家族が帰省してきて。みんなで『紅白』を見て、それからお蕎麦をいただいて……」そう話すのは、塩士純江さん(67)。純江さんの夫・正英さん(76)は、明治時代から輪島塗の製造と販売を手掛ける、「藤八屋」の3代目だ。藤八屋は、今年1月1日に発生した能登半島地震で壊滅的な被害を受けた。その地震の前日、年の瀬の塩士家には、例年どおりの、幸せで穏やかな時間が流れていた。「元日の朝、帰る娘たちを送って能登空港まで行って。市内に戻ってから本店に立ち寄り、店の明かりだけつけて。それから2人で神社とお寺、お墓にお参りしました」午後、本店に戻ると、特に持病もなかった正英さんの体に異変が起きる。「急に『目が回る』と言って。『うっ、うっ』と、えずきだして」しばらく横になっても症状は治まらず、脳梗塞などの大病を疑った純永さんは、正英さんを車に乗せ救急外来に。そして、正英さんがMRI検査を受けた直後だった。「ストレッチャーに乗せられ、検査室を出てすぐでした。大きな揺れが突然来て。あまりの揺れにストレッチャーが横倒しになってしまって、私は床に転がり落ちました。大きな病院の建物がギシギシと揺れて、恐ろしかった」(正英さん)最初の揺れのあと、正英さんは車いすに乗せられ、外に出された。余震が続くなか、院内は照明が落下するなどの危険があったためだ。「病院の外で待機しているときだったかな。消防車のサイレンの音が聞こえてきて。『いやだ、火事かしら?』って思ったんです」そう話す純永さん。同じころ、本店の向かいに住む人から電話が入った。「藤八屋は大丈夫、ちゃんと立っとる」と教えてくれた。「火の手は海側に向かってる」とも。ところが十数分後、また同じ人から、恐れていた知らせが届く。「燃え始めた」と。そこから先は、暗澹たる気持ちを抱えたまま車中で過ごした。あたりが暗くなってくると、朝市の方角の空が赤く染まるのが見えた。「車載テレビでニュースを見ていたら、まさにうちの本店が燃えている映像が流れていて。何時ごろだったかな、夜中に近づけるところまで、と車で朝市のほうに向かったんですよ」(純永さん)そのころから、2人の心は「シャッターが下りたような状態」(純永さん)になった。燃え上がる町を遠目に眺めても「うちが燃えとるんやな、としか思わんかった」と正英さん。純永さんも「泣きわめくでもなく、ただ『終わったな』という感じだった」という。それは翌朝も同じで、思いの丈を詰め込んだ店の焼け跡を前にしても、不思議と涙も出てこなかった。「2人で見に行きましたけど、言葉も出てきませんでした。あまりに呆気なく、なにもかもがなくなってしまって。なんだかまるで、夢の中にいるようで」山本町の建物は残ったが、壁が崩落するなどあちこち傷んでいた。1月中は余震が怖くて、ずっと車中泊をしていた。カセットコンロで煮炊きをし、飲料水は避難所の給水車から。用便は凝固剤を入れた袋をトイレにかぶせて済ませた。幸いなことに、正英さんの体調は回復。検査結果も異常なしだった。藤八屋は07年3月に発生した大きな地震でも被害を受けているが、このとき同様、支援、応援の声は全国から届いた。「私たち、東日本大震災のあと、宮城県の2つの鰻屋さんに漆塗りの重箱を100個ずつかな、お届けしたことがあるんです。再建に役立ててほしいと。そのお店の方たちが今回いらしてくれたんです。本当にありがたかった」(純永さん)ミシュランで星を獲得した東京・南青山「NARISAWA」のオーナーシェフもいち早く輪島に駆けつけ、炊き出しをしてくれた。ここも、藤八屋の漆器を使う名店の一つだ。正英さん、純永さんが作る器を愛用している彼らにとって、今度の被災はまさに自分ごとなのだ。正英さんは少しだけ?を緩めると、こう言葉を継いだ。「そうですね、だから『一刻も早く、仕事を再開してくれ。頑張って続けてくれ』と言われます」そして3月25日。正英さんは山本町の工房で、仕事を再開した。そのときの率直な感想を尋ねると、正英さんは照れ隠しなのか、こんなふうに答えた。「いや、勘は少し鈍っていたし、しばらく使ってなかった部屋が冷え切ってしまって、漆がなかなか乾かなくて、難儀したね」横で聞いていた純永さんが、夫の気持ちをこう明かしてくれた。「だけどお父さん、ほら、初めて上塗が終わったのが4月の最初のころだっけ、わざわざ私のところまで来て言ってたじゃない。『塗れたぞ!』って、すごく嬉しそうに言ってたじゃない」妻の言葉に、夫は頭をかいた。「やっぱりね、日常というのはありがたいです。日常の仕事ができる、それだけで……、幸せですよ」“いいものを作り続けて、輪島塗を守る――”、輪島の地で苦難を乗り越えながら重ねてきた年輪、そして希望が、「藤八屋」の漆器には塗り重ねられている。
2024年05月26日近鉄百貨店奈良店では、2024年1月1日(月・祝)に発生した能登半島地震に対する支援の一環として、輪島塗展示販売会「輪島塗をつなぐ」を2月27日(火)から開催します。伝統工芸である輪島塗を未来へと受け継いでいくため、伝統産業発祥の地である奈良の漆器職人が発起人となり開催するイベントで、分業で行う輪島塗の製作工程ごとの職人たちが直接販売します。美しい輪島塗の工芸品を手に取っていただくことや、支援の言葉を直接伝えていただくことを通じて、復興への絆を醸成する機会にできればと考えています。広口椀 26,400円■日時 2024年2月27日(火)~3月3日(日)■場所 奈良店 5階 和洋食器売場■出品作家塗師 辻 雅史上塗り 吉田 宏之椀木地 辻 正尭塗師 若島 孝雅沈金 古込 和孝蒔絵 古原 秀樹蒔絵 松木 大輔賛助出品 杉村 聡※出品作家のうち数名が販売いたします。※開催期間中は奈良市の宿泊支援を活用され、奈良市内ホテルに滞在されます。■主催:杉村 聡 (大和漆工芸杉村) 協力:奈良市、近鉄百貨店奈良店、なら工藝館■ ■主催者より杉村聡(大和漆工芸杉村)2024年1月1日に能登半島で起こった地震により、家屋が倒壊したり仕事道具を焼失したりするなど、甚大な被害が輪島塗職人にも出ています。伝統工芸の漆芸は日本の文化であり、「漆」を英語で表現すると“Japan”と言われるように日本を代表する工芸です。その漆芸の一つである輪島塗は、長い年月をかけて磨き上げられてきた大切な日本の工芸です。輪島塗は製作工程ごとに職人たちが分業し生産します。工程の一つでもなくなると輪島塗は完成しません。その輪島塗を守るために、この度、輪島塗の販売会を開始することとなりました。職人たちが制作した作品を手にとり、ご購入いただくことでご支援いただけたら幸いに存じます。■ ■出品一例海椀 27,500円高杯 19,800円スコーン皿 8,800円縄胎杯 38,500円飾り台 88,000円姫丼 22,000円石目塗銘々皿 110,000円※状況により出品作品が変更となる場合がございます。※表示価格には、消費税が含まれています。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年02月20日「漆器 山田平安堂」は、オリジナル・デザインの漆器を通じ、皆さまのライフスタイルを豊かにする会社ですが、痛ましい能登半島地震を踏まえ、親交ある輪島塗や輪島塗に関わる方々の復興を、主に経済的に、かつ永続的に支援できる仕組みはないかと考え、その第1弾として「震災を乗り越えた輪島塗」の販売会を代官山本店・GINZA SIX店にて開催いたします。飾箱 舞蝶今回は、震災を乗り越えニューヨークでの見本市に旅立たれた岡垣漆器店さんに協力を頂きました。■開催概要会期:2024年2月10日(土)~3月10日(日)場所:代官山本店(渋谷区猿楽町18-12 ヒルサイドテラスG棟2F)GINZA SIX店(GINZA SIX4F)両店舗合わせ、20点を超える輪島塗の数々を展示(過去の輪島塗も含めると40点超え)ライフラインの復興は大事ですが、その後の経済活動がしっかりと復興することで、安心や安定した生活に繋がればと思っておりますし、経済活動の支援こそが平安堂の様々なファンクションが活かせると考えています。ご購入頂ければ何よりではございますが、見て頂く、共感して頂く、多くの方にお伝え頂くなども、皆さまの温かなお気持ちだと思います。積極的にSNSなどでシェアなど頂ければ幸いです。なお、今後は以下の取り組みを実施し、継続的、永続的な支援につながればと考えています。Step1 (現在)震災を乗り越えた輪島塗を仕入れ、輪島の経済を回します。Step2(Soon)輪島塗の売り上げは、次の輪島塗の仕入れに充当し、永続的な支援に繋げます。Step3(2~3ヶ月後)完成品に仕上げられない、途中工程の輪島塗を購入し、弊社工房で完成品に仕上げ皆様にお届けします。中間品を少しでも早く資金化してあげることで、輪島の経済が元気になります。Step4(2~3ヶ月後)再起を図る、熱意ある職人さんに仕事をお願いし、産地力が回復するまでの間、職人さん達の仕事量を確保し、安心して復興に取り組める環境を作ります。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年02月14日株式会社トムス・エンタテインメント(本社:東京都中野区 代表取締役社長:竹崎忠)は、ルパン三世・次元大介・石川五ェ門・峰不二子 全4種の「ルパン三世 輪島塗 本蒔絵」を2023年3月17日(金)正午よりトムスショップにて受注販売を開始いたします。輪島塗 本蒔絵(全種)【ルパン・次元・五ェ門・不二子を伝統の輪島塗で再現】ルパン一味を本蒔絵で表現しました。伝統の技法で細部まで手描きで再現し、ルパンは桜、次元は紅葉・五ェ門は朝顔、不二子は梅とキャラクターごとに四季の花をデザインとしてあしらいました。一枚一枚熟練の職人による手描きで丁寧に仕上げます。スタンド入りの特製の箱に入れてお届けします。輪島塗アップ作業輪島塗 本蒔絵 次元大介 詳細輪島塗 本蒔絵 峰不二子 制作工程輪島塗 本蒔絵 峰不二子 詳細輪島塗 本蒔絵 箱■ルパン三世 輪島塗 本蒔絵(全4種 ルパン三世・次元大介・石川五ェ門・峰不二子)特製箱入り スタンド付き価格 :¥550,000(税込)パネルサイズ:273×210×9mm【販売概要】受注開始日: 2023年3月17日(金)12:00~※ご注文月の翌月以降のお届けになります。販売サイト: トムスショップ (C)モンキー・パンチ/TMS・NTV<商品に関するお問い合わせ>トムスショップE-mail: tms-shop@tms-e.co.jp 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年03月17日パレスホテル東京は、オリジナルの輪島塗漆器で用意する新アフタヌーンティー「アフタヌーンティー “Stones”」を、2022年9月1日(木)より提供する。“輪島塗漆器”で用意する秋アフタヌーンティー「アフタヌーンティー “Stones”」は、石川県を拠点に世界で活躍する輪島塗塗師・赤木明登とコラボレーションした、パレスホテル開業10周年を記念する新アフタヌーンティー。今回のためだけにデザインしたオリジナルの漆器をキャンバスに見立て、日本の伝統色で彩られた12種類のスイーツと7種類のセイボリーを美しく並べた。“秋の伝統色”で彩るスイーツ器を飾るのは、茜色や柿色、鶸色などの秋の伝統色を用いたスイーツの数々。秋の七草の1つでもある桔梗の花と蕾を模った「カシスのムース」や「ブルーベリーチーズケーキ」、秋の空に浮かぶ雲をイメージした「メープル風味のムラングシャンティイ」など、季節を表現した芸術的なスイーツを取り揃えた。旬の食材を使用したセイボリーまた、秋が旬の食材をたっぷり使ったセイボリーにも注目。「舞茸のヴルーテ」「ビーツ 林檎 胡桃のカナッペ」「サーモンのリエットマッシュルームのサラダ」など、味覚はもちろん見た目も楽しめる、アート作品のような逸品を用意した。なお本アフタヌーンティーは、日本の四季それぞれの味を堪能できるよう、3か月に1度メニューを変えて登場する。【詳細】パレスホテル東京「アフタヌーンティー “Stones”」開催期間:2022年9月1日(木)~通年 ※3か月に1度のメニュー変更あり。提供時間:11:00~17:30※2時間制。※1日限定20食。提供場所:パレスホテル東京 1階 ロビーラウンジ「ザ パレス ラウンジ」料金:1名 8,000円/グラスシャンパーニュ付き 10,400円 ※サービス料別。予約開始日:7月21日(木)<メニュー内容>■抹茶寿月堂の抹茶「初昔」(善昇窯でつくられた清水焼のオリジナル野点碗で提供)、パレスホテル東京 オリジナル落雁■スイーツの一皿ババ オゥ ラム コーヒー風味のクリーム、全粒粉を使った塩サブレ プラリネのガナッシュクリーム、メープル風味のムラングシャンティイ オレンジのジュレ、ブルーベリーチーズケーキ、「菓匠 菊家」の和菓子 (二十四節季毎にメニュー変更)、紅茶風味のマカロン 紅茶のバタークリーム、ほおずき アプリコットとヴァニラのパート ド フリュイ、カシスのムース、ピスタチオのエクレア、タルト ポム、栗 グリュエ ド カカオの糖衣がけ、洋梨のジュレ■セイボリーの1皿ラディ オ ブール 柚子風味、舞茸のヴルーテ、人参のタルト、サーモンのリエット マッシュルームのサラダ、ビーツ 林檎 胡桃のカナッペ、サツマイモとリゾーニのテリーヌ レモン風味、玉子とトリュフのフォカッチャサンドウィッチ■スコーン竹炭とカカオのスコーン クロテッドクリーム 葡萄のジャム■ドリンク日本茶、クラシカルティー、ハーブティー、中国茶、アロマティーやコーヒーなど25種類以上のドリンク【問い合わせ先】TEL:03-3211-5309TEL:03-3211-5370(アフタヌーンティー予約専用ダイヤル)
2022年07月24日カドーは1月21日、輪島漆器を制作・販売する千舟堂とコラボレーションした空気清浄機「カドー空気清浄機 輪島塗モデル」を発売した。「波千鳥(なみちどり)」と「根来(ねごろ)」の2モデルを用意。価格(税別)は波千鳥が450,000円、根来が350,000円。「cado」ブランドの空気清浄機「AP-C110」ボディ全面に輪島塗を施したモデル。すべて千舟堂の職人たちの手作業によって数カ月かけて制作された一点ものとなる。漆黒の波千鳥と朱赤の根来の2モデルを用意した。AP-C110の空気清浄機としてスペックは、適応床面積が~20平方m(12畳まで)、最大機器風量は160立方m/時。上面から空気を取り込み、本体下部全周からキレイにした空気を送り出す。ニオイセンサーを搭載し、自動で風量をコントロール。0.09μm以下の物質をキャッチする除菌・消臭・脱臭フィルターを搭載し、光触媒によってフィルターをセルフクリーニングする機能も持つ。サイズは直径250×高さ340mm、重量は4.3kg。運転音は弱運転で30dB、急速運転で61dB。
2016年01月22日