漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第29回アクマの辞典バ行【ビ】➤「美人だけどモテない」(びじんだけどもてない)…美人のくせに男に興味がないのは許せないという圧も感じる我々は時々実体不明の敵と戦ってしまう時がある。実際見たわけでもないのに「いるよね、こういう奴」と言って、いるかどうかわからない生き物に対し延々悪口を言ったり腹を立て続けたりしてしまうのだ。一日中ネッシーにムカついているのと同じで、極めて無益である。こういった「いそうだが実際見たことはない未確認生物」の話で、便利づかいされがちなのが「ブス」だ。ブスの見た目がUMAっぽいからではない、例えば「好きな映画は『セックス・アンド・ザ・シティ』という女」を「好きな映画は『セックス・アンド・ザ・シティ』とかいうブス」と、ちょい足しアレンジするだけで「いるいる、そういうブス~!」とその場に失笑混じりの共感の嵐が吹き荒れてしまうのである。もちろん、全員そういうブスを見たわけでもなく、いたとしてもブスが『SATC』を好きで何が悪いという話なのだが、世間は頻繁に「とかいうブス」という架空の生物を作り出し、袋叩きにしたがるのである。どうせ幻と戦うなら、刃牙のように巨大カマキリと戦ったほうがまだ有益だ。そして今回のテーマも、ひょっとして架空の生き物では、という存在である。遅くなったが今回のテーマはバ行から「美人だけどモテない」だ。「モテない美人」いそうだし、いるんだろうけど、イマイチ「いる」と断言しにくい存在である。己の美人を妬む心が生み出した幻なのではないかとさえ思える。美人を妬む心が見せる幻覚には他にも「性格の悪い美人」「幸の薄い美人」「悲報!あの美人が劣化!」などが挙げられる。まず、美人が劣化するなら、同じ時を経た自分はもっと腐っているし、そちらのほうがリアルだ。このように美人もブスと同じぐらい「架空の生き物」を作られがちな存在なのだが、ブスとの違いは、実在していてもその存在を認めてもらえないことが多い、ということである。例えば本当にモテない美人が「私モテないの」と言っても「うそつけ、モテない美人などいない」と悩みも存在も否定されてしまうのである。モテるモテないだけでなく、この世には「幽霊否定派」と同じように「不遇な美人否定派」がいる。そういう人間に美人がどんな苦悩や苦労を語っても「でもあなた美人じゃないですか」「美人なんですからそんなことないでしょ」と言って全く取り合わない。このように美人にとっては「美人は性格が悪い」などネガティブな美人像を作り出す人間より「無敵の生物・美人」という架空の生き物がいると信じて疑っていない人間のほうが厄介なのである。「美人は色仕掛けで仕事を取っている」などと言う人間は、美人を妬んでいる人間より、むしろこの「美人無敵説」を信じている者だったりする。美人もブスも美醜以前にまず人間である、「適当なイメージで語られたら傷つく」というのは覚えておいたほうが良いだろう。【バ】➤「爆弾発言」(ばくだんはつげん)…「爆弾発言していい?」という奴の発言は大体不発【ビ】➤「美人だけどモテない」(びじんだけどもてない)…美人のくせに男に興味がないのは許せないという圧も感じる【ブ】➤「VIO脱毛」(ぶいあいおーだつもう)…介護する側もされる側も楽になるらしいので、腕毛すね毛よりマストかも【ベ】➤「ベスト体重」(べすとたいじゅう)…ダイエットを成功させるより必要なのは「俺のベスト体重は俺が決める」という強い意志【ボ】➤「母性」(ぼせい)…カビのように自然発生するものではないプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年03月07日冷え込みが厳しい朝7時、東京都内の自宅から姿を現したのは女優・八千草薫(88)だった。彼女は数日前の2月9日に事務所のHPを通じてがん闘病と仕事の休止を公表したばかり。《一昨年の年末にすい臓に癌が見つかりまして、昨年1月に手術致しました。術後は順調で去年は連続ドラマと舞台に出演させて頂きました。ところが今年に入りまして肝臓にも見つかり……》’47年に宝塚歌劇団に入団してからすでに72年。ほとんど仕事を休んだことがないという八千草の休養宣言は世間を驚かせた。しかし本誌が目撃した彼女の足取りはしっかりしており、元気そうだった。右手には小さな食品保存容器を持っている。近年は自宅に出入りする猫にエサをあげるのも朝の日課になっているそうだが、その日課もきちんと続けているようだ。八千草の夫・谷口千吉氏は’07年に逝去し、彼女は1人暮らしを続けている。知人男性は言う。「八千草さんは動物が大好きで、いまは犬と猫を飼っています。がんの治療についてはよくわかりませんが、88歳なのに本人はいたって元気ですよ。今年になって車も買い替えたばかり。車高が高いので、『眺めがいいのよ』なんて喜んでいました」肝臓がん闘病中という八千草だが、続けているのは猫のエサやりばかりではない。4月スタートの連続ドラマ『執事西園寺の名推理2』(テレビ東京系)は降板したものの、なんと同じく4月スタートの『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日系)には出演していくというのだ。八千草のマネージャーは言う。「『やすらぎの刻~道』は(’17年放映のドラマ)『やすらぎの郷』の続編にあたります。今作では八千草はもともと2つの役に出演予定でした。そのうちヒロイン・しの役は降板しましたが、前作でも登場した九条節子役としては出演します」1月に肝臓へのがん転移が発覚した後、倉本聰さんは台本を大幅に書き換えたのだという。「昨年すでに撮影したシーンもありますし、今後は体調と相談しながら、無理をしない程度に撮影を続けていきたいと考えています。本人は仕事がとても好きですので、(九条節子役以外の)降板も苦渋の選択でした。しかし体調が悪化して共演者やスタッフの皆さんにご迷惑をかけるのも申し訳ありませんので、この度のような選択となったのです」「ちょっとゆるやかに、でも少し無理をして」を信条としている八千草はインタビューなどでも“できる限り仕事は続けていきたい”と語っており、さらにHPでも次のようにつづっている。《また番組を楽しみにして頂いておりましたファンの皆様には体調を整えまして、より一層楽しんで頂ける作品に参加できるように帰って参ります》文面からは“女優として、もっといろいろな役を演じてみたい”という、強い意志が伝わってくる。今年買ったばかりだという新車のこともマネージャーに聞いた。「そうなんです。実は車を買い替えるほど、『やすらぎの刻』には意欲を燃やしていたんですよ。山梨県などでのロケも多いので、“もっと乗り心地の良い車にしましょう”と本人がパンフレットも取り寄せて色とか座席とかを選んでいたんです。車高の高いミニバンにしたのも、ロケ先で景色を楽しむためでした。しかし車が届いた矢先に、転移が発見されてしまって、いまはもっぱら病院に通うときに使っています」すい臓がんの際は数時間もの摘出手術に臨んだというが、今後の治療計画はまだ検討中だという。「いまは調子が良いので、しばらくは自宅療養を続けます。しかし、がんのステージによっては入院しての療養に切り替えることになると思います。手術ですか?やっぱり手術は痛みも感じますし、なるべく避けてあげたいですね」八千草の自宅には愛犬や愛猫がいるだけではなく、大切なものも置いてある。彼女の一日は、イーゼルに飾られた亡き夫の大きな写真に挨拶をすることから始まるのだ。2度目のがん闘病でもゆるがない不屈の女優魂を支えているのは、天国の夫の優しいまなざしなのだろう。
2019年02月22日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第28回アクマの辞典ダ行【ド】➤「泥棒猫」(どろぼうねこ)…おキャット様は人間の男などわざわざ盗らない今回のテーマから「泥棒猫」である。これは、本物の泥棒のおキャット様にではなく、人の男を盗る不埒な人間のメスに対して使われることが多い言葉だ。この言葉には大きな問題がある。まずおキャット様への不敬罪で世が世なら使った時点で斬首だ。まず人間を、人間より遥かに優れた生き物であるおキャット様に例えている時点で全く悪態として成立していない、カニカマに対し「この松葉ガニ野郎!」と言っているようなものだ。よってそういう不貞の輩に出会った時は「この泥棒人間」と誤解がないように表現すべきである。また「泥棒猫」という言葉を使うことにより、ただの盗人から「猫のように悪い女だが魅力的」というイメージにすり替わってしまう恐れがあるのだ。泥棒でも怪盗とか義賊とか表現してしまうと、カッコよく思えて真似しちゃう奴が出てくるのである。だから一時期暴走族を「珍走団」と呼ぼうとして失敗した過去があるのだ。つまり「泥棒猫」は、これ以上なく盗人のことを美化した言葉なので「人の物を取っちゃいけません」と教育したいなら即刻禁止用語にすべきである。人様のパートナーを奪う行為も窃盗と言って良いはずだが、人間が物以下なせいか、正式に婚姻関係を結んでいる相手から奪わない限り、法的に罪に問えない上に、窃盗なら刑事事件だが、不貞は民事である。その昔、姦通罪と言って不貞も刑事事件だったのだ。だが、昔の法律は男が作っているため、男に都合が良いものが多く、不貞をして罪に問われるのは妻と間男だけで、なんと夫が愛人を作っても罪には問われないのである。もちろん戦後「男女不平等だ」となり「男も罪になるようにしろ」という声が上がった。しかし「だったら姦通罪自体なしにしましょう」という「そこまで男の不倫が罪に問われちゃ困るかよ」という力技で、姦通罪は消滅し、男女共に不貞行為をしても刑事罰に問われることはなくなってしまった。確かに不倫が罪になるようなら、最近、騎士団長になった島耕作も何回「被告島耕作」になってしまうかわからない。不倫が刑事罰だったら、不倫ドラマをおいそれとは作れないだろう、このように姦通罪の有無は現実だけではなく創作の世界も大きな影響を与えている。「人の物が欲しくなる」という心理は確かにある。私だって、ソシャゲのガチャで「今回のキャラは回さなくていいな」と思っても、人様がゲットしているのを見ると、つい回してしまったりする。しかし、その欲求を抑えられない者は「悪女」などというカッコいいものではないと思う。話は変わるが、最近某ティラミス店の騒動をご存じだろうか。日本の会社が海外のティラミス店を丸パクリした上に、相手の権利まで奪ったという話である。概要だけ聞くと、とても悪い話だが、この会社は現時点では法的に悪いことはしていないのだ。「悪い奴ほど法律を守る」のである。よって、バッチリ相手から訴えられる上に負ける可能性が高い不倫に身を染める女は「悪女」より「馬鹿女」のほうが近い。法的に相手を完封した状態で悪いことをし、地団駄を踏むしかない相手から発せられるにふさわしいのが「この泥棒猫!」という言葉である。【ダ】➤「妥協」(だきょう)…“深淵”のように、こちらが妥協しているとき、相手も妥協している【ヅ】➤「ヅラ」(づら)…バレたほうより、それにベストなリアクションを取らなければいけない相手のほうが辛い【デ】➤「ディズニーデート」(でぃずにーでーと)…お互いの顔より、行列に並んでスマホを見ている時間のほうが長い【ド】➤「泥棒猫」(どろぼうねこ)…おキャット様は人間の男などわざわざ盗らないプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。とにかく猫が好きで猫が登場する作品も多い。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。著作『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年02月21日“スーパーリアリズムの巨匠”上田薫の個展「-画集刊行記念-上田薫展」が、2019年3月20日(水)から26日(火)まで東京・日本橋高島屋S.C. 本館 6階美術画廊にて開催される。上田薫は“スーパーリアリズムの巨匠”として親しまれているアーティスト。東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業後、アンフォルメル絵画の影響をうけた作品を制作するも、1970年頃より本格的に写実絵画を描き始めるように。90歳も今なお現役で作品を描き続け、本物そっくりなスーパーリアリズム作品を展開している。2018年夏には、自身初となる集大成としての画集を刊行。その画集刊行を記念して行われる本展では、とろ~ととろけた卵が印象的な「サラダD」や滴り落ちる白身をリアルに描いた「なま玉子」など、ユニークな作品が勢ぞろいする。ぜひ足を運んで、上田作品を鑑賞してみて。【詳細】上田薫展開催期間:2019年3月20日(水)~26日(火)※最終日は16:00閉場会場:日本橋高島屋S.C. 本館 6階美術画廊住所:東京都中央区日本橋2丁目4-1【問い合わせ先】日本橋高島屋S.C.本館TEL:03-3211-4111(代表)
2019年02月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第27回アクマの辞典ザ行【ジ】➤「自己肯定感」(じここうていかん)…今後、肯定力に実力が追いついてない問題が深刻に今回のテーマはザ行から「自己肯定感」である。私の文章はよく「自虐系」と言われるのだが、正直そういうノリはもう流行らないだろうし、むしろこれから「うちの子が真似したらどうするんですか」と怒られる側になっていくと思う。つまり売れもしない内から芸風がオワコンになるという、2019年の目標は「転職」に決定なのでは、という状態だ。だが冷静に考えたら私は無職だった。無職ほど世相に振り回されない安定した職業はない、悪いが今年も安泰である何故自虐がもう流行らないかというと、今は無駄な謙虚さより最初に言った「自己肯定感」のほうが大事だからである。日本人は諸外国の人々に比べて自己肯定感が低いと言われている。何故そうなったかと言うと日本には「自信満々な奴はその自信がなくなるまでハンマーで殴って良い」という法律があるからだ。目の前で人が屠殺されれば誰だって「俺はハゲだし嫁はブスです」と卑屈なまでに謙虚になってしまうだろう。しかし、それはもう古い。そうやって他人の自信を奪おうとする奴こそ、ネイルハンマーの釘を抜く側で殴ってやるべきだ、という声がだんだん大きくなってきているのだ。自分の価値は他人が決めるものではない、どれだけ自分が自分を認めてやれるかのほうが大事だということである。つまり、人様に向かってブスだデブだと言ってくる連中なんぞに認められることなんかより、鏡に映った自分を見るたびに「どうして石原さとみがこんなところに?」と思えるようにしたほうが良い、ということだ。つまり鏡に石原さとみの写真を貼れば解決である。もちろん個人が「俺は誰が何と言おうと卑屈で行く」「はじめましてチンカスです」という方向性で行くなら止める権利はない。しかし自信のある人に対し他人が「もっと謙虚になれ」「身の程を知れ」というのはもはや、大きなお世話な世の中なのだ。だから私も、あまり自虐的なことを書きすぎると、親御さんたちから「うちの子のセルフリスペクトがロストしたらどうするんですか」と怒られるかもしれない、ということである。だが私も、昔に比べて「自己肯定感」は格段に上がっているのだ。今から10年前、私はその時も無職だったのだが、当時のブログにはもっと「ニートですみません」「無職の分際で」というようなことを書いていたと思う。それに対して今は「無職である自分に誇りを感じている」というスタンスだ。それもセルフリスペクトだけではない。「働かずに食う飯は美味いか?などとおっしゃいますが、農家さんが一生懸命作った米は誰が食っても美味いに決まっているでしょう、失礼じゃないですか?」という他者に対するリスペクトまで持てるようになったのだ。自分を肯定できない奴が心から他者を肯定できるわけがない。恋愛においても、自己肯定感の低い女は愛され下手で恋人ができなかったり、クズ男にハマったりといいことがないと言われている。とりあえず鏡に憧れの芸能人の写真を貼るところからはじめよう。【ザ】➤「財力」(ざいりょく)…相手に求めるのは古い【ジ】➤「自己肯定感」(じここうていかん)…今後、肯定力に実力が追いついてない問題が深刻に【ズ】➤「ずるい女」(ずるいおんな)…30歳以上はつんく♂が歌い出す【ゼ】➤「ゼクシィ」(ぜくしぃ)…あの厚さはズルズルつきあって結局結婚しないまま別れる男を撲殺するため【ゾ】➤「ゾンビ映画」(ぞんびえいが)…「ゾンビ映画好きだよ、バイオハザードとか」と言ったら怒られる世界プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年02月07日福岡出身の役者陣が地元の言葉で演じる舞台『帰郷』が開幕した。【チケット情報はこちら】本作は、入江雅人が企画・作・演出を手掛け、福岡出身の池田成志、田口浩正、坂田聡、尾方宣久、岡本麗、入江が出演するゾンビと青春の終わりの物語。入江が「福岡の人だけで舞台をやったら面白い」と約20年もの間温めてきた企画で、出演者に加え、ビジュアルやグッズのイラストは大人計画・松尾スズキ、応援コメントは劇団☆新感線・いのうえひでのりと、福岡出身の演劇人が集結して実現した。開幕に際し入江は「これまで10本近く作ってきたゾンビモノの作品の集大成でもあり、一人芝居(ベースとなった自身の一人芝居『帰郷』)でやってきたこともちりばめていて、僕が作ってきた芝居の集大成でもあると思います」とコメント。高校生男子5人組の無邪気で笑える青春のワンシーンから始まり、まさかのゾンビパニック勃発、さらに思わぬ方向へと進んでいく物語は、脚本そのものの面白さに、豪華キャスト陣による豊かな芝居、福岡弁特有のテンポやイントネーションがかけ合わさり、この作品でしか味わえない独特の魅力を放っていた。本作について出演者の池田は「見てどう感じてくれるのか?益々わからなくなってきました(笑)。我々福岡人がこんなセンシティブに描かれるなんて!少々の照れくささと、引っ張りだすおじさんおばさんの元気をどうぞ優しい目でご覧くださいませ」、田口は「とにかく、みんなとのグルーヴを楽しみ、頑張る所存でございます。気楽に、観てください」、坂田は「これだけ濃い福岡弁をしゃべる機会もあまりないと思うので、楽しんで、丁寧にやろうと思います。今年1発目、一生懸命やりますんでよろしくお願いします」、尾方は「他では観ることのできない、唯一無二の芝居になったと思います。全力で挑みます」、岡本は「とにかく、おもしろいと思います。脚本も役者もおもしろいので、十分に楽しんで頂けると思います。楽しんで、観て頂きたいです」とそれぞれコメントを寄せている。入江が「福岡の人にももちろん観てもらいたいし、東京にいる、福岡や他の地方から出てきている人にも観てもらえたら。ちょっと悲しい話ではありますが、絶対に、故郷やかつての友人のことを思い出したりできる、温かい想いが胸に燈るような芝居です」と言うように、幅広い人の心に響く作品。ここでしか味わえないものを体感しに、ぜひ劇場に足を運んで!『帰郷』は2月3日(日)まで東京・俳優座劇場にて、2月8日(金)から10日(日)まで福岡・イムズホールにて上演。取材・文:中川實穗
2019年01月29日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第26回アクマの辞典ガ行【ギ】▶「疑似恋愛」(ぎじれんあい)…他人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬ、たとえ相手が二次元でも今回のテーマはガ行から「疑似恋愛」である。疑似恋愛とは、二次元やアイドル、まともに見たら網膜が焼けてしまうイケメンや美女など、自分のものになる確率が極めて低い相手と、脳内でだけ「つきあっている」設定で楽しむ恋愛である。つまりただの「妄想」なのだが、脳内というのは唯一何をやっても罰せられない、世界一治安が悪い、無法地帯である。逆に、脳内で二次元やアイドルとつきあわなかったらどこでつきあうのだ、ここ以外で交際しようとしたら、国家権力や医療機関を呼ばれる恐れがある。もちろんあくまで妄想なので不毛と言えば不毛なのだが、そうすることにより、本人がセロトニンでビショ濡れになれると言うなら、それはそういう健康法でもあるのだ。それを止めるというのは、ジョギングをしている人に体当たりをかますに等しい。だが、ジョギングや筋トレがそんなに体当たりされないのに対し、この「疑似恋愛」には、未だに後ろから追突してくる人間がいるのだ。何故ぶつかってくるかというと「コースアウトしている人間を正しい道に戻してやるため」である。先日「二次元の男に夢中な30過ぎの友達に三次元の男を紹介してやった」という記事を見て「これは戦後のエピソードだろうか」と思った。平成も終わる今だからこそ、あえて昔の悲惨な歴史を振り返ろうという企画なのかと。だが残念なことに平成30年の話だった。もちろん、その二次元好きの友人が男を紹介してと言ったわけではない、「二次元の男などというクソの役にも立たないものに現実逃避している友人の目をこの私が覚まさせてやらなければ」という「正義感」略して「大きなお世話」によるものである。逆に文字数が増えてしまったが、これは疑似恋愛趣味だけではない、世の中には妙齢の女がリアルの男との恋愛や結婚には目もくれず趣味に没頭している姿を全部「現実逃避」と呼ぶ勢がいるのだ。恋愛以外現実じゃないとは、お前はリアルの範囲が狭すぎやしないか、と思うが、そういう人間にとっては全ての趣味が「恋愛以下」もしくは「恋愛の代替」なのである。男が「俺様たちに興味がないなんて、どうかしてんじゃねーの?」と、趣味没頭女を悪く言うのは2兆歩譲ってまだわかるが、同性までもが「画面と話してる暇があるなら、合コンにでも行こうよ!時間がもったないぞ!」と言ってくるのは絶望的すぎる。それは親切ではない、三次元の男のほうが二次元の男より優れているという、自らの価値観の押しつけである。こういった「オタクの目を覚まさせようとする人」というのは未だいなくならないのだが、そろそろオタクたちは「ちゃんと起きている」ということに気付いたほうが良いのではないだろうか。起きて、顔を洗い、メガネをかけた上で「三次元より二次元のほうが良い」と言っているのだということを、メガネをかけてちゃんと見てほしい。【ガ】▶「ガールズトーク」(がーるずとーく)…ガールたちの年代によって、美容、健康、など話題が変わるが、他人の悪口だけが普遍【ギ】▶「疑似恋愛」(ぎじれんあい)…他人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死ぬ、たとえ相手が二次元でも【グ】▶「グーグル」(ぐーぐる)…グーグルに話しかけられるかどうかで年がわかる気がする【ゲ】▶「減点方式」(げんてんほうしき)…美人は初対面が最高点で後は字が汚いだけで減点されるというが、字が綺麗でも「隙がなくて可愛くない」と減点される【ゴ】▶「ご飯デート」(ごはんでーと)…パパ活のパパ側はそう言ってそうプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年01月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第25回アクマの辞典ワ行【ヲ】➤「ヲタ夫婦」(をたふうふ)…「結婚したんだから足洗うよね」と言ってくる者もいるので油断はならない今回はワ行から「ヲタ夫婦」だ。最近は「ヲタ婚活」などヲタク同士でパートナーを見つけようという催しも活発だが、そもそも「ヲタ同士なら仲良くできんだろ」というのも乱暴な考えだったりする。インターネットでは日夜、ヲタク同士が「戦に次ぐ戦」「学級会が終わって学級会が始まる」という、一般人がその場で吐いてしまうような陰惨な戦いを繰り広げているのだ。むしろヲタク同士というのは「ケンカのネタに困らない」間柄だったりもする。しかし、人生の大半を二次元と向かい合ってきたため、いざ三次元に向かうと何を話してよいかわならない、というヲタクがいることも確かだ。そして、ヲタクの特徴に「得意分野の事なら饒舌になる」というのがある、つまり何を話してよいか全くわからない一般人相手より、ヲタク相手のほうがお互い話しやすいだろう、というのも一理ある。だが、ヲタクは得意分野の話になると、饒舌にもなるが同時に早口にもなってしまうし、興が乗り過ぎると会話ではなく、独り言と化すので、本当にそれでコミュニケーションが取れているかは別の話である。このように、話すだけならヲタ同士のほうがスムーズかもしれないが、それが結婚となると「同じアニメが好き」というだけでは難しい。むしろ片やジャニヲタで片や軍ヲタという、全く趣味が違う二人でも趣味にかける金銭感覚や、時間の感覚が似ていればそんなに揉めることはない。逆に、同じゲームの同じキャラが好きでも「課金は月1万まで」の人間と「リボ払いにしてでも出るまで回す」という人間が一緒になっては上手くいくはずがない。じゃあリボ払い同士が結婚すれば上手く行くのかというと、それはそれで早急に破滅すると思うが、少なくとも「どちらか一方が我慢を強いられる」という状況にないだけマシだ。そもそもヲタクがパートナーに求める「自分の趣味を理解してくれる人がよい」というのは「私の推しカプがどれだけシコいか相手にも理解してほしい」「2人で“尊い!”と叫んで気絶したい」という意味ではない。理解してほしい、というのは「否定はしないでほしい」つまり「ほっといてくれ」ということである。つまり、私の推しカプがどれだけSSS(スーパーシコシコ)かはわかってくれなくてよいから、それが私にとって大切なものだということはわかってほしい、ということである。しかし、世の中には、自分が理解できないもの=ゴミと見なし、配偶者の趣味のものを勝手に捨ててしまったりする人もいる。趣味がわからないのは仕方ないが、少なくとも「パートナーの大事なものをゴミ扱いする相手」とは一緒にならないほうがよいだろう。つまり共通の趣味を持つことより、お互いの趣味を否定しないことのほうが大事なのだ。「我ら推しているものは違えど、推しを大事に思う気持ちはわかり哲也」とお互い認め合っているのが理想の「ヲタ夫婦」ではないだろうか。【ワ】➤「忘れられない男」(わすれられないおとこ)…大体「この恨み忘れてなるものか」という動機で覚えられている【ヲ】➤「ヲタ夫婦」(をたふうふ)…「結婚したんだから足洗うよね」と言ってくる者もいるので油断はならない【ン】➤「N’夙川BOYS」(んしゅくがわぼーいず)…ンしゅくがわボーイズ、辞典の「ん」項目に現れた新たな救世主、バンドプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年01月07日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第23回アクマの辞典ラ行【リ】▶「理想が高い」(りそうがたかい)…顔によって言っていい条件の数が変動する、ブスは1個でも「高い」と言われる今回のテーマはラ行から「理想が高い」だ。日本は「理想の相手は?」と聞かれて二項目以上答えると「ブスのくせに理想高い」「だから結婚できないんだよ」と口を極めて罵倒される国なので、多くの女が「優しい人」という薄らぼんやりした返答をすることを余儀なくされている。特に相手に「年収いくら以上」を求める女は嫌われがちだが、ここを完全に不問にしろと言われたら、結婚生活以前に人間生活が破綻してしまう。相手に「結婚生活をやっていける年収」を求めるのは当然だろう。では「やっていける年収」「毎日見ても健康を害さない顔」程度の相手ならそこで妥協すべきでありそれ以上を求めるのは贅沢で、理想が高い身の程知らずということになってしまうのだろうか。そんなことはない。何故なら、交際も結婚も妥協してまでしなければいけないことではないからだ。「とにかく日本国籍が欲しい」「何がなんでも姓を変える必要がある」という特殊事情があるなら妥協もやむなしだが、そうでないなら理想を下げてまでするほどのことではないだろう。むしろこの「妥協」のせいで「しないほうがマシだった」な結果になることもままある。しかし世の中には「女は30までに結婚しないと」などという脅迫が満ち溢れており「結婚はしなくてはいけない」→「結婚するためには妥協が必要」→「妥協できない理想が高い女は結婚できない」→「そういう女は地獄の業火に焼かれて死ぬ」ということにしたい人間が多いため、妥協は必要で理想が高いのは悪という考えが蔓延してしまっている。ともかく「結婚」の称号を得ることが最重要で、その内容に関しては細かく問い過ぎるな、ということである。そんな世の中において、それでも「理想が高い」人間はそう言った脅迫や一般論に屈しなかった鋼のメンタルと確固たる自分を持っている人間と言える。脅迫に屈し、妥協に妥協を重ねた相手と結婚し野垂れ死ぬより「年収1000万以下の男と結婚するぐらいなら野垂れ死んだほうがマシ」という高潔な精神の持ち主である。同じ野垂れ死にでも後者のほうがその死に顔は安らかだろう。「結婚すれば安泰」というのがもはや都市伝説であると判明している昨今、むしろ理想は高く持ち結婚に対しては「結婚?まあ俺のお眼鏡にかなう相手が見つかったらしてやってもいいけどな?」と乙女ゲーに出てくる俺様野郎みたいなスタンスを取ることが、妥協づくめの結婚をするより幸せになれるのではないだろうか。【ラ】▶「ラブホテル」(らぶほてる)…女子会や外国人旅行客の宿泊先として活躍、カップルはヤれればどこでもいいだろうから譲るべき【リ】▶「理想が高い」(りそうがたかい)…顔によって言っていい条件の数が変動する、ブスは1個でも「高い」と言われる【ル】▶「ルックス重視」(るっくすじゅうし)…毎日見るなら形が良いものが良いだろう。【レ】▶「連絡を待つ女」(れんらくをまつおんな)…連絡が来たら来たで「すぐに返信しないほうが良い」というしゃらくさいテクを使おうとする【ロ】▶「ろくな男がいない」(ろくなおとこがいない)…自分ですらわからない自分の魅力をわかってくれる男がいないことプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年12月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第23回アクマの辞典ヤ行【ユ】▶「ゆとり世代」(ゆとりせだい)…30代のゆとりも増えるので、「若く見られた」と喜ぶゆとりも出てくるかも今回のテーマはヤ行から「ゆとり世代の恋愛」だ。「ゆとり」とは何か若い奴の悪口を言いたいが、語彙が死んでて何も出てこない時にとりあえず繰り出される言葉として有名だが、そもそも「ゆとり世代」とは正確にはどこを指すのか。ウィキペディアによると、主に悪口で使われている「ゆとり世代」は1987年4月2日から2004年4月1日生まれを指すらしい。つまり、初代ゆとり世代は、もう30歳ぐらいなのである、若者を揶揄する言葉として「ゆとり」を使うのはもはや「マンモスうれピー」級の遅れ感なのだ。しかし「ゆとり」という言葉はすっかり悪口として定着していて、その枕詞は「これだから」が大半であり「さすが」とか「俺たちにできないことをやってのける」とかはあまり言われない。そんな「これだからゆとりは」と言われるゆとり世代だが、その元となった「ゆとり教育」を思いついたのは、当たり前だが当時子どもだったゆとり世代ではなく、大人だ。つまりゆとりを生み出した元凶である、ゆとりより上の世代が「これだからゆとりは」と言っているのだ、海原雄山が自分で作ったあらい(※)に対し「このあらいを作ったのは誰だあ!」とブチ切れているようなものである。そんな、ある意味被害者と言えるゆとり世代だが、その特徴として「主体性や積極性がなく何事に対しても興味が薄い」というのがある。中高年の大好物としておなじみの「若い者の○○離れ」である。特に「若者のセックス離れ」という言葉はよく聞く話題だ。よって「ゆとり世代は恋愛にも積極的ではない」となってしまうのだが、これはゆとり世代が消極的性格だからというより「暇つぶしの選択肢が増えた」せいではないだろうか。私が若いころは、文明があまり発達しておらず、竪穴式住居に住んでおり、当然娯楽も、石を遠くに投げて爆笑するか、男と女、もしくは男と男、女と女、組み合わせは何でもいいが、人が二人以上いればできる「恋愛」という原始的な遊びしかなかったのである。つまり「セックスしないと時間が経たない」からやっていたのである。それが今では、スマホやパソコン一台あれば一日容易につぶれる、というか意図せず潰してしまうこともしばしばだ。それだけではなく、娯楽はひと昔前に比べ飛躍的に多様化し安価で手軽なものも増えた。そんな数ある暇つぶしの中で「恋愛」というのはかなりコスパが悪い。時間も使うが「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じく「サイゼリヤを初デートに使うとネットが炎上する」ということわざがある通り「安く済まそうとする奴は恋愛する資格がない、出直して来い」という風潮さえある。つまり、恋愛は娯楽のレビューサイトでは「コスパ☆1」だ、コスパ重視の若者はまず選ばないだろう。このように恋愛というのは割と贅沢品なのだ、贅沢せずに慎ましく生きてるんだから逆に恋愛しない若者を褒めてもよいだろう。※「あらい」…さしみの一種。こい・くろだい・すずきなどの肉の生身を冷水や氷で洗いちぢませたもの【ヤ】▶「ヤンデレ」(やんでれ)…リスカ画像を送ってきた後にデレられるとさらに怖いので現実向けではない【ヰ】▶「ヰタ・セクスアリス」(ゐた・せくすありす)…バンド名かと思ったら森鴎外の小説。キラキラネーム創始者の底力【ユ】▶「ゆとり世代」(ゆとりせだい)…30代のゆとりも増えるので、「若く見られた」と喜ぶゆとりも出てくるかも【ヱ】▶「ヱビス」(ゑびす)…発泡酒しか買わない奴が、たまに奢りでヱビスビールを飲んでおいて「ヱビスはクセが強い」と言っている印象※個人の感想【ヨ】▶「嫁姑」(よめしゅうとめ)…両方自分がいじめられてると思っているプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年12月07日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!☆第22回アクマの辞典マ行【ミ】▶「(人を)見る目」(みるめ)…モテないわけではなく、周りの人を見る目がない今回のテーマはマ行から「(人を)見る目」である。これはデカい虫しかいない無人島に生まれたというのでなければ、ある意味最重要なものだ。たとえ容姿や才能、金などに恵まれていたとしても、これがないと、何一つ恵まれずに裸一貫で生まれてきた上ケツが汚ねえヤツより最悪な人生を送る羽目になる。むしろ恵まれた人間ほど人を見る目が必要になる。そもそも何もないヤツには「何か目当て」のヤツが寄ってこないのである。もちろん何か目当てのヤツどころか何も寄ってこず、たまに勢い余ったカナブンとかがぶつかってくるだけの、デカい虫しかいない島に生まれてきたのと大して変わらない人生にもなりがちだ。だが、何も寄ってこないということは当然変なのも寄ってこないのだ。片や、何か持っている人間のところには人が集まる、集まれば集まるほどその中に「変なの」が混ざる率が上がる。よって変なのを掴まないための「人を見る目」が必要となってくる。例えば小室哲也さんなど、全盛期にもう一生働かなくていいぐらいの収入を得たはずだ。だがその後、何故あんなワイルドをゲットした展開になってしまったかというと、チープなスリルに身を任せたり、理由はいろいろあるだろうが、寄ってきた変なヤツの話に乗ってしまったからというのも大きいだろう。「才気がある人間ほど人を見る目がない」という説もある。容姿や才能に恵まれた人間は、幼少より周りに褒められ、素直に育っているため「まさかこの誰もが認める砂場の砂で堅い団子を作るのが天才的に上手い俺様をだますヤツなどいるはずがない」というように「人を疑う心」にパラメータを振り忘れて大人になってしまったりするのだ。よって、実際1~2度だまされてやっと「あ、俺をだますヤツがいるんだ」と気づくことになるのだが、1~2度だまされた時点で人生が終わっている可能性もある。片や何も持っておらず、周りから褒められた経験がない人間は、少し褒められただけで舞い上がる「チョロい」人間になってしまうケースも多々あるが、逆に「この祖父母にも塩対応された俺様に優しくするとは、こいつ何を企んでいるのだ」と猜疑心の塊となり、「てめえドコ中だよ?」と絡んでくるヤンキーの如く、人を見たら「お前、ナニ教だよ?」と自分に近づく人間は全員宗教の勧誘と思っているヤツも多い。これは人を見る目があるというよりは、素直な人間が「全員信じる」のに対し「全員信じない」という全てをシャットアウトする戦法である。こうすれば、変なヤツにだまされることはなくなるが、純粋な好意の人間も追い出すことにもなり、当然「孤独」である。「人を見る」というのは人を疑うことであり「人を見て態度を変える」というのは下品な行為だと思われがちだ。だが、「おかしい」「合わない」と思った人間から距離を取れないようではワイルドをゲットすることになる。だからと言って人を見すぎると、孤独になる。人を見る時は「視力0.7」ぐらいで見るのがベストかもしれない。【マ】▶「マウンティング」(まうんてぃんぐ)…優位を取ろうとする女をマウンティングゴリラと呼べるようになった、功績の高い言葉【ミ】▶「(人を)見る目」(みるめ)…モテないわけではなく、周りの人を見る目がない【ム】▶「無償の愛」(むしょうのあい)…無償労働をさせるために使われる言葉【メ】▶「メシウマ」(めしうま)…アイスはバニラ、のように「FXで大損した人」などがシンプルで一番うまい【モ】▶「モテ期」(もてき)…生まれた瞬間に終わっているケースが多いプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年11月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■アクマの辞典ハ行【ハ】▶「腹黒女」(はらぐろおんな)…女から見て気に入らない女は全部「腹黒」ということになる今回のテーマはハ行から「腹黒女」だ。腹黒とは、表面上は白を装いながら、その振る舞いは全て自分の利益のためという、腹の中は真っ黒のイカみたいな奴のことである 。しかし、デキ婚のことを本人たちや新婦の親が「授かり婚」と言い変えたりするように、腹黒女たちは自分たちのことを「腹黒」などと言ったりはしない。何と言うのか?「あざとかわいい」だ。これは「なんでもヤバいと言っておけばいいと思ってるだろ」と怒られるの承知で「ヤバい」と言うに等しいパワーワードだ。ちなみに「パワーワード」も最近、多用されすぎの思考停止用語としてよく怒られる。つまり二倍怒られてでも使いたい「ヤバいパワーワード」=「あざとかわいい」なのだ。読んで字の如く、計算しつくされた、あざといファッション、メイク、しぐさをしつつも、男にはそのあざとさを勘づかれてない、もしくは「もう、あざといんだから!」と言われながら飯を奢られている女のことである。昔からよくいるブリっ子じゃねえかと思うかもしれないが、本物のあざとかわいい女はバカを装ったりしない。なぜなら、それが何の得にもならないとわかっているからだ。「バカを装え」は女の鉄板モテテクであり、合コン「さしすせそ」などその代表だろう。確かにそれがヤリコンだというなら、前戯から後戯まで「すごーい」だけでよく「さしせそ」すら不要なのだが、真面目な結婚をしたい女に対して、婚活コンサルタントが「バカを装え」とアドバイスしているところもあるというから驚きである。そこがペットショップなら「バカそうだけどクソカワイイ」で決めても良いと思うが、結婚相手として「バカ」かどうかで女を選ぶ男はそれ以上のバカか「バカだから操りやすい」と思っているかのどちらかだ。もちろんホンモノのバカの方でいらっしゃるなら、そのようなお相手と結婚しても「ベストマッチング」かもしれないが、コンサルのアドバイスに盲従し「バカを装って」結婚した場合、その相手はちょっと口答えしたり自分の意見を言ったりしただけで怒りだす可能性が非常に高い。「バカ(自分より下)と思って結婚した」のだから当然だ。それも、カワイイだけのバカ女が1人、2人肩に乗っていても余裕で歩ける、むしろちょうどいいハンデという、手足に重りをつけて生活しているサイヤ人のような真の高スペック男ならまだ良いかもしれないが、そこまでの甲斐性もなく「バカな女(共働き必須)希望」の男はもはや結婚相手を探しているとも言い難く、素直に「お母さん希望」と言ってくれたほうが助かる。よってモテるために「バカを装う」というのは、そういう男を寄せ付ける「雑魚モテ」をするだけである。本当に「あざとかわいい」女はそんなことはせず、むしろ平素は「しっかりした女」、ともすれば「1人で生きていける女」のようにふるまうという。それでは男を寄せ付けないと思われるかもしれないが、もちろんツッパリ倒した女ではなく、弱みやバカさも見せる、ただその弱みやバカさを見せる相手を「厳選」するのだ。そうすれば相手は「俺にだけ本当の自分を見せてくれている」「頼られている」思うのである。あざとかわいい女は「一本釣り」なのだ。いらぬ雑魚に時間をかけないのが、その「あざとさ(頭の良さ)」の所以である。【ハ】▶「腹黒女」(はらぐろおんな)…女から見て気に入らない女は全部「腹黒」ということになる【ヒ】▶「姫扱い」(ひめあつかい)…王族に生まれなくても高いシャンパンを入れればなれる、良い世の中【フ】▶「不意打ちキス」(ふいうちきす)…性犯罪【ヘ】▶「平成」(へいせい)…自分が平成だったら二十代のうちに終わらせてほしかったと思う【モ】▶「モラハラ男」(もらはらおとこ)…「間違ってるお前」を正しにやってきた間違ってる男プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年11月07日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第20回アクマの辞典ナ行【ナ】➤「涙(は女の武器)」(なみだ)…使ったら死ぬ(社会的に)系アイテム今回のテーマはナ行から「涙(は女の武器)」だ。女のみなさん、涙を武器に使ったことがあるだろうか、女たるもの、眼球から涙を散弾銃のように撃ち相手をハチの巣にするぐらい朝飯前のはずだ。でもそれを使うと、力の差が圧倒的になってしまうので使わないであげていると思う。だが、液体状の涙を武器として使っている者はいる。特に子どものころ、涙は「切り札」として常用されていた。幼少時の涙というのは、日本の道路交通法みたいなもので、どれだけ歩行者が全裸に靴下のみ着けて道路に大の字で寝ていようと、とりあえずそれを轢いた車が悪い、となってしまうように、どんな事情があろうと「泣かせたほうが悪い」となり、先生などに怒られていた。つまり泣いたもの勝ちである。これは男子でも使えるが、男子は3才ごろから「男の子は簡単に泣いてはいけない」という男女差別にさらされており、泣くのは恥ずかしいこと、まして女子に泣かされるなど即刻腹を切るべき、と刷り込まれているので、なかなかこの切り札は使えないものである。では、大人になってから涙を武器とするのはどうだろうか。タイマン、特に痴情の場でなら大人になってからも使っていいと思う、別れ話で女が泣き出したり、逆にゴールデンボンバーのPVのように男が縋り付いて、女々しくて女々しくて辛くなったりしても、これは二人のことである。しかし、ビジネスなど、社会的な場で涙を武器にするというのは下策である。たとえ涙でビジネス上のピンチを切りぬけたとしても、それは「泣いてるお前が可愛くて」許したわけではなく「うわあ」という、許すというより引いたため「退いた」だけである。しかも1人涙を武器にする女がいると、一瞬にして「女は泣けばいいと思っている」という、主語巨大化現象が起きてしまうため、社会的な場で液状の涙を武器にする女は、涙を武器にするぐらいなら口から溶解液を出して戦う、という女から蛇蝎の如く嫌われる。大人になってからの涙を武器にするという行為は子どもの時より「切り札」度が上がっており、一度公の場で使うと「そういう人」と思われるし、何度も通用するものではない。ドラクエなら「メガンテ(※)」と思ったほうがいい、自分も無傷では済まないからだ。しかし、涙も尿と同じで、我慢に限界があり、どれだけ出すまいと思っても出る時は出る。そんな「限界まで我慢したが断腸の思いで漏らした」という涙に対しても「泣けばいいと思って」と言われてしまう時もある。この時の悔しさは筆舌に尽くしがたいものである。涙を武器として自在に操っているものもいるかもしれないが、そんな器用なことできない女のほうが多い。職場などで大の大人が涙を堪えきれないほど追いつめられるというのは異常事態なのだ。それを「泣けばいいと思っている」と女なら誰でも自在に使える武器扱いし、パワハラがうやむやにされている側面もあるのではないだろうか。※「メガンテ」…自らの命と引き換えに大爆発を起こし敵を砕けさせるという自爆呪文【ナ】➤「涙(は女の武器)」(なみだ)…使ったら死ぬ(社会的に)系アイテム【に】▶「肉食女子」(にくしょくじょし)…ヤリマンと同一にされがちだが、肉なら緑に変色した鶏肉でも食うというわけではない、結構選ぶ。【ヌ】▶「ヌーブラ」(ぬーぶら)…勝負服は綺麗に着られるが、勝負下着としては最悪な諸刃の剣【ネ】▶「猫」(ねこ)…猫がいれば男はいらないと言っている女はマジで言っているので「そんなこと言って~」と茶化すと殺される【ノ】▶「呪い」(のろい)…女はこうするのが一番幸せ、など、幸せのフリした呪いがたくさんあるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年10月20日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第19回アクマの辞典タ行【ツ】▶「都合のいい女」(つごうのいいおんな)…わかっててそのポジションを守ってる女もいるので営業妨害は良くないのかも今回のテーマはタ行から「都合のいい女」である。「都合のいい女」という言葉が浸透したのは、そういうタイトルのドラマがあったところからだろうと、調べてみたところ、すでに25年前のドラマであることが判明し戦慄した。ちなみに主演はW浅野のゆう子のほうである。一応、若者に言っておくがそういう漫才コンビがいたわけではない。では都合のいい女とは具体的にどういう女なのか。まず「呼んだらすぐ来る」が、都合のいい女の標準搭載機能のようだ、むしろこの「フットワークの軽さ」がない女は都合のいい女とは言えず、車だったら「タイヤがない」みたいなものだそうだ。ちなみに「すぐ来る」というのは暇だからというわけではなく「先約があっても男の呼び出しを最優先する」のが、都合のいい女であり「今日は女子だけで盛り上がっちゃお~!」と言った三秒後に男からLINEが来たら、即そっちに行くのである。そして次に欠かせないのが「すぐ体を許す」という点だ。もうこの時点で「都合のいい女」というのは「無料デリヘル」というボランティア活動だということがわかる、五輪ボランティアよりもよほど就活に使えるのではないだろうか。他にも奢りや借金の肩代わりなど「ATM扱い」や八つ当たりをされる「サンドバッグ代わり」などが、都合のいい女の条件に挙げられている。しかし、それらの理不尽に「耐えてる」ようでは都合のいい女としては徳が低く「彼に頼りにされている」「私にだけに本当の自分を見せてくれる」という「ありがたさ」を感じてこそ一人前だという。また、都合のいい女には度量のデカさも必要であり、彼に他に女がいても受け入れるという。それも「自分が本命だから」という受け入れ方ではなく、セカンド、サード、ついにはホームを回ってしまうような位置でも、そのポジションを懸命に守るのが都合のいい女だ。それ故に都合のいい女は、彼の周囲の人間に紹介してもらえないことが多いそうだ。万が一会っている時に、彼の知人に遭遇してしまっても彼女ぶるのではなく、瞬時に「友達の鳩子」然とした態度を取れるのがデキる都合のいい女である。このように、尽くすというより「搾取」に近いわけだが、都合のいい女自身が、自分が都合のいい女であると気付いていないかというと気付いている場合のほうが多いのではないか。なぜ我々がコンビニをよく利用するかというと便利だからである、つまり自分が便利になればなるほど好きな男にご愛顧いただけるなら、そりゃ便利になるっきゃないでしょと言う話だ。企業戦略としては当然であり、ライバルに負けないためにはどんどん便利になって当たり前である。ただ、コンビニとしてリピートしてもらえることに満足なうちは良いが、ある日突然「伊勢丹扱いしてほしい」という気持ちが芽生えたら不幸である。それに24時間営業も月日が経つごとに体に堪えるようになるだろう、頃合いを見て、自分を少なくとも「駅ビル扱い」ぐらいにしてくれる男を見つけたほうが良いかもしれない。【タ】▶「タラレバ」(たられば)…二兆円あったら二兆円さえあれば年とともに仮定のスケールがデカくなる【チ】▶「ちやほや」(ちやほや)…若いころに全くちやほやされなかった女は加齢に強い【ツ】▶「都合のいい女」(つごうのいいおんな)…わかっててそのポジションを守ってる女もいるので営業妨害は良くないのかも【テ】▶「手料理」(てりょうり)…バナナがおやつに入るかより、クックドゥが手料理に入るかで揉めがちな昨今【ト】▶「友達の恋人」(ともだちのこいびと)…危険な恋など起こらず、だいたい「友達がトイレに行っている間の無言」がキツイ存在プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年10月06日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第18回アクマの辞典サ行【サ】▶「サレ妻(夫)」(されつま・されおっと)…彼女らがシタを退治するのが現代の桃太郎今回のテーマは「サレ妻(夫)」である。サレ妻(夫)とは、配偶者に不倫されている者のことを指す。日本は昔から不貞に対する罪が重く、不義密通は重ねて4つだし、切る奴の腕が悪いと1.5ぐらいにされちゃうのである。今でこそ刑事罰はないが、どう見ても社会的には「こいつは不倫したんだから死ぬまで殴って良い」扱いされているとしか思えない。よって、サレが報復し、シタがヒドイ目に遭う勧善懲悪ストーリーは特にネット上では人気である、ジャンルとしては水戸黄門や、暴れん坊将軍と同じだ。つまり、したら最後、バレたら絶対悪として成敗、一件落着大爆笑されてしまうのが不倫である、IQが0.5以上あるなら、しないほうが良いとわかる。しかし、不倫をしている人間は多い、つまり不倫は人のIQを0.4以下というもはや視力ならメガネがいるレベルまで下げるということである。だが、そういうリスクがあるからこそ不倫は燃えるとも言う。つまり、不倫をしている人間は、銃口を口に突き付けられながら「狂気の沙汰ほどおもしろい…」というアカギ状態というわけだ。しかし全員、闇雲に舞い降りた天才、というわけではないので、きっちり不倫のツケを払わせられたりするのだが、そもそも「不倫はツケを払う行為」だと理解しないまま不倫をしている人間が多いと言う。特に独身の者は、自分は独身だからノーダメと思って気軽に既婚者と関係を持ってしまったりするが、もちろん相手の配偶者に訴えられ、慰謝料を払うはめになる場合があり、証拠があれば、戦ってもまず勝てない、何故なら不倫したほうが悪いからだ。さらに、バレた途端、不倫相手が妻や夫側に寝返るケースもある、バレても、された妻や夫が許せばシタ妻(夫)はノーダメだからだ。多額の慰謝料を請求された上、禁断の愛を交わしあっていた相手の、熱い手のひら返しを見ることになるのである。だが一番ハイリスクなのは既婚者同士の不倫、つまりダブル不倫だ、これはバレた場合、最悪、配偶者から離婚&慰謝料請求、さらに不倫相手の配偶者から慰謝料を請求という「慰謝料倍プッシュだ」状態になるのである。このように、金銭的にも社会的にも大きな損失を被る恐れがある不倫だが、残念ながら、不倫によって負うダメージは女のほうが遥かに高い。不倫ニュースを見ても、若い女の不倫は村1つ焼いたのか、というぐらい騒がれ、片や大御所男性芸能人の不倫は「あいつなら愛人の一人や二人いても不思議ではない」とほぼ完スルーだったりするのだ。だがここで「男女差別だ」などと叫んでも誰も聞いてくれない、何故なら不倫してしまったのは事実だからだ。「誰にも話を聞いてもらえなくなる」これが不倫の一番恐ろしいツケかもしれない。【サ】▶「サレ妻(夫)」(されつま・されおっと)…彼女らがシタを退治するのが現代の桃太郎【シ】▶「しまむら」(しまむら)…ユニクロよりセンスが問われてしまうので、ファッションに興味がなくても穏健派は行かない【ス】▶「据え膳」(すえぜん)…据え膳食わねば男の恥という心意気で逮捕者が出る【セ】▶「セクハラ」(せくはら)…「そんなこと言われたら何も話せない」というが、最初から仕事のこと以外何も話す必要はないのだ【そ】▶「ソロ男」(そろお・そろおとこ)…結婚しない男、この理屈で行くとオナニーはソロセックス【プロフィール】カレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年09月20日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第17回アクマの辞典カ行【カ】▶「格差婚」(かくさこん)…した瞬間に「上手くいきっこない」の呪いをかけられる今回のテーマは「カ行」から「格差婚」である。みなさんは「格差婚」と聞いて何を思い浮かべるだろう、『永遠にともに』だろうか。このように「格差婚」というのは、女の収入が男のダブルスコア以上だったり、女はハリウッド女優のようで豹を飼っているが、男はネルシャツをパンツインしてヤモリとルームシェアしている場合だったりと「女のレベルが男より遥かに高い」時に使われているような気がする。それも「ハイスペックな女」と結婚したのだから「ハイスペック婚」と呼ばれても良いようなものだが、何故かそうは言われない。おそらくこれは「男の収入は女より上で当たり前」なる考えが残っているからだろう、よって「女がハイスペック」という部分に焦点を当てず「男が女より格下」という部分をフィーチャーした「格差」などという厳しい言葉が使われている気がする。割と女に対しても男に対しても失礼な言葉であるしかし、世間の「なんか気に入らねえと思われてる度」からすると、ハイスペック婚も、格差婚も大差はない。「ハイスペック婚」は「上手いことやりやがって地獄に落ちろ」と思われているし、格差婚は「女の下でヘラヘラしやがって恥知らず地獄に落ちろ」と思われている。つまり両方、ゴートゥーヘルを願って止まれない関係である、この辺は男女平等なので安心できる。このように、男が上だろうが女が上だろうが、お互いに差がありすぎる結婚は、妬みの対象であり好奇の目にさらされる関係である。そして決まってこう言われる「どうせ長続きしない」と。もちろん全ての格差婚が上手くいかないわけではないが、“永遠にとも”にいなかった例も多いので格差が別れを招く可能性はある。しかし「部屋が暗い時、諭吉に火をつけて灯り代わりにする」など、第一次世界大戦中の成金みたいな金銭感覚と価値観についていけねえ、という場合もあるが、格差離婚の原因は、その格差に対し「俺の嫁は稼いでいてすごい」と認められるか「こいつは稼いでいることを鼻にかけて俺を見下している」と卑屈になるかの違いだという。また稼いでいるほうも「自分がこれだけ働けるのは夫のおかげ」と感謝するか「こいつは私が食わせてやっている」と見下すかでは大きな違いがある。つまり、どっちのスペックが上だろうが下だろうが、リスペクトがなければ上手くいかないということである。また、どこを買うかも人によって違う「こいつは無職のヒモ野郎だが、野菜にすら“さん”づけするところが推せる」ということもある。それを、たかだか収入や社会的地位、容姿の差だけでお他人様の結婚を「格差」呼ばわりするのは良くない。そんな言葉で自分の妬みをオブラートに包むぐらいならドストレートに「なんか気にいらねえ婚」と言ってしまったほうがいい。【カ】▶「格差婚」(かくさこん)…した瞬間に「上手くいきっこない」の呪いをかけられる【キ】▶「聞き上手」(ききじょうず)…聞いているフリが上手い人【ク】▶「黒歴史」(くろれきし)…自分の歴史のみならず「あいつとつきあったのは黒歴史」と他人の歴史の一部になっている場合がある【ケ】▶「ケチ」(けち)…そいつはケチな男じゃない、君に金を使いたくないだけだ【コ】▶「小室哲哉」(こむろてつや)…彼の人生に文句を言うより、曲を聞いたほうがとても有意義プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年09月06日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第15回アクマの辞典ア行【イ】▶「インスタ」(いんすた)…インスタ映え目的でも外出するだけ偉い今回のテーマは再びア行から「インスタ」だ。今更過ぎるテーマだが、私はインスタをやっておらず、見る習慣もないので未だにインスタグラムがどういう世界か良く知らない。もちろん、小中高エスカレーター式でスクールカーストのしんがりを守っていた者として「オシャレそうなもの」に対し、気に入らねえと思う気持ちもある、しかしそれ以上にインスタに近づけないのは「俺のレベルで楽しめるものではない」とわかっているからだ。ちなみに私が大好きなのは、ツイッターだ、短く見積もって一日64時間はやっている。ツイッターの世界は「ぬるま湯」などと言ったら湯さんに失礼なぐらいの「ぬる泥」である。「ウンコ行きたい」「ウンコ行ってきた」という文字通りクソのようなつぶやきが連日流れ、それが許容されている世界である。おそらくインスタは「そういう感じ」ではないのだ、そういう感じで行ってもいいのかもしれないが、そのノリでインスタ界の覇権を獲るのは難しいだろう。何せインスタに触れたことがないので勝手な想像だがインスタというのは「エモい写真を載せて“いいね”をせしめ合う世界」というイメージである。もちろんツイッターでもバズりとかがあるが、あれは「どう見ても男性器な大根」とかがバカウケするフィールドだ。インスタは「そういうの」ではなく、可愛いスイーツ、オシャレなファッション、感涙の景色、愉快な仲間とかが“いいね”をいただいている印象だ。そんなところで生き残れるわけではない、俺は男性器大根の剣とおもしろ看板の盾で戦える戦場に帰らせてもらう。つまり完全な偏見と被害妄想なのだが、少なくともツイッターより「向いてない」ことは確かだし、冒頭で言った通り「オシャレそうなものに対する憎しみと嫉妬」が邪魔をして手を出すことが出来ないというのもある。そういう感情を内に持つのは仕方ないのだが、それをあたかも正義であるかのように臆面もなく出しちゃっている人もいる。「インスタ女子ディスり」だ。インスタ映えする写真を撮るために、桜を根元から引っこ抜いて両肩に担いでいた、というならディスもやむなしだし、彼女にはインスタ以外の才能があると思うが、中には「ブスがはしゃいでパンケーキの写真を撮っているのが気に入らねえ」という、どこの法にも触れてないことに対し何故か怒っている人がいるのである。100歩譲ってこのシーンで怒っていいのは、至近距離でブスにはしゃがれたパンケーキさんだけだろう。これは、ブス(若い女)という自分より下と見ている存在が、自分のわからないことで楽しそうにしているのが腹立たしいだけだろう。このようにインスタだけではなく「なんか楽しそうな女」というのは常にディスの対象である、何をやっても怒られるならなら、そんな声になど耳を貸さず、最高にインスタ映えする平将門の首塚写真を撮ったり、より男性器に見える大根を探す旅に出たりしたほうがいい。何かに熱中できるというのは、それが何であれ素晴らしい事である。【ア】▶「アラサー」(あらさー)…25歳はギャグで使うが34歳はマジで言ってる【イ】▶「インスタ」(いんすた)…インスタ映え目的でも外出するだけ偉い【ウ】▶「腕枕」(うでまくら)…腕が痺れ、首が疲れる、ルーズルーズの関係【エ】▶「M」(えむ)……自称Mは、いじると割とすぐ怒る【オ】▶「お母さん」(おかあさん)…ネットに疎いように見えて裏アカまで押さえてくるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年08月20日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第14回アクマの辞典パ行【パ】▶「パパ活」(ぱぱかつ)…何重にもオブラートをかぶせた援助交際今回のテーマは「パパ活」である。「パパ活」とは簡単に言うと、飯を奢ってくれたり何か買ってくれたり、お小遣いをくれたりするパパ的存在のおっさんを捕まえることだ。しゃらくさい言い方しやがって、結局援助交際じゃねえかと、と思うかもしれないが「パパ活」は、実際はどうあれ、「あくまでおっさんに払う対価はデートやトークだけ」なのである。つまり「大3枚で一発」※みたいな世界観ではないのだ。果たして世の中に、女に高い飯を奢ってトークだけで満足する男がいるのだろうか、という疑問も湧くが「男の奢りは全部セックス目的」と断じてしまうのは「女のオシャレは全て男にモテるため」と言うぐらい失礼な話だろう。ともかく、今出会い系にはこの「パパ活」をしている若い女が多いと言う、もちろん成人同士が合意の元でしていることなら、とやかく言うことではないが、両者に「思惑の違い」があるとトラブルになりやすい。女のほうは、本当にトークとデートだけで援助してもらいたい、と思っているのに、男のほうは「そうは言っても交渉次第でワンチャン」と思っている場合である。逆に「大3枚で一発、渋るようなら2枚で妥協、それでもダメならせめて口でゲーセン」と思っている女が「若い女の子と楽しくおしゃべりしたい」と思っているおっさんとミートするのも不幸な事故である。しかし、最初は本当にデートだけのパパ活をしようと思っていた女でも、目の前に「大」をちらつかされたら、少し触らせるぐらいなら、とズルズル行ってしまうかもしれないし、しゃべるだけで満足しようと思っていたおっさんも、いざ若い女を前にすると変な気を起こさないとも限らない。「パパ活」というライトな言葉を使っていても、やはり身元不明の人間と出会うことには変わりないので、リスクはあるのだ。ところで実際「パパ活」の相場はどのぐらいなのだろう、飯を奢ってもらうにしても、サイゼリアだったら一人で食ったほうがマシなはずである。そこで早速「パパ活 相場」で検索したところ、トップに「体ありでパパ活するといくらもらえる?」というページが出てきた。やっぱり体ありなのかよ、とミラノ風ドリアをひっくり返して帰るところだったが、読んでみるとやはり「パパ活は体なしが原則」とは書かれており、高くても3万、安くなると5千円の場合もある、という。だが「体なし」を前提としながらも、もし体ありにするなら「最低3万はとれ」と書かれている、やはり「大3枚」の世界だったようだ。逆に体ありで3万も出せないような男は「パパ」を名乗る資格はないから切ったほうが良い、という。パパになっても金がなくなれば唾を吐かれて切られる、ということだ。男も女も「パパ活だから大丈夫」などということはない、と肝に銘じたほうが良いだろう【パ】▶「パパ活」(ぱぱかつ)…何重にもオブラートをかぶせた援助交際【ピ】▶「ピラニア女」(ぴらにあおんな)…金持ち男の子どもを妊娠し養育費をせしめる女日本だと養育費を取り立てるシステムがグダグダなので真似しないほうが良い【プ】▶「プチ整形」(ぷちせいけい)…プチだけに気付かれず、ついつい自ら整形カミングアウトしがち【ペ】▶「ペタジーニ」(ぺたじーに)…友達の母親と結婚という生きるエロマンガ、だが離婚したらしい【ポ】▶「ポイズン」(ぽいずん)…言いたいことも言えない世の中、というネタが通じなくなってきたことがポイズン※大3枚=3万円の意味プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年08月06日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第14回アクマの辞典バ行【バ】▶「バックハグ」(ばっくはぐ)…痴漢の得意技でもあるので使用には細心注意が必要今回のテーマは「バ行」から「バックハグ」だ。新しい体位かな?と思ったら、あながち間違いではなかったようで「後ろから抱きしめること」を指し、男女ともに「キュン」とくる行為として今アツいようだ。このような「ときめき体位」は「壁ドン」「顎クイ」のように定期的に爆誕するが、こういったものが「これをやれば女はみんな落ちる」「男は全員喜ぶ」といった風に拡散してしまうのは危険な気がする。上目使いや、アヒル口のような単独行動ならいい。ミスっても「ウンコ我慢してんのかな」と思われるぐらいで済む。ただ相手に何かする行為というのはどれも「※ただし交際相手に限る」と注釈をつけた方がいいものばかりである。「壁ドン」とか、交際相手以外にやられたら、不快を越えてただ恐怖である、自分より力の強い男に壁に追いつめられたら怖いに決まっている。体に触れる顎クイやバックハグなど言わずもがなであり、男だっていきなりよく知らん女に後ろから抱きつかれたら、ときめくより「妖怪だ」と思うだろう。つまり「ときめき体位」は「好きな人へのアプローチ」ではなく「カップルの前戯」だと思っておかないと大変なことになる。しかし、こう言うと必ず「でも相手がイケメンなら喜ぶんだろ」もしくは「美人なら何されてもいいんだろ」という者が現れる。「※ただしイケメンに限る」という秀逸すぎる注釈が生まれてしまったばかりに、女はどんなセクハラ行為でもイケメンなら許すし喜ぶという誤解が生まれてしまったのである。そんなことはないのだ。欧米のほうでも美人女優にキスされたティーンの男子が「ファーストキスは好きな人としたかった」と怒っていた、というのだから、女も男も相手の顔が良くても嫌なものは嫌なのだ、嫌じゃないのはイケメンとか美人とかではなく「相手に好意を持っているとき」だけだ。例え「イケメンなら何でも嬉しい」と豪語している女がいても、その女が考えるイケメンとは「ドウェイン・ジョンソン」かもしれないのだから、ジャニーズ系がおいそれと触っていいものではないのである。やはり、他人の身体に触る、というのはリスキーな行為なのである。女も「さりげないボディタッチ」が男を喜ばせる鉄板モテテクとして、旧石器時代あたりから語り継がれてきたのだと思うが、そろそろ平成も終わるし、見直しが必要なのではないか。男は女以上にそういう行為に異議を唱えにくいのだ。ちなみにバックハグの効果だが、男の場合は「相手を守りたい」女の場合は「相手に甘えたい」という気持ちが伝わる、とのことだが、女の場合単純に「乳が当たる」という効果もある。だがそれも、好意を持っている女の乳だから価値があるのだ。【バ】▶「バックハグ」(ばっくはぐ)…痴漢の得意技でもあるので使用には細心注意が必要【ビ】▶「ビッチ」(びっち)…ビッチと言われて喜ぶ女は「小悪魔」の意だと思っている正しくは「ヤリマン」【ブ】▶「武勇伝」(ぶゆうでん)…大体が過去の犯罪自慢なので、賢い奴は黙ってるバカはSNSに書く【ベ】▶「ベッキー」(べっきー)…1周回って応援するフェーズがなかなか来ない【ボ】▶「ボトックス」(ぼとっくす)…顔面に菌を打ってまで小顔を求める、明日を捨てた戦士プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年07月20日日本ジャズ界の大御所・菊地成孔の作品に数多く参加してきた実力派シンガーソングライター・市川愛が、今年4月に、彼のプロデュースで初のメジャーアルバムを発表した。8つの収録曲には、アーバンとカントリー、大人と子供、恋ともうひとつの恋、愛と演技といった相反する要素が美しく同居。菊地もライナーの中で「ポップスの救世主たり得る」と絶賛するみごとな仕上がりだ。【チケット情報はこちら】「30代に入った頃から、ジャズではなく、私自身の歌を歌いたいと思うようになって。今回の収録曲でもある『あこがれ』『青い涙』『水で薄めた恋』のデモを菊地さんに送ったところ「是非プロデュースさせてください」と言っていただきデビューに繋がりました。私のジャンル?そうですね、正直よくわかりませんが、アーバン・ポップス?ちょっとジャジーみたいな(笑)。自分が女子から女性に変化していると感じる今だからこそ、同世代や少し年上の女性に向けて歌いたい、そんな願いを込めたアルバムです」タイトルの『My Love,with My Short Hair』は、菊地が作詞作曲した収録曲にちなんだものだという。「それまでの私は腰まであるロング・ヘアがトレードマークだったのですが、今回のアルバム制作では、菊地さんからまずは髪をショートにしてくださいと言われて(笑)。今までやってきたキャリアを一新する、それが髪を切る演出にも、歌自体にも、いい形で作用したと思います」ほかにも、全編英語歌詞の『Play for keeps』、ギリシャ留学中に歌詞を書いたという『青い涙』、市川が得意のヴァイオリンの腕も披露している『水で薄めた恋』など、聴きどころが満載の当盤。だが、今回1番の聴きどころは、彼女が長年敬愛する浜田真理子から贈られた『あこがれ』だろう。「私は小さな頃から歌手になることを心に決めていたのですが、大学生の時デビュー前に大きな壁にぶち当たって。ちょうどその頃、TBSの『情熱大陸』で、島根でOLをしながら歌手活動をする彼女が特集されていて、“音楽は自分の最も大切なものだから、自分のペースで育てたい”と語っていた。その言葉と歌に心から感動した私は翌週、彼女のライヴを聴きに松江へ飛んで行ったんです。以来、ずっと浜田真理子教の信者で、初めてお会いしたのが約3年前。そんな“あこがれ”の方にいただいたこの曲は、終世宝物のように歌い続けていくつもりです」7月20日(金)には、duo MUSIC EXCHANGE渋谷で当盤の発売記念ライヴを開催。アルバムの制作に大きく関わった“あの人”もスペシャルゲストで出演予定なので、これは聴き逃せない!!取材・文:渡辺謙太郎(音楽ジャーナリスト)
2018年07月17日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!第13回アクマの辞典ダ行【デ】▶「DT」(でぃーてぃー)…恥ずかしいことではないが「逆にカッコいいものにする」作戦は止めた方が良い今回のテーマはダ行から「DT」だ。「DT」とは、いろんな意味があるようだが、このコラムに出てくるぐらいだから「童貞」のことだろう。童貞とは、セックスしたことがない男のことを指し、風俗のみで経験がある男のことは素人童貞、という。処女が今でも「価値があるもの」という気持ち悪い考えが消えないのに対し、童貞は一貫してバカにされがちなものであった。厳密に言うと「童貞シブい」という文化もあったようだが、局地的なものである。しかし、今では「処女云々」がド級のセクハラなのと同じように「童貞いじり」も立派なセクハラだと言われるようになった。考えて見れば当たり前のことなのだが、女へのセクハラでさえここまで野放しにされていたのだから、男へのセクハラなど、まだ問題にすらされていない問題の段階である。ともかく女だろうが男だろうが他人のセクシャリティを笑いにするのはセクハラなわけだが、それ以前に、セックスしていたら何が偉いのか、という話である。確かにその昔、ジョージ秋山御大により「おセックス様」と表され、崇め奉られてきた、セックスだが、男というのは全員セックスしたがっている生き物であり、男の価値はいかに早く女の股間にチンコをツッコむかの「早セックス選手権」で決まる、というのは先日炎上した「女の価値はバッグで決まる」どころではない、失礼な偏見である。俺様の大事なモノをそんな得体の知れない物体Xに預けられるか、と言われたらこちらはぐうの音も出ない。百歩譲って「早セックス選手権」を開催するなら、全員したがっている男を集めるべきだろう、それなら「1位が偉い」はまだわかる、それをもともとセックスに興味がない男を捕まえて「童貞なんだ」とバカにするのは、彼氏とか全然欲しくない女に「そんなんじゃカレシできないよ~」と言うのと同義である。しかし若いころは「セックスしたら偉い」と勘違いしがちである。これは男だけでなく女もだ。逆に女の方が「男に性的対象に見られることがモテ」と勘違いしたりするので危険である。もちろんヤリマンが悪いわけではない、セックスは健康にいいと言うし、安全に気を付ければ「趣味はジョギング」と言うのと変わらないだろう。ただ、自分に自覚があってヤリマンをやるのは良いが、自分じゃ「モテガール」のつもりで男からは「ヤリ田マン子さん」と呼ばれているのは悲しすぎるし、幸せになれない。このように、セックスしていたからと言って大して偉くもなく、むしろヤリすぎたことにより己の価値を下げたり、家庭裁判所にいくことになる者もいたりするのだから、それの経験の有無で人をバカにするというのは、自分のバカを露呈するようなものだろう。【ダ】▶「ダーリン」(だーりん)…一貫して「うちのダァ」と言っておけば男が変わっても気づかれない。【ヂ】▶「地頭」(ぢあたま)…「地頭は良い」というのは「悪い奴じゃない」と同じで良いわけでもない【ヅ】▶「ヅカ」(づか)…沼にハマりやすいオタが、怖くて近づけないもの【デ】▶「DT」(でぃーてぃー)…恥ずかしいことではないが「逆にカッコいいものにする」作戦は止めたほうが良い【ド】▶「毒舌」(どくぜつ)…本当に舌に毒を仕込んでいる奴しか、名乗れないようにしろプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年07月06日成河のひとり芝居『フリー・コミティッド』が開幕し、7月22日(日)まで上演中。開幕に先駆け公開ゲネプロと囲み取材が行われた。【チケット情報はこちら】本作は、オフブロードウェイで1999年に初演されたベッキー・モードによるコメディ作品。超人気レストランで予約電話受付係をする俳優サムが、お客から父親まで次々とかかってくる電話の対応に追われるストーリーで、今作では千葉哲也が演出を手掛け、成河ひとりで全38役を演じる。ゲネプロ前の囲み取材で成河は「運動量と肺活量を駆使してやっていきたい」と体力的にも大変な芝居であることを明かしつつも、「でもね、僕は見どころは皆さんそれぞれであってほしいです。どんな観方をしてもいいと思う。“くだらないコメディだった”でもいいし、プライベートな記憶につながる人がいたらそれはそれで素敵ですし、38役というものに圧倒されるのもいいですし。いろんな角度から楽しんでいただけたら」と語る。「ひとり芝居ですけど、どこかからはひとり芝居であることを忘れて観てもらえたら1番嬉しい」と成河。「この変な作品と何度も取っ組み合って、ひっくり返してきて。またひっくり返すかもしれないけど、とても楽しくやらせていただいてます。ものすごく鍛えられますね」。初めて鍛えられた部分は「肺活量だったり、役の切り替えだったり。自分で喋りながら、自分の言葉を聞くというのはなかなかしない体験です。だけど自分がノッてくると、ひとり芝居をしている感覚がなくなっていく。自分で自分と会話できるようになってる瞬間がたまにあります」「あくまでも主人公のサムを演じる、38人を使ってサムを表現する」という本作。モノローグ(独白)がなく、会話だけで登場人物のキャラを浮き立たせる脚本を、ひとり芝居でやるのは「無茶ですよ」と笑いながらも「この歳(37歳)で自分ができる無茶を散々詰め込んでいただいたので。無茶苦茶やります!」2台の電話と3台の内線(+携帯電話)にひとりで応対するサムのドタバタ劇。電話の向こうとこちら、テンションが全く違う濃厚なキャラのやりとりを当然成河ひとりで演じる。ゲネプロ中もアドリブがあったが、ひとりの人間が即興でふたりの人間のやりとりを演じるのは驚き。しかし観ている間はその驚きに気付かないほど、芝居そのものの面白さが味わえる作品となっている。この劇場でしか味わえない熱量や勢いをぜひ体験してほしい。約1か月というひとり芝居には長い上演期間を「フラッと観に来てくれる人を増やしたい。そのためには長期間やる以外に選択肢はないと思う。ひとりでもふたりでもそういう人がいたらいいなと。燃えています!」と語る本作は、7月22日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて。取材・文:中川實穂
2018年06月28日成河がひとり芝居で全38役を演じる『フリー・コミティッド』が6月28日(木)に開幕する。その稽古場にて成河に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、マンハッタンの超人気レストランで予約電話受付係をする売れない俳優・サムが、その応対でてんてこ舞いになるという、アメリカで1999年に初演された傑作コメディ。サムと電話の相手計38役を成河が演じ、演出は千葉哲也が手掛ける。どう見ても大変そうな作品だが、実際に稽古に入っての感想を聞いてみると「ふふふ」と笑い、「やってみなきゃわからない苦労がたくさんありました」と明かす。「この作品、モノローグ(独白)がないんです…。国内外を見てもそんなひとり芝居はほとんどないでしょ。つまり、スタンダップコメディ(アメリカの漫談のようなスタイルの芸)なんだと思う」。だからと言って「スタンダップコメディ的にはできない」と成河。「だから本国とはまた違うものになっています。ちゃんと演劇として成立させられたらなって。千葉さんもずっと言ってくださっていることですが、“すごい芸だったね”を忘れてもらえたらいい。落語家さんもそうでしょうけど、観ているうちにそういうのを忘れて、演劇にみえるようにしたい。でもそこまではまだ全然…!」。経験豊富な成河が「声を大にして言いますよ。前例、ないんじゃないですか!?」と断言する本作。「“役を生きる”などいろんな言い方はありますが、(通常は)芝居ってある“型”に押し込まれていくものでしょ。でもこの作品を成立させる“型”はどこにもないんです。やっぱり落語とも全然違いますし」。それを稽古場で「何度もちゃぶ台をひっくり返すことを、千葉さんはずっと一緒にやってくださるので、体当たりし続けています」。結果、今見えているのは「とにかく僕は“38人”ではなく“サム”を演じるだけだということ。他の人たちを使ってサムを表現することができたらいいのかなと思っています」。取材後の通し稽古では、とにかく笑った約2時間。俳優から煙が出そうな芝居ではあるが、成河の言った通り、気付けばその苦労は透過し、サムの行方に夢中になっていた。「都会で生きる僕たち自身の話としてすごくリアリティがある。なんでそんなにしてまで電話に出なきゃいけないの?ということなのですが、それって僕たちの生活そのものですから。ただ、そこを感じていただくためには、僕が苦しんで“見てられない”と思われないと。願わくば、“僕が”じゃなくて“サムが”ですけどね!」「オペラグラスで覗くのではなく、全身で感じ取ってほしい!」(成河)という本作は、6月28日(木)から7月22日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて上演。取材・文:中川實穂
2018年06月26日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!第12回アクマの辞典ザ行【ザ】▶「雑魚モテ」(ざこもて)…雑魚すら寄ってこない漁場も多数ある今回のテーマはザ行から「雑魚モテ」である。この言葉、私は知らなかったのだが、おそらく知らないまま死んだほうがマシな言葉な気がしてならない。だが仕事上そうもいかないので調べたところ「どうでもいい男にばかりモテる女」という意味だそうだ。つまり、低スペック男=雑魚である。人様がキンタマを痛めて生んだご子息を雑魚とは思い切ったことを言うな、と思うが、こちらが男を雑魚扱いしている時、男もこちらを雑魚と見ているという深淵の法則があるのでお互いさまかもしれない。だが、実際「雑魚モテ」というか、合コンにいたら爆弾処理班がフル装備で出動しだすような男にばかりモテる女というのは存在する。そういう女はまず自動魚選別機能が故障している場合が多い。その機能が発達している女なら、瞬時に相手が雑魚なのかサバなのか本マグロなのか、選別しそれに見合った態度をとる。当然、塩対応どころか「雑魚対応」された男はよほど鈍くない限りそれ以上その女に近づかないだろう。普通の女でも「こいつ絶対アニサキス持っている」という男には距離を置いた態度をとるだろう。それがぶっ壊れている女というのは、男を見ても全部「お魚さんだ」としか思えないか、雑魚と本マグロの見分けはついても、対応を変えることができず、全部刺身についてるしょうゆで食ってしまうのだ。つまり悪い意味で「わけへだてない」前にも書いたが、モテない人間というのは、異性からの好意どころか「普通に接してもらう」ことにすら慣れてないため、過剰に警戒するか、すぐ好きになってしまうかの二択になってしまいがちなのだ。選別機能がない女は、そういう男にも普通に接してしまうため、出会って4秒で好きになられて、あっという間に雑魚サーの姫になってしまう。そして本人自身も自分に自信がないタイプだと「こんな私を好きって言ってくれるんだし」とそのまま雑魚とつきあってしまうそうだ。結果、雑魚しか回ってこない回転ずしの皿を重ねることになってしまう。こう見ると「自分に自信がない」というのは、百害しかない。満々過ぎるのも良くないが、なさすぎると、ちょっと優しくされただけで「す…好き!」となってしまったり、緑色に変色したマグロを「せっかくだし…」と食ってしまったりする。「生きてるだけで丸儲け」と同じぐらい「息しているだけで偉い」という思想が我々には必要なのかもしれない。【ザ】▶「雑魚モテ」(ざこもて)…雑魚すら寄ってこない漁場も多数ある【ジ】▶「地雷」(じらい)…いきなり「それ私の地雷なんですけど」と怒り出す女は大体の人間にとって地雷【ズ】▶「ズボラ女子」(ずぼらじょし)…つまり衛生観念が低い女なので、手料理などには注意【ぜ】▶「絶食男子」(ぜっしょくだんし)…セックスしなきゃ死ぬ男のほうが生物として弱いと思う【ゾ】▶「ぞっこん」(ぞっこん)…「こいつ俺にぞっこんなんで」と言った瞬間ぞっこんじゃなくなるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。★オフィシャルサイト★Twitter
2018年06月20日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第11回アクマの辞典ガ行【ガ】▶「外国人彼氏」(がいこくじんかれし)外国人と付き合うのがステータスと思っている女もいるようだが、自慢のカレシも祖国ではクラスで変なあだなをつけられてたタイプかもしれない。今回のテーマは「ガ行」から「外国人」だ。私もこう見えて実は日本語がしゃべれるのだが、何故か同じ日本語を話す日本人ともコミュニケーションを取れたことがなく、よって外国人とコミュニケーション、まして恋愛なんてとても考えられない。しかしよく考えれば、私がいつも追っている画面から出てこない系の男子は国どころか次元が違う。二次元と三次元の垣根に比べたら国境なんぞもはやないも同然だろう。ところで「日本人は外国人にモテる」という説を、みなさんも1回は聞いたことがあるのではないか。真実なら朗報だと思うが「外国人」というのがあまりにザックリしすぎている、ここをどこかハッキリさせてくれないと「いっちょモテてみっか」とボスニアに着いた瞬間「モテるのはセルビアです」と言われても困る。それとも、日本の男以外なら全世界でモテるということだろうか、日本から出る予定がない女にとっては無意味すぎるし、逆に全世界にブスと言われてもいいから日本で美人と言われたかった。調べてみたが、諸説ありすぎて「この国なら確実にモテる」というのは見つからなかった上、逆に悲報を見つけてしまった。「日本の女が外国人にモテるのは簡単にヤラせるからである」Oh…ガッドムファッキンシット…思わず知っている英語が全部出てしまった。つまり、外国人の間では「日本の女はイージー(すぐヤラせる)」なことで有名なため、見つけたらとりあえず声をかけてみる、それを日本人女が「モテた!」と勘違いしている、という構図らしい。さらにそういう女は大体「日本でモテた経験がない女」だそうだ。ジーザス…クライスト…また新しい英語を覚えてしまった。全ケースそれ、というわけではないだろうが、確かになくはない話である。自分もそうなったら勘違いする自信があるからだ。これは「モテないあるある」だが、あまりにも人、特に異性などから好意を向けられ慣れていないと、たまに好意を向けられた時、必要以上に「舞い上がる」か「疑う」かの二択になってしまうのだ。前者は「イージー」で後者は「私に声をかけるなんて、こいつネズミ講か宗教だな?」と思う奴である。しかし、ねこ歩きで有名な岩合さんに一度だけお会いした時「かわいい猫よりそうじゃない猫に声をかける、すると猫も『えっ私?』となる」と言っていた。生まれた瞬間「カワイイ」が約束されたおキャット様でもそうなってしまうのだ、それより下の人間がそうなるのは当然なのである、これからも、たまのモテ(た風)に心からはしゃいでいこう。【ガ】▶「外国人彼氏」(がいこくじんかれし)外国人とつきあうのがステータスと思っている女もいるようだが、自慢のカレシも祖国ではクラスで変なあだなをつけられてたタイプかもしれない。【ギ】▶「擬人化」(ぎじんか)やると「擬人化すればオタクが喜ぶと思って!」と怒り出すオタクが必ず現れるジャンル【グ】▶「愚痴」(ぐち)SNSがこればかりだと嫌われると言うが、景気良いことばかり言っていても嫌われる【ゲ】▶「解せぬ」(げせぬ)「なんであんなブスがモテるか全然わかんない」多分そういうことを言わないからだ【ゴ】▶「ご縁」(ごえん)これがないことを理由に、交際、結婚、就職、全部断っていいプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年06月06日大勢の学生や仕事を終えた会社員たちが、ひっきりなしに行きかう東京・渋谷の繁華街を、ゆったりと歩いていたのは女優・八千草薫(87)だった。 彼女が入っていったのは、いまはやりの“肉バル”。おいしい肉をおしゃれに、かつ豪快に食べられるのがセールスポイントのレストランだ。87歳という年齢と肉バルは、ややミスマッチにも思えるが、あるテレビ局関係者は言う。 「連続ドラマ『執事西園寺の名推理』(テレビ東京系)の打ち上げが行われたのです。『執事〜』では、上川隆也(53)が演じる“完璧すぎる執事”と、彼が仕える優雅で上品な“奥様”が、殺人事件に直面していきます。2人の絆も効果的に描かれていて、視聴率も好評です」 本誌が八千草を目撃したのは5月21日だったが、彼女が入店した直後、主演の上川が、個人事務所の社長を務める19歳年下の妻を伴って打ち上げ現場に到着した。ドラマ収録の様子について、制作関係者は次のように語る。 「八千草さんが収録現場に入ったとたん、その場にいい意味での緊張感が生まれるんです。場が締まるという感じでしょうか。八千草さん自身は、ゆったりとした雰囲気をまとっているのに、進行は流れるようにスムーズになるのが不思議でした」 出演者たちにとって八千草はアイドル的存在でもあったという。出演者の1人であり佐藤二朗(49)は、こんなツイートを。 《最初のご挨拶で「初めてご一緒させて頂けるのに最初の僕の台詞、“おばあちゃん、なぁおばあちゃん”で申し訳ないです」と言ったら、「だっておばあちゃんだもの」と満面の笑みを返された時、完全に胸を射抜かれた》(5月11日付) 大ベテランにも関わらず、気さくに打ち上げにも参加していた八千草の姿にも新鮮な驚きを感じたが、所属事務所の担当者は次のように語った。 「『作品は、仲間みんなでつくるもの』というのが、八千草のスタンスです。彼女は『最後まで、仲間たちと時間を共有したい』と、常に考えているのです。だから映画やドラマの打ち上げにも、いつも参加させていただいています。もちろん若い方たちのように3次会で朝まで、といったことまでは難しいのですが」 打ち上げは皆勤を目指すというのが、八千草の女優哲学なのだという。 この日、1次会終了後に帰路についた彼女だったが、顔には満足そうな笑顔が浮かんでいた。“仲間たちと過ごすひととき”も、彼女が壮健であり続ける理由なのかもしれない。
2018年05月31日「平野薫―記憶と歴史」展が、箱根・ポーラ美術館で開催。会期は、2018年7月22日(日)から9月24日(月)まで。「平野薫―記憶と歴史」展を手掛ける平野薫は、古着や布製小物などを糸の一本一本にまで解き、それを展示空間の中で再構成する繊細なインスタレーションを制作するアーティスト。ドレスや下着、傘、シューズといった身の回りのモチーフは、元々の素材であった"糸"に戻ることで、ヨレや色褪せをより一層顕在化させ、かつてその糸を纏っていた者の気配や記憶までをも強く感じさせる。本展では、新作3点を含む全4点を展示。繊細な作品に潜む個人の記憶や経験を扱いながらも、それを歴史の中に還元していくことをテーマとした作品を発表する。例えば、3点の傘を組み合わせたインスタレーションでは、平野薫が留学時代に暮らしていたドイツ(旧東ドイツ)の傘や、故郷の長崎、現住地の広島で入手した傘を使用。異なる3都市で出会った傘のインスタレーションが重なることで、作者を形成した歴史的に深い意味のある場所であることを連想させる。また、工業用のミシンや糸を使用した新作インスタレーションも見どころのひとつ。戦時中の重機製造にルーツを持つメーカーのミシンを使用することで、戦後日本の高度経済成長を支えた工業機器と、人々が日々消費する衣服や繊維との関係性、そして近代日本の歴史の流れを暗示するかのような作品に仕上げている。【詳細】ポーラ美術館「平野薫―記憶と歴史」展会期:2018年7月22日(日)~9月24日(月)開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)休館日:無休※展示替えのための臨時休館あり会場:ポーラ美術館住所:神奈川県足柄下群箱根町仙石原小塚山1285【問い合わせ先】ポーラ美術館TEL:0460-84-2111
2018年05月20日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第10回アクマの辞典ワ行【ワ】▶「ワンナイトラブ」(わんないとらぶ)ラブってそんなに価値ねえな、と気づかせてくれる今回はわ行から「ワンナイトラブ」だ。字面だけ見ると、バーでの出会い、カクテルドレスのミステリアスな美女、「良かったら思い出を作りにきて」と渡される最上階のスイートルームの鍵、などを連想しがちだが、実際は未だにババアが鍵を手渡ししてくるラブホで行われていたりもする。つまり「一夜限りのセックス」を、考え得る限りしゃらくさく言ったのが「ワンナイトラブ」だ。ただしこれは、行きずりとは言えお互い合意が前提であり、酔わせて連れ込もうとするのは「犯罪」。片方がワンナイトラブで、片方がつきあってもらえるつもりでいたら「スパーク一発ヤリ逃げ」となる。しかし、そんな文字通り、使いきりコンタクト感覚でパツイチかました経験がある女というのはどのぐらいいるものなのだろう。いつも通り真偽不明のネット情報によると20~30代の女100人に聞いたら3~4割が「ある」と答えたそうだ。なぜヤッたかというと、その多くが「酒の勢い」また「失恋のヤケクソ」など「カッとなってヤッた」としか言いようがない「強く当たって後は流れで」のような、相撲の八百長の如き理由である。したことがない、またやりたいとも思わない者の意見としては「好きにならないと無理」という純粋なものから「酔ってヤッていいことなし」という「せやな」としか言えない真っ当なもの、「翌朝、戦国自衛隊の夏八木勲なってるから」という「次の日の服やメイクのことが気になるから無理」というタイプもいる。真面目なことを言えば一夜限りの関係なんて虚しいし、危ないからやめなさいとなるが、誰かが知らない男と一発ヤるごとにトキが1匹死ぬというわけでもない。フリーの大人の女が、合意の上で、その後巻き起こる面倒やリスクを理解した上でヤッているなら止めようもない話である。また男向けに「女をワンナイトラブに持ち込む方法」を指南しているページも見つけた。そこに書かれている「ビッチと噂されるのを嫌がるから、口が堅いことをアピール」ぐらいはまだわかるが「体目当てではないとアピール」はいただけない。ワンナイトラブでこれをやると「俺は君の体目当てではない。内面も評価した上でヤリ捨てたいんだ」ということになってしまう。嫌がっている相手に関係を迫るのは下の下だが、ワンナイトラブで誠実さを見せるというのも下策な気がする。それこそ相撲感覚で、1回ぶつかって。いい汗かいたら解散ぐらいでいいのではないだろうか。【ワ】▶「ワンチャン」(わんちゃん)「1回チャンスがある」より「可能性がある」と言う意味で使われがち、ただセックスだけ前者の意味が使われる【ヲ】▶「ヲタク」(をたく)自らを「ヲタク」と自称するオタクに会ったらオタクの中でも面倒な奴なので関わるな【ン】▶「んめー」(んめー)辞書を作るとき、「ん」はいつも俺たちを悩ませる、そんな女になりたいプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年05月06日OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!第9回アクマの辞典ラ行【ロ】▶「ロミオメール」(ろみおめーる)恋人と別れたことによりポエムの才能に目覚めたならプラスと言える今回のテーマはラ行から「ロミオメール」だ。ロミオメール、というのを皆さんはご存知だろうか、主に何故か別れた瞬間、ポエムの才能に目覚めてしまった元カレから送られてくる、自分に泥酔しているメールのことを指す。逆に元カノから送られてくるのは「ジュリエットメール」である。「ロミオ」と称される通り、大体別れた原因は己の浮気やギャンブル癖だったりするのだが、何故か彼の中では「運命に引き裂かれた」というようなストーリーになっており「俺は愛の翼広げて待っているから、いつでも帰ってきていいんだよ、素直になりな」と、いつのまにか許す側に回っているため、こちらは「も、もしかして私たち(立場が)入れ替わっちゃってる~!?」と驚愕するしかない。こんなメールを、愛情が残っていない相手から送られてきたら、怒りと不愉快さで爆発必至であり、すぐさま消去されるものがほとんどだろう。しかし、ロミオメールはポエムとしての完成度は高いのだ。この作品を、怒りに任せて、ゴミ箱に捨ててしまうのは、大きな文化の損失である。そんな己の感情より「文化財の保存」を優先してくれた者たちのおかげで、今でも多くのロミオメールが現存している。ちなみに保存方法は「ネットに晒す」である。ロミオメールのみならず、どれだけ心を込めたメールでも、相手から「どうでもいい奴」と思われていたら、全て「爆笑メール」として、晒していいものとされてしまうのだ。逆に好きな相手からなら、タイトル欄に「りょ」としか書かれていないメールでも、保護る、そんなものである。そんな、人の無慈悲さのおかげで、今でも「ロミオメール まとめ」などで検索すれば、多くの文化遺産を鑑賞できる。昔は私もこの美術鑑賞を趣味としていた時期があるが、今はもう見られない。人間関係、特に他人の恋愛のいざこざを笑って見られるのは、心身ともに元気がある若い時だけなのである。だから今はもう、ロミオメールは胃にもたれてしまい、見ることができず、「ギャンブルの借金で困っている人」など、あっさりしたものしか鑑賞することができない。「老後の楽しみ」という言葉もあるが、若い時にしか楽しめないものも、歴然と存在するのだ。そうなった時後悔がないよう、今のうちにロミオメールを鑑賞しておくといい。【ラ】▶ラブレター」(らぶれたー)昔は回し読みぐらいで済んだが、今は写真でネットに晒される、読んだら爆発する機能がない限りは、出さない方がいい【リ】▶「理系男子」(りけいだんし)メガネで細身の白衣が似合う賢いイケメン以外はただの理系【ル】▶「ルイボスティー」(るいぼすてぃー)何にでも効く、女にとっての進研ゼミ的存在つまりやっていてもそんなに効かない【レ】▶「レンタル彼氏」(れんたるかれし)「デートの練習などに」と書かれているが、彼氏にレンタル彼氏でデートの練習をしたと知られたら別れそう【ロ】▶「ロミオメール」(ろみおめーる)恋人と別れたことによりポエムの才能に目覚めたならプラスと言えるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2018年04月06日テレビ東京ほかにて4月よりスタートするドラマ「執事 西園寺の名推理」この度、主演の上川隆也演じる“パーフェクトな執事”が仕える奥様役を、八千草薫が演じることが決定。八千草さんがテレビ東京の連続ドラマに出演するのは、1998年放送の主演作「魚心あれば嫁心」以来20年ぶりとなる。八千草さんが演じる優雅で上品な奥様の伊集院百合子は、好奇心旺盛で少しだけ天然キャラで、守ってあげたいオーラいっぱいの人物。しかしそれでいて実は芯が強く、人や物事の本質を見抜く直観力も持ち合わせているという。百合子は夫が亡くなる前から仕えている西園寺と、深くて厚い信頼関係で結びついており、2人は言わば阿吽の呼吸で通じ合う関係。百合子が用件を言わずとも、西園寺はその意図を汲み取り、たちどころに望みを叶えてしまうのだ。そんな2人が殺人事件に出くわすことで物語が展開。事件に疑問を感じた百合子の意思を汲み、西園寺は独自の捜査を開始。有能な執事とはいえ、事件捜査は素人のはず…ところが、その知識と能力で鮮やかに事件の謎を解き明かしていく。2人のコンビネーションも見どころのひとつとなっていく本作だが、共演は今回が初めて。八千草さんは、「主演の上川さんは、ずっと以前から素敵な方だな、素敵な俳優さんだな、と思っていましたので、今度ご一緒させていただくのは、とってもうれしいです」と話し、一方上川さんは「西園寺がその全能力を尽くして仕える伊集院家の“奥様”として、八千草薫さんというこの上ない方が名を連ねてくださいました。八千草さん演じる奥様に仕えるにふさわしい執事になれるよう、全力で努めたいと思います。西園寺一と奥様とのやり取りや、伊集院家に関わる人々との間に描かれていく空気が、ご覧になる方にとって癒やしとなるような時間になればと思います」と意気込み。そして、本作がミステリーの連続ドラマ初出演となった八千草さん。「ミステリーって私、あまり出たことがなくて、連続モノはこれが初めてなんですね。単発では出たことあるんですけれど…」と言い、「ミステリーだけど、生々しさとかそういうのではなくて、なんかちょっと変わったドラマだな、と思っていまして、どんな風になるのかなといまから楽しみです」とコメントしている。「執事 西園寺の名推理」は4月13日より毎週金曜日20時~テレビ東京ほかにて放送。(cinemacafe.net)
2018年03月07日