これまで100冊以上の絵本を出版し、児童文学界のノーベル賞といわれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞した絵本作家、荒井良二さん。現在では活躍の場を広げ、絵本にとどまらない表現の世界を自由に旅している。そんなアーティストとしての荒井さんが出力全開で臨む展覧会「new born荒井良二いつも しらないところへ たびするきぶんだった」が開幕する。「手のひらで読む絵本世界とはまた異なる世界へ誘ってくれるのではないでしょうか」と学芸員の中村貴絵さん。荒井さんはここ10年ほどの間に新しい活動期に入った。東日本大震災後は被災地をめぐるワークショップツアーを実施、2014~’18年には「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」の芸術監督を務めている。「それまでの表現媒体が絵本だったというだけで、もともと社会の観察者としての一面があったのだと思います。それがこうした活動をきっかけに開花し、アートを媒介に社会や地域、人、歴史とつながっていったのではないでしょうか」本展では代表作の絵本『あさになったのでまどをあけますよ』などの原画の展示に加え、新作絵画や立体作品など約300点を展示。山形ビエンナーレで発表された物語「山のヨーナ」のインスタレーションを再構成した作品や、大分県の公園に設置されたオブジェ《たいようをすいこむモン》のマケット(試作の模型)も登場。開幕前にワークショップの参加者と共に制作した作品も展示予定だ。面白いのはどんなに道具や場所が変わっても、荒井さんの飄々とした物腰はそのままに見えること。「新しいジャンルに飛び込み、表現の枠を広げていくことに躊躇がない現在進行形のアーティストだと思います。ただそこに大きな覚悟はなく、展覧会のタイトルのように、あくまで知らない場所を旅する『気分』であるところが、実に荒井さんらしい」私たちもそんな気分に身を委ねて、荒井良二さんの新しい世界を旅してみたい。『あさになったのでまどをあけますよ』原画 2011年 偕成社、個人蔵 ©Arai Ryoji《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》制作風景《絵の中のぼくとぼくの中の絵》2023、個人蔵 ©Arai Ryoji《流れ星スパーク奏でよギター》2022年、個人蔵 ©Arai Ryojiあらい・りょうじ1956年、山形県生まれ。2005年、アジアで初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。『たいようオルガン』でJBBY賞など国内でも受賞多数。ライブペインティング、ワークショップのほか、作詞・作曲など音楽活動も行う。最新刊は絵本『ねこのゆめ』(NHK出版)。写真:志鎌康平「new born荒井良二いつも しらないところへ たびするきぶんだった」横須賀美術館神奈川県横須賀市鴨居4‐1開催中~9月3日(日)10時~18時8/7休一般1300円ほかTEL:046・845・1211※『anan』2023年7月12日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2023年07月11日2月に総理大臣秘書官を更迭された荒井勝喜氏(55)が7月4日付けで経済産業省の通商政策局担当の大臣官房審議官として復帰した。更迭から5ヵ月での幹部起用は、ネットで物議を醸している。さかのぼること2月3日、荒井氏はオフレコを前提にした記者団の取材に応じた際に、同性婚についての見解を問われ「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ。人権や価値観は尊重するが、認めたら、国を捨てる人が出てくる」などと発言。すると、この差別発言に非難が殺到し、即座に新井氏は更迭されることとなった。その際、岸田文雄首相(65)は「大変深刻に受け止めており、秘書官の職務を解く判断をした。本人からも辞意があった」と言い、「今の内閣の考え方には全くそぐわない言語道断の発言だ。『性的指向』や『性自認』を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない」「任命責任を感じているからこそ今、申し上げた対応をとっている」と述べた。「荒井氏の更迭に際し、立憲民主党の安住淳国会対策委員長(61)は『多様な社会をつくって世界の水準に引き上げることが日本の課題だが、発言は全く逆で極めて差別的である種の暴言だ』と厳しく非難。さらにSNSでは、ゲイやレズビアンといった当事者やその支援者から反発の声も上がっていました。また荒井氏は差別発言の際、『同性婚のことは秘書官室もみんな反対する』とも話していたため、岸田総理周辺にも厳しい視線が注がれました。一連の発言は海外メディアでも報じられ、国外からも非難されたため、『G7広島サミット』を目前に控えるなかLGBT法の可決に向けて急ピッチで話が進みました。ただ、この法案はもともと’21年に超党派議連によって立法化作業が進んでいたにも関わらず、自民党議員らが抗議したことで頓挫したもの。その“付け焼刃”な成立過程に白けるような声が上がるだけでなく、法案の中身に『当事者を置き去りにしている』という指摘が今も後を絶ちません」(全国紙記者)■「差別主義者の顔も見たくない」「岸田息子さんの復帰も早そう」差別発言によって国内外から注目を集めた批判を浴びた荒井氏だったが、しかしこの度、経産省の幹部として復帰することに。そのため、ネットでは《差別主義者の顔も見たくない。隣に住んでるのも嫌だ。辞職しろ》《差別主義者が復活。お友達内閣とお友達官僚》《荒井秘書官、復活って??????更迭の意味無いやん》と非難する声が上がっている。さらに、思わぬ余波も生んでいる。首相といえば、その息子である岸田翔太郎氏(32)が昨年末に総理大臣公邸で親戚と忘年会を開いたことが判明し、6月1日付で更迭されている。そのため荒井氏の“幹部復活”のように、翔太郎氏に対しても「早々と何かしらのポストで復活するのでは?」と訝しむ声がネットで上がっている。《岸田首相の息子を復帰させる口実にも使えそうな人事ですが、その辺り狙ってるんでしょうか?》《あれだろ。「息子を復帰させるための観測気球」この人と比べれば傷ついた人もいないし、とでも思ってんじゃない?》《結局「更迭」って国民受けを良くするためのフェイクなのね 息子もどこかの幹部に復帰するのかな》《岸田息子さんの復帰も早そう》不信感の高まっている荒井氏の復帰。その人事に、世論が納得しているとは言い難いようだ。
2023年07月05日2005 年に児童文学のノーベル賞と称されるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人として初めて受賞し、世界的な評価を受けた荒井良二(1956-)は、絵本作家であると同時に、絵画、立体作品、インスタレーション、音楽、舞台美術など、ジャンルを問わない幅広い分野で活躍するアーティストだ。その多彩な活動を紹介する個展が、神奈川県の横須賀美術館で、7月1日(土)から9月3日(日)まで開催される。同展のタイトルにある「いつも しらないところへ たびするきぶんだった」という言葉は、様々なジャンルの壁を超越して飛び込んだ先の、ルールも分からない「知らないところ」で、それでも自分なりの仕事をするという、創作に対する荒井の姿勢を示しているという。そのチャレンジングな姿勢は、困難や制約も楽しむような、まさしく旅するときの前向きな気持ちに溢れたものなのだ。同展は、そうした旅するような気分で新たな作品を生み出し続ける荒井の創作活動を、新作や過去の作品を織り交ぜて紹介するもの。これまで手がけてきた100冊以上の絵本と書籍のなかから、代表的な作品の原画がずらりと並ぶのが、同展の大きな見どころのひとつだ。また、新作絵画や、大分県の公園に設置されたオブジェのマケット、芸術監督を務めた「山形ビエンナーレ2018」で発表した立体物の再構成など、荒井の創作の現在地も紹介される。展示の最後には、今回の展覧会名とも結びつく新作のインスタレーション《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》が登場する。子供一人ひとりがひとつの家となり、展示室に点在するその小さな家々が、それぞれに物語を内包しながら旅をしていくイメージでつくられたという。来館者は、それぞれの子供たちの物語を想像しながら、会場をゆっくりと巡ることになる。荒井のこれまでの旅をたどり、これからどこへ出かけていくのかを見ていく同展は、ここからまた新しい荒井良二が「誕生=new born」する場ともなるのだろう。色彩豊かな楽しい展示を通して、その創作をめぐる旅を体感したい。<開催情報>『new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった』会期:2023年7月1日(土)~9月3日(日)会場:横須賀美術館時間:10:00~18:00休館日:7月3日(月)、8月7日(月)料金:一般1,300円、大高・65歳以上1,100円展覧会公式サイト:
2023年06月23日映画『花腐し(ハナクタシ)』が2023年11月10日(金)に公開される。主演は綾野剛、監督は荒井晴彦。芥川賞受賞小説『花腐し』を大胆に翻案『花腐し』は、松浦寿輝による芥川賞受賞小説。廃れていくピンク映画業界で生きる映画監督、脚本家志望だった男、2人が愛した1人の女優による、切なくも純粋な愛の物語を描いた作品だ。監督は『⽕⼝のふたり』の荒井晴彦そんな『花腐し』を、『赫い髪の⼥』や『キャバレー⽇記』など⽇活ロマンポルノの名作から、『ヴァイブレータ』や『共喰い』をはじめとする⽇本映画の脚本を数多く⼿がけてきた荒井晴彦が大胆に翻案。映画『⽕⼝のふたり』に続く、自身4作品目の監督作品として自らメガホンを取る。主演は綾野剛主演は『最後まで行く』や『カラオケ行こ!』の公開を控えている綾野剛。共演には、柄本佑とさとうほなみが名を連ねる。栩谷…綾野剛廃れていくピンク映画業界で⽣きる映画監督。もう5年もの間映画を撮れていなかったが、梅⾬のある⽇、伊関と初めて会う。伊関…柄本佑脚本家志望だった男。栩⾕と過去に本気で愛した⼥について語り、その相手が同じ⼥<桐岡祥⼦>だったことをお互いは知り、衝撃を受ける。また、栩⾕から「桐岡祥⼦は死んだ」と告げられる。祥子…さとうほなみ栩谷と伊関が愛した女優。桑⼭…吉岡睦雄寺本…川瀬陽太ピンク映画の監督。リンリン…MINAMO中国からの留学⽣。ハン・ユジョン… Nia韓国からの留学⽣。金…マキタスポーツ栩⾕が⾝を寄せるビルのオーナー。韓国スナックのママ…⼭崎ハコ⼩倉…⾚座美代ピンク映画の製作会社社⻑。沢井…奥田瑛二ピンク映画の脚本家。映画『花腐し』あらすじタイトルに引⽤された万葉集の和歌「花腐し」とは、きれいに咲いた卯⽊の花をも腐らせてしまう、じっとりと降りしきる⾬を表現している。そのタイトル通り、梅⾬のある⽇に栩⾕と伊関は出会い、⾃分たちの愛した⼥について語り始める。そして、3⼈がしがみついてきた映画への夢がボロボロと崩れ始める中、栩谷、伊関、祥子、それぞれの⼈⽣が交錯していく――。【作品詳細】映画『花腐し』公開日:2023年11月10日(金)出演:綾野剛、柄本佑、さとうほなみ、吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、⼭崎ハコ、⾚座美代⼦、奥⽥瑛⼆監督:荒井晴彦原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社⽂庫)脚本:荒井晴彦、中野太配給:東映ビデオ©2023「花腐し」製作委員会
2023年04月20日株式会社ミリオンコンサート協会(所在地:東京都港区、代表取締役:小尾晋之介)は、2023年7月13日(木)、東京文化会館小ホールにて、ヴァイオリニスト荒井英治のソロによる「第2回 無伴奏の世界」を開催いたします。荒井英治は、長く東京フィルハーモニー交響楽団のソロコンサートマスターを務め、現在は日本センチュリー、名古屋フィルハーモニー両交響楽団の首席客演コンサートマスター。東京シティフィル特別客演コンサートマスターとして、オーケストラ、指揮者から厚い信頼と尊敬を得る王道のヴァイオリニストとして活動するほか、弦楽四重奏団、モルゴーア・クァルテットのメンバーとして、知られざる作品を紹介、ELPのキース・エマーソンとも交流をもち、プログレッシブ・ロックを自らの編曲による迫真性に満ちた演奏で聴衆に衝撃を与え続ける鬼才としての顔ももつ稀有なヴァイオリニストです。「第2回 無伴奏の世界」では、時代を超えた多面的な作品から、荒井英治がヴァイオリン一挺で限りない音楽宇宙を描き出します。荒井英治 ヴァイオリニスト【開催概要】公演名 :第2回 無伴奏の世界 荒井英治(ヴァイオリン)日時 :2023年7月13日(木)19:00開演(18:30 開場)会場 :東京文化会館小ホール(東京・上野)演奏曲目:ペンデレツキ:無伴奏ヴァイオリンのための『ラ・フォリア』(2013)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004ストラヴィンスキー:無伴奏ヴァイオリンのための『エレジー』(1944)イザイ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ作品27より 第4番 第5番 第6番入場料金:全席自由 4,000円(税込)【チケット取り扱い】ミリオンコンサート協会 TEL:03-3501-5638ミリオンチケット|検索| ←(オンライン・チケットサービス)※Webサイトからのお申込みはセブンイレブンでのお引き取り東京文化会館チケットサービスTEL:03-5685-0650チケットぴあ Pコード:239833 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年03月24日SKYEのコンサートツアーの最終公演が7月26日に東京・渋谷Bunkamuraオーチャードホールで開催され、2時間20分超にわたって22曲を演奏。ゲストに荒井由実、奥田民生、尾崎亜美が参加し、集まった2000人の観客を沸かせた。SKYEは日本の音楽業界を支え続けてきた鈴木茂(G)、小原礼(B)、林立夫(Ds)、松任谷正隆(Key)の4人が結成した全員70歳の新人バンド。昨年、10月にデビューアルバムを発表。7月14日の名古屋を皮切りに大阪、東京と周り、この日ツアーの最終公演を迎えた。鈴木茂小原礼THE BANDの「The Weight」が場内に流れる中、定刻の19時過ぎ、メンバーがゆっくりとステージに現れる。林立夫のドラム、小原礼のベース、鈴木茂のギターに松任谷正隆のキーボードが順に音を重ねていき「Less Is More」でSKYEのステージが静かに幕を開けた。同曲はSKYEのセッションでいちばん最初に誕生した楽曲で、アルバムの1曲めに収められている。 SKYEはメンバー全員が曲を書き、全員がリードヴォーカルを取れるバンド。1曲めは小原、2曲めの「Dear M」は松任谷正隆、3曲めの「Daydream」では林立夫がリードヴォーカルを聴かせる。林立夫松任谷正隆アルバム収録曲3曲の演奏を終え松任谷正隆から「あらためてSKYEです。僕らのデビューツアーのファイナルにようこそ!」と先ずは客席に向けて挨拶。このツアーにはゲストに荒井由実、奥田民生、尾崎亜美の3人が参加している。「ゲスト目当てにいらっしゃった方も多いと思いますが(笑)、今日はそれを裏切らないショウにしました」と客席の期待を煽りながらアルバム収録曲の「Reach Out To The Sky」「どちらのOthello」を続ける。SKYEの4人のメンバーは半世紀にわたって日本の音楽界の第一線で活躍してきたミュージシャン揃い。ブラス&コーラス3人のサポートこそあるが、基本は4人のメンバーだけで音を出す。時には抑えながら、時には激しくとSKYEが弾き出すサウンドは変幻自在。マニピュレータなんぞに頼らず重厚かつ華やかな音を出し続け客席を圧倒する。奥田民生小原礼はこの日の3人のゲストを三段ロケットに例え、彼らの推進力がこのツアーを支えてくれていると称賛。「先ずは3段ロケットの一番下から火が出ます! ミスター・ロックンロール、 タミオ・オクーダ!」と奥田民生をステージに招き入れる。今回の出演メンバーの中では奥田民生は若手。小原のロケットの例えを受け「どうも、燃料です(笑)。今日は下っ端のペーペーです」と謙遜しながら奥田のファーストソロ収録の「BEEF」に「イージュー★ライダー」をSKYEのメンバーと共に演奏。ここでステージには「家族枠で出てきました! 三段ロケットの二段目です!」と小原の妻、尾崎亜美がジョイン。「私たち燃料としては、割といい働きするよね」と奥田に話しかけ2人で「さすらい」を歌う。このあと、奥田はロケットが離脱するように、ふわふわ~と揺れながらステージを降り、場内の笑いを誘う。尾崎亜美ここからは尾崎亜美のゲストコーナーに。「私のデビューのときに、プロの音楽家の扉を開けてくれた皆さんと、今日はご一緒してます」と1曲めに歌ったのは尾崎のファーストアルバム『SHADY』(1976) に収められた「私は何色」。当時のレコーデイングには松任谷正隆、鈴木茂、林立夫が参加した。松任谷は1枚めと2枚めのアルバムプロデュースも担当。尾崎にとって想い出深いメンバーが再結集した。続いても3人が関わったセカンドアルバム『MIND DROP』(1977) 収録の「初恋の通り雨」を歌う。「この3人は、私の歴史の中でもとっても大事なひとたち」ですと改めて紹介。いちばん最後に尾崎の前に現れたのが夫でもある小原礼。尾崎の海外録音時、小原に参加を依頼したが断られたエピソードを披露。「でも、この4人は私の中でめちゃめちゃ濃い人たちなんです!」とSKYEのメンバーを称えラストは「19歳の頃に作った歌です。この歌で皆さんに知ってもらえるようになりました」と松任谷プロデュースのサードシングル「マイ・ピュア・レディ」を歌って、「二段目、 離脱します!」と、ロケットが回転するようにクルクル回りながらステージを降りた。荒井由実松任谷正隆の奏でるピアノのイントロに乗ってステージには3人目のゲスト、荒井由実が登場。曲は荒井由実が1972年にリリースしたデビューシングル「返事はいらない」。いきなりのレア曲演奏に客席のユーミンファンが湧く。「こんばんは、荒井由実です。さっき一段ロケットとか二段ロケットとか言ってましたが、ようは飛び道具としてやってまいりました!」と話すと場内は大爆笑。「返事はいらない」のレコーディングに参加したのが鈴木茂と小原礼。鈴木とは荒井由実が15歳の頃、デモテープの録音にギターで参加して以来、SKYEのメンバーの中ではいちばん付き合いが長い。小原は「ユーミンがザ・フィンガーズの追っかけやってる頃から知ってるよ!」と思い出話しに花が咲く。SKYEは半世紀以上も前、青学高校時代に鈴木と小原と林の3人で結成したバンド。荒井由実はその頃から彼らを知っており「東京のスタイリッシュキッズの集まり!」と憧れの存在だったそう。続いて歌ったのは75年に発表した6枚目のシングル「あの日にかえりたい」。この曲の録音には林立夫、鈴木茂にキーボードで松任谷正隆が参加した。「(鈴木)茂さん、小原くん、みっち(林)に続いて最後に出会ったのが、残り物に福っていうんですか(笑)」と松任谷正隆を紹介。ユーミンコーナー最後の曲を歌う前に「これでファイナル。ちょっとね、おセンチになっちゃってるんです。これもいい思い出になっていくね、ファーストツアーは1回しかないから」と感傷気味に、この日のステージを振り返る。松任谷は「なるべく普通では聴けない曲やろうかと。次にやる曲は、一緒にやることは2度とないと思います」と紹介したのは「Hong Kong Night Sight」。松任谷のファーストアルバム『夜の旅人』(1977) に収められた楽曲で詞は荒井由実が書き、後に自身のアルバム『水の中のASIAへ』(1981) でカバーした。荒井は「自分でも、とっても気に入ってる曲です。さっきおセンチになってるって言いましたけど、この曲にも同じ気持ちを載せて歌います」と、エキゾチックなサウンドに荒井が情感込めて歌う。2コーラスからは松任谷がボーカルをとる。演奏前に「せっかくだから、小原んちを真似してデュエットやろうかと」と宣言した通り、夫婦でのデュエットを披露。この滅多に観られないサプライズに2000人のオーディエンスも大喜び。このショウでしか観られないのをいくつか用意しましたレアな選曲の連打で客席を大いに沸かせたゲストコーナーが終わると、再びSKYEのメンバーの演奏に戻る。鈴木茂から「『風街ろまん』(1971) を作るときに、松本隆さんから詞を頂いて書いた曲です。ライブでは何回か演奏してましたが、録音することはなかった曲です」とギターを弾きながら歌ったのは、はっぴぃえんどの未発表曲「ちぎれ雲」。50年の時を経て今回のSKYEのアルバムで初めて録音された幻の曲だ。SKYEのコンサートでは演奏の合間にそれぞれのメンバーが制作時のエピソードを話していく。「どちらのOthello」は林立夫がドラムパターンを最初に考え、そこに松任谷が曲をつけた。林立夫はSKYEのサウンド作りを、各々が食べ物を持ち寄る"ポットラック・パーティー"に例える。メンバーみんなが持ち寄って、ひとつのものを作るというスタイルで“整った”曲が「マイミステイク」。仕上げにメンバーが大好きなメンフィスサウンドのフレーバーを、ちょっとふりかけた。コロナ禍のじれったさに加え、小原が自身の生き方を深く懺悔して書いた曲だ。ここでは松任谷、林、鈴木の3人が美しいハーモニーのコーラスを聴かせる。荒井由実+奥田民生+尾崎亜美が登場ここでステージには再び、荒井、奥田、尾崎の3人がジョイン。荒井はこのメンバーを見て「こうやって、ありえない取り合わせが揃うと、フェスのようですね!」と感激。松任谷から「最初にお話したように、このショウでしか観られないのをいくつか用意しました。次の曲でみなさんがリラックスしてくれないと、ボクの立場がないんです」と話すと、奥田は「名古屋、大阪ではこの曲をきっかけにお客さんと打ち解ける感はありましたしね」と受け、演奏されたのは「アジアの純真~これが私の生きる道~渚にまつわるエトセトラ」と続くPuffyメドレー。ご本家のAmiYumiならぬ、尾崎&荒井版での“亜美由実”の登場に客席もオールスタンディングで応える。圧巻は後半。各々がひとつの曲の中で「アジア~」「これが私の~」「渚にまつわる~」の歌詞を歌うマッシュアップを披露。奥田が「隣に釣られないよう気を使った」というほど、超高等テクニックだが、見事にこれを決め、エンディングになだれ込む。ラストは小原の「コロナに負けず突っ走りましょう!」と新アルバムのリード曲「ISOLATION」。豪快なロックンロール・ブギで場内をヒートアップさせ、そのまま奥田の「マシマロ」、尾崎の松田聖子提供曲「天使のウィンク」に荒井由実の「14番目の月」をメドレーで畳み掛け、最後は「ISOLATION」に戻って、大きな拍手の中、本編はここで終了。アンコールでは荒井由実と一緒にエバーグリーンナンバーの「卒業写真」を演奏。小原から「2021年10月にCDデビューが出来て、2022年にこんなにたくさんのお客さんに来てもらって、素晴らしいアーティストの人たちと一緒に出来るなんて感無量です。幸せな気持ちがずっと続くように、もう1曲」とSKYEのメンバーだけで壮大なナンバー「Always」を演奏。ここでメンバーはステージを降りるも、観客の拍手は鳴り止まずセカンドアンコールに応える。松任谷正隆から「このツアーの事、今夜のことは一生忘れないと思います」とアルバムのラストに収められたバラード曲「BLUE ANGELS」を歌い、2時間20分超に及んだSKYEのツアー最終日を締めた。SKYEは、本日7月29日(金) にFUJI ROCK FESTIVAL ’22に出演する。また、この日の模様はスペースシャワーTVにて9月30日(金) 20時より放送される。<公演情報>『SKYE TOUR 2022』2022年7月26日(火) Bunkamura オーチャードホール開場 18:00 / 開演 19:00【セットリスト】01. Less Is More02. Dear M03. Daydream04. Reach Out To The Sky05. どちらのOthello06. BEEF / with 奥田民生07. イージュー★ライダー(with 奥田民生)08. さすらい(with 奥田民生 / 尾崎亜美)09. 私は何色(with 尾崎亜美)10. 初恋の通り雨(with 尾崎亜美)11. マイ・ピュア・レディ(with 尾崎亜美)12. 返事はいらない(with 荒井由実)13. あの日にかえりたい(with 荒井由実)14. Hong Kong Night Sight(with 荒井由実)15. ちぎれ雲16. 川辺にて17. マイミステイク18. Puffyメドレー(with 奥田民生 / 尾崎亜美 / 荒井由実)19. ISOLATION~マシマロ~天使のウィンク~14番目の月(with 奥田民生 / 尾崎亜美 / 荒井由実)■ENCORE20. 卒業写真(with 荒井由実)21. Always22. BLUE ANGELS<リリース情報>『SKYE』発売中『SKYE』ジャケット●【CD盤】3,300円(税込)●【LP盤(2枚組・重量盤)】4,950円(税込)【収録曲】M1. Less Is More作詞:林立夫 / 小原礼作曲:小原礼M2. Dear M作詞:林立夫作曲:松任谷正隆M3. ISOLATION作詞:林立夫作曲:小原礼 / 松任谷正隆M4. どちらの Othello作詞:松任谷正隆作曲:松任谷正隆 / 林立夫M5. Daydream作詞:林立夫作曲:松任谷正隆M6. ちぎれ雲作詞:松本隆作曲:鈴木茂M7. マイミステイク作詞:小原礼作曲:小原礼M8. 川辺にて作詞:松任谷正隆作曲:松任谷正隆M9. Reach Out To The Sky作詞:小原礼作曲:小原礼M10. ROCK’N PINO BOOGIE作曲:鈴木茂M11. Always作詞:小原礼作曲:小原礼M12. BLUE ANGELS作詞:松任谷正隆作曲:松任谷 正隆All songs produced and arranged by SKYE関連リンク日本コロムビア アーティストページ DAYS
2022年07月29日ここは、みなさんの頭の中にあるタロット美術館。重厚な扉を開け、長い回廊を進むと…、数々のタロットが時空を超えて目の前に現れます。占星術・タロットの日本における第一人者である鏡リュウジ先生と元美大生でご自身でもタロットカードリーディングをされる女優の鈴木砂羽さん。おふたりが、さまざまなタロットカードを挟んで、10回にわたりその絵柄の中に眠る物語を紐解いていきます!-------------------------◎出演者紹介■鈴木砂羽女優として数多くの作品に出演。その傍ら「さわにゃんこ」名義でタロットリーディングを楽しむ日々。■鏡リュウジ幅広いメディアで活躍し、絶大な人気を誇る心理占星術研究の第一人者。タロットカードの監修や関連書籍の翻訳・執筆も数多く手掛ける。-------------------------【第1回】実は奥深い! アートや文化としてのタロットの魅力鏡先生・砂羽さん:10年近く前、雑誌の「鏡リュウジと美しき12星座の女たち」という企画でお会いしましたね!鏡先生:その時は、あまりタロットの話はしませんでしたけど、タロットは昔からされるんですか?砂羽さん:はい、昔から好きです。でも、先生と初めてお会いしたときは、まだそこまで夢中になっていませんでした。自分のカードは持っていたけど、大アルカナをちょっと覚えるくらいが精一杯で…。ここ3~4年くらいで、タロットへの興味が深くなってきたんです。***ちょっと解説***タロットは、78枚のカードで構成されています。砂羽さんが話していた「大アルカナ」は、“愚者” “運命の輪” “世界”などの名前がついている22枚のカード。タロットカードを学ぶとき、その入り口となる22枚です。このほかの56枚は、“ワンド” “カップ” “ソード” “ペンタクル”の4種類に分かれていて、それぞれ、エース、2、3、4、5、6、7、8、9、10、ペイジ、ナイト、クイーン、キングの14枚ずつ。この56枚を「小アルカナ」と呼びます。現在では、78枚すべてのカードに深くて詳細な意味があり、絵柄や背景がその意味を物語る役割も果たしています。しかし、78枚という構成とそれぞれの絵柄や意味ができるまでには、長い長い物語があったようで…。それはこれから、最終回までに、だんだんと明らかにしていきます!*****************タロットは、いつ日本にやって来た?ここ何年かでタロットへの興味が深まったという砂羽さんを前にして、鏡先生がまず手に取ったのは、日本のタロットカード。『タロット占いの秘密』という書籍とセットになっているタロットです。鏡先生:日本に、"妖しい"文化としてタロットが本格的に紹介されたのが、1960年代なんです。「妖しい」と言っても、疑似科学的、自己啓発的なスピリチュアルとはだいぶ違います。澁澤龍彦や種村季弘といった文学者がディレッタントな欧州文化の一つとして紹介していましたし、寺山修司もタロットに注目していました。欧米ではカウンターカルチャーを標榜するロックミュージシャンがタロットに心酔していました。レッド・ツェッペリンがアルバムジャケットにタロットを使ったり、あのビートルズだって東洋思想と同じような感覚でタロットに関心を示していたりしたんですよね。大人の消費社会に対して反骨を示す、「カッコイイ」文化としてのタロットがもう少しカジュアルになって日本に伝わりました。こんなふうにカード付きの本が販売され始めたのは1970年代。そして、1974年に発売された、この『タロット占いの秘密』という書籍が、記録的にヒットしたんです。数年前に版元さんに聞いたら、少なくとも80万部くらいは売れたんじゃないかとおっしゃっていました。砂羽さん:80万部!! その数字にも驚きますけど、このカード、絵柄もいいですよね。線画だけなんですけど、シンプルに描かれていて、とてもわかりやすい絵柄ですね。複雑にいろいろと描き込まれていたり、カラフルだったりするよりも、むしろインスピレーションを得やすいタロットなんじゃないかなって思います。鏡先生:こちらの書籍の著者である辛島宣夫さんは、画家としても活動しておられましたからアート的な活動の一環でもあったんでしょうね。そのセンスもあって一般の人たちに広がっていく入口になったんですよ。日本に最初にタロットが伝わったのは、なんと、もう半世紀以上も前のこと! 日本国内だけでも、長い歴史をもっています。異端の匂いのする “妖しい文化”として入ってきたタロットですが、カードに描かれる絵は、当時のアーティストたちの感性を刺激したんですね。タロットの一般化を後押しをしたのがアーティストだったとは、意外です!絵本作家が描くタロットカード最初のタロットカードの大ヒットからおよそ40年を経て、21世紀へ。2003年には、こんなタロットカードが発売されています。鏡先生:こちらの『はじめてのタロット』は、あの荒井良二さんが作画してくださっています。荒井さんは、世界的な絵本作家で、2005年には児童文学界のノーベル賞とも言われるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞されているんですよ。砂羽さん:へぇ。これなら、子どもたちも喜んで見たくなりそうだし、タロットに怖いイメージを抱いている大人も手に取りやすいですね。鏡先生:実は、荒井さんとはご縁があって。昔、雑誌の『Olive』に別のペンネームで占いを書いていたんですが、そのときに挿絵を担当してくださったのが荒井さんなんです。砂羽さん:私、オリーブ少女(※)でした! 当時の記憶はちょっと薄いですが…、このタロットの絵柄はオリーブ少女にも親しまれていたタッチなんですね。『タロット占いの秘密』と『はじめてのタロット』カードの画風はまるで違います。『タロット占いの秘密』のカードは、白と黒のモノトーン。古代エジプトの壁画を彷彿とさせるようなタッチで、眺めていると、なんだか神妙な心持ちに…。一方『はじめてのタロット』のカードは、カラフルな水彩画。描かれている人物の表情も豊かです。見ているうちに、ほっと心が温まったり、なんだかウキウキしてきたりします。タロットカードは時代と共に日本の国内だけでもこんなに大きく変化しているんですね。ここからは、日本を飛び出し、ワールドワイドにタロットを解説していきますので、お楽しみに!※オリーブ少女:雑誌『オリーブ』を愛読者で、「ガーリー」と呼ばれる、新しいタイプの都会的なファッションやライフスタイルにこだわる女性のこと。-------------------------<タロットカード提供>株式会社ヴィジョナリー・カンパニー今回、鈴木砂羽さんと鏡リュウジ先生のおふたりにお話を伺ったのは、タロットやオラクルカードの出版・輸入販売を行う会社、ヴィジョナリー・カンパニーの事務所の一室です。様々なカードが壁一面に並ぶステキな空間からおふたりのトークを届けします。-------------------------※次回もお楽しみに(日曜更新)====================================プロフィール鈴木砂羽女優。1994年映画『愛の新世界』で主演デビュー。同年、ブルーリボン新人賞やキネマ旬報新人賞など受賞。以後も、ドラマ、映画、舞台以外にもバラエティー、マンガの執筆など意外と幅広いジャンルで活躍中。さらに、プライベートでタロットリーディングをするなど占い好きな一面も。鏡リュウジ雑誌、テレビ、ラジオなど幅広いメディアで活躍し、絶大な人気を誇る心理占星術研究の第一人者。占星術、占いに対しての心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新した。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、平安女学院大学客員教授、京都文教大学客員教授など多方面で活動中。鏡リュウジ雑誌、テレビ、ラジオなど幅広いメディアで活躍し、絶大な人気を誇る心理占星術研究の第一人者。占星術、占いに対しての心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新した。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、平安女学院大学客員教授、京都文教大学客員教授など多方面で活動中。はづきパワースポット大国のニュージーランドを活動の拠点として占い師・占い関連のライターとして活躍中。 「言葉が優しく情緒的で力強い」と定評があり、チャット占いChapli(チャプリ)では恋愛にまつわる相談を中心に全国の相談者から支持されている。
2020年11月08日6月の新刊は、個性的でアーティスティックな絵本が勢ぞろい! 詩人の谷川俊太郎さんのなぞなぞ本をはじめ、布川愛子さんや荒井良二さんの素敵な絵本、ひょっとこ&はなさかじいさんをモチーフにした個性あふれる絵本など、絵本界のニューエイジを感じさせるラインナップ。親子で楽しんでみて!キッズにおすすめの新作絵本_01『えほん なぞなぞうた』詩人の谷川俊太郎さんがなぞなぞを問いかけ、絵本作家のあべ弘士さんが答えを描く楽しい絵本。唯一無二のアーティスト2人が組み合わさって、しゃれとセンスがたっぷり詰まった、最高のなぞなぞ本に。37問のなぞなぞは、どれも他では見たことがない意表をついたものばかり。親子で一緒になって楽しみたい。『えほん なぞなぞうた』谷川俊太郎 文、あべ弘士 絵/童話屋キッズにおすすめの新作絵本_02『ひみつがあります』心地よく愛らしいイラストが人気のイラストレーター・布川愛子さんがイラストとストーリーの両方を手がけた初の絵本。うさぎ、カンガルー、リスなど森の動物たちの“ひみつの趣味”をこっそり教えてくれる物語。すみずみまで丁寧に描かれたかわいいイラストは、大人もじっくりと見入ってしまうこと必至。『ひみつがあります』布川愛子/白泉社キッズにおすすめの新作絵本_03『おいらひょっとこ』阿部健太朗さんと吉岡紗希さんの画家ユニット “ザ・キャビンカンパニー”による、独創的でアーティスティックなユーモア絵本。お祭りやお面でおなじみの“ひょっとこ”が、おもしろい顔や動きで楽しませてくれる本。躍動的でダイナミックなイラストが見ごたえあり。親子で一緒にまねっこ遊びをして楽しもう。『おいらひょっとこ』ザ・キャビンカンパニー/ひさかたチャイルドキッズにおすすめの新作絵本_04『いし』絵本作家、シンガーソングライターとして活躍する中川ひろたかさんの新刊。あさりのパスタを食べていたら、「ガリッ」と噛んだ小さな石。あさりから出てきた石のルーツをたどっていくと…。『チーター大セール』『バナナじけん』などの絵本を手がける高畠那生さんによる、カラフルで力強いイラストも最高。『いし』中川ひろたか 作、高畠那生 絵/アリス館(6月10日発売予定)キッズにおすすめの新作絵本_04『はなさかじいさん』日本の古典絵本を現代アーティストが新たな感覚で蘇らせる昔話絵本シリーズ第8弾。世界で活躍するペインター・大河原健太郎さんが、昔話「はなさかじいさん」をポップな世界観にシフトチェンジ。ヒッピー崩れの老夫婦の元にグレイトフルデッドのベア風の犬が迷い込んで…。ポップアートとしても楽しめる新世代絵本。『はなさかじいさん』大河原 健太郎/POO POO BOOKSキッズにおすすめの新作絵本_05『こどもたちは まっている』数々の名作を手がける絵本作家・荒井良二さんの新作は、長新太さんへのオマージュを込めた「地平線」をテーマにした絵本。一本の地平線から始まる夜明け、季節のうつろい、突然の雨、特別な夜。繰り返される日々の中で、子どもたちが待つさまざまなものを描いた物語。心洗われる美しい絵とシンプルな言葉に引き込まれる。『こどもたちは まっている』荒井 良二/亜紀書房(6月3日発売予定)ママにおすすめ! 今月の新刊はこちらedit&text/Yukiko Takeda
2020年06月01日世界中で78万人が使う「ほぼ日手帳」、2019年版のラインアップが発表に。ほぼ日手帳公式サイトを始め、ロフトなど取り扱い店舗で9月1日より順次発売が開始される。ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のオリジナルグッズとして2001年に生まれた、ほぼ日手帳。年を追うごとに使う人の数が増えていき、2018年版では78万部を販売した。誕生から18年目を迎える2019年版では、昨年登場して好評だった「ほぼ日5年手帳」を2倍サイズにした「おおきいほぼ日5年手帳」を始め、手帳本体、手帳カバー、文房具ともに、最新のラインアップが登場する。『ドラえもん』とのコラボレーションシリーズ大人から子供までみんなに愛される、日本が誇る名作まんが『ドラえもん』がほぼ日手帳に登場。油絵具で描かれた笑顔のドラえもんを大きくプリントした「ぼくドラえもん」や、『ドラえもん』のまんがのコマをプリントした「のび太としずちゃん」を展開。週間タイプ“weeks”の「ホンワカパッパ ドラえもん」は、水色の地にシルバーのインクでチャーミングなドラえもんの姿をたっぷりと配置。『ドラえもん』の世界を身近に感じながら毎日を過ごせる、スペシャル感たっぷりのシリーズ、発売は10月。「シュタイフ」とのコラボレーションシリーズドイツのぬいぐるみメーカー「シュタイフ」とは、2年目のコラボレーション。テディベアみたいなカバーの「カフェオレのテディ」は、シュタイフ社のベアと同じモヘア100%の生地を使用し、美しい光沢とリッチな質感が特長。ふさふさの毛でおおわれた三つ折りタイプの“weeks”カバー「おさいふテディ」は、名前のとおり、お財布としても使えるように設計され、硬貨やお札、カードが入るポケットも充実している。“weeks”本体の「よそいきテディ」は、レジメンタルストライプの間にテディベアの顔が並び、トラッドな気分にかわいらしさが合わさった、チャーミングな手帳。この他、「テディベアのよそいきネクタイ」や「テディベアのキーリング」も登場する。ほぼ日手帳公式サイトでは9月発売、ロフトなどでは10月発売。左上から「piece,」、「soda water」、「sora check」、「ringo」生地を作るところから服作りをするブランド、「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」ともコラボレーション。2019年版は、10点のコラボレーションカバーがお目見え。待望の初登場となる“weeks”カバーは、繊細な刺繍で描かれたりんごの木と、木に止まる小さな鳥が美しい「ringo」と、抽選販売のパッチワークカバー「piece,」の2種類。「piece,」は、服を仕立てる際の余り布をつなぎ合わせて製作した一点もののカバー。この他、空と雲の交差で生み出されるチェックをイメージしたテキスタイルの「sora check」や、一見水玉に見えるが、どの丸も少しずつ重なっている「soda water」が登場する。左から「アルファベットのめいろ」、「サーカス」、「たくさんのゲーム」写真に隠されたものを探しだす、さがしっこ絵本『チャレンジミッケ!』からは、ほぼ日手帳にぴったりの写真をプリントしたデザインが登場。“オリジナル”の「サーカス」には、華やかなサーカスの舞台をテーマにした写真、“カズン”の「アルファベットのめいろ」には、アルファベットが書かれたキューブが並んだ写真がセレクトされている。“weeks”の「たくさんのゲーム」には、多くの人に愛されるゲームが並ぶ。また、手帳を広げてどこでも「ミッケ!」で遊べるように、作者であるウォルター・ウィックの文章と糸井重里が日本語に翻訳した日英併記の「謎解きのことば」のカード付き。親子や友達とのコミュニケーションにもぴったりの手帳となっている。この他、“weeks”の巻末の方眼ノートを約3倍の213ページに増やした“weeks MEGA”の限定デザイン「スニーカー」、毎年人気の『MOTHER2』シリーズ、「ほぼ日」のコンテンツに着想を得た2つの手帳カバー、美術家・横尾忠則や絵本作家・荒井良二などの芸術作品とコラボレートしたデザイン、糸井重里の愛犬・ブイヨンのデザインなど、バラエティに富んだラインアップに迷ってしまいそう。また、「簡体字版」のほぼ日手帳が中国限定で販売される。オリジナル文房具「なんでもポケット」ほぼ日手帳といっしょに使える、ほぼ日のオリジナル文房具「TOOLS&TOYS」にも魅力的なアイテムが仲間入り。ほぼ日手帳のページに貼ってポケットのように使えるのり付きのフィルム封筒「なんでもポケット」や、手帳をひらきやすくするインデックスシール「ほぼ日のインデックスシール」、ほぼ日手帳のかたちのスタンプ「ほぼ日手帳のスタンプ」など、たくさんの文房具が登場する。なお、ほぼ日手帳公式サイトでは発売日を9月1日、2日、3日と分けて販売する。販売方法の変更については公式サイト()をチェック。
2018年08月21日皆さんは絵本をどうやって選んでいますか? 子どもが気に入ったから、自分が好きだから、話題になっているから… などいろんな選び方がありますよね。今回ご紹介する絵本作家・荒井良二さんの絵本は、型にはまらない独創的な絵が印象的です。絵本を選ぶとき、強いメッセージ性のある作品を選ぶ人も少なくありませんが、荒井さんの絵本にはそうした「答え」が存在しないように思えます。でも不思議と元気をもらえる、いつまでも忘れられない…。そんな「荒井良二」絵本の魅力をたっぷりご紹介していきましょう!■あさになったので まどをあけますよ作・絵:荒井 良二/出版社:偕成社 「あさになったので まどをあけますよ」 始まる、いつもと同じような朝。窓をあけて、1日の始まり感じる子どもたち。この絵本は2011年の東日本大震災で被災された方々とワークショップに取り組み、東北地方沿岸部の町をたずね歩いた荒井さんがそのときの思いを込め、描きあげたものだそう。「日常」は当たり前に過ぎていくものだけれど、それを繰り返していくことこそが幸せなのだと気付かせてくれます。本を読んだママからは「前向きな気持ちになる」という感想がたくさん寄せられていました。■空の絵本作:長田 弘/絵:荒井 良二/出版社:講談社 「空の絵本」 青い空と白い雲。表紙一面に広がる空の絵が印象的な絵本。そのリズムが耳に心地よく残る、詩人・長田弘さんの美しい文章と、奥へ奥へと引き込まれる荒井さんの絵が見事にマッチ! 刻一刻と変化する自然の美しさが独特の世界観で描かれています。野山に降る雨が強くなり、青や緑が灰色に。空が明るくなると世界はくっきりと輝きだす…。この絵本を読むと、空を改めて観察したくなる、という人も多いのではないでしょうか。読み終わったあとに「どのページがステキだった?」とお子さんと一緒に話してみるのも良いですね。■きょうというひ作・絵:荒井 良二/出版社:BL出版 「きょうというひ」 雪の降る静かな日に少女がひとり、大きなろうそくに火を灯します。「きえないように きえないように」と祈りを込める少女に、さまざまな思いをはせることができる一冊です。シンプルで美しい詩のような言葉と幻想的な世界観に「ささいなことで悩んでいるときに読むと、なぜか安らぐ」「頭のなかのごちゃごちゃしたものがスッときえる」と感想を寄せるママも少なくありません。どちらかというと大人向けという人もいますが、ろうそくがたくさん灯っているシーンがお気に入りというお子さんもいるよう。「タイトルに惹かれた」という意見もありました。■いつか、ずっと昔作:江國 香織/絵:荒井 良二/出版社:アートン 「いつか、ずっと昔」 結婚を間近にひかえた女性に、かつて愛したものたちとの時間がよみがえり、その記憶は前世、そのまた前世にまでさかのぼって…。命の生まれ変わりという壮大で神秘的な世界が広がるなかに、恋することの華やかさや切なさ感じさせる一冊。今回荒井さんがタッグを組んだのは、人気作家の江國香織さん。「いっしょに本を作るのはとても楽しい。同時に恐い!」と言いながらも「江國さんの文章はどんな絵でも壊れない強さがある。だからぼくはぼくらしく振る舞えば良い」と話すように、ページをめくるたびにピースがはまっていくような心地よさを感じます。「溺れるように読んだ」という感想も寄せられていました。■森の絵本作:長田 弘/絵:荒井 良二/出版社:講談社 「森の絵本」 その声は「森へ ゆこう」と言いました。いちばん大事なものがそこにあると。ページをめくると目に飛び込んでくる美しい景色には思い切り息を吸い込みたくなる、すがすがしさがあります。自分にとって大切なものとは何だろう。読み手の心に語りかけてくるような内容は一見「子どもには難しい?」と判断しがちですが「何度も読んでとせがまれる」「静かに聞いている」と、絵本の世界を楽しんでいるお子さんも少なくありません。「10年後、20年後に読んだとき、どんなことを感じるか。長く手元に置いておきたい」「どこがどう良かったか、あえて何も聞かずに読んだあとの余韻を楽しみたい」といった意見も寄せられていました。いかがでしたか? 黄、緑、赤、黒…。独特のタッチで自由奔放に描かれた作品たちは、並べてみるとまるでアート作品のよう。画集のような美しさと、唯一無二のオリジナリティをあわせもつ絵本たちにぜひふれてみてはいかがでしょうか。
2018年03月06日2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。前回に引き続き、タロットにまつわる、ちょっと深いお話をお届け。漫画の随所に登場する、美しいオリジナル・タロットカードについての秘話も伺いました!鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。寺山マル…2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。「ウェイト版」の謎は小アルカナ編集部:「ウェイト版」以外のタロットについてはどう思われますか?田波有希(以下/田波):「トート・タロット」(※1)なんかも面白くて好きなんですけど、やっぱり私は「ウェイト版」派です。鏡リュウジ(以下/鏡):「ウェイト版」と「トート・タロット」だと、その誕生の仕方からして違うんですよね。「ウェイト版」は「ウェイト・スミス版」とも言って、最初の発表の場は「オカルト・レヴュー」というオカルト雑誌なんですよ。ウェイトがこれを商業誌で発表したことを、クロウリーは「ウェイトは商売に走った」と批難して、その後に自分でタロットを出したんです。田波:なるほど。そもそもの方向性が違うんですね?鏡:はい。ちなみに、ウェイト自身は「ウェイト版」のタロットがあまり気に入っていなかったようで、よりキリスト教神秘主義的なタロットものちに出しています。田波:知りませんでした。見てみたいです!鏡:一般的には「トリニック版」と言うのかな?カード化はされていないのですが、本にはなっています。占いに使うものではなく、どちらかというと瞑想用のものですね。田波:でも絵柄はタロットなんですか?鏡:ええ。ところで、「ウェイト・スミス版」の謎は、実は小アルカナなんですよ。「ウェイト・スミス版」は、全てのカードが絵札になっているじゃないですか。この絵札についてウェイトは、たぶんあんまり口出ししていないと思うんです。だから絵を描いたパメラ・コールマン・スミス(※2)の独自の世界観が相当入ってるんですね。ほとんど彼女任せだったと言ってもいいかもしれません。そして、パメラはこのカードに自分の故郷の風景を入れ込んだとか、友達が飼っていた猫を描いた、なんて説があります。田波:へぇー!寺山マル(以下/寺山):友達の猫?面白いですね!タロットの絵を描くのは難しい!編集部:今回、漫画に登場するタロットの絵柄は寺山先生のオリジナルですよね?寺山:はい。頑張って描いています。鏡:カード化して販売する予定はありますか?瀬尾亞佑(以下/瀬尾):したいですね。有希さん(田波さん)からダメ出しをいただいて、寺山先生、何回も何回も描き直してるんです。田波:すみません(笑)。ただ、カードの意味に関するダメ出しは、ほとんどしたことがないんですよ。それより、寺山先生ご自身の魅力をもっと全面に出してほしいと思っていろいろ言っています。モデルとして何かのカードを見ると、どうしてもそれに捉われて先生らしくなくなるから、「悪いけど、もう少しこういう感じにしてください」「もっと強く描いてください」って。瀬尾:そのダメ出しの仕方が面白いんです。「バーンってやって」とか、“世界”や“太陽”は「あっぱれって感じでお願いします」とか。田波:“死”は「もう、一目で“死”ってわかるようにしてください」って言いました(笑)。鏡:あはは。僕もこれまで、いろんな雑誌やメディアでタロットの監修をしてきたのですが、仰る通り、みなさん、絵を描くのが非常に難しいようです。タロットって少なくとも300~400年変わっていないので、構図としてある意味、完成度高いんですよね。つまり、下手をするとコピーになってしまうんです。田波:そうですよね。鏡:なかなかオリジナリティーを出しにくいと思います。逆にオリジナリティーを出しすぎると、今度はタロットじゃなくなるっていう、かなり微妙なところだなと。田波:今回、監修するにあたっていろいろなカードを見ていて、鏡先生のカードも改めて拝見したのですが、『ソウルフルタロット』(※3)は、カードの象徴をはっきり出して別の絵にしているという意味で、ものすごい成功例だと感じました。鏡:ありがとうございます。あの絵は独創的ですよね。それから『はじめてのタロット』(※4)の独創性もすごいと思います。さすが、世界の荒井良二さんって感じで。田波:はい。でも、そういったタロットを見て余計に考えてしまって。もし寺山先生に見せたら、今度はそっちに捉われちゃうかもしれないと思ったんです。なので、オリジナリティーを出せるようにできるだけ縛りは設けず、これだけは入れてほしいポイントをお伝えする、という形にしていきました。「月だけは入れて」「犬だけは必要」と。鏡:なるほど。寺山:最初に描いたものを見せたら、有希さんに「先生、悪いけどこれ、アールヌーヴォーです。近代っぽいから、もうちょっと昔っぽくしてください」と言われました(笑)。田波:今思うと失礼ですよね。ごめんなさい(笑)。寺山:いえ、本当に助かりました。ただ、確かにアドバイスはかなり抽象的ですよね。「あっぱれ」とか(笑)。そういうふうに言っていただいたら、じゃあ、どこまで「あっぱれ」にしようかなと考えて、ベースの絵からずらしていく感じで描いています。田波:怖いカードは「楳図かずお先生の作品くらい怖く」なんてことも言いましたね。寺山:ふふふ。編集部:そういうお話を聞いていると、さらにカード化を期待してしまいます。寺山:ありがとうございます。もし実現したら、また描き直したくなるかもしれません。鏡:小アルカナを56枚描くと思うと大変ですね。寺山:確かに…頑張ります!占いは、占い師と受ける側の共同作業編集部:『サングリアル』を読んでいる中で、“占いが救ってくれるのではなく、決断するのは自分自身だ”というメッセージがとても印象的でした。みなさんは基本スタンスとして、普段からそういう考えをお持ちなんですか?田波:それは、最初に占いを受ける側として瀬尾さんが話していたことにつながるかな?瀬尾:そうですね。先ほど言ったように私、占いが大好きなんです。それこそ中学生の頃からハマっていて、いろんな占いを受けてきました。あるとき、占い師さんに言われた通りの行動をしたら、大失敗したことがありまして。当時、付き合ってた彼氏に「そんなに放っとくなら浮気しちゃうぞ」と言いなさいって言われて、普段はそういうことを言うタイプじゃないのに、無理して言ってみたんです。そうしたら、それがきっかけでケンカして別れることになって…。鏡:えー!(笑)瀬尾:その出来事が自分の中で結構大きなスペースを占めてるんです。自分らしくない発言をしたことも、占い師さんを信じて失敗したことも嫌だし、その人が言ったことをやったから失敗したと責任転嫁するのも嫌だし。結局、どんな占いを受けても、言われるがままに行動するんじゃなくて、アドバイスの内容をしっかり考えて昇華し、その後どうするか選ぶのは自分自身なんだ、という学びを得たんですね。それは受ける側のスタンスとしてかなり大事なことだと思っています。鏡:占い師と鑑定される人の共同作業ですよね?瀬尾:そう思います。ただ受けるだけじゃなく、自分で考えるのが大事っていうのは、寺山先生にお話しした覚えがあります。寺山:そうですね。熱く語ってました(笑)。鏡:普通はそこでもう二度と占いしないって思うんですけど、何で今でも好きなんですか?瀬尾:ただただ好きなんですよね。だから、そのときは自分が悪かったんだなって反省しました。鏡:偉いですね。偉いと言うか不思議!(笑)。田波:私は占いをする側のスタンスとして、若い頃は「占いがはずれたら死ぬ」くらいの気持ちでいたんです。それって精神的にはすごくしんどいんですね。他人の人生に関わって、まずいことを言ったら、その人の身に何か起こるんじゃないかと思うのがつらくて。田波:でも、お客さんって意外とライトな人も多いんです。あるとき、不動産についての相談をしたお客さんに「この物件はやめたほうがいいですよ」と言ったのに、しばらくしてまた来て「先生にダメって言われたけど、あの物件買っちゃった。やっぱり失敗だったんですけど、どうしよう?」と言われまして。それを聞いて「そうか。個人の責任なんだ」と気が楽になりました。占い師とお客さんがそういう状態でいられるのって気持ちいいなって。瀬尾:人生の中で占いを友好的に使うというか、占いに振り回されるわけでも洗脳されるわけでもなく、お互いがいい関係であるっていうことを、漫画の中で表現したいなって想いはすごくあります。世の中には「占いなんて信じてるの?」と言う人もいますが、私は占いが好きだし、このメンバーで漫画を作っている以上は「そうじゃないんだよ」ということを伝えたいですね。その想いが作品に出てるといいなと思っています。編集部:それは絵にも出ているし、「決めるのはお前だ」というセリフからも感じられます。寺山:うれしいです!田波:主人公の成長ストーリーというベースがあるので、言われるがままに行動しているようでは、彼も成長できないですしね。占いは飽くまで背中を押す存在であり、頑張るのは彼自身なんです。鏡:そうですよね。占いは日常生活の中の一つのエッセンスですから。田波:私、鏡先生や石井ゆかりさんの占いが大好きで、ときどき見るのですが、ヘコんでるときに見ると「よし!」と元気が出るんです。占いにはやっぱり、心の栄養剤というか、自分を奮い立たせたり、慰めたりしてくれるものであってほしいなと思います。鏡:確かに。読者のみなさんにもそういう使い方をしていただけたらありがたいですね。【編集部註】※1イギリスのオカルティスト、アレイスター・クロウリーがデザインしたタロット。※2イギリス出身の画家・作家。「ウェイト・スミス版」のタロットカードのデザインをしたことで有名。※3鏡先生の著書。正逆を問わない斬新な解釈と、優しく繊細な色使いの絵柄が人気。※4同じく鏡先生の著書。荒井良二氏による美しく独創的な絵柄と、誰にでも読み解ける易しい解説が特徴。
2016年09月28日東北芸術工科大学が主催する地域密着型の現代芸術祭「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016」が、山形県山形市中心市街地及び、都内の書店にて9月3日から25日まで開催される。第2回となる今回の「山形ビエンナーレ」では、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人で初めて受賞した絵本作家の荒井良二芸術監督のもと、国の重要文化財である文翔館をはじめとした市内各所の歴史的建造物やリノベーション物件を主な会場に、“山は語る”をキーワードにした様々な企画を実施。14年に行われた第1回と同様に、アーティストと市民による共同制作プログラムを軸に、アートはもちろん、文学やファッション、食、音楽など様々な分野の体験アートプログラムが用意されている。会期中は各会場にて、朗読会や古本市、ブックカフェなどを展開し、“本”をツールにして街と人、人と人がゆるやかにつながる場や機会を創出。また、街歩きのガイドブックを兼ねたナカムラクニオ責任編集の小説集『ブックトープ山形』や、“野生動物”をテーマにミロコマチコと市民が制作した立体絵本『あっちの目、こっちの目』など、クリエイターが市民とともに山形をじっくり取材して制作した絵本の数々も登場する。その他、ミュージシャンとアーティストが即興セッションを繰り広げるライブも見所のひとつ。国の重要文化財である文翔館の議場ホール(旧県議事堂)をはじめ、図書館や旧温泉施設、元養蚕試験場などユニークな施設を会場に、週末ごとに音楽・アート・ダンスのパフォーマンスを上演する。また、“食をつくる人”によるプログラムも実施。江戸時代から続く和菓子の老舗・乃し梅本舗佐藤屋の八代目である佐藤慎太郎と、山伏の坂本大三郎が創作する「みちのおくの芸術祭」の行事菓子のふるまいや、人が自然を食べるためにおこなうシンプルな行為“煮たり、炊いたり”を中心に、山形の素材をワンプレートで表現する食堂・nitakiなどによるグルメ、東京渋谷の人気連ストラン「Pignon」のオーナーシェフ吉川倫平による、厳選した山形の素材を使った「作って・食べる」食のワークショップなどが登場する。会期中は、「山形ビエンナーレ」を旅するツアープログラムも多数開催。イラストレーターの平澤まりこによるバスツアー「YAMAGATA TRAVEL BUREAU 2016」では、山の自然や信仰、風土と食、地域のデザインなど、山形独自の文化・人・モ ノ・コトに触れることのできる貴重な体験が目白押しとなっている。主な会場は、文翔館、洗心庵、とんがりビル、遊学館、山形県立図書館、山形まなび館、旧西村写真館、七日町御殿堰、BOTA coffee、ギャラリー絵遊・蔵ダイマス、やまがた藝術学舎、東北芸術工科大学、丸八やたら漬旅籠町立呑処、乃し梅本舗佐藤屋本店、クアハウス碁点旧大浴場、新庄市エコロジーガーデン・原蚕の蚕の杜、東京・荻窪のカフェ6次元、東京・銀座の森岡書店など。
2016年08月07日絵本原画コンペティション「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)」について、その歴史と功績を紹介する展覧会「BIB 50周年 ブラティスラヴァ世界絵本原画展―絵本の50年 これまでとこれから―」が、7月9日から8月31日まで、うらわ美館館(埼玉)で開催される。スロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで2年ごとに開催される「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(略称 BIB=Bienial of Illustrations Bratislava)」は、現在のチェコ共和国とひとつの国、チェコスロヴァキアであった1965年にユネスコと国際児童図書評議会の提唱によって創設された世界最大規模の絵本原画の国際コンペティション。1967年に第1回目のBIBが開かれた。そして、2015年秋には記念すべき第25回目が開催され、創設50周年を迎えた。同コンペティションは、実際に出版された絵本の原画を審査の対象にすることを特徴にしており、芸術性の高い作品や、実験的でユニークな作品が集まることでも知られる。また、BIBの創設は、戦後日本の絵本文化が大きく花開こうとしていた時期にあたり、過去のBIBにおいて日本の絵本は毎回のように受賞し、高く評価されてきた。81タイトル、約300点の絵本原画を展示する本展は2部構成。第1部では、創設50年の節目を迎えた国際コンペティション「BIB」について、その歴史と功績を辿る他、BIBの歴代参加作品の中から「日本の絵本の歴史50年」を振り返り、過去半世紀の歴代“日本選抜”作品を紹介する。会場では、長新太の《キャベツくん》をはじめ、赤羽末吉の《スーホの白い馬》、田島征三の《ちからたろう》、丸木位里・丸木俊の《日本の伝説》、井上洋介の《まがれば まがりみち》、酒井駒子の《金曜日の砂糖ちゃん》、荒井良二の《うちゅうたまご》などが展示される。さらに、絵本のイラストレーションの最新動向を紹介する第2部では、昨年秋に行われた第25回BIBのグランプリ作品をはじめとする受賞作品および、日本からの出品作品を公開し、絵本の今、そして絵本のこれからを期待させる新鮮な表現や独創的な試みにフォーカス。会場では、準グランプリの「金のりんご賞」受賞の栄誉に輝いたミロコマチの《オレときいろ》をはじめ、松本大洋の《かないくん》、ローラ・カーリンの《あなたがつくる世界》《アイアンマンー鉄の男》、エレナ・オドリオソーラの《フランケンシュタイン》などが展示される。会期中には、自由に工作したり、絵を描いたりできる創作コーナーが設置される他、図書館ボランティアによる絵本の読み聞かせ会、学芸員と一緒に展示室を巡り、本物の作品を前に子供や親子で会話しながら楽しむ美術鑑賞ツアーなどが行われる予定だ。イベントの詳細やスケジュールについては、うらわ美術館の公式サイトで確認出来る。なお、本展は、うらわ美術館を皮切りに10月29日から12月11日まで岩手県立美術館、2017年1月4日から2月26日まで千葉市美術館、2017年4月8日から5月28日まで足利市立美術館、2017年7月8日から8月27日まで平塚市美術館と、国内の美術館5館を巡回する予定だ。【イベント情報】「BIB 50周年 ブラティスラヴァ世界絵本原画展ー絵本の50年 これまでとこれから―」会場:うらわ美術館住所:埼玉県さいたま市浦和区仲町2丁目5番1号 浦和センチュリーシティー3階会期:7月9日~8月31日時間:10:00~17:00※土、日曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで料金:一般610円、大高生410円、中小生無料休館日:月曜日(7月18日は開館)、7月19日
2016年06月28日大宮エリーの美術館での初個展「シンシアリー・ユアーズ ― 親愛なるあなたの大宮エリーより」が5月28日(土)から9月25日(日)まで、十和田市現代美術館にて開催中。大宮さんの美術館での個展は初。広告代理店勤務を経て、2006年に独立した大宮さんは、映画『海でのはなし。』で映画監督デビュー。主な著書に、「生きるコント」「生きるコント2」(文春文庫)、絵本「グミとさちこさん」(講談社 絵/荒井良二)があり、「サンデー毎日」にてエッセイ「なんとか生きてますッ」を連載するほか、舞台や劇場の作演出、テレビドラマの総合演出・脚本、スピッツ、ケツメイシ、山崎まさよし、ハナレグミなどのPVを手がけるなど多彩な才能を発揮している。2012年には、渋谷パルコミュージアムで開催した初めての個展、言葉と造形のインスタレーション「思いを伝えるということ」展で1万5千人を動員したことで話題になった。近年、大宮さんは、2012 年に行ったライブペインティング「お祝いの調べ:直島」をきっかけとして絵画制作に本格的に取り組んでいる。2015 年には絵画による個展「emotional journey」を開催し、初の画集を出版。その取り組みはアート界のみならず多方面から高い評価を受けている。本展では、大宮の新作と代表的な絵画作品、ドローイングを展示する。伸びやかで天性のバイブレーションみなぎる作品は、雄大な自然のモチーフから身近なモチーフまで、物語性を感じさせ、私たちの感情に訴えかける。当館の企画展示室以外のスペースも大胆に使い、大画面の力作をまとめて観ることができる。注目は、ミュージシャンの演奏とともにおこなうライブペインティング。自らもバイオリン奏者として活躍する大宮は、絵画と音楽という境界を超えたダイナミックな作品をつくり出す。5月28日(土)には、ギャラリートークとライブペインティングが披露される。会期中、そのほかにもイベントやワークショップなどが開催される。また、美術館と街をつなぐユニークな試みとして、「大宮エリーの商店街美術館」が同時開催される。十和田市内の商店街を中心にインスタレーションの展示を行うほか、イベントやワークショップ等の開催も予定されているので、併せてチェックしたい。(text:cinemacafe.net)
2016年06月01日東京都・小平市の武蔵野美術大学 美術館・図書館は、紫綬褒章受章の銅版画家、池田良二の航跡を辿る展覧会「池田良二 ー 静慮と精神の息吹」を開催する。会期は11月24日~12月19日(日曜休館、ただし12月13日は特別開館)。開館時間は10:00~18:00(土曜・特別開館日は17:00閉館)。入場無料。同展は、現代版画の地平を開いてきた、池田氏最初期の版画作品から現在に至るまで、新作を含めて約60点の銅版作品を中心に紹介するもの。池田氏は、1947年北海道根室に生まれ、1967年武蔵野美術大学に入学し山口長男や野見山暁治のもとで絵画を学んだ後、1975年独学で銅版画制作を開始。時を置かずして国内外のコンクールに出品する中で頭角を現すようになったという。その後、81年文化庁派遣芸術家在外研修員としてイギリスを中心に留学、94年以降アルバータ大学客員教授として度々カナダでの長期滞在など、海外における作品制作は銅版表現を深化させるだけでなく、新たな作品へと展開する転換点となる。池田氏の フォトエッチングを中心に複数の銅版技法によって作り出されるモノトーンの静謐で緊張感ある銅版表現は、海外で評価され、ソウル国際版画ビエンナーレ大賞(1990年)を受賞。国内でも、タカシマヤ美術賞(2003年)山口源大賞(2005年)などを受賞し、2009年には紫綬褒章を受章した。同展では、池田良二作品を4つの時代、「開帆」、「還元と構築」、「遷移と展開」、「拡張と連接」に分けて、その変遷を通覧する。また、書籍・ポスターの原画など銅版画作品の展開事例や、製作アトリエ・版画制作道具の紹介も行われ、陶器や木工芸、茶道関連へと展開する多才な一面にも触れられるということだ。また、関連イベントとして、講演会「銅版画家、池田良二について(仮)」が開催される。池田作品の論評を重ねてきた美術評論家の本江邦夫氏と池田良二氏によるもので、作品における銅版表現の魅力とその背後にある問題、さらに人物像などから池田作品の世界が読み解かれる。開催日時は11月30日17:00~18:30(予定)。そのほか、作品に内在する考え方や影響関係などが池田氏本人によって語られる、ギャラリートーク「池田良二の銅版画の航跡」(仮)が開催される。開催日時は12月12日15:00~16:00。いずれも入場無料、予約不要。
2015年09月19日幻想的な音を奏でる青銅打楽器・ガムランの響きと光で浮かび上がるシルエットが魅惑的な世界観をもつ、インドネシアの伝統芸能ワヤン・クリ。単なるパフォーマンスや音楽という枠におさまらず、人と「場」の関係を感じるうえで、独特のパワーを放つこの空間は興味深い。そこで、今回の「旅を深めるミニ講座」では、ガムランを中心とした音楽活動を始め、影絵、イラストなど多方面に活躍する川村亘平斎さんにインタビュー。バリ島での経験をたっぷり語ってくれた前編に続き、そのディープな魅力に迫ります。前編はこちら!——元々は音楽家を目指して、バリ島でガムラン修行をしたとのことでしたが、影絵芝居はどんなきっかけで始めたのですか?「修行時代に一週間だけ、現地でワヤンを題材にした古典絵画のキャラクターの描き方を学んだのですが、絵を習ったのはこの一回だけです。それから帰国して芝居の音楽を手がけるようになったのですが、その時の演出家に『絵も描けるなら、影絵も作って』と言われ、嫌々始めました(笑)。音楽をやりたいという意地があったので、自分としては不本意だったのですが、しがらみのない環境で影絵作品を作る機会が徐々に増えて、意外と相性が良いことに気づいたんですよね。今も時々感じるのですが、音楽で上手くいかないと思うところも、影絵だと思った通りに形にできることがあるんです。人形の作り方は、ガムランと同じように、習うより見て盗め。現地の工場に行って牛皮から作る様子を見て情報を集めるようにしています」photo:日本アセアンセンター——以前、川村さんが率いる【滞空時間】の影絵芝居を観た際に、即興的な面白さを感じたのですが、台本はないのですか?「物語の筋立てやシーン割りは決まっているのですが、台詞は決めずにその場で考えて喋っているので、観客がウケていれば、そのお客さんいじりに集中したり(笑)、キャラクターの設定も即興で面白かったら次に使おうというのも多いです。バリ島のワヤンでも、ダランと呼ばれる影絵師が3、4時間、一人で何役もやるのですが、やはり即興で台詞を作っていて、その状態は落語に似ているんですよね」——落語もそうですが、時代背景によって笑いのネタが違うのも面白いですよね。「そうですね、バリのワヤンでも大昔から同じ道化のキャラクターが演じられてますが、時事ネタを交えて常に旬の笑いを届けます。僕も最近は、どうやって笑いをとるかを大切にしていて、いわゆる漫才師のような笑いではなく、人が笑っちゃうシチュエーションを作りたいと思っています」——そういう「状態」を作る上で、川村さんが特に大切にしていることとは?「『祭り』がある状態を作ることですね。自分たちが楽しめて、守られている場所のような。そういう自分に足りないものがバリにはあると思うんです。現地の人々がその瞬間に感じている高揚感や多幸感みたいなものを、日本の人が感じられる場を作っていきたいですね。そのツールとして、音楽が必要だと思うし、影絵が手助けになる場合もある。影というのは実像ではないので、ずっと見ているとぼんやりしてくるんです(笑)。そんな状態で、影絵師が『人を殺してはいけないよ』とか言うと、納得させられる環境があると思っていて。目に見えているものではなくて、それをツールにして、人をグイッと引き寄せた時に何を言うかが一番大事だと思います」photo:日本アセアンセンター——では、旅にまつわる話を。川村さんが感じる、インドネシアの魅力とは?「何はなくとも、暖かい(笑)。今も昔も思うのは、植物がどんどん育つエネルギーが凄いし、緑がとにかくしぶとく地面に張っている姿は、誰が見ても凄いですよね。僕は、年に最低一回はバリに行くのですが、行かないと植物の強さを忘れてしまうんです。実際に目にすることでしかエネルギーが補充されないんですよね。昨年から僕はテキスタイルのデザインも始めたのですが、それもバリに行くために始めた感じです」——これから初めてバリ島を旅する人に、どんな旅のスタイルをおすすめしますか?「腰巻きの布を市場で買って、常に携帯して町歩きをするのをおすすめします。昼間も夜も、どこかで必ず冠婚葬祭や寺の祭りをやっていてガムランの音が聞こえてくるのですが、腰布を巻いていれば、基本的には誰でも参加が可能なので。よっぽどの失礼がなければ何のお咎めもないので、ローカルな体験をしたい人にはおすすめです。もっと上級者の人ならば、緑いっぱいの景色を見られるホテルに泊まって、3日間くらい何もしないをしに行くことですね。ちなみに、僕が今まで行った中で一番贅沢したなと思ったのは、ジャングルに囲まれた部屋で『スター・ウォーズ』を全巻ぶっ通しで観たことです(笑)」——それはかなり贅沢ですね(笑)。では、今後の川村さんの夢をお聞かせください。「影絵をやり始めてから、自分の創作が美術作品のようになってきた感覚があるのですが、単純にすごくサイズの大きな影絵作品を作りたいですね。小学生みたいなことを言ってますが(笑)、ガムランという海外からの込み入ったものをやり続けてきた結果、いまは言葉が分からなくても誰でも楽しめる、すごくシンプルで面白いものを作りたいと思っています」——バリの師匠のように、長時間にわたる芝居をやりたいという願望は?「やりたいですけど、あれは本当にフラフラになりますからね(笑)。いま言ったようなビジョンが次々出てきて、ぐるっと一回りした後に、小さいスクリーンで長時間の影絵をただひたすらやりたいという思いはありますが、それには僕はまだまだ修行が足りない。まして僕は日本にいるので、彼らとはまた全然違う経験を積んでからいきたいですね。永遠の道半ばです」音や影絵、テキスタイルなど、実に多様な角度から「空間」に挑戦し続ける川村さん。今後の活躍も楽しみだ。<プロフィール>川村亘平斎(ガムラン奏者/影絵デザイン/イラストレーター)インドネシアの青銅打楽器「ガムラン」を中心とした音楽活動をはじめ、影絵、イラストなど多方面に活躍する芸術家。2003年よりインドネシア政府奨学金を得てインドネシア・バリ島に留学。音楽と影絵を融合し、各方面から絶賛されているソロユニット【TAIKUH JIKANG滞空時間】を中心に、青葉市子、飴屋法水、荒井良二、OOIOO、cero、細野晴臣など数多くのアーティストと共演。影絵デザイナーとしても精力的に活動。シリーズ企画【ボクと影絵と音楽】、丸亀影絵通り(香川県丸亀市)、恵比寿映像祭(東京都立写真美術館)、サントリー美術館影絵ワークショップ(六本木アートナイト)、 山形ビエンナーレオープニングアクト(山形県山形市)ほか。多岐にわたる活動を通して、現代日本と伝統的な感性をつなぐツールになる新たな「芸能」のカタチを発信し続けている。<今後の活動予定>・サウンド&レコーディングマガジンの公開録音(AFRA×滞空時間×KEN ISHII)日時:2月15日(日)音源配信(ototoy)・川村亘平斎影絵と音楽ソロライブ@西荻窪【音や金時】日時:2月18日(水)19:00開場/20:00開演料金:2,300円※詳細はHPにて。・3月中旬より、川村亘平斎×田中馨(ショピン・トクマルシューゴバンド)の影絵DVDのクラウドファンディングを開始予定。(text:Izumi Kakeya)
2015年02月02日その土地の文化や歴史を予習して、“なるほど”な旅を楽しむ「旅を深めるミニ講座」。今回は、インドネシアの青銅打楽器・ガムランを中心とした音楽活動を始め、音楽と影絵を融合するソロユニット【TAIKUH JIKANG滞空時間】を中心に、国内外のアーティストとの共演など、多彩な活躍を見せる川村亘平斎さんが登場。音楽、影絵などの芸能を通して独特の「場」を作る彼だが、そのルーツとなるバリ島での修行体験、そこから見えたバリ島における人と伝統芸能の関係について話を伺った。——川村さんがガムランや影絵芝居(ワヤン・クリ)に興味を持ち始めたきっかけは何だったのですか?「学生時代から、伝統音楽を使った仕事をしたいという思いがあったのですが、特に手で叩く楽器をやりたいと思って、大学でガムランを学び始めました。早い段階からバリに長く滞在したいという思いが募って、2003年から一年間現地で暮らし、ガムラン奏者の師匠に弟子入りして、影絵芝居で伴奏楽器を修行しました」——師匠からはどんな形で演奏を学んだのですか?「僕の師匠はほとんど喋ることがなく、『飯を食え』『太鼓を叩け』、それから『ある一定のレベルまで行ったら、あとは(ガムランは)自分のものだから』としか言われた記憶がありません。練習のときも、言葉での指示はなく、師匠がガムランを叩く姿を見て、出来るまでひたすら叩くんです。ガムランのアンサンブルに至っては、村の小中学生を教えるのは大学生、大学生以上の青年たちを教えるのは30、40代の人たち、さらに年上だと現役を引退した長老たちが教えるという具合に、世代間でガムラン演奏が継承されています。日本の囃子と似ていますよね。同じ楽器を20、30人全員で共有して使うのですが、ここでもやっぱり一つのフレーズを覚えるまで叩くという反復練習です」photo: 日本アセアンセンター——地域の中心に、ガムランが存在しているんですね。「そうですね、ガムランは音楽や楽器という言葉だけでは説明できません。楽器があるからみんな集まるし、面白いからみんな続ける。中には、本業は農家の人もいれば、絵描きの人などもいて、演奏家を生業にしている人もいます。でも、最終的に楽器が上手な人しか残れないという事はなく、どんな人でも演奏できるパートが必ず与えられて、その人がいないとガムランが成立しない風に出来ているんです。技術的な事はもちろん、人間関係なども全部、互いが理解し合った上で楽しめるものというのが面白いですよね。これはバリ独自の持ち回りの文化に通ずるもので、例えば、結婚式があれば村人全員で手伝い、新郎新婦は彼らに食事を振る舞うし、祭りに寺に納屋を建てるのを手伝った人は皆ごはんがもらえる。逆に、自分が隣の人に何か助けてもらったら、お返しに振る舞う。財産を皆で回すという価値観ですね。ただ、時代の変遷によってその文化は少しずつ薄れているのですが」——川村さんも日本で子どもたちにガムラン演奏を教えていますが、どんなスタイルで教えているのですか?「元々、途絶えてしまった地元の町内会の夏祭りを復活させるために始めたもので、始めた頃はバリの方たちを呼んで紹介したり、3年目には子どもたちの演奏を開始して、かれこれ5年くらいになります。僕自身、本来のバリ島の芸能はパフォーマンスだけどショービジネスではないと思っているので、この活動も基本的にはショーとして告知をせずに、子どもたちが純粋に楽しく演奏できる空間があればいいと思ってやっています。ガムランを『音楽』として演奏する大人たちと違って、子どもたちは感覚で見て聞いて、叩き方を自然と身に着けるので、音の質がバリの人たちのそれに似ていて、面白いですね」——それは面白いですね。こうした活動を含め、川村さんはガムランを通して、ジャンルや国の垣根を越えて様々なコラボレーションを果たしていますが、そのこだわりもバリでの経験から芽生えたものなのですか?「幸運なことに、僕が弟子入りしていた楽団の人たちがとても前衛的な方々で、村の一人の長老しか知らない絶滅寸前の曲を復活させる活動をする一方で、海外の人とも積極的に新しい曲を作っていました。彼らは、“生きている”伝統芸能を常に最前線に置いていて、演奏する本人がガムランや音楽というものに真剣に向き合って、自分として嘘がないなら人にも受け入れられるものだという価値観を持っていたのです。外側の形にはこだわらず、大事だと思う手触りや感覚を持っていればいいと。僕の考え方の根底には、やっぱり彼らの思いがあるのですが、もちろん人それぞれ地域や音楽に対する思いは違うので、それはそれで違う視点を尊重することが、外国人の僕としては大事だとも思っています」川村さんによれば、バリ島にいた頃、ガムランやワヤン・クリは「日本でのじゃんけんぐらいに根付いていた」とのこと。旅行客からすると、一見、芸能的な要素だけに目が行きがちだが、地域や時代との関係を知れば知るほど、その奥深さの虜になりそうだ。「旅を深めるミニ講座」後編では引き続き、独特の世界観がもつパワーの秘密に迫りつつ、川村さんの影絵芝居へのこだわり、さらにバリ島のおすすめ旅スタイルをお届けします。<プロフィール>川村亘平斎(ガムラン奏者/影絵デザイン/イラストレーター)インドネシアの青銅打楽器「ガムラン」を中心とした音楽活動をはじめ、影絵、イラストなど多方面に活躍する芸術家。2003年よりインドネシア政府奨学金を得てインドネシア・バリ島に留学。音楽と影絵を融合し、各方面から絶賛されているソロユニット【TAIKUH JIKANG滞空時間】を中心に、青葉市子、飴屋法水、荒井良二、OOIOO、cero、細野晴臣など数多くのアーティストと共演。影絵デザイナーとしても精力的に活動。シリーズ企画【ボクと影絵と音楽】、丸亀影絵通り(香川県丸亀市)、恵比寿映像祭(東京都立写真美術館)、サントリー美術館影絵ワークショップ(六本木アートナイト)、 山形ビエンナーレオープニングアクト(山形県山形市)ほか。多岐にわたる活動を通して、現代日本と伝統的な感性をつなぐツールになる新たな「芸能」のカタチを発信し続けている。<今後の活動予定>・サウンド&レコーディングマガジンの公開録音(AFRA×滞空時間×KEN ISHII)日時:2月15日(日)音源配信(ototoy)・川村亘平斎影絵と音楽ソロライブ@西荻窪【音や金時】日時:2月18日(水)19:00開場/20:00開演料金:2,300円※詳細はHPにて。・3月中旬より、川村亘平斎×田中馨(ショピン・トクマルシューゴバンド)の影絵DVDのクラウドファンディングを開始予定。(text:Izumi Kakeya)
2015年01月30日トラウマリスは、編集者/写真家の都築響一ディレクションによる、荒井美波の個展「Trace of Writing」を開催している。開催期間は2月2日まで(月曜休み、ただしイベント等により変更あり)、開場時間は16:00~24:00(日曜は14:00~22:00)。会場は東京都・恵比寿のTRAUMARIS|SPACE。入場無料。同展は、小林多喜二の「蟹工船」や芥川龍之介の「蜘蛛の糸」など、日本近代文学の名作をモチーフに、原稿用紙を模した革張りのキャンバス上で、文豪の原稿の生々しい筆致を針金で"なぞる"シリーズ「行為の軌跡 -活字の裏の世界-」を展示している。活字の裏に隠された書き手の人間性や身体性を、立体によって"臨書"(手本に似せて書くこと)した作品だ。また、筆癖や書き順、本文を書いた後に振られたルビや編集者が書き込んだ校正の跡までも忠実に再現しており、普段見ている文字が、人間がペンや筆といった道具を手に持つことで生まれた「書く」という行為の産物であることをあらためて認識させられる。荒井は、今回の展示作品で2013年の「MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD」で佳作を受賞しており、同アワードの審査員を長年務めている都築響一の目に留まり、今回の個展が開催されることになった。なお、荒井美波は1990年東京都生まれ、武蔵野美術大学 大学院修士課程 視覚伝達デザインコースに在籍中のアーティスト。彼女のTumblrページでは、新作やその制作過程などが公開されている。
2014年01月21日東京糸井重里事務所は、Webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」にて、イベント「ものが生まれる瞬間フェス」を開催する。開催日時は11月16日 9:00~21:00。参加型イベントではなく、同社オフィス内の様子を全編USTREAMにて中継する。「ものが生まれる瞬間フェス」は、"誰かが何かをつくっているところを見るのは楽しい"というテーマのもと、人気クリエイター10名を同社オフィスに招き、その創作風景をUstreamで中継するというもの。クリエイターごとに創作を行う場所が異なり、少しずつ開始時刻がずらしてあるため、さながら野外音楽フェスティバルのようなタイムテーブルとなっている。また、参加作家は、絵本作家・イラストレーターの荒井良二、漫画家の今日マチ子、フードスタイリストの飯島奈美、海洋堂・フィギュア原型師の松村しのぶ、あみぐるみ作家のタカモリ・トモコ、料理家のなかしましほ、イラストレーターのたかしまてつを&小学校5年生の漫画家・あーちん、イラストレーターの福田利之。そして、コピーライター・ほぼ日刊イトイ新聞主宰の糸井重里といった10名となっている。なお、当日は今日マチ子が漫画「みかこさん」最終巻の表紙を描き上げ、荒井良二がはじめて1日で絵本を完成させるという試みに挑戦するなど、さまざまなものづくりがライブで中継される。それらが全て終わったのを確認した後、糸井重里が毎日「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載しているコラム「今日のダーリン」の翌日分原稿をライブで書き上げる予定となっている。当日のタイムテーブルや制作内容については同イベントの特設ページを参照してほしい。
2013年11月15日シェイクスピアの名作を大胆に脚色し、沖縄の小さな島を舞台に島民たちと島の守り神である精霊たちが織りなすドラマを描いた『真夏の夜の夢』。先日より物語の舞台である沖縄で先行上映され、大好評を博している本作がいよいよ7月25日(土)より全国公開を迎える。これを記念して、公開初日の25日(土)には、シネマート新宿にて、中江裕司監督を始め、柴本幸、蔵下穂波、平良進、照屋政雄、エンディング・テーマを歌う藤澤ノリマサ、そして中江作品に欠かせない“沖縄のおばあ”こと、平良とみが登壇しての舞台挨拶が行われるほか、各所で沖縄にまつわるイベントを開催。翌26日(日)も中江監督と中村優子によるトークショーがシネカノン有楽町2丁目で開催されるなど、東京の街が沖縄一色に!物語の主人公は、東京での恋に疲れ、故郷の沖縄の島に帰ってきたゆり子。彼女と彼女の周囲の面々、さらには“マジルー”と呼ばれる島の守り神(キジムン)までも巻き込んでの騒動が展開される。先述の舞台挨拶に加え、25日(土)には中江監督自身が本作を絵本として書き下ろした「さんかく山のマジルー」で、挿絵を担当している絵本作家・荒川良二の原画展(ジュンク堂書店新宿店)にて、中江監督と照屋さんのトークイベントが開催されるほか、新宿文化会館で「沖縄音楽フェスティバル」を開催。また、伊勢丹新宿店本館にて27日(月)まで開催される大沖縄展「オリオンビアフェストインイセタン」にも中江監督、照屋さん、平良さん夫妻に蔵下さんが登場、さらに新宿通りでは昼過ぎより新宿エイサー祭が行われ、21チームが踊りに参加するなど、この日、街はまさに沖縄一色に染まることになる。まもなく夏本番!沖縄には行けない人も、東京で沖縄気分を味わってみては?『真夏の夜の夢』は沖縄にて先行上映中。7月25日(土)よりシネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿ほかにて全国にて公開。イベント概要<7月25日(土)>『真夏の夜の夢』初日舞台挨拶場所:シネマート新宿大沖縄展「オリオンビアフェストインイセタン」期間:7月22日(水)〜7月27日(月)場所:伊勢丹新宿店本館※25日(土)、キャスト陣と中江監督によるトークショーおよびライヴを開催「沖縄ゆんたく〜キジムントーク〜」&「さんかく山のマジルー」荒井良二原画展場所:ジュンク堂新宿店「沖縄音楽フェスティバル」場所:新宿文化会館・大ホール新宿エイサー祭13:30よりスタートメイン会場:新宿通り<7月26日(日)>『真夏の夜の夢』舞台挨拶場所:シネカノン有楽町2丁目映画公開記念トークライヴイベント場所:銀座わしたショップ■関連作品:真夏の夜の夢 2009年7月25日よりシネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿ほか全国にて順次公開© 2009「真夏の夜の夢」パートナーズ■関連記事:琉球の伝統芸能満載!『真夏の夜の夢』地元・沖縄先行上映に千人超が酔いしれる【どちらを観る?】夏、沖縄へ誘う――『群青愛が沈んだ海の色』&『真夏の夜の夢』沖縄の神秘!『真夏の夜の夢』試写会に5組10名様をご招待
2009年07月21日