者におすすめです」仕事に打ち込む看護師と、記憶喪失の男の恋物語。『凍った愛がとけるとき』著・アメリア・アドラー訳・鮎川由美扶桑社1540円仕事に邁進する女性看護師のカリは、悲しい過去を背負っていた。彼女が働く救急病棟に運ばれてきたのは記憶喪失のクレイグ。極寒の町をさまようクレイグとカリは同居生活を送ることに。その後クレイグの正体が判明、さらなる驚きの展開が。「元看護師の作家さんが書いているだけあって、仕事の描写がものすごくリアル。ロマンス小説にありがちな設定ですが、性描写を含まないクリーンな作風が新鮮で人気を集めています」NYの地下鉄で恋をした彼女は手の届かない相手?!『明日のあなたも愛してる』著・ケイシー・マクイストン訳・林 啓恵二見書房1540円NYの大学に編入し、大都会での新生活に四苦八苦する主人公のオーガスト。でもある日、地下鉄でゴージャスな美人を見かけて一目惚れ。次第に仲を深めていくのだが、彼女にはどこか不思議なところがあり…!?「主人公も恋をする相手も女の子。しかも好きになる相手はアジア系。これまでのロマンス小説にはなかった要素が詰まっている作品なのですが、全員が地に足のついたキャラクターなので、スッと物語に入れます」ロマンス小説の新しい扉を開けた、現代の名作。『イット・エンズ・ウィズ・アス ふたりで終わらせる』著・コリーン・フーヴァー訳・相山夏奏二見書房2530円開業したばかりのフラワーショップで働くリリーは、脳神経外科医のライルと恋に落ち、結婚。しかしライルの心にはトラウマがあった。「ヒロインが物語の冒頭に結婚をすることが、ロマンス小説的にはまず斬新。乗り越えるべき障壁が彼の抱えるトラウマというところも、現代の女性たちに響いたポイントだと思います。この作品の登場で、ロマンス小説が新しい時代に入ったと言っても過言ではない、まさに現代を代表する作品です」こちらは原書。「かわいい装丁が増加していて、Z世代には電子書籍よりもSNSにアップできる紙の書籍が人気です」山口真果さん翻訳家、海外文学ブログ「トーキョーブックガール」主宰。英語とスペイン語で、文学から実用書まで、幅広く翻訳を手掛ける。※『anan』2024年2月21日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年02月17日今回は、人気のマンガをクイズ形式で紹介します!マンガのストーリーがどんな結末になるか考えてみてくださいね。イラスト:まのもなお小説家を目指している彼出典:愛カツ彼からのお願い出典:愛カツここでクイズ主人公が彼にクレジットカードを渡した理由は?ヒント!主人公は彼が働かなくても気にしていませんでした。[nextpage title="N;NQl0nq0^0D0_SN0o"]前向きな主人公出典:愛カツ正解は…正解は「彼の夢を応援したいから」でした。主人公は、彼が執筆に必要なものを購入できるようクレジットカードを渡していました。「彼が小説家になる夢を応援したい」と思っている主人公なのでした。※こちらは実際に募集したエピソードをもとに記事化しています。(愛カツ編集部)
2024年01月12日皆さんは、恋人の夢を聞いたことはありますか?今回は、無職の彼氏と付き合っていた女性のエピソードとその感想を紹介します。イラスト:まのもなお彼の夢は小説家小説家を目指している彼と交際中の主人公。作品作りのために必要な備品は、無職の彼の代わりに主人公が購入していました。ある日、友人と彼との結婚の話になると…。もうすぐ28歳だから…出典:愛カツ主人公は、両親に彼が無職だということを伝えていませんでした。彼が大きな賞を受賞したら結婚をしようと考える主人公。その反面、彼は「小説の参考になるんだ!」と主人公のクレジットカードでゲームを購入していました。小説を書かずに、ゲームに明け暮れる彼…。我慢の限界に達した主人公は「ヒモを飼うつもりはない」と彼を追い出しお別れします。その後、別の男性と出会い結婚し、幸せをつかんだ主人公なのでした。読者の感想結婚相手が無職だと、両親の反応が怖いと思ってしまいます。夢を追いかけているにしろ、バイトくらいしてほしいと思いました。(30代/女性)夢を追っているのであれば、努力する姿くらい見せてほしいですね。主人公に甘えて、ゲームばかりになってしまった彼にはがっかりしました。(20代/女性)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。※実際に募集した感想をもとに記事化しています。(愛カツ編集部)
2024年01月06日乃木坂46一期生・高山一実の小説家デビュー作『トラペジウム』が、2024年5月10日(金) にアニメーション映画化され劇場公開されることが決定した。原作は高山が2016年から雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載を開始し、2018年に単行本化された青春小説。自分の力で仲間を集め、アイドルを目指す高校生・東ゆうの10年間を描く。原作者である高山がシナリオなど映画制作に深く関わり、彼女でなければ描けないテーマ「アイドルが放つ輝き」とは何なのか?「アイドル」とは何なのか?という“想い”を追い求めた本作。制作は『ぼっち・ざ・ろっく!』『SPY×FAMILY』のCloverWorksが担当する。本作の主人公・東ゆうを演じるのは、新人ながら『逃げ上手の若君』の主人公・北条時行役に抜擢された結川あさき。そして主題歌は、「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」をコンセプトに、楽曲ごとに「歌い手」「作り手」を替えて発表する音楽プロジェクトMAISONdesが担当することが決定した。結川あさき併せて、ティザービジュアルと特報も公開。ビジュアルには、「わたし一人では、アイドルになれないんだって。」という絶望すら感じさせるキャッチコピーと泣き顔が印象的な主人公・東ゆうが描かれ、特報にはMAISONdesの楽曲と共にアイドルを夢見る少女の苦悩が映し出されている。■原作:高山一実 コメント自分の頭の中にあったものがこうして映画化にまで発展し、嬉しい気持ち・気恥ずかしい気持ち・不安な気持ちと色々な気持ちが溢れています。小説とアニメ制作、全く別の難しさはありましたが、スタッフの皆さんにお力添えいただきながら長い期間にわたり制作に携わらせていただきました。やっと皆さんに観ていただけるということがすごく楽しみです。2024年5月10日(金)、ぜひ劇場にいらしてください。映画『トラペジウム』特報映画『トラペジウム』原作:高山一実 コメント動画<作品情報>『トラペジウム』2024年5月10日(金) 公開公式HP:「トラペジウム」製作委員会
2023年12月12日読書家であり、これまでに数々のSF小説を読んできたというティモンディの前田裕太さん。世界中で一大ムーブメントを起こし、Netflixでの実写化も話題の『三体』をはじめとするSF小説の魅力を語ってくれました。理論に基づいた現実にありそうな物語が好き。――最初に触れたSF作品は何でしたか?筒井康隆先生の『時をかける少女』です。先にアニメを見ていたのですが、僕が好きな『現代語裏辞典』を書いている人が原作者なんだと知り、興味が湧いて読みました。すると、科学的な裏付けや人間ドラマが熱く描かれていて楽しくて。それが高校3年生くらいの時でした。――前田さんが思うSF作品の魅力とはどんなものでしょうか。幼少期には『ハリー・ポッター』や『バーティミアス』などファンタジー作品を読んでいたんですけど、SF作品は、“F=フィクション”に“S=サイエンス”がついているように、理論や理屈があって作られた“本当にあるかもしれない”と思わせてくれるストーリーが面白いです。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界が近づいてきた時に似たワクワク感があるというか。しかも、毎年、さまざまなSF作品が発表されますから、“ようやくあの作品の世界に現実が近づいてきた”と思っていた矢先に、さらに想像を超えた新しいアイデアで描かれた作品が登場するから、結局、いつまでも追いつけない。追いかけても手に入らない好きな人、みたいな魅力もあります(笑)。――近年、中国の作家・劉慈欣の手がけた『三体』シリーズが、世界で大きな話題になっています。バラク・オバマ元米大統領がスピーチで『三体』の話をしているのを聞いて読んでみたら、とんでもなかったです。まさに、出合えて嬉しい作品ですね。『三体』は3部作で、1部が『三体』、2部が『三体II 黒暗森林』、3部が『三体III 死神永生』となっています。それぞれに異なるSFのいいところがグッと色濃く出ていて。1部は歴史を絡めた少し難解な部分があり、2部と3部に関しては、SF要素と、激しいバトルシーンが登場するなどエンターテインメント性が増していきます。1部を読んだ後に、これを超える作品はあるのだろうかと思っていたら、2部で軽く超え、さらに3部でも超えていったので恐ろしいなと思いました。3部の途中からうれションが止まらなくなり(笑)、読み終わった後は30分くらい放心状態になって現実に戻ってこられませんでした。人間の脳みそが、ここまで面白くて楽しいものを考えつくんだなと。想像を裏切るとかではなく、誰も想像のつかない展開が繰り広げられる。つまり、全読者が1000%裏切られるし、リアリティゆえのゾッとする感じも体験できる。エンターテインメント性の高いSF作品の中でもトップクラスに面白いです。世界中のファンたちがこぞって二次創作をしていますが、作品の余白の部分を自分なりに想像して楽しめる、“はかどる”作品でもあると思います。二次創作が熱いというのは、元の作品が最高だという証拠でもありますから。『三体』の出版社が、二次創作作品の中から「これは公式と言っていい」というものにお墨付きを与え、『三体X 観想之宙』として出版しているのも面白いです。――日本でここまで人気になった理由は何だと考えますか?作者の劉慈欣先生は、検閲のために日本の作品を読むことが難しかった時代が終わったタイミングで、小松左京先生の『日本沈没』や、星新一先生の作品に触れ、日本にこんなに面白い作品があるんだと思ったそうで。『三体』の源流を辿ると、日本のSF作品にインスピレーションを受けた部分があることは間違いないとも公言しています。だから日本人は、『三体』で描かれているものに馴染みがないわけではなく、作中で起こる突飛な出来事に対しても、“意味がわからない”で終わらない何かがあると思います。日本のSF黄金世代の源流を濃縮し、劉慈欣先生の味付けをした、エンターテインメントの原液みたいなものが『三体』ではないでしょうか。――内容や言葉が難解で、途中で止まっているという人も少なくありません。前田さんはどのようにして読んでいったのでしょう?結構、いろいろな部分を読み飛ばしながら読みましたね。科学的な部分は本当に何を言っているかわからないところも多く、最初は理解しようと頑張って調べたりもしましたが、個人的には“調べたとて…”くらいだったんです。何度も繰り返し読んでいますが、ちゃんと理解している理論は2割くらいしかないし、それでもめちゃくちゃ楽しめます。難解な部分は、物語の展開に根拠や裏付けがあるよ、適当なことを言っているわけじゃないよ、と伝える時間だと考えています。思っているよりも適当に読んでいいと思いますよ。翻訳をしている大森望先生ですら、「読み飛ばしてますよ」と言っていますから(笑)。登場人物たちの名前も難しいと感じるかもしれませんが、極論を言うと、物語が壮大すぎて一回しか名前の出てこない人もたくさんいます。そういう人は“誰だっけ?”のままでよく、“よく出てくるな”という人だけ覚えておけばいいのかなと。本に主要人物の名前が書かれた小さな冊子が付いているので、気になった人がいたらそれを見れば大丈夫。“地球の歴史で考えたら一人一人の名前なんて覚えられない”くらいの気持ちでいてください(笑)。――ついに実写化もされます。こんな面白い発想や壮大な世界が実写映像化できるのか、どのように描くんだろうか、と思いました。世界中に多くのファンがいるということはプレッシャーもすごいでしょうし、制作側の腕も試されるでしょうし。でも、SF小説を実写化した作品を見ると、本では難解で不明瞭だった描写が、映像で見るとすぐにわかることも多くて。たとえば、「重力に耐えるために接合部分がどうのこうの~」みたいな表現が、映像では部品を映して終わりとか。『三体』も、小説では“わかる人にはわかる”だった部分を、視覚表現によってみんなが理解できるものにしてくれそうだという期待があります。100%、楽しみです!『三体』アジア初のヒューゴー賞受賞作。文化革命で父を亡くし、人類に絶望した女性科学者の葉文潔は、宇宙に向けて電波を発信、それが惑星「三体」の異星人に届く。すると彼らは地球への侵略活動を開始、とんでもない災厄に襲われることになる。『三体II 黒暗森林』『三体III 死神永生』と続く3部作。実写版がNetflixで来年1月から配信予定。劉慈欣 著立原透耶 監修大森望、光吉さくら、ワン・チャイ 訳早川書房まえだ・ゆうた1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。芸人。『ハレバレティモンディ』(札幌テレビ)、『天才てれびくん』(NHK Eテレ)、ラジオ『ティモンディの決起集会』(FM愛媛)などにレギュラー出演中。エッセイの連載も。※『anan』2023年8月30日号より。写真・小笠原真紀取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年08月27日ホン・サンス監督最新作『小説家の映画』より本編映像が解禁された。『逃げた女』キム・ミニと『あなたの顔の前に』イ・ヘヨンの韓国二大女優が共演し、女性たちの友愛と連帯の物語を描く本作。この度解禁された本編映像は、イ・ヘヨン演じる小説家ジュニとキム・ミニ演じるギルスが、心を通わせるきっかけとなるシーン。映像では、映画界で成功を収めたにもかかわらず、このところ出演作が途絶えていた女優ギルスに、クォン・ヘヒョ演じる映画監督ヒョジンが「もったいない。なぜ映画に出ないのか」としつこく問いつめたのを受け、「何がもったいないの?自分のしたいことを楽しんで生きている人を尊重すべきよ!」と怒りにも似た強い口調でヒョジンに反発するジュニの姿が映し出される。ジュニはスランプに陥り、長らく執筆から遠ざかっている小説家だ。女優ギルスが投げかけられる言葉は、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』(16)で一躍注目を集めながらも、以後はホン・サンス監督作品のみに出演を続けるキム・ミニ自身の境遇も彷彿とさせる。そして、ジュニがギルスに代わって映画監督を堂々と一喝するこの出来事をきっかけに、2人はたちまち打ち解け、ジュニはギルスを主演に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛けることになる。また、本作の公開を記念して、6月30日(金)より「フィルムメーカーズ 24 ホン・サンス」(発行:オムロ)が好評発売中。ホン・サンス監督作品の大ファンとして知られ、6月20日に開催された本作のトークイベント付き試写会にも登壇した筒井真理子が責任編集を務め、筒井さんが加瀬亮、深田晃司、町山広美と対談、菊地成孔のエッセイから荒井晴彦へのインタビュー、佐々木敦による論考のほか30本の作品論と、「作家論」と「作品論」を網羅した、ホン・サンス監督初の特集本となる待望の一冊となっている。「フィルムメーカーズ 24 ホン・サンス」は『小説家の映画』の上映劇場をはじめ、書店やAmazonでも7月より発売される予定だ。『小説家の映画』はヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開中。(シネマカフェ編集部)
2023年07月01日6月30日(金)より公開するホン・サンス監督最新作『小説家の映画』の日本公開を記念して、ユーロライブ(東京渋谷区)にて、6月20日(火)特別試写会を実施。上映後に、俳優の筒井真理子をゲストに迎え、聞き手に元東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦によるトークイベントが行われ、作品の見どころについて語った。主演映画『波紋』(荻上直子監督)でも注目を集める筒井さんは韓国の名匠ホン・サンス監督作品の大ファンとして知られ、6月28日(水)に発売が決定した「フィルムメーカーズ24ホン・サンス」(発行:オムロ)でも責任編集を務めている。迷いを抱えながら、人生の新たな可能性に向かって共に歩み出す女性たちの友愛と連帯を描く本作。筒井さんはすでに「3回鑑賞した」と言い、ホン・サンス監督の公私のパートナーであり、主演の「キム・ミニの笑顔が堪らない!」とコメント。矢田部さんも「あの笑顔を引き出せるのはホン・サンス監督だからですよね」と10作目となるキム・ミニとホン・サンス監督のコラボレーションを絶賛。さらに物語終盤にキム・ミニがみせる、多様な解釈が可能な複雑な表情について、筒井さんは「役者のリアル!キム・ミニに対するホン・サンス監督の信頼感がある」と、俳優としての視点から共感のコメントを寄せた。また、ホン・サンス作品への魅力を聞かれると、監督お馴染みの酩酊シーンが特に好きだという筒井さん。俳優たちは実際に撮影中に飲酒しているらしいという裏話を明かし、会場が笑いに包まれるひと幕も。そして「ホン・サンス監督は俳優に何をやってもいいという空間を創り出す。だから俳優たちは自分をさらけ出すことができるのではないか」と語り、「ホン・サンス監督作品は中毒みたいに観に行きたくなる」「常連のキャストが演じているので、自分の中で作品をつなげて物語を作ってしまう楽しみがある」とホン・サンス監督作品の魅力を語った。矢田部さんも約27年間の作家人生で30本もの映画を作り出す、ハイペースの製作スタイルを「こんな映画監督はホン・サンスの他に世界でひとりもいない!」とコメントした。そんなホン・サンス監督への並々ならぬ思いを抱える筒井さんが責任編集を務めた「フィルムメーカーズ24ホン・サンス」はその「作家論」と「作品論」を網羅した、ホン・サンス監督初の特集本となる1冊となっている。『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2023年06月21日「音楽を読んでみた、小説を聴いてみた」小説×音楽のコラボ企画「オトトモジ」シリーズ出版社「双葉社」とインディーズおよび新人アーティストの音楽活動支援を行なう「Eggs」、小説投稿サイト「エブリスタ」の3社が組んで「小説」×「音楽」の新プロジェクト「オトトモジ」をスタートする運びとなりました。「オトトモジ」は「音楽を読んでみた、小説を聴いてみた」をテーマに、小説の世界観を題材に音楽を制作するプロジェクトであり、その第一弾として、『意味が分かると怖い話』で大ヒット中、「短ホラ小説」の名手・藤白圭氏とオルタナティブロックバンド「メリクレット」が強力タッグを組んだ新企画を発表。小説『意味が分かると怖い謎解き―祝いの歌―』とストーリーに出てくる楽曲「by yθur side(仮)」を同時発売&配信開始します。ひとりの国民的女性歌手が自殺した。日本中が悲しみに暮れる中、母親やプロデューサー、ライバル歌手、完コピ配信をするVTuberら関係者10名が曲を持ち寄り、追悼アルバム『祝いの歌』を発売する。しかし、そのアルバムにはこんな怖い噂が……。(『意味が分かると怖い謎解きー祝いの歌ー』あらすじ)同小説に書かれた呪われたアルバムに収録された1曲をインスパイアし「メリクレット」が音楽を制作。小説では描かれなかった新たな世界観が音楽によって広がりをみせ、小説で深まっていくナゾに対する答えを歌詞のなかに見出すことができます。シリーズ累計40万部を突破した『意味が分かると怖い話』の著者による新たな「意味怖」が誕生!ボーカルの力強くも儚い歌声と、耳に残るメロディが新たな恐怖世界へと導く“遊べる”新感覚ホラーをお楽しみください。書籍概要【タイトル】意味が分かると怖い謎解き―祝いの歌―【発売日】2023年8月8日(※予定)【著者】藤白圭【予価】1320円(本体1,200円+税)【出版社】双葉社【体裁】四六判176ページ(※予定)音楽配信概要【タイトル】by yθur side(仮)【配信日】2023年8月8日(※予定)【作詞/作曲】メリクレット※主要音楽配信サイト・各種サブスクリプションサービスにて配信著者プロフィール藤白圭ふじしろけい愛知県出身の作家。デビュー作『意味が分かると怖い話』シリーズは累計40万部を記録するなど、ホラー作品を中心に活躍している。ツイッター(@yukainaousama)にて「短ホラ」毎日執筆中。アーティストプロフィールメリクレット北海道札幌市を拠点に活動中の男女混合4ピースオルタナティブロックバンド。2019年9月に大学の軽音楽サークル内で結成。「涙伝う日常に、奏でる藍の逆さ傘を。」をコンセプトに、精力的に活動中。レニアが織り成す厭世的な詩による情景描写と、ジャンルの垣根を超えた幅広い楽曲群、ちぺの力強くも儚い歌声で、独特の世界観を創り上げている。ちぺ(Vo&Gt)レニア(Gt)斗輝(Ba)Meg(Dr) Eggsとは「Eggs(エッグス)」( )は、株式会社エッグスが運営する、インディーズを中心とした3万組以上のアーティストと50万人以上のリスナーが登録する無料音楽プラットフォームです。個人で活動するアーティストやインディーズ音楽関連企業向けのマネタイズ支援機能として「TOWER CLOUD(タワークラウド)」( )を展開し、国内外の主要音楽配信ストアDSP)へのディストリビューションやYouTubeの収益化、CD制作からタワーレコードでの販売契約まで、アーティスト活動をトータルにサポートしています。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年06月20日『小説家の映画』の公開を間近に控えるホン・サンス監督の4作品のポスターを集めたポスター展の開催が決定した。『逃げた女』のキム・ミニと『あなたの顔の前に』のイ・ヘヨンが共演する『小説家の映画』の公開を間近に控える名匠ホン・サンス監督。6月20日(火)からは「ホン・サンス特集」(~7月6日)の開催が決定しているほか、現在開催中の「韓流映画祭 2023」でも7月21日(金)よりホン・サンスのデビュー作『豚が井戸に落ちた日』の上映が控えるなど、ますます注目が高まっている。この度、開催が決定したポスター展では、日米デザイナーによるホン・サンス監督4作品(『小説家の映画』(22)、『あなたの顔の前に』(21)、『イントロダクション』(21)、『逃げた女』(20))のポスターが展示される。『逃げた女』ポスター『逃げた女』以来、ホン・サンス監督の日本版ポスターを手掛けてきたのは、ウォン・カーウァイ監督『花様年華』(00)や『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』(05)、フレデリック・ワイズマン監督『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(17)をはじめ、ヴィスコンティ、ソクーロフ、ダルデンヌ兄弟、アルモドバル、侯孝賢、大島渚、鈴木清順など、錚々たる巨匠監督たちの宣伝デザインを手掛けてきたグラフィックデザイナー、若林伸重(Akane design)。【アメリカ版ポスター】『あなたの顔の前に』そしてアメリカ版ポスターを手掛けるのは、独立系配給会社Cinema Guildのポスターデザイナーで、ホン・サンス監督作品やジャ・ジャンクー監督『海が青くなるまで泳ぐ』(20)、ワン・シャオシュアイ監督『Chinese Portrait』(18)など、アジアの映画監督たちとの一連のコラボレーションで知られるブライアン・ホン(Brian Hung)。ブライアン・ホンが手掛けた『逃げた女』のポスターは、定額配信サービス「MUBI」が選ぶ「2021年のベスト・ムービー・ポスター」に、『LAMB/ラム』や『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』、『スペンサー ダイアナの決意』といった話題作の海外版ポスターと並び選出され、注目を集めた。本ポスター展は、6月16日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺をはじめ、特集上映が決定したStrangerや代官山 蔦屋書店、全国の一部劇場にて順次掲出を予定している。それぞれ異なるアプローチでデザインされたポスターから、想像力を刺激する深甚なホン・サンスワールドを堪能してほしい。ホン・サンス監督の最新作『小説家の映画』は各界の著名人からも、「外に出よう。会っただれかと、できるだけ率直に言葉を交わして、流れに身をゆだねよう。今スランプのただなかにいる小説家の私は、この映画を見て、すなおにそう思いました」(角田光代・作家)、「自分の陣地から離れてみること、会話を重ねることの可能性を示す映画」(酒井順子・エッセイスト)、「当たり前のように享受する『映画』たちがいかに多くの作為で武装しているかを如実に突きつけてくる」(深田晃司監督)、「『創り続ける』ということの、嘘や怖さを、静かに詰められる感覚だ」(西川美和監督)とアーティストの創作を巡る物語に共感と絶賛の声が届いている。『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年06月09日韓国の名匠ホン・サンス監督の日本公開最新作『小説家の映画』。この度、監督の公私にわたるパートナーとして知られるキム・ミニの魅力にフォーカスした新場面写真と、キム・ミニからの新たなコメントが到着した。第76回(2023年)カンヌ国際映画祭監督週間のクロージング作品に最新作『IN OUR DAY』の出品が発表され、ますます注目が高まる名匠ホン・サンス監督。そんな監督の長編27作目となる本作は、女性アーティスト同士の幸福なめぐり合いを描いた友愛と連帯の物語。キム・ミニが一線から退いた女優を演じ、韓国の大ベテラン女優イ・ヘヨンとW主演を飾った。解禁となった場面写真では、キム・ミニが花束を手にカメラに向かって穏やかな表情を覗かせる姿やひとりで映画館の暗闇に身を潜める場面写真など計7点。ホン・サンス監督の作品は日常に生きる人々のありのままの姿を活写する点がしばしば指摘されるが、キム・ミニは俳優としてカメラの前に立つことについて心境を語った。「もちろん、カメラの前に立つと緊張するものです。それを克服するのが私の仕事です。すぐに克服できる場合もありますが、これはもう台無しだと感じることもあります」と言うキム・ミニ。「普段の私は緊張していますが、演技のためにカメラの前に立つと、もうそんな私ではなくなり、もちろん場合にもよりますが、演技をしている時には解放されていると感じています。なぜならその時、人々に向き合っているのは私自身ではないからです。普段は人前に出ると緊張する私ですが、カメラの前ではより自然に振舞えます」と、カメラの前だからこそ自然になれると明かした。“キム・ミニは映画館がよく似合う”映画館をキーワードにひも解く、キム・ミニとホン・サンス監督の軌跡韓国を代表する女優のひとりとして活躍するキム・ミニは、1982年韓国生まれ。モデルとして活躍したのち、ドラマ「学校2」(99)で俳優デビュー。2012年に出演した、宮部みゆきのミステリー小説「火車」を映画化した『火車 HELPLESS』(ピョン・ヨンジュ監督)での演技が称賛され、パク・チャヌク監督の目に留まったことが『お嬢さん』の出演につながったという。『お嬢さん』は、日本で今年2月に公開された『別れる決心』でも話題を呼んだパク・チャヌク監督による、イギリスの小説家サラ・ウォーターズの「荊の城」を原作にしたミステリー。第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されるなど世界中から高い評価を得、韓国国内だけではなく日本でも大ヒットを記録。キム・ミニの名が国際的に知られるきっかけとなった記念碑的作品。そして近年は、ホン・サンス監督作品を中心に出演を重ねているキム・ミニが主演の作品には、彼女が映画館でスクリーンを見つめるシーンが度々登場する。『正しい日 間違えた日』初めて登場するのは、ホン・サンス監督とキム・ミニが初めてタッグを組んだ記念作『正しい日 間違えた日』(15)。運命的な出会いをした男女がタイミングの違いによって異なる結末を迎える物語を、2通りの展開で描く異色のラブストーリーで、第68回ロカルノ国際映画祭では金豹賞(グランプリ)&主演男優賞のダブル受賞の快挙を果たした。次に登場するのは、ドイツのハンブルクと韓国のカンヌンを舞台に、不倫スキャンダルで異国に逃れてきた女優ヨンヒ(キム・ミニ)の不安や葛藤を繊細な筆致で綴った『夜の浜辺でひとり』(17)。『夜の浜辺でひとり』ホン・サンス監督との2作目のタッグ作となる本作で、儚くも荒々しい美しさを体現したキム・ミニは、その確かな演技力を絶賛され、第63回ベルリン国際映画祭で韓国人俳優初となる銀熊賞(主演女優賞)に輝いた。『夜の浜辺でひとり』以降、ホン・サンス監督作品は男性キャラクターが物語の背景にとどまり、女性中心の物語へとシフトするような作品が増えていくが、そのなかでもとりわけ評価の高い『逃げた女』(20)でも、バッサリと髪を切った“逃げた女”であるキム・ミニは映画館へと赴く。彼女の趣ある表情や女友だちとの再会や会話を通じて、女たちの迷いと優しさ、隠された本心を詩情豊かに描き出し、第70回ベルリン国際映画祭ではホン・サンス監督初の銀熊賞(監督賞)を受賞。そして日本公開最新作『小説家の映画』でも、解禁された場面写真である映画館のシーンが用意されている。ちなみに本作に登場する映画館は、ソウルの人気スポット西大門区にある2021年にオープンしたばかりの注目の映画館、ライカシネマだ。キム・ミニは、そのほかにもイザベル・ユペールとの共演作『クレアのカメラ』(17)をはじめ、『それから』(17)、『草の葉』(18)、『川沿いのホテル』(18)、『イントロダクション』(21)、そして本作『小説家の映画』に続き、新作『IN WATER』(23)と、ホン・サンス監督作に出演を重ね、作品ごとに独特の魅力を発揮。さらに『あなたの顔の前に』(21)と本作『小説家の映画』ではプロダクション・マネージャーも務めている。そして今年、第76回カンヌ国際映画祭監督週間のクロージング作品に選出された最新作『IN OUR DAY』にも出演が発表されている。『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年04月24日ディストピア小説やアンソロジー作品、詩人の書く小説について、ライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。本読みライターの対談で見えてくる、小説界の新潮流とは?ディストピアの世界から新しい価値観や勇気を得る。吉田大助(以下、吉田):世界的には9.11、日本では3.11以降とくに、終末的な世界や監視社会を描くディストピア小説が盛り上がってきました。そのなかで、今すぐ海外出版されてほしいと思わずにいられない衝撃作が夕木春央さんの『方舟』です。簡単に言うと「誰か一人を犠牲にすれば全員が助かるけどどうする?」という、いわゆるトロッコ問題の話ですが、『方舟』は「それは…アリなの!?」と頭を抱えたくなるくらい究極の結論を出したんです。三浦天紗子(以下、三浦):読みました。面白かったけどモヤモヤしたところも多かったかな(笑)。吉田:この作品は人間の醜さや暗黒的な心理描写が特徴の「イヤミス」的な話でもある。つまり、人として越えちゃいけない一線を踏み越えることをOKとすることで可能となった物語。現実では体験しえない感情に小説を通して触れるという意味では、小説らしい小説ともいえる。三浦:それはたしかにそうですね。登場人物と同じ状況に陥ったときに自分ならどうするかと考えたり、思いがけない価値観と出合うのも小説を読む醍醐味のひとつですからね。吉田:ディストピア小説って、いま三浦さんがおっしゃったように「自分ならどうする?」ということや倫理観を突き付けられる思考実験の要素が強いですよね。その意味で、安野貴博さんの『サーキット・スイッチャー』もおすすめです。誰かの犠牲が避けられない状況で、自動運転を担うAIは命の重さをどう判断するかという、これまたトロッコ問題がテーマですが、ハリウッドばりのアクション・スリラーで、何より素晴らしいのは最後に希望を見出していること。ディストピア的想像力をキックする、「ホープパンク」「ソーラーパンク」といった海外SFの潮流とのリンクを感じました。三浦:私はディストピアでは、川野芽生(めぐみ)さんの『無垢なる花たちのためのユートピア』を推したいです。気鋭の歌人である川野さんの初の小説集ということで話題になっていますが、歌人というフックなしに単純にすごい才能の作家が現れたなと。とくに印象的だった一編「卒業の終わり」は、ある秘密を抱えた女学園を舞台に、主人公がどう生きていくかや女性性を問う物語。ハッピーエンドではないけれど、過酷な現実のなかで思いを巡らせて立ち向かうこと自体が美しいのだと気づかせてくれました。若い世代も勇気をもらえる一作だと思います。テーマ切りのアンソロジーは読書の幅を広げるツール。三浦:複数の作家の短編を集めたアンソロジーはこの5年くらいブームです。読書の入り口としても、いろんな作家を知る入り口としても価値があると思います。吉田:アンソロジーでは、昨年末に日韓同時発売された『絶縁』があらゆる意味で感動的でした。村田沙耶香さんを含むアジア9都市9人の作家による“絶縁”をテーマにした作品を編んだもので、冒頭に置かれた村田さんの短編「無」から大傑作。これだけで十分元をとれる素晴らしさです。三浦:韓国実力派作家、チョン・セランさんの発案らしいですね。日韓中、タイやシンガポールなどの気鋭作家が集まり、すべて書き下ろし。「奇跡のアンソロジー」といわれているのも納得です。吉田:出版文化遺産になってもいいくらい前代未聞の本だと思います。制作に約3年かけたみたいですし、本当によくぞやってくれましたと編集者に大拍手です。それぞれの国の今の息吹が反映されていてどれも良作。『絶縁』がアジアの作家を知る入り口になってくれるはずです。三浦:アンソロジーってなかなか売り上げにつながりにくいなかで、想像以上に売れたのが百合小説の『彼女。』です。相沢沙呼さん、織守きょうやさん、斜線堂有紀さんら豪華なラインナップも魅力ですし、ガールズラブという側面だけでなく、女性同士の関係性からジェンダーの問題にまで肉薄し、読みごたえ十分。吉田:百合というポップな看板を入り口にして、女性性の議論にまでたどり着くのは、すごくいい届け方ですね。三浦:最近、詩や短歌の世界から小説への流入が目立っています。それも詩や短歌界のスターが満を持して小説デビューしたというより、小説の完成度でまず注目されて実は詩や短歌の有望株だったというケースが多い印象です。吉田:川野芽生さんも歌人でしたよね。僕はあまりこのジャンルは詳しくないんです。ほかにはどんな方がいますか?三浦:すごいと思ったのは、山﨑修平さん。彼は詩人と文芸評論家の二足のわらじを履きながら小説の世界に来た人。初小説の『テーゲベックのきれいな香り』は、詩人である主人公が「書くとは何か」という問いに向き合う連作集で、わかりやすいストーリーがあるわけじゃないけど、読み進めた先に私自身が見知ったような懐かしい風景や感情がふと現れたりする。そういう面白さが魅力です。吉田:ある意味、新しい小説と位置づけられそうな作品ですね。気になるな~。三浦:中原中也賞を獲った期待の詩人・水沢なおさんも最近、初小説『うみみたい』を出しました。彼女の書く詩は、生と性を連想させるSF散文詩というか、もともと小説っぽかった。そこに物語の仕組みを加えた感じですね。きっと編集者は彼女に小説を書かせるだろうと思っていたから、やっぱりそうだよねと。吉田:この間『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞した井戸川射子さんも、出発点は詩でした。詩や短歌と小説の垣根が、薄くなりつつあるのかもしれません。三浦:それはあるかも。若い世代は文学を自由に捉えて表現していますね。トロッコ問題に通じる!?ディストピア小説。最悪の状況のなかで、死んでもいいのは“誰”?『方舟』夕木春央大学時代の6人の友人と従兄と共に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った3人家族と共に一夜を過ごすことになった。ところが、明け方に地震が起き、扉が塞がれ、さらに浸水してきていることがわかる。そんな状況下で殺人が起こり…。1760円(講談社)AIのトロッコ問題解決法とは!?『サーキット・スイッチャー』安野貴博完全自動運転車が普及した2029年の東京。自動運転のアルゴリズムを開発する企業の社長が車内で襲われ拘束された。襲撃犯は車に爆弾を仕掛けて首都高の封鎖を要求するが…。現役SEが専門知識を駆使して描く疾走感あふれるサスペンス。1870円(早川書房)美しく残酷な幻想世界を凝縮。『無垢なる花たちのためのユートピア』川野芽生第一歌集『Lilith』で現代歌人協会賞を受賞した著者の初の小説集。花の名前を持つ77人の少年たちと7人の指導者を乗せて伝説の楽園を目指す船で起きた悲劇を描く表題作ほか5編を収録。1870円(東京創元社)トロッコ問題とは、「ある人を助けるために誰かを犠牲にするのは許されるか」という倫理的葛藤を問うもの。世界中で議論が交わされている。「リスクとリスクを天秤にかける、選択と決断の問題でもある。極端に言えばすべての物語がトロッコ問題をテーマとして孕んでいるんです」(吉田さん)ホープパンクの台頭について吉田さんは、「とてつもない絶望のなかに一縷の希望を描くうまさは、伊坂幸太郎さんが天才的。伊坂さんの作品が今続々と新装版で刊行し直されているのは、“絶望だけでなく希望も読みたい”というトレンドに合致している気がします」。編集のセンスが光る!アンソロジー。発想の違いにも注目したいスカート発のとりどりの世界。『朝倉かすみリクエスト!スカートのアンソロジー』朝倉かすみ北大路公子佐藤亜紀佐原ひかり高山羽根子津原泰水中島京子藤野可織吉川トリコひとりの作家が好きな作家たちにお題に沿った短編をリクエストするシリーズ作。元事務員の友人が遺した9号から15号の制服スカート、痴漢の手をかみちぎるスカートの歯、制服の自由化でスカートをはく彼氏…。スカートにまつわる9編を。748円(光文社文庫)コアファンにもビギナーにも。百合の多様性を味わう短編集。『彼女。百合小説アンソロジー』相沢沙呼青崎有吾乾くるみ織守きょうや斜線堂有紀武田綾乃円居 挽新作の百合小説7編と7人のイラストレーターによる扉絵がコラボレーション。女性同士の切実な関係性とルッキズムを描いた斜線堂有紀「百合である値打ちもない」、ミステリー要素を含んだ乾くるみ「九百十七円は高すぎる」などを収録。1925円(実業之日本社)どんなお題で誰に書いてもらうか、テーマ選定と作家のラインナップがアンソロジーのキモと、三浦さんは話す。「ふつうの小説以上に企画力や編集者の腕がものをいう本だと思います。『彼女。』がヒットしたのは、キャッチーな装丁込みで“読みたい”と思わせるバランスが素晴らしかったから。それぞれの作品の扉イラストも小説の世界観を際立ててグッときます。また、作家の朝倉かすみさんが選んだ9人の好きな作家たちに“スカート”というお題で書いてもらった『スカートのアンソロジー』もおすすめ。これも裏テーマとしてフェミニズムがあり、スカートから広がる多彩な物語は示唆に富んでいます」詩人の書く小説に注目。“超小説”で未知の読書体験を。『テーゲベックのきれいな香り』山﨑修平物語は2028年の東京を舞台にスタート。詩人の「わたし」が住む街が災厄に見舞われ、暮らしが混乱をきたすなか、「書くとは何か」「詩とは何か」という問いを追いかける記憶の旅が始まる。装画を手がけたのは浅野忠信さん。1980円(河出書房新社)「生まれる」「産む」生殖行為を考える物語。『うみみたい』水沢なお卵生生物を孵化させるアルバイトをしながら、性行為に対して後ろ向きなうみ。そして、「生まれたくなかった」と思い続けているみみ。美大の同級生だったふたりは同居しながら制作を続けているが…。表題作ほか、3編収録。1760円(河出書房新社)「東直子さんや加藤千恵さん、雪舟えまさん、最近だと、小佐野彈さん、くどうれいんさんなど、歌人で小説を書く人はわりと多いのですが、ここのところ若手詩人の小説デビューが増えていて面白い」と三浦さん。山﨑修平さんと水沢なおさんはその注目株。歌人や詩人の書く小説は、言葉の美しさやリズム感、独特な物語構成や連想的な場面転換など、歌や詩のフィールドで培った巧みな表現力が魅力と三浦さんは言う。「ストーリーや文章の意味をなかなかつかめなくても、磨かれた言葉の美しさや遊びを味わい、書き手の思考の片鱗に触れるのも小説体験として意義が。構えずに手に取ってほしいです」三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月15日2023年4月6日、『ムツゴロウさん』の愛称で知られる動物研究科で小説家の畑正憲さんが亡くなったことが分かりました。87歳でした。産経新聞によると、畑さんが亡くなったのは同月5日。心筋梗塞により、病院で息を引き取ったといいます。動物に関して豊富な知識を持ち、バラエティ番組などでも活躍していた、畑さん。また、小説家としての顔も持ち、1977年には、さまざまな文化分野において活躍した人を表彰する『菊池寛賞』を授賞しています。今なお多くの人の印象に残る畑さんの訃報に、悲しみの声が数多く寄せられました。・もう87歳になられていたのですね…。年齢を考えれば当然だけれども、つらい。・アラフィフ世代の人は、一度は『ムツゴロウ王国』を訪れたいと思っていたはず。・小さい頃から大好きな人で本も買っていました。さびしすぎる。畑さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2023年04月06日ホン・サンスの映画『小説家の映画』が、2023年6月30日(金)より公開される。ホン・サンスが女性たちの友愛と連帯を描く『小説家の映画』映画『小説家の映画』は、韓国・ソウルから少し離れた閑静な町、河南(ハナム)市を舞台に、女性アーティスト同士の幸福なめぐり合いを描いた、友愛と連帯の物語。主人公であるジュニとギルスの2人をはじめ、創作活動に行き詰まったり、何かに挫折した女性たちを映し出し、偶然の出会いから人生の新たな可能性に向かって共に歩み出していく姿をほのかな幸福感とともに描写した。映画作家のホン・サンスが監督・脚本などを務める。尚、『小説家の映画』は2022年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)を受賞しており、ホン・サンスが監督を務めた作品としては、『夜の浜辺でひとり』の主演女優賞、『逃げた女』の監督賞、『イントロダクション』の脚本賞に続く、3年連続4度目の受賞となった。キム・ミニ×イ・ヘヨンがダブル主演『小説家の映画』でダブル主演を務めるのは、キム・ミニとイ・ヘヨン。一線から退いた女優ギルスと、執筆から遠ざかった小説家ジュニをそれぞれ演じる。加えて、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、キ・ジュボンといったキャストも名を連ねている。主人公ジュニ…イ・ヘヨンかつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えた小説家。執筆から遠ざかっていたが、ギルスと偶然出会ったことでギルスに惹かれ、ギルスを主役に映画を撮りたいと持ち掛ける。ジュニを演じるイ・ヘヨンは、巨匠イ・マンヒの娘として生まれ、イム・グォンテクをはじめ多くの巨匠の映画に出演してきた他、『あなたの顔の前に』では2022年国際シネフィル協会賞主演女優賞を受賞した。主人公ギルス…キム・ミニ第一線から退いた女優。偶然出会ったジュニから、ギルスを主役にした映画を撮りたいと告げられる。ギルスは小説家が映画を作ることを「斬新でいい」と考え、ジュニと意気投合する。ギルスを演じるのは、パク・チャヌクの『お嬢さん』や、ホン・サンスの『逃げた女』などに出演した他、『あなたの顔の前に』ではプロダクション・マネージャーを務めたホン・サンスの公私にわたるパートナー、キム・ミニ。映画『小説家の映画』あらすじ長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニが、音信不通になっていた後輩を訪ね、ソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛ける。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラボレーションの行方は……。【詳細】映画『小説家の映画』監督・脚本:ホン・サンス出演:イ・へヨン、キム・ミニ、ソ・ヨンファ、パク・ミソ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングク、キ・ジュボン、イ・ユンミ、キム・シハ製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス2022年/韓国/韓国語/92分/モノクロ・カラー/1.78:1/モノラル/原題:소설가의 영화/英題:The Novelist’s Film/字幕:根本理恵
2023年03月31日小説家の大江健三郎さんが、2023年3月3日に亡くなっていたことが分かりました。享年88歳でした。株式会社講談社が同月13日に発表した内容によると、死因は老衰だとのこと。作家でノーベル文学賞受賞者の大江健三郎さんが3月3日未明、老衰のため逝去されました。享年88。葬儀は家族葬にて執り行われました。ここに、謹んで哀悼の意を表し、お知らせ申し上げます。講談社ウェブサイトーより引用東京大学に在学していた1957年に、大江さんが発表したデビュー作『奇妙な仕事』は、同大学で行われた文芸・評論コンクールで注目を集めました。1958年、23歳の時には、『飼育』が芥川龍之介賞に。以後も多数の作品で功績を残し、1994年には川端康成以来、日本人では2人目となるノーベル文学賞を受賞しました。そのほかの代表作として、『芽むしり仔撃ち』『個人的な体験』『万延元年のフットボール』などがあります。日本の小説界をけん引し、数々の名作を残してきた大江さんの訃報に、ネット上では「とてもショック」「よく作品を読んでいただけに悲しい」といったコメントが上がりました。大江さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2023年03月13日YOASOBI(ヨアソビ)が新曲「セブンティーン」を発表。直木賞作家・宮部みゆきの書き下ろし小説が原作。宮部みゆきの書き下ろし小説を音楽に“小説を音楽にするユニット”YOASOBIの「セブンティーン」は、直木賞作家とのコラボレーションプロジェクト第4弾となる楽曲。宮部みゆきが“はじめて〇〇したときに読む物語”をテーマに書き下ろした小説「『色違いのトランプ』――はじめて容疑者になったときに読む物語」を楽曲化した。物語のあらすじは、「並行世界で起きたテロへの関与を疑われて捕らわれた愛娘の夏穂を救うため、父親の宗一が単身、もう一つの〝鏡界〞へと向かう」というものだ。スリーブから新曲が聴ける!?ローソンとのコラボラテなお全国のローソン店舗では、2023年1月17日(火)より、YOASOBIとコラボレーションした新作ドリンク「YOASOBI ハニーカフェラテ」を発売。ラテのスリーブに記載されている二次元コードを読み込むことで、新曲「セブンティーン」をいち早く試聴することができる。「YOASOBI ハニーカフェラテ」は、ミルクのコクとエスプレッソの苦みに、ハチミツの甘い香りがマッチした、冬にぴったりの1杯。ラテには、YOASOBIのアートワークを数多く手掛ける藍にいなによるイラストを配したスリーブ&シロップが付属する。【詳細】YOASOBI 新曲「セブンティーン」※配信日・CD発売日等リリース情報未定。作詞・作曲・編曲:Ayase歌唱:ikura原作:「『色違いのトランプ』――はじめて容疑者になったときに読む物語」 (宮部みゆき 著 / [『はじめての』(水鈴社 刊)より])<あらすじ>並行世界で起きたテロへの関与を疑われ、捕らわれた愛娘の夏穂。宗一は夏穂を救いに、単身、もう一つの〝鏡界〞へと向かう。■ローソン×YOASOBI新作ドリンク「YOASOBI ハニーカフェラテ」発売日:2023年1月17日(火)取扱店舗:全国のローソン店舗価格:280円キャンペーン内容:スリーブに記載の二次元コードを読み込むことで、未発表の新曲「セブンティーン」を試聴可能。
2023年01月16日彼の気持ちや自分のこと、恋愛そのものがわからない…。そんな、anan読者から寄せられたリアルな恋の悩みに、凪良ゆうさん、早見和真さん、人生経験豊富な小説家のお二人に答えていただきました。生き方の指針にも!必読です。お悩み1:彼の本心を確認すべき…?幼いころから仲良しな男友だちと、最近毎日のように電話で話していて、「お互い35歳になっても相手がいなかったら結婚しよう!」みたいな話になりました(いまは二人ともフリーです)。でもこれって、ノリなのか本気なのか?この友だちは、どういう気持ちでこの話をしたのかよくわからないのですが、それから少し彼を意識するようになってしまいました。気持ちを確認したらいまのいい関係も終わってしまいそうで、聞かない方がいいのでしょうか?男の気持ちってよくわからないです。(29歳・保険)Nagira’s advice「あなたが結婚したいなら、いまから恋愛の道筋を整えて」相談者さんのことを、彼は友人としてとても信用してはいるし、憎からず思っているのは確かだと思います。ただ、おそらく彼にとってはそのときのノリでしかなく、真面目に悩むほどの言葉ではないというか。もし彼が本気なら35歳などという猶予を持たせないはずで、いまプロポーズするでしょうね。それが一般的な男性心理です。それを踏まえて、私が気になるのは、彼の気持ちより相談者さん自身の気持ちなんですね。「自分は彼と結婚したいのか」について、相談者さんが真剣に考えるのが先だと思うんです。もし本気で彼と結婚したいのだとしたら、35歳に向けて、いまから友達というポジションから異性として見てもらうようポジションチェンジをしていく努力が必要なのかな、と思います。Hayami’s advice「いちばん大切なのは、後悔しない決断をすること」僕の周りにもこの手の話は結構ありましたね。基本的に男側から持ちかけていると思うのだけれど、実際にそれが成就したカップルを僕は見たことがないです。正直、男が覚悟を持って言ったわけでもないであろう言葉を、ここまで真剣に捉えて悩む必要はないと思います。独身のまま35歳になって「あのとき責任取るって言ってくれたじゃない」と確認しても、たぶん男は忘れていますよ。これは恋愛の悩みすべてに通じる話だと思うのですが、いちばん大事なのは「あのときあなたがこう言った」と、誰かのせいにしないことじゃないかと。後悔しないためにね。振り回されずに、「自分の幸せを第一に、自分の人生を自分の足で生きるのが正しいよ」と、そう背中を押したいですね。お悩み2:好きだけど、家族とは…。彼のことは好きでも、家族ぐるみのつきあいは、めんどくさそうと感じてしまいます。でも、彼は家族思いで私にも家族ぐるみのつきあいをしてほしいと思っています。そんな彼に、本心は言えません。価値観が違うと言ってしまえばそうなんでしょうが、自分の中で、好きという気持ちとうまく折り合いをつけられません。(30歳・マスコミ)Nagira’s advice「女性だけが我慢する必要なし。価値観のすり合わせが大事です」家族をめぐる気持ちの温度差は、おつきあいしているだけならそう問題になりませんが、もし結婚を視野に入れているのであれば、十分に話し合わないと、のちのち絶対にケンカの種になります。個人的に気になったのは〈好きという気持ちと折り合いをつける〉という表現です。女性が譲歩するのが前提になっている気がして、「なぜいつも女性側が我慢するのだろう、彼にも譲歩してもらえばいいのに」と思ってしまったからです。いずれにしても、大人同士ですから、率直に話し合いをして、価値観をすり合わせていくしかないでしょう。もしかすると彼が相談者さんの気持ちを理解して、寄り添ってくれるかもしれませんよね。Hayami’s advice「もし価値観のズレがあるなら、曖昧なままではダメな重要課題」結婚における家族ぐるみのつきあいって、セックスレス問題と近いと思う。片方が望むのにもう片方が乗り気でないのが不幸なわけで、どっちも同じ気持ちならそもそも問題になりません。結婚とは相手の家族とするものとはよくいわれるし、ある意味本当です。だからこそ、「夫婦優先」という価値観を二人で共有しておく必要があるというか、結婚しようという相手との間では、絶対に譲ってはいけないラインを決めておくことが重要です。でも、軽い気持ちで相談しても、案外男は「気にしなくていいよ」と答えることが多いと思う。だけど、相手の家族を本気で大事にするのって思っているよりも大変なことだぞと、ちゃんと認識させておくことが大事です。お悩み3:失恋して心が空っぽです…。最近彼氏にフラれてから、心が空っぽになって人の幸せを心から祝福できません。大好きだったカップルYouTuberの動画も見るのが辛くなりました。どうしたらまた人のことを好きになったり、人の幸せを祝福できるようになれるでしょうか?(23歳・事務)Nagira’s advice「誰でも失恋直後は虚無を味わう。いちばん効くのは、“ときぐすり”」相談者さんの「フラれて虚無感に囚われていて、人の幸せを喜べない。また恋愛できる気がしない」という気持ちに、とても共感します。私も、離婚した後5年くらい立ち直れなかった時期がありました。それでもいまは好きな人もいるし、とても幸せです。相談者さんはそれだけ一生懸命その彼のことを愛してたのですよね。そういう恋愛をした人なら、またすばらしい恋ができると思います。昔から言われているけれど、失恋を癒すには“ときぐすり(時薬)”しかありません。いつかはその恋愛も相談者さんの血肉になり、いい思い出に変わるはず。いまは自分の傷を癒すため、自分が心地いいと思うことを最優先に、時間もエネルギーも使ってください。Hayami’s advice「いまは人を祝福できなくても自分を責めないで。自然な反応です」大学生のころ、本当に貧乏で住む家がなくて、失恋した友だちの家を転々と渡り歩いていたことがありました。「そんなに落ち込むほど好きになれてよかったね」と友だちを慰めていたけれど、実は、手の中にあったものが突然なくなって心がぼうっとしてるだけで、そう傷は深くないケースが多かったです。その経験を踏まえて言うと、ボロボロに思えても、早晩立ち直って、また誰かを好きになれます。これはもう絶対に。他の人の幸せを祝福できないと言うけれど、それならそれでいいですよ。いまはただ、自分の心が求めてるものに対して素直になればいい。小説家として言わせてもらうなら、そういうときこそ物語の力を信じて、本に救いを求めてほしいなと思います。お悩み4:夫のことは失いたくない…。でも、まだモテたい。10歳年上の男性と結婚して3年経ちます。夫のことは世界でいちばん愛しているし、彼もまた私に対して同じ気持ちという信頼関係は確かなのですが、正直まだモテたいという気持ちが拭えず、夫に内緒で男性と二人で会ったり、関係を持ったりしてしまうこともあります。最近では、10代のころに好きだったけれど音信不通になってしまった人が週1で夢に出てきたり、出会ったばかりの20歳の男性が気になって連絡を取ってしまったり…。いままで好きになるのは、かなり年上ばかりで、初めて年下に対して、可愛いとか好きという感情を覚えて、それも自分の中では新鮮で楽しいのかもと思っています。でも、夫のことは失いたくないので、このままでいいとは思えないのですが、自分の好奇心や欲求に逆らえません。どうしたらよいでしょうか。(27歳・広告)Nagira’s advice「夫を死ぬほど傷つけてまで、よそ見を続ける覚悟はあるか」結婚していても心が動くことも人間にはあると思うんです。だから、夫以外の人に惹かれて揺れたりすること自体は、まったく不思議なことでもダメなことでもないと思っています。しかも相談者さんは、「まだモテたい」とか「好奇心を抑えられない」とか、これまで登場した相談者さんよりずっと自分をわかっていて正直です。それはすごいと思いました。この悩みで真正面から考えなくてはいけないのは、自分の欲望と、大好きな旦那さんとの暮らしを天秤にかけて、どちらが重いのかを決めることなのです。旦那さんにバレたときには、世界でいちばん大事な旦那さんを死ぬほど傷つけることになりますし、離婚されるかもしれない。その覚悟はあるのでしょうか。それを踏まえてなお、うまくゆらゆらとバランスをとったままでいられるのであれば、旦那さんにバレないようにがんばってください。Hayami’s advice「許してもらえるかもという期待はしないでください」いつかすべてが露呈すると思っていてください。そのときに、話せばわかってもらえるとか、いまだけの火遊びだからといった言い訳は受け入れてもらえないと思っておきましょう。これがもし結婚前に「私はあなたのことは大好きだけれど、違う男の人と関係を持つことで自分を満たしてしまうときが来るかもしれない」と、夫さんにちゃんと話していたのならフェアかもしれないですが、まさかそんな話はしていませんよね?その上で、なお浮気を続けるなら、これはもう答えは明白。夫さんがすべてを知ったら、間違いなく愛想を尽かされると思うけれど、その覚悟を持った上でご自由に、です。ただ、自分の心が簡単に満たされる年下の彼と会っているときも、これは忘れてほしくないです。「いま世界でいちばん愛してる夫さんのことを世界でいちばん傷つけてるのは、ほかならぬ自分なんだ」ということを。お悩み5:恋愛って何のためにするの。恋愛はしていますが、結婚に対しては意欲的になれません。もともと結婚願望もそれほどないのですが、将来、結婚できる気もしません。周りは恋愛の先に結婚を意識している人が多いですが、自分はそうじゃないし、でも、じゃあ何のために恋愛しているの?って友人に聞かれて答えに困ってしまいました。恋愛って、何のためにするのでしょう?教えてください。(26歳・広告)Nagira’s advice「結婚や恋愛の前に、まず自立を目指しては」いくつか気になったことがあるんです。〈何のために恋愛しているの?〉とありますが、何のためにもなにも、好きになってしまったら終わり。何のためにもならなくてもしてしまうのが恋愛です。『anan』の読者アンケートで、若い世代、20代とかに「結婚を意識してつきあっている」人の割合がすごく多いことは知りましたが、恋愛の先に結婚があるかないかは、また別の話だと思うんです。同様に、結婚するために恋愛をするというのは本末転倒というか。それでいて、相談者さん自身は結婚願望もないんですよね。答えになっていないかもしれませんが、まず自分の足で立つ、つまり仕事をして自分で自分を食べさせていける人間になることが大事です。小説でも私はそういう女性を書きます。周囲から結婚の圧力を受けているのかもしれませんが、自立できれば、焦って結婚しなくちゃとか考えない気がするんですよね。Hayami’s advice「結婚より独身が幸せだった人生もあったかも」恋愛や結婚をしなければいけないと考えること自体、社会通念に翻弄されてるだけではないのかな、と僕は感じます。恋愛の先に結婚を意識するのも固定観念だし、そんな世間のものさしに縛られる必要なんてないですよね。僕はまったく相談者さんと同じで、ずっと結婚願望ゼロで、周りからもずっと独身だろうと思われていました。なのに、結果的には周りよりちょっと早いぐらいに結婚したんです。家庭を持っている自分の人生を想像したことがなかったからこそ、逆に「ひょっとしたら楽しいかもしれない」と思えて踏み出した。とはいえ、じゃあ、結婚したいまが最高に幸せかといえば、独り身でいた自分の方がひょっとしたら幸せだったかもな、とイフ(if)の人生を想像する気持ちは消えないです。だって正解はわからないから。心から結婚したいという願望や意思がある人のみ、結婚に対して意欲的になればいいのであって、結婚も面白そうと思うようになるまではそのままでいいですよ。なぎら・ゆう京都府在住。2006年にBL作品でデビュー。’19年刊行の『流浪の月』で’20年の本屋大賞を受賞。同作は映画化もされた。2年ぶりの長編となる『汝、星のごとく』は、孤独を抱えた人々が描かれ、感涙必至。はやみ・かずまさ1977年、神奈川県生まれ。2008年『ひゃくはち』でデビュー。’20年『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞、JRA賞馬事文化賞を受賞。最新刊『新! 店長がバカすぎて』は、前作に続き抱腹絶倒。※『anan』2022年11月2日号より。写真提供・講談社(凪良さん)新潮社(早見さん)イラスト・吉田トキオ取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年10月27日Dos Monos(ドスモノス)と小説家・筒井康隆がコラボレーションした新曲「DOG EATS GOD feat. 筒井康隆」が配信リリース。Dos Monos×筒井康隆の新曲「DOG EATS GOD」Dos Monosは、荘子it、TaiTan、没からなる日本のヒップホップユニット。2022年7月には、「時をかける少女」「パプリカ」「残像に口紅を」といった作品で知られる日本文学界の巨匠・筒井康隆と異例のコラボレーションを発表。20分を超える組曲編成のアルバム『だんでぃどん feat. 筒井康隆』をCD発売し、大きな話題を集めた。今回リリースされる新曲「DOG EATS GOD feat. 筒井康隆」は、最新アルバム『だんでぃどん feat. 筒井康隆』の核であり、唯一配信リリースされる楽曲。めくるめく一大音絵巻の如く展開される組曲形式のアルバムの中でも一際骨太なビートの上に、筒井康隆本人による朗読と演劇団体「マームとジプシー」の青柳いづみによる台詞、そしてDos Monosの3人によるラップが絡みつく、ミュータント・ブーンバップ・ソングとなっている。また今回、メンバーの没が描いた3人の似顔絵アーティストビジュアルも公開された。【詳細】Dos Monos 新曲「DOG EATS GOD feat. 筒井康隆」配信日:2022年9月2日(金)※最新アルバム『だんでぃどん feat. 筒井康隆』収録曲。
2022年09月09日小説家・浅田次郎の時代小説『大名倒産』が映画化されることが29日、明らかになった。2023年に全国公開される。同作はベストセラー作家・浅田次郎による傑作時代小説の映画化作。江戸時代、ある若者が、ひょんなことから一国の大名になるが、藩には莫大な借金があった。次々と無理難題に巻き込まれていく若殿を中心に巻き起こる、笑いと涙の傑作エンターテインメントとなる。原作は2019年に上下巻で単行本が発売されると、「面白い!」「こんな浅田作品が読みたかった!」と話題に。9月1日より文庫も発売される。メガホンをとるのは『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18年)、『老後の資金がありません!』(21年)、『そして、バトンは渡された』(21年)など、立て続けにヒット作を世に放つ前田哲監督で、本作で時代劇に初挑戦する。脚本は、映画『七つの会議』(19年)、ドラマ『半沢直樹』(20年) 、『ノーサイド・ゲーム』(19年)、『ブラックペアン』(18年)の丑尾健太郎と、 『特捜9 season2~4』(19年〜21年)、『下町ロケット』(15年)などを手掛ける稲葉一広が共同で務める。
2022年08月29日「ステージド」「ドクター・フー」シリーズで知られるイギリスの人気俳優デヴィッド・テナント主演で、フランスの小説家ジュール・ヴェルヌが1872年に発表した空想冒険小説「八十日間世界一周」をドラマ化した「80日間世界一周」が、「スターチャンネルEX」にて9月16日(金)より独占配信されることになった。1956年に映画化されアカデミー賞で作品賞を含む5冠に輝いた「八十日間世界一周」。今回は製作費約66億円を投じ、各国でのロケ撮影、最新VFXを駆使して壮大な旅を描いた。音楽は『DUNE/デューン 砂の惑星』のハンス・ジマーが担当。個性豊かな3人組が世界を股にかけて繰り広げる大冒険は、BBCほか世界中で大ヒットとなった。今回解禁されたティザー映像では、ロンドンの資産家で世間知らずのフィリアス・フォッグ(デヴィッド・テナント)が、80日間で世界を一周するという賭けをし、従者パスパルトゥー(イブラヒム・コーマ)と、女性ジャーナリストのフィックス(レオニー・ベネシュ)という3人が体験する波乱万丈の旅の一端を見ることができる。アラビアの砂漠をラクダで進み、当時の最新技術であった熱気球や蒸気機関車が登場。そしてフォッグが見せるアクションも満載!ワクワクが止まらない冒険への期待が高まる映像となっている。ジュール・ヴェルヌ作の名作冒険小説を、150年の時を経て最新VFXと新たな脚色で映像化産業革命で様々な交通手段が飛躍的な発達を遂げ、“地球が小さくなった”といわれた19世紀。原作小説が世に出た1872年、たった80日間で世界を1周する大冒険の旅は、当時の感覚でも無謀な挑戦であると同時に、ひょっとしたら実現可能かもしれない、そんな半信半疑でワクワクする物語設定だったはず。そんな時代を超えた物語を、最新のVFX映像でスケール豊かに、臨場感たっぷりに蘇らせたのが本作の見どころ。また、キャラクター設定を一新し、幅広い視聴者の共感を誘う現代的な趣向が凝らされているところにも注目。デヴィッド・テナントが演じる新たな主人公像と、アップデートされたキャラクター設定主人公フィリアス・フォッグに扮するのは、人気俳優デヴィッド・テナント。本作ではフォッグのバックストーリーや内面的な部分を深掘りし、旅を通して変わっていくさまをユーモラスに好演する。また、実の息子タイ・テナントとの初共演も話題となった。フォッグに連れ添う従者ジャン・パスパルトゥーを『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の新進フランス人俳優イブラヒム・コマ。原作では男性だったフィックス刑事は女性ジャーナリストへとアレンジされ、「THE SWARM」『白いリボン』のレオニー・ベネシュが男性社会で奮闘するアビゲイル・フィックスを熱演する。製作費66億円で再現された19世紀の世界と壮大なアドベンチャーコロナ禍のさなか、ロックダウンによる約8か月の中断を経て、南アフリカとルーマニアでのロケ撮影と最新VFXを駆使して製作された本作は、約4000万ポンド(約66億円)の製作費と、総勢約3,000人のスタッフの手によって完成された。同原作を映画化した『80デイズ』(2004)で美術監督を務めたプロダクション・デザイナーが、3人が旅する世界の国々を見事なセットで再現。ルーマニアに再現されたN.Y.のセットには建設に2か月を費やし、また、出演者たちが臨場感を感じられるよう、訪れる国々の香りまで用意したというこだわりぶり。また、ストーリーを盛り上げるのは映画音楽の巨匠ハンス・ジマーによるドラマティックな楽曲。原作小説を幼少期に読んで以来、大ファンだという彼は、本作の脚本を気に入り、プロデューサー陣と作品のテーマを話し合い、撮影が始まる前からテーマ曲の作曲を始めたという。「80日間世界一周」(全8話)は9月16日(金)よりスターチャンネルEXにて配信開始。10月6日(木)より毎週木曜23時~ほかBS10スターチャンネルにて放送。(text:cinemacafe.net)
2022年08月16日“悲しみをたべて育つバンド”あたらよが、小説紹介クリエイターのけんごとコラボレーションすることが発表された。あたらよは東京を中心に活動する4ピースバンドで、ひとみ(Vo / G)を中心に作詞作曲を行い、アートワークや映像もセルフプロデュース。グループ名の「あたらよ」は“明けるのが惜しいほど美しい夜”という意味の可惜夜(あたらよ)から由来している。けんごは自身の動画の総再生数1.1億回超えるインフルエンサーで、TikTokで薦めた作品が続々重版決定。4月28日には小説『ワカレ花』(双葉社)を発売し小説家デビューする。けんご今回のコラボは、けんごがあたらよの楽曲がお気に入りだったということ、そしてあたらよボーカルのひとみが小説が好きでけんごのTikTokをフォローしよく観ていたことがきっかけとなり生まれたもので、『ワカレ花』の作中にはあたらよの記述が登場するとのこと。また、けんごのTikTokアカウントでは、あたらよ初のオリジナル曲「10月無口な君を忘れる」を使用した動画がアップされる予定となっている。■あたらよ ひとみ コメント皆さんこんにちは。あたらよのVo&Gのひとみです。この度、けんごさんのデビュー作となる『ワカレ花』にあたらよを登場させて頂いたということで、本当に嬉しいです。私自身、普段から本を読むことが大好きなので、いつも目にしていた本の中の世界に自分のバンドが存在していることがとても不思議な気持ちになりました。読み終えた後に心の奥がじんわりと温くなるような、こんな素敵な作品に名前を使って頂けたことを嬉しく思います。本当にありがとうございます。■けんご コメント小説紹介クリエイター・小説家のけんごです。「小説の魅力を多くの人に届けたい」僕は、この一心で活動を続けてきました。今回、小説を執筆したのも、この想いがあってのことです。正直なところ、小説は他のエンタメに比べて、作品と出会う"きっかけ"が少ないように思えます。だからこそ、あたらよさんとのコラボは大変光栄です!素敵な音楽と掛け合わさることで、小説の可能性を大きく広げることができると思いました。『ワカレ花』をきっかけに、小説にしかない魅力と、人の心を動かすほどの力がある、あたらよさんの音楽が、たくさんの方に届くことを願っています。<リリース情報>あたらよ1stアルバム『極夜において月は語らず』発売中※初回盤は「あたらよ Acoustic Session」CDを加えた2ディスク仕様配信リンク:【収録曲】01. 交差点02. 夏霞03. 極夜04. 祥月05. 「知りたくなかった、失うのなら」06. 悲しいラブソング07. 嘘つき08. outcry09. 5210. 10月無口な君を忘れる11. 差異【初回限定盤付属Disc2】■「あたらよ Acoustic Session」01. 10月無口な君を忘れる(Piano ver.)02. 夏霞03. 晴るる04. 8.805. ピアス06. 祥月07. 嘘つき08. 優しいエイプリルフール(demo)<ライブ情報>『あたらよ 1st TOUR「極夜において月は語らず」』5月5日(木・祝) 東京・WWWX5月21日(土) 大阪・シャングリラ5月22日(日) 名古屋・SPADE BOX関連リンクオフィシャルサイト
2022年04月12日角田光代さんが5年ぶりに小説を上梓!新作『タラント』は、間違いなく胸が熱くなる長篇小説だ。与えられた命を、どう使うのか。心も魂も揺さぶる5年ぶりの長篇。「ずっと『源氏物語』の現代語訳にとりかかっていて、久々に小説を書こうとしたらプロットの立て方も資料の使い方も忘れていて大変でした」30代後半のみのりは、東京で夫と二人暮らし。故郷の香川に住む甥の陸が不登校と知り、しばらく預かることに。彼らは一通の手紙を機に、寡黙な祖父・清美の過去に思いをはせていく。戦地で片足を失い、義足をつけた祖父の秘めた思いとは――。表紙にも義足で高跳びをする人が描かれているため、未読の人でもこれがパラスポーツが関わる話だとは想像できるだろう。「最初に連載を頼まれた時、東京オリンピックについても触れてほしいという話があって。それで調べているうちに、パラリンピックはイギリスの病院で、戦争で脊髄を損傷した人たちのリハビリのために開いた競技会がおおもとだと知ったんです。平和の祭典と呼ばれているものが戦争がきっかけで始まったことに驚きました。そういうことを考えている時、ふと、“命を使うということ”について書きたいと思ったんです」本作ではみのりの過去も語られる。大学進学で上京、ボランティアのサークルに参加して国内外で活動していた様子も丁寧に描かれる。「日本って、ボランティアや寄付の文化が根付いていないと感じていました。自分がいいことをするのに対して照れと罪悪感があるし、誰かがいいことをすると“偽善だ”という声が出てくる。それこそ昨今はバッシング社会で、人の失敗を絶対に許さない風潮がある。そういう世の中で、なにか善意で行動して失敗したら、もう動けなくなってしまうことってあると思う。それをみのりという人に背負わせました」角田さん自身、NGOの活動に参加しているという。「国際NGOのプラン・インターナショナルのスポンサーになって、いろんな国を視察し、人身売買など女の子たちが虐げられている状況を見てきました。最初に誘われた時には私も、自分がボランティアをやって何になるんだろうと身構えたんです。実際に関わってみると、そういうことではないと思うと同時に、ボランティアの難しさや歯がゆさも感じるようになった気がします」みのりの周囲の人間も、ボランティアに対する姿勢はさまざまだ。きっと読者も、彼らの異なる立場からの言動に心揺れるはず。「迷いなくできる人や、使命を感じられる人もいる。でも大半の人はみのりのようにためらったり迷ったりするんじゃないかと思うんです」作中、何度か登場するのが「タラント」という言葉。〈才能〉〈賜物〉や、〈使命〉といった意味合いだ。「プロテスタントの学校に通っていたので、聖書に出てくる言葉として馴染みがありました。それとは別に大人になってから、人の才能の有る無しってなんだろうとつねづね考えるようになっていて」当初、本作では、どんな人にも与えられた使命があると書こうと考えていたという。だが、「書き終わった時、もしかして自分は、若くして亡くなった人たちにもタラントがあって、それは死んで失われるのではなく、他の人たちが受け継いで生きていくんだ、ってことが書きたかったのかな…と。私は、死んだ人たちのほうを書きたかったのかもしれないです」読み終えたら、角田さんのこの言葉が深く、深く響くはず。角田光代『タラント』東京で夫と暮らすみのりの故郷は香川県。寡黙な祖父にたびたび東京から手紙が届いていると知った彼女は、甥の陸と共に祖父の過去に興味を持つ。一方、そんなみのりには苦い過去があって…。中央公論新社1980円かくた・みつよ2005年『対岸の彼女』で直木賞、’07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、’12年『紙の月』で柴田錬三郎賞、’21年『源氏物語』の完全新訳で読売文学賞など、数多くの賞を受賞。※『anan』2022年3月23日号より。写真・森山祐子(角田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2022年03月22日『TikTok』フォロワー28万人、総再生数1.1億回超!薦めた作品は続々重版!話題の小説紹介クリエイター・けんごが手がけた初の小説は、花をモチーフにした恋愛小説。知念実希人さんを始め、推薦コメントも多数いただいております。出会い、失恋、両思い、別れ――わたしのそばには、いつも花があった。四季折々の恋模様を鮮烈に描いたあまりに切ない物語〈内容紹介〉高校生の遥は通学の電車で、気の立った白猫に遭遇した。戸惑う彼女を助けたのは男子高校生。毎朝、同じ電車で見かける彼を振り向かせようと、遥が取った行動とは。(「始業式」)同じく高校生の冬紗は、入学前から長い入院生活を送っている。ある日、主治医に告げられた過酷な現実。泣いていた彼女に、かつての入院仲間だった春人は声をかける。(「散り桜」)ほか、「夕立ち」「花火」「落ち葉」「コスモス」「雪景色」「ユキヤナギ」の全8編を収録した、2つのストーリーで紡がれる恋愛小説。●早くも大絶賛!推薦コメント多数!知念実希人さん(小説家)「初めての小説と聞いて、なめていました!ごめんなさい。柔らかい筆致から生み出される瑞々しく透明感あふれる空気が、全身の細胞を満たしていく。どこまでもピュアな優しさで彩られる物語に、ぜひ心癒やされて下さい」汐見夏衛さん(小説家)「大切な人のために何かをしたいという思いが、彼らを成長させていく。恋には人を変える力があるのだと改めて感じました」カツセマサヒコさん(小説家)「好きだったから、悲しいし、怒るんだ。ページをめくるたび、やさしさと寂しさがが雪のように降りてきました」●作品特設ページ 〈書籍概要〉【タイトル】ワカレ花【著者名】けんご【発売日】2022年4月28日(木)【予価】1320円(税込)【判型】四六判並製〈著者プロフィール〉けんご小説紹介クリエイター。ショートムービープラットフォーム「TikTok」などのSNSで、わずか30秒ほどで小説の読みどころを紹介する動画を次々に投稿。作品の的確な説明と魅力的なアピールに、SNS世代の10〜20代から絶大な支持を得ている。2021年7月、30年以上前に発表された筒井康隆著『残像に口紅を』(中公文庫)を取り上げたところ、話題となり、年末までに11万部を超える大重版。他にも、小坂流加著『余命10年』(文芸社文庫)、楪一志著『レゾンデートルの祈り』(KADOKAWA)も、紹介をきっかけにヒットにつながり、出版関係者や書店員からは「日本でいちばん本を売るTikTokクリエイター」とも呼ばれている。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年03月15日Twitterのフォロワー数は14.6万人。人気webライターとしての地位を築いた後、2020年に長編小説『明け方の若者たち』で小説家デビューを果たしたカツセマサヒコさん。同作は実写映画化もされ、大きな話題を集めました。小説家デビュー3年目となる今年は、カツセさん曰く「勝負の年」。さまざまなチャレンジを予定されていますが、そのひとつが雑誌『anan』での連載です。一体どんな連載になるのか、『anan』にまつわる思い出とともにお話をうかがいます。『anan』との出合いは、高校生時代!――いよいよ『anan』で連載がスタートします。1年以上前から「なにか書きませんか」とオファーをいただいていて、何度も打ち合わせをしてきたんです。そのなかで、「雑誌連載をした後に、それをまとめて一冊の書籍にしたい」という話が出てきて。これまでは書き下ろしの作品ばかりでしたし、ここでチャレンジしたいと思いました。そうしたら、担当者から「『anan』での連載に決まりました!」と報告を受けて、これはすごいことになってしまったぞ、と。高校生の頃の自分が知ったら、驚くと思います。――高校生時代、『anan』を読んでいたんですか?ぼくが高校1年生の頃、Mr.Childrenの桜井和寿さんが『anan』の表紙を飾ったことがあったんです。『IT’S A WONDERFUL WORLD』というアルバムのプロモーションで、誌面にはインタビューも載っていて。それがとにかく読みたくて、恥ずかしかったんですが、『anan』を手に取ってレジに向かいました。それがぼくと『anan』の出合いですね。でも振り返ってみれば、日常生活の至るところで『anan』を見かけることは多かった気がします。セックス特集号が出るたびにみんなが話題にしていたし、サラリーマン時代の同僚がそれを読みながら盛り上がっていたこともありましたね。――第一話で描かれる物語はまさに「この人生、マシかも」と思えるような読後感でした。なによりも些細な日常の描写がとてもリアルで、カツセさんならではの作風だなと感じます。そもそも、ぼくの人生って派手なことが起きないんですよ。たとえば「家に鷹が飛び込んできて、ルンバと戦っていた」みたいな事件があれば面白いんですけど、身の回りで起きるのは、せいぜい「2日連続でスマホの充電を忘れた」レベルのことばかり。だからそういった些細な出来事を記憶するしかなくて、創作でもそういった日常の出来事を描いてしまうんだと思います。その分、「自分に近しい物語」と思ってもらえるのではないかな、と。でも、日常を描くとすぐに「エモい」と評価されてしまうので、そんな便利な言葉ではすまないようなものを書きたいという気持ちもあります。胸にあるのは「小説家」として生きる覚悟――小説家デビューして、今年で3年目です。長編小説や連作短編を出し、今回は雑誌連載にチャレンジしますが、「小説家」という肩書はなじんできましたか?なじむというか、覚悟した、に近いかもしれません。一度、「小説家」という肩書だけでどこまでやれるか試してみたいんです。そういう意味でも、今年はチャレンジの年だと思っています。もともとweb出身でしたが、いまは雑誌や文芸誌の仕事をメインにしたくて。それでは食えないかもしれない。でも、創作の仕事でどこまで行けるのか、怖いけど、本気で向き合ってみたいと思っています。――カツセさんにとって挑戦でもあるこの連載が、読者にとってどんな存在であってほしいと思いますか?高校時代、とにかくモテたくてファッション誌を読んでいたんです。だけど、特集が組まれているカラーページよりも、後ろの方にある白黒のコラムコーナーが好きでした。ぼくの連載も、そうあってほしい。『anan』を買ったら、まずは特集をしっかり読んでもらって、最後に「そういえば、カツセの連載があったな」と思い出してもらって、読む。そんな感じが理想ですね。『anan』のメインディッシュはあくまでも巻頭特集であって、ぼくの連載はそれを支えるようなもの。読み心地がよくて胃もたれせず、メインを楽しむために存在するような立ち位置を目指したいと思います。ーー自分の心の声に耳を傾けるよう、一つひとつの質問に真摯に答えてくれたカツセさん。かと思えば、ときに冗談を口にし、その場を和ませることも忘れない。そんな真剣さとやさしさを持ち合わせているからこそ、カツセさんが紡ぐ物語は、読み手の心にじんわり沁み入るのかもしれません。いよいよスタートする新連載『傷と雨傘』もきっと、疲れた心をそっと解してくれるような作品になるはずです。カツセマサヒコ1986年生まれ。Webライターを経て、2020年に小説家デビュー。『明け方の若者たち』(幻冬舎)がベストセラーとなり映画化。ファッション誌での連載やラジオなど幅広く活躍中。Information新連載『傷と雨傘』カツセマサヒコ3月9日発売(anan2290号)よりスタートする、小説家・カツセマサヒコの月1連載。「人生って捨てたもんじゃないな」と思えるような言葉をフックに、ふつうの“ワタシ”に起こる、半径5メートル以内の小さな奇跡を描く。SNSからスタートし、人気webライター、そして小説家と、言葉とともに常にキャリアアップしてきたカツセさんによる、“言葉のギフト”をお楽しみに!文・五十嵐 大
2022年03月09日2020年、内博貴主演で小説家・太宰治の生きざまを描いた舞台が、装いも新たに 「浪漫舞台 新装『走れメロス』 ~小説 太宰 治~」として、3月5日(土)~6日(日)森ノ宮ピロティホール(大阪)、3月12日(土)~3月21日(月・祝)自由劇場(東京)で上演される。このたび、メインビジュアルとキャスト第2弾が発表された。小説家である太宰治が若き頃、多くの作家たちとの友情や、彼が愛する女性たちと の愛や苦悩に満ちた波乱の人生を題材として、太宰と共に当時を駆け抜けた親友で作家の檀一雄が書き上げた回想録『小説 太宰 治』をベースに、舞台作品として書き下ろされた本作。今回発表されたメインビジュアルは、登場人物たちが舞台衣装を身にまとい、文豪たちが生きた時代背景を意識し、それぞれの友情、愛情に想いを馳せ佇むイメージカットになっている。さらに、キャスト第2弾として、檀一雄役を舞台、テレビドラマ、映画など活躍の幅を広げる生島勇輝が務めることが決定したほか、石井智也、井上雄太、輝有子らが名を連ねた。なお、公式サイトにて、チケット先行予約が2月2日(水)まで実施されている。【公演概要】「浪漫舞台 新装『走れメロス』 ~小説 太宰 治~」原作:檀一雄『小説 太宰 治』より作・演出:モトイキ シゲキ演奏(ギター):タマ伸也音楽:鎌田雅人<配役>太宰治…内博貴小山初代 / 太田静子<二役>…佐藤江梨子山崎富栄…北原里英津島美知子…原史奈檀一雄…生島勇輝佐藤春夫…市川知宏柿野要一郎…小川史記高橋幸雄…石井智也山岸外史…井上雄太マダム雪子…輝有子山崎晴弘…下村青井伏鱒二…内海光司●公演日程・大阪公演=全3回公演日程:3月5日(土)13:00開演、3月5日(土)17:30開演、3月6日(日)13:00開演会場:森ノ宮ピロティホール(大阪府大阪市中央区森ノ宮中央1丁目17-5)チケット料金:9,500円(全席指定・税込み)チケット先行:公式サイト先行受付中=2月2日(水)23:59まで※チケット一般発売開始日は、2月20日(日)10:00よりお問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~16:00 ※日・祝休業)・東京公演=全12回公演日程:3月12日(土)~3月21日(月・祝)会場:自由劇場(東京都港区海岸1-10-53)チケット料金:9,500円(全席指定・税込み)チケット先行:公式サイト先行受付中=2月2日(水)23:59まで※チケット一般発売開始日は、2月20日(日)10:00よりお問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799(オペレーター平日11:00~18:00 / 土日祝10:00~18:00)主催・制作:浪漫舞台「走れメロス」公演実行委員会(エイベックス・エンタテインメント / プロデュースNOTE)公式サイト: 公式Twitter: @roman_melos()
2022年02月01日漫画家の中村明日美子さん、小説家の榎田ユウリさん共著による『先生のおとりよせ』が、2022年4月からテレビ東京系で実写ドラマ化することが発表されました。『先生のおとりよせ』キャストは向井理と北村有起哉『おとりよせグルメ』を軸に、漫画と小説のリレー形式でつむがれる同作品。コメディとグルメを組み合わせたエンタメ性はもちろん、作品に登場する『おとりよせグルメ』は、実際に購入できるものとあり、人気を博してきました。ドラマでは、ドSで不愛想な官能小説家・榎村遥華を向井理さんが、ドMで明るくフェミニンな漫画家を北村有起哉さんが演じます。向井理さんコメントおとりよせ愛に溢れたキャラクターなので、役自身の思いに負けないよう情熱を持って演じたいと思います。ただ、実際に素晴らしいおとりよせ品をいただけるとのことなので、台本を読んでいるだけでニヤけています。北村有起哉さんコメントフェミニン男子という設定なんですが…、そこのさじ加減が難しそうです。漫画原作をドラマでそのまんまマンガのように安易に演じないように、実写でできることを模索してます。相手役の向井くんや監督と相談しながら自然と役が浮き上がってくれたらなと。家にいながら全国各地のグルメを楽しめる『おとりよせグルメ』。新型コロナウイルス感染症で、『おうち需要』が高まっている現在だからこそ、ドラマもより注目を集めるかもしれません![文・構成/grape編集部]
2022年01月31日『ハウ』プロジェクトが発表となった。映画版は犬童一心が監督を務めて2022年夏に上映、脚本家・斉藤ひろしによる小説版は2月7日(月)に発売となる。またティザービジュアル、超特報映像も公開された。本プロジェクトでは、私たちの最良のパートナーである犬と人との関係をひとつの物語として、小説・映画として展開していく。小説版を担当する斉藤ひろしは『キセキ-あの日のソビト-』や『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『余命1ヶ月の花嫁』とこれまで人と人との温かい繋がりや大切な人への想いを、丁寧に描き続けてきた。今回は自身が生涯、温存してきた愛犬と過ごした大切な思い出をエッセンスに執筆に挑む。映画版の監督を務めるのは『ジョゼと虎と魚たち』や『最高の人生の見つけ方』など数々の作品で数々のヒューマンドラマを描いてきた犬童一心。原作の斉藤ひろしが描きたかった、神秘的で不思議と癒やされる犬の存在が表現された『ハウ』のメッセージ性が、小池賢太郎プロデューサーの心に連鎖し映画化に至った。自身でも愛猫の記事を書くなど動物愛に溢れる犬童監督が原作者・斉藤ひろしと共同脚本としてもタッグ。小説とは少し違った魅力的な世界感で描かれる「犬と人との絆」に期待したい。解禁されたティザービジュアル中央に描かれている温かく存在感のある仔犬がこの物語の主人公・ハウ。ハウは、私たちに大きな愛を与えてくれるすべての犬の象徴として天使のように表現されている。コピーは飼い主を匂わせる人物から、声を失ったハウへの問いかけが描かれ、これから始まる「ハウと私」の物語へ想像を膨らませるものだ。なお映画『ハウ』の公式Twitter、Instagramも開設。ハウの可愛い姿を更新する予定となっている。<原作 / 脚本:斉藤ひろし・コメント>子供のころ、我が家に一匹の野良犬が迷い込み、そのまま家族の一員となりました。 犬は友であり、私の庇護者でもありました。締め切りに追われ、筆も進まぬまま、愛犬と過ごした日々を思い出していたある夜、 この物語が降りてきました。 犬が私たちに示してくれる愛と友情の深さは理解不能なまでに無限大です。きみ、いったい、何者なの?わたしはずっとこの不思議な存在を小説にしたいと思っていました。 人間の都合で声を失った犬が、傷ついた人々に生きる勇気を与えてくれるお話。そんな物語に小池賢太郎プロデューサーが共感してくださり、犬童一心監督の手で映像化されることとなりました。犬童監督は作家として無闇に妥協迎合しない厳しさで創作にのぞみ、 なおかつそれが自然と良質なエンタテインメントを生み出してしまうという、 映画に愛された人です。みなさんに、この作品を観て陽だまりのような温かさを感じていただけたら幸いです。<監督 / 脚本:犬童一心・コメント>『ハウ』は神さまからの贈り物。その旅の中でいくつもの傷ついた心を見つけ寄り添っていく。どんな時も人を信じきる在り方、そのイノセントな魂に心揺さぶられます。毎日撮影をしながら、その瞳の輝きに何度もグッときてしまいました。「ハウ」は、今こそ必要な、他人を思いやる想像力が姿を現したかのようです。きっと、今一番望まれているものがそこに見えて来ます。<プロデュース:小池賢太郎・コメント>2016年春、脚本家、斉藤ひろしさんと、ある映画の脚本の打ち合わせをしている最中に、偶然にもこのハウの物語をお聞きして、深く感銘を受けたことを今でも覚えております。あれから、月日が経ちましたが、今の時代に、映画化が決定して、皆様に、この物語をスクリーンで見て頂けることを本当に嬉しく思っております。犬童一心監督の思いや、斉藤ひろしさんの思いを一身に受け、躍動するハウの勇姿を是非、楽しみにして頂けたらと思います。ハウという一匹の白い犬の存在感。その大きすぎる魅力に、皆様の驚く顔を想像すると、今からわくわくします。『ハウ』2022年夏公開■リリース情報小説『ハウ』2月7日(月)発売
2022年01月14日~幻冬舎グループが運営する「話題の本.com」で小説連載しませんか?~株式会社幻冬舎ゴールドオンライン(本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-9-7、代表取締役:山下征孝)が運営する話題の本.com( にて、短編小説の連載作品の募集が開始しました。小説家を志す方、文章を書くことが好きな方など年齢性別を問わず誰でも応募が可能。編集部の審査を経てWEBに連載記事を投稿することができます。1話あたり2,000~3,000文字程度。月2~3話の更新で、計5~10話の連載をご担当いただきます。純文学、エッセイ、SF、ファンタジー、ミステリー等々ジャンルは自由。たくさんのご応募お待ちしています。小説応募はこちら : 募集概要・応募条件:年齢・経験不問(審査あり)・募集時期:随時・話題の本.comの小説ページ( )にて掲載・連載回数:1作品につき5~10話・文字数:1話につき2,000字~3,000字程度・更新頻度:月2~3話(相談可)・ジャンル:不問※公序良俗に反する内容/表現は禁止いたします。(暴力、賭博、麻薬、売春などの行為を肯定・美化するもの、醜悪、残虐、猟奇的で不快感を与える恐れがあるものなど)※金銭のやり取りは行いません小説連載までの流れ1.小説連載応募フォーム( )に必要事項を記載の上ご応募ください・お名前・メールアドレス・ペンネーム・作品タイトル(仮)・連載回数(仮)↓2.編集部担当者よりメールにてご連絡をいたします。メール宛に今までご自身が書かれた作品(なければ執筆する小説の1話)を送付※ファイル形式は問いません↓3.編集部にて連載可否を審査いたします編集部担当者よりご連絡させて頂きます↓4.連載開始話題の本 .com小説連載応募フォーム : 会社概要商号 : 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン代表者 : 代表取締役 山下征孝所在地 : 〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷4-9-7事業内容 : WEBメディア運営事業・WEBマーケティング支援事業・WEB広告事業・WEBサイト・コンテンツ制作事業URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年10月08日私立恵比寿中学、アンジュルムなどのアイドルソング、アニメソングの作詞家として活躍している児玉雨子さん。初小説集『誰にも奪われたくない/凸撃』が早くも話題だ。「誰にも奪われたくない」は、銀行勤めをしながら作曲家としてもがんばっている園田レイカと、レイカが楽曲提供したアイドルグループ「シグナルΣ(シグマ)」のメンバー佐久村真子(まこ)の関係性の変化を軸に、彼女たちの生きづらさの正体に迫る一編。「凸撃」は、YouTubeで喧嘩凸待ちを配信している〈せまみち〉こと宏通が、顔も生年月日もプロフィールで晒している未成年の〈金キング〉とのやりとりから始まる短編。どちらも、いわゆるシスターフッドやブラザーフッドとは少し違う“連帯の形”が描かれ、はっとする。「人間関係がヒリヒリしている現代において、ネットは悪しきイメージを持たれている部分もあるけれど、匿名やハンドルネームの存在だからこそ、本音が言い合えるとか、つながり癒される瞬間があるのではないかと。実名と同じ名前で活動していたとしても、仕事や社会における名前の意味は、プライベートのそれと違うはず。現実とオンラインの世界が地続きでフラットにつながっている“イマドキの人と人との距離感”のリアリティは、書いてみたいなと思っていました」「誰にも~」で、思わず首肯してしまうのは、レイカ視点で描かれるふたりの距離感の捉え方や、社会や世相を斬る鋭い観察眼。たとえば、レイカと真子との関係は、ある盗撮動画がネットにアップされることによって変わっていく。「アイドルが不祥事を起こすと『男の影響』、整形する女の子に対しては『モテたいから』というように、紋切り型で決めつけてくる。社会の文脈へのアンチテーゼというか、そこにノーを言いたかったんです」「凸撃」でも、せまみちと金キングが次第に心を寄せほっこりしていたかと思いきや…。展開もお見事。「現実は、こんな距離感に落ち着くことも多いのかなと。ただ、どういう顛末であれ手を取り合った瞬間があるのはすばらしいなと」随所にちりばめられている作詞家ならではの刺さるフレーズといい、2編をつなぐ人物を登場させるアイデアといい、鮮烈なデビュー作だ。『誰にも奪われたくない/凸撃』「編集さんとのやりとりはセッションみたいでした」と振り返る。作中曲「ジルコニアの制服」を自身で作詞作曲、YouTubeで公開中。河出書房新社1694円こだま・あめこ1993年、神奈川県生まれ。作詞家、作家。2011年、高校在学中に作詞家デビュー。アイドル曲やアニメ曲を中心に、幅広く歌詞提供。『BRUTUS』で食コラムを連載中。©Miyoko Tamai※『anan』2021年9月29日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年09月27日作詞や詩、エッセイ、絵本の執筆など多方面で活躍する高橋久美子さんが初の小説集を上梓。『ぐるり』は世代も立場も異なる、時に動植物が主人公となる短編集だ。一人でいても、繋がっている。作詞や随筆で人気の著者の初小説集。「最初はエッセイの連載でしたが、途中で別の人の人生を書きたくなって。編集者に“小説に変えてもいいですか”とお願いしたんです」日常の光景や、ファンタジーやSFなど多彩な内容。実体験に基づいているものもあるようで、「男の子が蟻の王国に行く話は、実際に庭の苔をダンゴムシに食べられて、蟻の王国があればいいのにと思いつき、宮沢賢治の童話風に描いたもの。姉妹と母親のベトナムを旅行する話は、私小説といえるかも」見事なオチのある話もあるが、想像の余地を残す作品も。「サビがどこか分からない話って好きなんです。音楽でも聴けば聴くほど味が出るものを“スルメ曲”と言いますが、何回も読み返せる“スルメ小説”ですよね(笑)」いくつかの短編で登場人物がクロスする。ニヤリとするのは「DJ久保田」の2編。他の話の登場人物たちがゲストで登場したり、番組にメールをよこしたり。「私もラジオのパーソナリティをしていますが、ラジオと小説って相性がいい気がして。ゲストやメールをくれるリスナーって、顔は見えないけれどお互いを知っていて、友達みたいに思えますよね。小説の登場人物たちもそうだなって」どの人物にも愛着がわくのは、著者の優しい眼差しがあるから。「人間観察が好きです。人間のことが、すごく好きなんだと思う。嫌な感じの人がいても嫌と思わず“へえーそんなふうに考えるんやー”と思いながら見てしまう」人に言えない思いや孤独を抱いた人も多い。全体を通し、そんな人たちが隣り合わせだと思わせる。「一人で歩いていても通り過ぎるトラックには乗っている誰かがいるし、一人で部屋にいても外には人の気配がある。地球の上でみんな一緒に暮らしているという感覚があります」そんな思いがタイトルにも滲む。「今はコロナ禍で会えない人も多いけれど、だから一層相手のことを考えたりしますよね。孤独と孤独が繋がって、孤独でなくなればいいなと思っています」『ぐるり』さまざまな世代、立場が見つめる光景を自在に描き出した短編集。連載を楽しみにしていたという奈良美智さんが挿絵を描き下ろしている。筑摩書房1540円たかはし・くみこ作家、詩人、作詞家。さまざまなアーティストへの歌詞提供や翻訳などの創作活動を続ける。主な著書にエッセイ集『いっぴき』『旅を栖とす』、詩画集『今夜凶暴だからわたし』など。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年06月08日