1966年に『誰も誰も知らない』でデビューし、『ひとり寝の子守唄』、『知床旅情』など、ヒット曲を出し続けてきたシンガーソングライター、加藤登紀子。今年、歌手生活50周年を迎える加藤が、ラトビアからリエパーヤ交響楽団を迎えて、50周年記念コンサート『百万本のバラコンサート』を6月5日(金)の埼玉・サンシティホールを皮切りに開催する。公演を前に、50年の歌手生活や本公演について、その想いを語ってくれた。加藤登紀子のチケット情報「50年という年月は長かったと思いますが、まだまだ途中だという想いも少しあります。デビュー当時はわからないことばかりでしたが、今は50年間経験を積み重ねてきた分、やりたいこともたくさん見えてきましたし、自分を好きに出せるようになりましたので、すごく幸せな気持ちでいっぱいですね」と、50年の歌手生活を振り返る。しかし、歌手を辞めることを覚悟した瞬間もある。「まずは、まだデビュー3年目の1968年の頃に大学の卒業式でデモに参加したとき。クビになることを覚悟していたんですが、見逃していただいて。もうひとつは、1972年に結婚を決めたとき。別の人生もあるかなと思って、子育てもあったので1年間歌っていなかったんです。でもすごく歌いたくなって、曲もたくさん作りましたし、自分が歌うことの意味も確かめられた。やっぱり歌っていないと自分じゃないみたいで、そこからは何があっても歌うことを決めました」。今回のステージは全編オーケストラをバックに、二部構成で展開。「第一部はオリジナル曲で綴る私の50年。第二部はシャンソンやヨーロッパの曲で構成しています。私が選び抜いた、一番歌いたい曲ばかりですね。それに、二部ではアストル・ピアソラのタンゴを2曲入れて、ドキドキするようなアレンジを作りました。20名以上のオーケストラが演奏で参加していることの醍醐味を感じてもらえるようなプログラムを組んでいます」。公演に先立ち、先頃、関西フィルハーモニー管弦楽団をバックに、同じプログラムでコンサートを開いた。「オーケストラでやると、とてもダイナミックで、曲の大きさや伝わり方が深まるなと改めて感じました。1曲ずつ、じっくり丁寧に、一人ひとりの身体の隅々に沁み込むまで歌いたいと思います。今も世界ではいろんなことが起きていますが、どんなに国と国とが対立することがあっても、それを乗り越えるだけの愛の力を育むのは音楽だと思うので、そんな想いを『百万本のバラ』に乗せて歌いたいと思います」。埼玉・神奈川・三重・大阪・長崎・東京公演のチケットは発売中取材・文:黒石悦子
2015年04月27日2012年にフランスで初演され、ヒットしたフレンチ・ロック・ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち』が、宝塚歌劇月組により日本初上演される。フランス革命に翻弄されるさまざまな人間の生き様を、ポップな現代音楽に乗せて描いた作品で、トップスター・龍真咲(りゅう・まさき)が演じるのは、革命に身を投じる青年ロナンだ。宝塚歌劇月組『1789-バスティーユの恋人たち』チケット情報「この作品は、フランス革命が起きる寸前までの物語で、民衆が主役のミュージカル。その中でも私は、平民より下の階級にある人物を演じます。タカラヅカの主役というのは、貴族や英雄であることが多いのですが、今回はそうではないので新鮮で面白く、お客様にも楽しんでいただけると思います」立ち居振る舞いもカッコ良く見せて、観客の目を惹きつけるのがトップとしてのひとつのポイントだ。しかし、今回は高貴な人物ではないため、「カッコ良くならないこと」を意識して演じているという。「衣装もヨレヨレで、常に汚れているような感じです(笑)。年齢的にも一番下で、誰よりも身分の差がある人物が革命家たちと手を組む。そこまでの繋がりが今回お見せするべきポイントだと思いますし、若さによるエネルギーや、血気盛んな部分を表現したいです。私としても組としても、代表作になるように頑張ります」。“バスティーユの恋人たち”という副題にあるように、ロナンはオランプという女性と身分違いの恋に落ちる。普段ならトップ娘役・愛希れいかが演じるような設定だが、愛希はもうひとり、フランス革命を描くには欠かせない重要人物、マリー・アントワネットを演じる。「王宮の人々対民衆というドラマチックなストーリーがある中で、今の月組でできるのは愛希しかいないと思います。愛希とはコンビを組むと決まった時からずっと同じペースでやってきたので、自然と足並みがそろっていたのですが、今回はまた違う感覚がします。オランプを役替わりで演じる早乙女わかばと海乃美月には、役を楽しみながら深めていってほしいと思います」。トップ就任から4年。5組のトップの中で、最もキャリアが長くなった龍。「今は、月組をどういう方向性にもっていくかを考えています。安定期をむかえるときに、新作に挑戦できるのは組力が試されることだと思いますので、全員でしっかり作品作りをしていきたいです」。公演は宝塚大劇場にて4月24日(金)から6月1日(月)まで上演。東京宝塚劇場公演は6月19日(金)から7月26日(日)まで。東京公演は5月17日(日)より一般発売が開始される。取材・文:黒石悦子
2015年04月15日宝塚歌劇花組のトップ男役・明日海(あすみ)りおと、新トップ娘役・花乃(かの)まりあの新トップコンビお披露目となる『カリスタの海に抱かれて』『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』が3月13日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。宝塚歌劇花組公演『カリスタの海に抱かれて』/『宝塚幻想曲(タカラヅカファンタジア)』のチケット情報第一幕の『カリスタの海に抱かれて』は、大石静脚本によるミュージカル。フランス革命のさなか、地中海に浮かぶ常夏の島・カリスタを舞台に、青年将校シャルルが愛と友情に揺れ動く様を描いたラブストーリーだ。明日海演じるシャルルは、カリスタ島に新しく赴任したフランス軍司令官。カリスタで生まれながらもフランスで育ったシャルルの目的は、フランスの動乱に乗じて故郷を独立させること。明日海は軍服が似合う、スマートで美しい佇まい。爽やかな好青年の雰囲気ながら、孤独に育ったシャルルの“陰”を繊細に表現している。一方で、積極的にアピールする島の女性アリシア(花乃)に戸惑う不器用な一面もあり、スマートな雰囲気とのギャップを見せながら観る者の心をくすぐる。しかし、芹香斗亜(せりか・とあ)演じるシャルルの幼なじみで、独立派グループのリーダー・ロベルトの許嫁でもあるアリシア。そこで生まれる三角関係により、それぞれの人物に葛藤や苦悩が生まれ、ドラマを面白くする。花乃は島育ちのストレートで強気な女性を、芹香は島民の期待をひとり背負い、熱い想いで先頭に立つ男を情感豊かに表現。それぞれがどんな道を選択するのか、最後まで目が離せない展開だ。また、若きナオポレオンを演じる柚香光(ゆずか・れい)は、中盤からの登場ながらしっかりと存在感を放つ。緊迫感のあるフランス革命のシーンも見どころのひとつとなっている。第二幕のレビューは、さまざまな花をモチーフにしたシーンが展開。幻想的な雰囲気のプロローグで幕が開き、和太鼓のリズムをベースにした華やかなシーンへ。羽根扇を使った美しい演出で、スタートから心を奪われる。また、ソフト帽を被り、ゴールドのスーツに身を包んでクールに踊ってみせたり、中詰めでは明日海が花魁姿で登場したり、『さくらさくら』をアレンジして黒燕尾で踊ったりと、見どころ盛りだくさん。8月の台湾公演も見据え、タカラヅカらしさと日本らしさを合わせた構成で、新生花組の一人ひとりが、キラキラとフレッシュな輝きを見せている。兵庫公演は4月20日(月)まで。また、5月15日(金) ~ 6月14日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは4月12日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2015年03月19日宝塚歌劇団花組トップスター・明日海りおが次に挑むのは、脚本家・大石静書き下ろしのミュージカル『カリスタの海に抱かれて』だ。地中海で最も美しいとされるカリスタ島を舞台に、愛と友情、故郷への想いの狭間で揺れ動くフランス軍将校シャルルを演じる。宝塚歌劇花組『カリスタの海に抱かれて』チケット情報「故郷のカリスタ島を独立させたいと、島で幼なじみのロベルトたちと手を取り合い独立を目指すのですが、活発なアリシアという女性と出会って恋をし、歯車が狂ってきます。三角関係で揺れ動く人間模様が、ドラマチックに描かれています。ワイルドなところや誠実なところ、でも恋の部分ではちょっと不器用なところなど、シャルルのいろんな一面をお見せしたいと思います」。トップ娘役に就任した花乃(かの)まりあとの新コンビも楽しみだ。「ふたりの場面は、ちょっとぎこちなかったり、お互いの想いをぶつけ合ったりと変化があり、演じていてすごく面白いです。彼女はお芝居に入ったときの集中力がすごくある人。ふたりの場面から作品の世界観を広げていったり、作品の魅力を深めていけたらと思っています」。第二部のレビュー『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』では、日本の四季の移り変わりを表現。8月に行われる台湾公演を意識した構成になっている。「随所に花のモチーフがあしらわれていたり、太鼓のリズムや、ロックテイストの曲に三味線が使われていたり。日本らしさを取り入れた場面のほかに、大きな羽根扇をはためかせるタカラヅカらしい場面もあり、私としても楽しみです。最近は台湾の方からのお手紙もたくさんいただくようになったので、現地の方が熱い想いで待っていてくださると思うと、とても嬉しいです」。また、昨年末に行われた『タカラヅカスペシャル2014』では、他組のトップスターから多くの刺激を受けたと語る。「組を代表する立場でいらっしゃる皆さんの、稽古やお仕事と並行しながらでもしっかりと仕上げてくる丁寧さと誠実さ、そして、男役とはこういうものだということを伝えていきたいという熱い想いを肌で感じました。私ももっとエネルギッシュに取り組んでいかなければと、改めて気合いが入りました」。おっとりとした柔らかい雰囲気ながら、内には熱いものを秘めるトップスター。トップ就任後初のオリジナル作品で、その魅力を大いに輝かせるはず。公演は宝塚大劇場にて3月13日(金)から4月20日(月)まで上演。東京宝塚劇場公演は5月15日(金)から6月14日(日)まで。東京公演は4月12日(日)より一般発売を開始。取材・文:黒石悦子
2015年03月04日女優の市原悦子が、河瀨直美監督の映画『あん』(6月公開)で、主演の女優・樹木希林と初共演することが25日、明らかになった。原作は、作家、歌手、パーソナリティーとして幅広く活躍するドリアン助川氏の著書『あん』。初の劇場映画『萌の朱雀』(1997年)でカンヌ国際映画祭新人監督賞を史上最年少で受賞し、『殯の森』(2007年)で同映画祭にグランプリを受賞した河瀨直美監督がメガホンを取り、主演は、2008年に紫綬褒章を受賞し、2013年には『わが母の記』(2012年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた、女優・樹木希林が務める。市原が演じるのは、元ハンセン病患者・徳江(樹木)が暮らす療養所内の喫茶店で働く"佳子"。徳江と佳子は親友であり、長い年月をともに療養所で過ごした間柄という設定だ。市原の映画出演は『バルトの楽園』(2006年)以来9年ぶりで、河瀨監督作は初出演となる。市原は、本作出演に至った経緯について、「河瀨監督が奈良から出て来られて、私の家の近くのホテルでお会いしました。その時、樹木さんから佳子役は市原でどうかとすすめられたとおっしゃっていました」と説明。樹木との共演を、「楽しかったです。お互いに50年以上役者の仕事をしてきたのにこれまで1度も御一緒しませんでした。希林さんは年を経たこと、またお体の具合も万全ではないことが、より魅力的にしているのかなと感じました。撮影を待つ間も楽しかったです」と振り返った。また、河瀨監督については「自然との共生について、監督は地に根を張っていらっしゃると感じました」という印象で、「優しく、竹のようにしなやかな女性の力が心強かったです」と人柄を絶賛。自身の役どころを、「とことん疎外されて生きてきた女性なのに、あの優しさはどこから来るのか考えました」と捉え、「あこがれる女性像です」と明かした。本作は、小さなどら焼き屋「どら春」を舞台に、一人の老女とその周りの人間模様を通じて「人生とは」と問いかける物語。永瀬正敏演じる「どら春」の雇われ店長・千太郎のもとに、求人募集を見た老女・徳江が現れる。彼女の作る粒あんがきっかけで店は繁盛するが、かつてハンセン病を患っていたことが近所で噂に。潔く店を去った徳江の足跡を、千太郎は徳江を慕っていた女子中学生・ワカナと共に追う。
2015年02月25日今年、劇団結成30周年を迎えたキャラメルボックスの、アニバーサリーイヤー第1弾となる公演が2月21日、大阪・サンケイホールブリーゼにて開幕した。演目は、人気の『クロノス・ジョウンターの伝説』シリーズで、10年ぶりの再演となる『クロノス』と、新作『パスファインダー』を2本立てで上演。異なる雰囲気の2作ながら、どちらも熱量の高いステージが展開されている。キャラメルボックスクロノス・ジョウンターの伝説 チケット情報SF作家・梶尾真治の短編小説を原作にした『クロノス』は、2005年に上演された作品。物質を過去へ飛ばせる機械、クロノス・ジョウンターをめぐるタイムトラベルものだ。主人公は、機械の開発に携わる吹原(すいはら)和彦。ある日、想いを寄せる蕗来美子(ふき・くみこ)が勤める花屋に、タンクローリーが衝突。吹原は彼女を救うべく、クロノスに乗り、事故が起きる直前へと自分自身を跳ばした…。ひとりの男が、大切な人を守るために奔走する純粋なラブストーリーは、キャラメルボックスの真骨頂だ。“不完全なタイムマシン”に乗り、何度も失敗し、体力を消耗しながら愛する人を助けようとする吹原。その吹原に扮する畑中智行の全身全霊の熱演が、観る者をグイグイと惹き込み、心を揺さぶる。一方の『パスファインダー』は、脚本・演出家の成井豊が書き下ろした新作。39歳の研究員・笠岡光春が、23年前に亡くなった兄の秋路(しゅうじ)に会うため、タイムスリップする物語。キャラメルボックスが得意とする“家族”の絆を軸に、そこで出会った少女リンとの不思議な縁が描かれている。39歳になっても「世界を変えるような発見」もできず、焦燥感に駆られる光春。しかし彼が過去に戻ることで、いろんな人の人生や心境に影響を与え、自分自身も変わっていく。岡田達也がその光春の姿を丁寧に表現している。また、客演に迎えた陳内将が、周囲から理解されずとも、やりたいことに突き進む秋路を好演。ナチュラルにキャラメルボックスの世界観に溶け込んでいる。両作とも、テンポ感の良さが心地良い。主人公はほぼ出ずっぱりで、ライティングの切替えを駆使しながらシーンを展開。緊迫感の中にも随所に笑いを交え、緩急つけた演出で楽しませてくれる。西川浩幸はクロノスに人生のすべてをかける研究者・野方役として、どちらの作品にも出演。同じ役ながら、『クロノス』ではピリッと舞台を締め、『パスファインダー』ではコミカルさを交えて柔軟に演じ分け、ベテランの貫録を見せる。また、『パスファインダー』では、秋路のセリフに劇団の想いを重ね、30周年を迎えたキャラメルボックスの演劇への熱を改めて観客に提示。演劇の力を信じるキャラメルボックスのブレない姿勢に、今後も期待したい。大阪公演は25日(水)まで。東京公演は3月6日(金)から22日(日)までサンシャイン劇場にて上演。チケット発売中。一部のぴあ店舗ではハーフプライスチケットの取り扱いもあり(詳細は公式HPに掲載)。取材・文:黒石悦子
2015年02月23日宝塚歌劇の星組トップスター柚希礼音(ゆずき・れおん)、夢咲(ゆめさき)ねねコンビの退団公演が2月6日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。演目はミュージカル『黒豹(くろひょう)の如(ごと)く』と、ショー『Dear DIAMOND!!-101カラットの永遠の輝き-』だ。宝塚歌劇星組『黒豹(くろひょう)の如(ごと)く』/『Dear DIAMOND!!』-101カラットの永遠の輝き-のチケット情報『黒豹の如く』は、第一次大戦後のスペインを舞台にした物語。伝説の海賊ソルの血を引く男で、“黒豹”と呼ばれるスペイン海軍大佐アントニオが、かつての恋人カテリーナと再会したことから、思わぬ運命の渦に巻き込まれていく様を描いた“大恋愛物”だ。ロマンチックなセリフも散りばめられ、数々の恋愛物を見せてきた柚希と夢咲が、抜群の呼吸で最後にとびきりの愛を届けてくれる。柚希の男役集大成となるラストステージに当てられたのは、黒豹と例えられた、深く、しなやかで俊敏な男。プロローグでは伝説の男ソルとして登場し、ダンスや殺陣、アクションで華麗な身のこなしを見せる。海軍大佐として活躍するアントニオは、周囲から一目置かれる存在。彼の硬派でカッコ良い生き様はもちろんだが、大恋愛物だけに、夢咲演じるカテリーナとの再会後に燃え上がる恋模様が見どころだ。カテリーナも夢咲に当て書きしたように、強い芯を持ってアントニオを支える女性として描かれている。また、二番手男役の紅ゆずるは、ふたりの邪魔をする実業家アラルコン公爵としてヒールな役を演じ、新たな一面を発揮している。仲間たちに見守られ、アントニオが旅立つ姿を描くラストシーンはサヨナラ公演ならではの演出。観客もその旅立ちに温かい拍手を贈る。第二部は、毎回エネルギッシュなステージ展開で楽しませてくれる、藤井大介作・演出によるショー。今回は、柚希をダイヤモンドに見立てた構成で、自らもアイデアを出して作り上げた。ダイヤモンドが散りばめられたようにキラキラと輝く幕が上がると、プロローグではリベルタンゴが繰り広げられる。スタートからダンス巧者・柚希の魅力、そして星組の集団としての力が爆発し、その勢いに乗ってステージが展開していく。新米ドアボーイに扮した柚希が、コミカルなパフォーマンスで楽しませてくれるなど、ストーリー性のある場面も用意。そして、客席降りや2階席へのサプライズ演出、タカラヅカへの想いを歌詞にした曲、シックな黒燕尾、夢咲とのしっとりとしたデュエット…。これまでの集大成として、ファン、組子、タカラヅカへの想いに溢れたステージだった。兵庫公演は3月9日(月)まで。また、3月27日(金)から5月10日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは2月22日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を2月14日(土)11時から2月18日(水)11時まで受付。取材・文:黒石悦子
2015年02月12日宝塚歌劇星組トップスターとして6年間を務めた柚希礼音のサヨナラ公演が、2月6日(金)より兵庫・宝塚大劇場にて開幕。ミュージカル『黒豹(くろひょう)の如(ごと)く』と、ショー『Dear DIAMOND!!-101カラットの永遠の輝き-』を上演する。宝塚歌劇星組 チケット情報『黒豹(くろひょう)の如(ごと)く』は、柚希をイメージして作られた物語。トップ娘役・夢咲ねね演じるヒロインとの大恋愛物で、黒豹のように俊敏でしなやかに仕事をこなす海軍士官を演じる。「黒豹というカッコ良いイメージをつけてくださり、恐縮しています(笑)。柴田(侑宏)先生が書かれるセリフは美しくて、“ザ・タカラヅカ”な雰囲気。演じる上ではちゃんと心を伴って、役の感情で自然に言葉を出していきたいです。ラブシーンの表現も流れを大切にして、お客様の胸にグッとくるようなものを見つけたいと思います」。一方ショーでは「やりたいことがたくさんある」と語る柚希。プロローグのリベルタンゴ、登場の仕方、芝居仕立ての展開など、演出の藤井大介に希望を伝えた。「稽古場では一つひとつ夢が叶っていくようで、幸せです。初舞台後すぐの新人公演(1999年月組『ノバ・ボサ・ノバ』)でドアボーイ役をさせていただいたので、新人ドアボーイが大きく成長するようなストーリーをコメディタッチで入れていただきました。それに、また作詞もしています(笑)。昨年の武道館コンサートではファンの皆様や仲間への想いを歌詞にしたので、今回はタカラヅカへの想いを書きました」。どんな想いが込められているのかを尋ねると「夢のような世界だけど、たくさんの人たちの“本気”が詰まっている。だからすごくタカラヅカを好きになりましたし、簡単な気持ちじゃ何も掴めないところだなと。そこのフレーズは自分でも好きです」と、照れながら語ってくれた。下級生時代から新人公演で主演を務めてきた柚希。順風満帆なイメージを持たれるが、意外にも劣等感しかなかったという。「新人公演の本役さんに陰ソロがあったときには、上手い人を代役に立てられそうになるくらい下手で…。でも上級生の方々が毎日稽古に付き合ってくださったり、しかってくださったから、たくさんもがいて成長できたのだと思います。トップに立ってからは“できない”では済まされないので、そこでようやく自覚が生まれました。ずっと1作1作ごとに成長することを目標にやってきましたので、最後の最後まで上を目指したいです」。公演は宝塚大劇場にて2月6日(金)から3月9日(月)まで上演。東京宝塚劇場公演は3月27日(金)から5月10日(日)まで。東京公演は2月22日(日)より一般発売を開始。取材・文:黒石悦子
2015年01月28日100周年を経た宝塚歌劇が1月1日、101年目の新たな一歩を踏み出した。兵庫・宝塚大劇場でその幕開けを飾るのは、新トップスター・早霧(さぎり)せいな率いる新生雪組。演目はミュージカル『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』と、ファンタスティック・ショー『ファンシー・ガイ』の2本立てだ。宝塚歌劇雪組『ルパン三世-王妃の首飾りを追え!-』『ファンシー・ガイ!』のチケット情報第一幕は、モンキー・パンチ原作の人気漫画をミュージカル化した宝塚版『ルパン三世』。物語は、現代のフランス・ベルサイユ宮殿に、マリー・アントワネットの首飾りを狙ってルパン一行が現れるところから始まる。しかし、盗もうとしたその瞬間、革命前夜のフランスへとタイムスリップ。そこでマリー・アントワネットやカリオストロ伯爵と出会い、お宝をめぐる物語が展開していく。誰もが知る人気漫画の舞台化だけに、開幕前より注目が集まっていた本作。ルパンを演じる早霧は、コミカルさと格好良さと優しさを絶妙なバランスで表現し、演技力の高さを発揮。軽快におどけて見せる動きや表情、発声でも原作のイメージを崩さず、それでいて宝塚歌劇らしいスマートさも持ち合わせ、観客の心までも奪う。ルパンとマリー・アントワネットとの恋模様も見どころで、演じるのはトップ娘役の咲妃(さきひ)みゆ。彼女も新トップながら、堂々とした演技と安定感のある歌唱で魅せる。また、銭形を演じる夢乃聖夏(ゆめの・せいか)も、登場シーンから笑いを誘うほどのハマりっぷり。花組から組み替えとなった望海風斗(のぞみ・ふうと)は、ちょっぴり怪しげなカリオストロ伯爵。峰 不二子役の大湖(だいご)せしるは艶っぽくセクシーに、五ェ門役の彩凪翔(あやなぎ・しょう)、次元役の彩風咲奈(あやかぜ・さきな)は、言葉少なくも佇まいがキャラクターそのもの。それぞれの個性輝くステージは、新生雪組のお披露目公演にピッタリだ。第二幕のショー『ファンシー・ガイ!』は、男役、娘役ともに、パンツにソフト帽スタイルのスタイリッシュなプロローグからスタート。パリ、ローマ、ウィーン、マドリッドなど、さまざまな街をイメージしたストーリー性のあるショーを展開する。フランク・シナトラの名曲を歌い継ぐシーン、美しい黒燕尾の群舞、集団でのタンゴ、『愛の賛歌』に合わせたデュエットなど、大人の色気あふれるステージ。両作を通して、早霧を中心とする新生雪組の魅力がたっぷりと堪能できる。兵庫公演は2月2日(月)まで上演中。また、2月20日(金)から3月22日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは1月18日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を1月8日(木)11時から1月14日(水)11時まで受付。取材・文:黒石悦子
2015年01月08日上川隆也主演で2013年に初演された舞台『真田十勇士』の再演が、2015年1月8日(木)よりスタート。真田幸村を演じる上川のほか、十勇士も初演とほぼ同じキャストが集結する。その中で、“鎖鎌の名手” 由利鎌之助役で初演でも見事な殺陣を見せた松田賢二に、再演に挑む意気込みを訊いた。舞台「真田十勇士」チケット情報劇団☆新感線の座付き作家でもある中島かずきの脚本を、演出家・宮田慶子が丁寧かつ大胆に演出。戦国時代末期から江戸時代初期にかけて、織田家、豊臣家への忠義に生き、知力を尽くして戦い抜いた武将・真田幸村と、幸村に仕えた十勇士たちの心の機微を繊細に描いた人間ドラマだ。鎌之助を演じた松田も「この作品は、良い意味でごまかしが効かない、骨太な印象があります」と語り、「自分の腕一本で勝負しないといけないので、僕にとっては試練。今回は初演よりもさらに飛躍させながら鎌之助を演じたい」と意気込む。鎌之助を演じる中でも、初演で最も力を注いだのが鎖鎌を使って見せる殺陣で、「舞台人生の中で一番緊張した」と言う。「鎖鎌は特殊な武器で、どこへ飛んでいくのか分からない。それに、毎回同じことをしていても、相手役との距離感が毎回変わってくるんですよ。そうすると相手の刀や足に絡まったり、意思とは違う方に飛んでいったりするので、稽古中も本番も毎日緊張感がありました。あの緊張をもう一度味わうのかと思うと恐さがありますが、その分やりがいもあるので楽しみです。再演ではもっと完成度を高めたいですね」。初演とほぼ同じキャストがそろうこともあり、チームワークはすでにばっちり。さらに強固な絆を見せてくれるはずだ。「真田幸村に魅了された十勇士と同じく、“上川隆也”に魅了されたカンパニーですね。上川さんは舞台上で空気を読みながら、遊べるところは遊んで、魅せるべきところはカッコ良くキメる。役者としての基礎体力はもちろん、動じない心や、お客様を楽しませる想いだったり、共演者や若手への配慮だったり、すべてをお手本にしたい方ですね。上川さんのもと、また熱い舞台をお見せしたいと思います」。男たちの熱き戦いは、「男性にも共感してもらえたら嬉しい」と語る松田。「『あとは見事に戦い、死に花を咲かせるのみだ』という幸村の言葉が好きなんですよ。負け戦だと知りつつ、勇猛果敢に戦いに挑む姿は、男として熱いものを感じます。さらに磨きをかけた姿を見ていただきたいですね」。公演は1月8日(木)に東京・赤坂ACTシアターで開幕後、1月31日(土)・2月1日(日)愛知・中日劇場、2月5日(木)から2月8日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、2月13日(金)から2月15日(日)まで福岡・キャナルシティ劇場にて上演。取材・文:黒石悦子
2014年12月22日2012年10月より大阪四季劇場でロングラン上演中のミュージカル『ライオンキング』。関西ではこれまでにも『オペラ座の怪人』『マンマ・ミーア』『キャッツ』『ウィキッド』など、さまざまな作品がロングラン上演されてきたが、11月16日、『ライオンキング』が関西最長ロングランを達成。同時点での通算公演回数は699回、『オペラ座の怪人』の記録を更新し、特別カーテンコールが行われた。「劇団四季『ライオンキング』」のチケット情報本編終了後、関西弁を話すミーアキャットのティモンとイボイノシシのプンバァコンビが登場。「関西最長記録達成」を観客に伝えると、キャストが客席通路まで下りながら『He lives in you (リプライズ)』を披露した。その後、出演者を代表してシンバ役の田中彰孝が「『ライオンキング』大阪公演は、本日の公演を持ちまして699回を迎えました。これは、関西地区での最長ロングラン記録として、新記録の達成でございます。これもひとえに作品を愛し、育んでくださったすべてのお客様の温かいご支援のたまものと、出演者・スタッフ一同心より御礼申し上げます」と心を込めて挨拶。さらに、「『ライオンキング』大阪公演は、2015年7月までの延長が決定しております。これからも『ライオンキング』の感動をしっかりとお届けできるよう、一回一回の舞台に心を込めて、精一杯努めてまいりたいと思います」と伝えると、客席からは大きな拍手が沸き起こり、スタンディングオベーションに。幾度となくカーテンコールが繰り返された。大阪公演開幕から2年が過ぎても、連日大賑わいを見せる『ライオンキング』。アフリカ・サバンナを舞台に展開するライオンの子・シンバの成長を描いた物語で、サバンナに陽が昇り、動物たちがゆっくりと集まってくるオープニングは、鳥肌が立つほど圧巻。一瞬にしてその世界へと引き込まれる。また、インドネシアの影絵、日本の歌舞伎や文楽など、アジアの伝統芸能の表現を活かした演出や、ティモンとプンバァの関西弁の掛け合いなど、見どころ盛りだくさん。さまざまな目線で楽しめる本作は、何度観ても新たな発見が生まれるはず。来年7月末まで大阪四季劇場(ハービスENT内)にて上演中。取材・文:黒石悦子
2014年11月20日2012年に東京のみで上演されたNODA・MAP『エッグ』が、2015年、オリジナルキャストで再演される。本作は、架空のスポーツ“エッグ”に情熱を注ぎ、オリンピックで頂点に立つ日を夢見るふたりのアスリートと、ひとりの女性シンガーソングライターを軸に展開する物語。妻夫木聡、深津絵里、仲村トオルらとともに名を連ねる藤井隆に、心境を訊いた。NODA・MAP第19回公演『エッグ』チケット情報「初演の『エッグ』は本当に“楽しかった!”という記憶しかないくらい、すごく居心地が良くて、アットホーム感があったんですね。橋爪功さんが家庭菜園で作られたお野菜を持ってきてくださったり、大倉孝二さんがサロンみたいに楽屋でレコードをかけてくださったり(笑)。だから、また初演のキャストが揃い、自分もその中に入れていただけたことが本当に嬉しいなと思います」。稽古場でも刺激的な日々を送っていたという藤井。「どの舞台でもそうなんですが、セットがないお稽古場で、どんな風にいたらいいのかなって、みんなで想像しながら作り上げていく作業がすごく楽しいんです!野田さんのアイデアを美術さんが模型にされたのを見て『すごいな~!』ってワクワクしたり。そんな瞬間がお稽古中に何度もあるので、本当に毎日刺激的なんです。今回は再演でどうなるかはわかりませんが、今からとても楽しみです」。演じるのは、深津扮する人気シンガーソングライター、苺イチエの振付師・お床山(おとこやま)。劇中歌をはじめ、すべての音楽は、椎名林檎が書き下ろした楽曲だ。「芸能界やスポーツ界が大衆に与える影響が描かれていて、僕はスターのすぐそばにいる人の役。その中で、気持ちが引き裂かれそうになるくらい苦しい場面もあります。ですが本番中、共演者の皆さんと一緒に走らせていただく快感を味わわせていただきました。それと、深津さんが歌われるシーンが大好きなんです!とにかく可愛いんですよ。あの姿をもう一度近くで観られるのがすごく嬉しいですし、お客様にも味わっていただきたいです」。藤井にとって、同じ作品に同じ役で出演するのは初めての経験だ。しかも今回は大阪、北九州、パリでも上演される。「自分がどう変わるかも含めて、新たな楽しみがありますね。稽古で積み重ねてきても、お客様の反応で気付かされることもありますので、各地域での反応も楽しみにしています」。公演は、2015年2月3日(火)から22日(日)まで東京・東京芸術劇場プレイハウス、2015年3月26日(木)から4月8日(水)まで大阪・シアターBRAVA!、2015年4月16日(木)から19日(日)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールにて。チケットは12月13日(土)より一般発売開始。なお、11月13日(木)11:00まで東京・大阪公演、11月30日(日)11:00より九州公演の、チケット先行抽選「プレリザーブ」を実施。取材・文:黒石悦子
2014年11月12日宝塚歌劇宙組トップスター、凰稀(おうき)かなめのサヨナラ公演が11月7日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕。ミュージカル『白夜の誓い-グスタフⅢ世、誇り高き王の戦い-』、ショー『PHOENIX 宝塚!!-蘇る愛-』の2本立てで上演中だ。宝塚歌劇宙組公演『白夜の誓い-グスタフⅢ世、誇り高き王の戦い-』/『PHOENIX 宝塚!!-蘇る愛-』のチケット情報『白夜の誓い』は、1770年代のスウェーデンを舞台に、北欧史に名を残すグスタフⅢ世の波乱に満ちた生涯を描いた物語。スウェーデンにロココ文化を花開かせるとともに、腐敗した貴族政治を改革、大国ロシアと戦争し、大勝利を収めた人物だ。スラリと伸びた手脚に、クールかつノーブルな雰囲気の佇まい。しかしその内には、宝塚歌劇への熱い情熱を秘めるトップスター。ラストステージで演じるグスタフⅢ世は、そんな凰稀にぴったりの役だ。抜群のスタイルには、華やかな貴公子の衣装がよく似合う。国民のことを一番に考えて平和な国にしようと、自分の想いや信じたことには真っ直ぐに突き進むグスタフは、トップとして、組やファンのことを第一に考えて歩んできた凰稀の姿に重なる。グスタフの妻ソフィアを演じるのは、娘役トップスターの実咲凛音(みさき・りおん)。最初はプライドが高く、気高い雰囲気をまとわせながら、次第にグスタフへの愛を深めていく女性の気持ちの変化を丁寧に表現。次期トップスターの朝夏(あさか)まなとが演じるのは近衛士官長のリリホルンで、さまざまな人間の板挟みになり、葛藤、苦悩する役どころ。また、凰稀と同様、本作で退団する緒月遠麻(おづき・とうま)は、グスタフの幼なじみで側近のアンカーストレム役。同期で同時退団という関係性から、このふたりの印象的なシーンも多く作られている。第2幕のショー『PHOENIX 宝塚!!-蘇る愛-』は、凰稀をフェニックスに見立てて構成。サヨナラ公演らしく、演出家・藤井大介の宙組への愛がたっぷり詰まったステージだ。オープニングでは、大階段を覆い尽くすほどの大きなマントを羽織ったフェニックスが登場。その美しさと壮大さに一瞬で引き込まれ、一気に華やかなステージが展開。凰稀がコミカルな七変化で楽しませる場面、組子に見守られて羽ばたいていく場面、凰稀から新たな宙組へエールを送るような場面……と、盛りだくさん。緩急つけた演出で、クールかつ熱い情熱みなぎる凰稀の魅力が引き出されている。両作ともに、個々の魅力、組としての圧倒的なパワーを感じるステージ。気高きトップスターのラストステージを、じっくりと堪能してほしい。公演は12月15日(月)まで兵庫・宝塚大劇場にて。2015年1月2日(金)から2月15日(日)まで東京宝塚劇場にて上演される。チケットは宝塚大劇場公演は発売中。東京宝塚劇場公演は12月7日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2014年11月12日宝塚歌劇団宙組トップスター・凰稀かなめが、11月7日(金)より兵庫・宝塚大劇場にて開幕する『白夜の誓い-グスタフⅢ世、誇り高き王の戦い-』、『PHOENIX宝塚!! -蘇る愛-』で退団。公演を前に、その思いを訊いた。第1幕は、スウェーデン国王・グスタフⅢ世の波乱に満ちた生涯を描くミュージカル。凰稀演じるグスタフⅢ世は、軍事力、芸術性を備え、激動の18世紀ヨーロッパでひたむきに生きた人物だ。「何があろうと、自信を持って前に突き進んでいくところが共感できます。それに、自分のことよりも人のことを考えている人。そのために言い過ぎて傷つけてしまうこともあるし、誤解される部分があって、若い頃の自分を見ているみたいだなと思います(笑)」。退団公演だからといって役に向き合う姿勢は何も変わらず、そこに少しの妥協も見せない。「グスタフⅢ世に絡む人物がとても多く、さまざまな問題が起きるんです。そこに、私自身が出会った人や、トップになって残してきたことをリンクさせたり、絡んでくる人物との関係性をきちんと見せたりしたいと思っています。いかにお客様に分かりやすく伝えるか、納得がいくまで演出の原田先生と意見を交わしながら作っています」。第2幕は、凰稀をフェニックスに見立て、美しさとカッコ良さを感じさせるショーを展開。演出の藤井大介に「私の退団公演ではありますが、お客様に次の宙組の姿も観ていただきたいと思い、若手をどんどん前に出してほしいということ、そして、次のトップである朝夏まなとと娘役トップの実咲凜音を中心にした場面がほしいと伝えました。緩急があるショーなので、最後まで楽しんでいただきたいです」。クールながら、宝塚歌劇やファンへの熱い想いが言葉から垣間見える。100周年を迎えたこの1年はこれまで以上に、トップとしての重みを感じた。「いちばん重要な節目の年にトップとして立たせていただいて光栄でしたが、それ以上に責任を感じました。でもその重み、苦しみがあるからこそ男役として輝けるんだと思います。これからトップに立つ朝夏には、とにかくブレないで、自分の意思を一本突き通した状態で進んでほしいです」。公演は宝塚大劇場にて11月7日(金)から12月15日(月)まで。東京宝塚劇場では2015年1月2日(金)から2月15日(日)まで上演される。東京公演は12月7日(日)より一般発売を開始。取材・文:黒石悦子
2014年10月31日宝塚歌劇月組によるミュージカル『PUCK(パック)』、ショー・ファンタジー『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』が9月26日(金)、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。『PUCK(パック)』は、1992年に涼風真世を中心とした月組で上演された人気作で、今回、22年ぶりの再演が実現。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』をモチーフに、人間に恋をした妖精パックが愛を得るために大活躍し、人間になるまでを描いたファンタジックなミュージカルだ。宝塚歌劇月組『PUCK(パック)』/『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』のチケット情報パックを演じるのは、作品の大ファンだったという男役トップスター龍真咲(りゅう・まさき)。パックが森で誕生する瞬間から演じており、イキイキと演じるその姿からも、作品への想いが伝わるようだ。声色やしぐさは少年のような可愛さで、ダンスも軽やか。ローラースケートで動き回り、自分の姿が見えない人間たちにアドリブを交えながら、次々といたずらを仕掛けていく。無邪気なパックがハーミアに恋をしたり、人間に触れることでさまざまな感情が生まれるという、パックの成長物語でもある。年を取らない妖精に対し、瞬く間に大人へと成長していく人間たち。演出家・小池修一郎の手により、その変化が滑らかにテンポ良く描き出されていく。人間の中でひとり妖精が見えるハーミアを演じるのは、愛希(まなき)れいか。大人になっても変わらない純粋さを持ち、ずっと夢を見続ける女性を情感豊かに演じている。ほかのキャラクターも、初演時の出演者に当て書きして作られたものだったが、今の月組メンバーにもピッタリ。ナルシストなホテル王の息子・ラリーに美弥(みや)るりか、憎めない貴族の御曹司ラリーを凪七瑠海(なぎな・るうみ)、負けず嫌いなハーミアのいとこのヘレンに男役の沙央(さおう)くらま、妖精の王オベロンに星条海斗(せいじょう・かいと)、能天気な森番の息子でロックスターのボビーに珠城(たまき)りょう、と、それぞれが個性を活かしながら演じるキャラクターたちを見るのも楽しい。第二幕のショーは、ダンスの結晶、愛の結晶、しずくの結晶など、さまざまな“結晶”をイメージしたシーンが展開。プロローグや中詰でのエネルギッシュなダンスに、シンデレラをモチーフにしたストーリー性のあるシーン、黒燕尾の男役群舞、しっとりとしたデュエットなどが繰り広げられていく。両作を通し、メンバーそれぞれの際立つ個性、それが集結したときの圧倒的なパワーが感じられるステージだった。兵庫公演は11月3日(月・祝)まで上演中。また、11月21日(金) ~ 12月27日(土)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは10月19日(日)より一般発売開始。取材・文/黒石悦子
2014年10月02日宝塚歌劇花組男役トップスター、明日海(あすみ)りおのお披露目公演が、8月22日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。演目は宝塚歌劇の人気作のひとつ『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』だ。宝塚歌劇花組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』チケット情報本作は、自由奔放な生き方を求めたオーストリア皇后エリザベートの生涯を、彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)との愛憎を軸に描き出したミュージカル。ずっと耳に残るような名曲の数々であふれた作品だ。宝塚歌劇ではトートを主役に据え、歴代のトップスターが自身の持ち味を活かしながらトート像を作り上げてきた。今回トップスターに就任した明日海は、美しくクールな雰囲気と高い歌唱力の持ち主。登場シーンから美しく妖艶なオーラを放ち、観客を惹きつける。そして、稽古段階の取材で「表情や動きに緩急をつけて見せたい」と言っていたとおり、鋭い目つきや時折浮かべる不敵な笑み、ゆらりとした動きなどで、“死”が放つ冷たさを表現。その一方で、自分に気持ちが向かないエリザベートに燃え上がるような想いを表す一面もあり、クールながらも内に熱いものを秘めた明日海ならではのトートを作り上げている。エリザベートを演じるのは、本公演で退団するトップ娘役、蘭乃はな。可憐でおてんばな少女時代から年老いていくまで、エリザベートが心身ともに変化していく様を丁寧に表現している。自由に生きたいと願っていた少女時代。フランツ・ヨーゼフに見初められて宮廷へ嫁いだエリザベートを待っていたのは、皇太后ゾフィーによる厳しい教育だった。フランツの支えも得られず、孤独に苦しみながらも強い決意を示すエリザベート。その精神的な脆さと強さを情感豊かに演じる蘭乃に、集大成らしい姿を見た。また、エリザベート暗殺犯で狂言回し的存在のルイジ・ルキーニを演じるのは望海風斗(のぞみ・ふうと)。狂気に満ちた表情や口調、歌唱力の高さで魅せ、テンポ良く物語を運んでいく。フランツは専科・北翔海莉(ほくしょう・かいり)が演じ、大きく重厚な存在感でフレッシュな新生花組の空気を締める。皇太子ルドルフは役替わりで、この日演じたのは芹香斗亜(せりか・とあ)。儚さをまとった佇まいで、純粋で真っ直ぐなルドルフを表現している。初日には上演回数800回を迎えた本作。明日海をはじめとするフレッシュな面々により、新たな『エリザベート』が生み出された。公演は9月22日(月)まで。その後、10月11日(土)から11月16日(日)まで東京宝塚劇場で上演。チケットぴあでは東京公演のインターネット先行抽選を8月31日(日)午前11時より受付。取材・文:黒石悦子
2014年08月28日5月に退団した蘭寿とむに続き、雪組トップスター・壮一帆が、宝塚大劇場にて6月6日(金)より開幕する『一夢庵風流記 前田慶次』『My Dream TAKARAZUKA』で退団。ラストステージにかける想いを訊いた。宝塚雪組・壮一帆 『チケット情報』「今は、きっちりと初日の幕を開けることに精一杯で、感傷に浸る暇はなく、お稽古に専念しています」と、歯切れよく語る壮。隆慶一郎による人気小説を原作とした『一夢庵風流記 前田慶次』では、念願だった“天下の傾奇者”前田慶次を演じる。「前田慶次の特集をテレビで観て、自分に合いそうだなと興味をもちました。実際、大野(拓史)先生が描いてくださった彼は、私にそっくり(笑)。前田慶次という役を通して、壮一帆の色を全面に出すことができれば、良い意味で、舞台上で大暴れしたいなと思っています」。舞台には、前田慶次の愛馬・松風も登場。歌舞伎と同様の馬を取り入れた演出も見どころだ。「馬に乗って登場し、自分の足で袖から出てくることはほとんどないと思います。乗ってみるとすごく高くて、まるで本物の馬のような感覚に驚きました。それで殺陣まわりもあるので難しいですが、見どころになると思いますので、楽しみにしていただきたいですね」。ショーでは、宇崎竜童、阿木燿子が楽曲を提供。壮の退団の想いやファンへのメッセージも込められた、温かいステージになりそうだ。「おふたりにお会いする機会があり、退団にあたっての私の気持ちを直接お伝えしました。その気持ちをすごくメロディックで素敵な音楽に仕上げてくださっています。サヨナラを連想させる場面もあり、演出の中村(一徳)先生の愛情もすごく感じます」。男役として19年間、常に高みを目指して歩んできた壮。しかし、100周年記念イベント『夢の祭典』に出演し、「自分はまだ小さい」と感じた。「久しぶりに宝塚大劇場の舞台に立ったOGの方々が舞台袖に戻られたときに興奮されている様子を見て、ほかの舞台にはないものがここにはあるんだと実感しました。そして、当時よりさらにパワーアップしている輝きを見て、自分はまだまだだなって思いましたね。そのときに感じた刺激を胸に、七色の彩り豊かな壮一帆をお見せできるよう、千秋楽の最後の最後まであがき続けたいと思います」。公演は6月6日(金)から7月14日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、8月1日(金)から8月31日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。チケットは兵庫公演が発売中、東京公演は6月29日(日)午前10時より発売開始。取材・文:黒石悦子
2014年05月30日宝塚歌劇花組の男役トップスター、蘭寿とむのサヨナラ公演が2月7日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕。フィッツジェラルドの未完の長編小説をミュージカル化した『ラスト・タイクーン-ハリウッドの帝王、不滅の愛-』とショー『TAKARAZUKA∞夢眩』の2本立てで上演中だ。宝塚歌劇花組公演『ラスト・タイクーン-ハリウッドの帝王、不滅の愛-』/『TAKARAZUKA∞夢眩』のチケット情報『ラスト・タイクーン』は、1930年代のハリウッド映画界が舞台。タイクーンと呼ばれる若き天才映画プロデューサー、モンロー・スターは、女優ミナ・デービスと婚約していたが、突然の事故で彼女を亡くしてしまう。心に大きな傷を抱えながらも、映画創りにさらなる情熱を傾けていくが、スタッフたちはモンローの強引なやり方に次第に反発するようになる。そんな中、モンローは亡きミナと瓜ふたつの女性キャサリンと出会い……。宝塚歌劇団入団から20年、男役ひと筋で生きてきた蘭寿のラストステージ。その集大成となるモンローは、セクシーで大人っぽく、強引な中にも情熱と温かい愛情を持った男。蘭寿の魅力をたっぷりと感じられる役柄だ。スタッフたちを先導切ってまとめる姿や、モンローの映画にかける想いや夢を綴った曲を歌う場面は、トップスターとしての蘭寿、そして宝塚歌劇で生きてきた蘭寿の姿に自然と重なり、“ラスト”を感じさせる。次期トップスターとなる明日海りおは、モンローを育て上げた映画プロデューサーのブレーディ役。モンローの活躍に嫉妬し、モンローをおとしめようとする憎まれ役だ。フレッシュな印象の明日海が、年配の男性を声のトーンや佇まいなど、深みのある表現で演じているのにも注目だ。第二幕のショーは、幕開きからリズミカルで勢いのある印象。怪しげな雰囲気からスタートし、一瞬にして、宝塚歌劇ならではの煌びやかな空間へと変わる。スターが歌い継ぎ、それぞれの個性が観客に届くような演出で楽しませる。また、KENTO MORIの振付によるシーンでは、銀狼に扮した蘭寿が独特のステップや表現で魅せる。ラストを思わせる演出も見どころで、蘭寿がひとり銀橋に立ち、組子一人ひとりを見渡していく姿には、胸に熱いものがこみ上げてくる。男役の真骨頂である大階段での黒燕尾は、ため息が漏れるほどに美しく、蘭寿を始めとする花組の力を見せつけられる。新しさとクラシックな宝塚歌劇の魅力、そして蘭寿の美しいダンスをたっぷりと堪能できるステージだ。兵庫公演は3月17日(月) まで上演中。取材・文:黒石悦子
2014年02月12日優しく包み込むような温かなオーラを持つ、宝塚歌劇団花組トップスター・蘭寿とむ。歌、ダンス、演技の3拍子が揃った蘭寿のサヨナラ公演が、2月7日(金)、兵庫・宝塚大劇場にて開幕する。演目は、ミュージカル『ラスト・タイクーン-ハリウッドの帝王、不滅の愛-』とショー『TAKARAZUKA∞夢眩』の2本立て。創立80周年の年に宝塚音楽学校に入学し、20年間タカラヅカひと筋で生きてきた蘭寿に、ラストステージにかける想いを訊いた。宝塚歌劇花組『ラスト・タイクーン-ハリウッドの帝王、不滅の愛-』チケット情報『ラスト・タイクーン』は、アメリカの作家フィッツジェラルドの未完の大作をベースにした物語。1930年代のハリウッド映画界を舞台に、大物プロデューサーの栄光と挫折や、亡き先妻と瓜ふたつの女性とのロマンスを描いたミュージカル。「強引にも周りをまとめて映画を作り上げていく大物プロデューサーを演じます。映画に魅せられて面白い映画を作ろうと集まってきた人たちは、タカラヅカの舞台に立ちたいと思って集まってきた私たちに重なるものがあり、共感できる部分が多いです。その気持ちを反映しながら、役を作り込んでいます」本作は演出家・生田大和の大劇場デビュー作でもある。生田の熱意と愛情を感じながら、日々稽古を重ねていると話す。「稽古をしながらも台詞を変えたり、新場面が増えたり、すごく熱意を感じます。私としては、遠慮なくぶつかっていけるのがとても嬉しいです。それに、「迷わず歩んだ、ただひとつの道を」というような、私のタカラヅカ人生と重ね合わせた歌詞や場面を作ってくださり、生田先生の愛情を感じます」。ショーでは「花組の男役の魅力を最大限に見せたい」と意気込む。「幕開きからかなりアップテンポで、花組のパワーがいきなり炸裂します(笑)。前半ではリズミカルでスピーディな場面を展開しつつ、ラストは男役全員で大階段での黒燕尾を。大好きな黒燕尾で、思い残すことなく踊りきりたいです」。20年間の集大成だからこそ、感傷に浸る暇はない。「本当に最後まで挑戦だなと思います。“これぞ蘭寿とむ!”というものを残したいですし、花組が最高に活気づいた状態でバトンタッチしたい。そして、ずっと応援してくださり、支えてくださった方々への感謝の気持ちを舞台で返したいと思います」。公演は宝塚大劇場にて2月7日(金)から3月17日(月)まで上演。東京宝塚劇場では4月10日(木)から5月11日(日)まで上演され、3月9日(日)より一般発売を開始。取材・文:黒石悦子
2014年02月03日宝塚歌劇の宙組公演『風と共に去りぬ』が、9月27日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。マーガレット・ミッチェルのベストセラー小説が原作で、映画でも知られる本作。宝塚歌劇では1977年の初演以来、再演を重ね続けてきた代表作のひとつだ。宝塚歌劇宙組『風と共に去りぬ』のチケット情報南北戦争の開戦から1年後の1862年。南軍の軍事拠点となったアトランタに、義妹のメラニーらと暮らすためにやってきた未亡人のスカーレット。そこで再会したのは、北軍の封鎖を破り、軍需物資を南部へ運んで暴利を得たと噂されるレット・バトラー。メラニーの夫アシュレに想いを寄せるスカーレットは、かつて、アシュレに告白していたところを、レットに目撃されていたのだった。初めて会ったときから、スカーレットに惹かれていたレットと、自分の気持ちに正直に生き、アシュレを想い続けるスカーレット。戦争が激しくなる中で、それぞれの想いは……。トップスター凰稀(おうき)かなめが演じるレット・バトラーは、“男の中の男”。稽古段階では凰稀が「自分自身を、男役を一から洗い直している」と言うほどの役柄で、レットを演じることは大きな挑戦だ。そんな強い意志を持ちながら凰稀は厚みのあるレットを作り上げ、ワイルドな大人の男を熱演している。粗野な無頼漢だが、色気があり、ときに優しく、力強くスカーレットを包み込むレット。やはり一番の見どころは、スカーレットに裏切られたことを知り酒に酔ったレットが、悔しさと寂しさをにじませながら、スカーレットに怒りをぶつけるシーンだろう。凰稀の男役としての深みがより一層増しているようだ。スカーレットは、普段は男役の、朝夏(あさか)まなとと七海(ななみ)ひろきが役替わりで演じる。初日の朝夏が演じるスカーレットは、気が強くもチャーミング。どんな状況でも真っ直ぐに前を見て生き抜いていく強さや、アシュレを前にしたときの乙女な一面など、コロコロと表情を変えながら演じていく。スカーレットと彼女の“心の声”とのやり取りは、宝塚歌劇ならではのユニークな演出だ。また、悠未(ゆうみ)ひろは、優しいけれど弱くて優柔不断なアシュレ、実咲凛音(みさき・りおん)は、天使のように誰に対しても優しく懐の深いメラニー、男役の緒月遠麻(おづき・とうま)は、男勝りなカッコよさのあるレットの情婦ベルと、宙組の粒ぞろいなスターたちが、役の個性を繊細に捉えて演じており、凰稀をはじめ、大きな飛躍を見せる宙組の魅力がじっくりと味わえる作品となっている。兵庫公演は11月4日(月・祝)まで上演中。また、11月22日(金) ~ 12月23日(月・祝) まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは10月20日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2013年10月02日イタリアオペラを原作にした究極のラブストーリー『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』が、宝塚歌劇花組公演として上演。ショー『Mr.Swing!』とともに、8月16日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。まず目に飛び込むのが、天使の羽根をイメージした壮大な舞台装置。舞台に幻想的な雰囲気を作り出している。宝塚歌劇花組公演『愛と革命の詩(うた)-アンドレア・シェニエ-』/『Mr.Swing!』- のチケット情報本作は、男役トップスター蘭寿(らんじゅ)とむが「念願だった」という“大恋愛物”。フランス大革命期のパリに生きた実在の詩人アンドレア・シェニエと、貴族の令嬢マッダレーナ、マッダレーナに想いを寄せる革命の闘士ジェラール。時代の波に翻弄されるこの3人の生き様と関係を軸に、物語が展開していく。蘭寿演じるシェニエは、貴族が相手だろうと自分の身に危険が迫ろうと、自分の信念を一切曲げない、熱く強い意思を持った人物。人々が平等に生きられる社会になることを願って、詩を書き続ける。そんなシェニエの詩を読んで生きる希望を見出し、シェニエに惹かれていくのが蘭乃(らんの)はな演じるマッダレーナ。手紙だけでやりとりをしていたふたりが出逢い、一気に愛が燃え上がっていく様は見どころのひとつだ。ハンブルクバレエ団現役ソリスト・大石裕香の振付による、情感豊かなデュエットダンスがより一層温かな空気を作り上げている。内に熱い想いを秘めて革命闘士として生きるジェラールを演じるのは、組替えして初の大劇場公演となる明日海(あすみ)りお。想い描いた“平等な社会”への理想と辿り着いた先の現実との違いに対する葛藤、そして、シェニエとマッダレーナが惹かれ合っていることへの嫉妬と、複雑な感情を繊細に表現する。第二幕のショー『Mr.Swing!』は、幕開きから熱くてパワフル。公演前に蘭寿が「イントロダクションだけでも満足していただけるはず」と言っていたように、スーツにソフト帽を被った男役たちがズラリと並んで魅せるダンスに心奪われ、思わず目が釘付けに。熱狂的なリズムでテンポよくグイグイと観客を引きこみ、野球少年風に扮したコミカルな場面、幻想的なエスニックの場面、妖艶なデュエットダンス、シックな黒燕尾…と、緩急つけた多彩なシーンが繰り広げられていく。蘭寿のキレのあるシャープなダンスをはじめ、“ダンスの花組”の魅力がたっぷりと味わえるステージに仕上がっている。兵庫公演は9月23日(月・祝)まで上演中。また、10月11日(金) ~ 11月17日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは9月8日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2013年08月22日フランスの人気小説「アルセーヌ・ルパンシリーズ」の最新作で、作家モーリス・ルブランの没後70年となる2012年に発見され、話題となった『ルパン、最後の恋』。本作を、宝塚歌劇が世界で初めてミュージカル化。月組公演『ルパン-ARSENE LUPIN-』として7月12日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。ショー『Fantastic Energy!』との2本立てで上演中だ。宝塚歌劇月組『ルパン-ARSENE LUPIN-』20世紀初頭のパリでは、400万ポンドの金貨がロンドンから空輸されるという出来事で沸いていた。そんな中、怪盗ルパンから400万ポンドの強奪予告が届き、金貨が実際に姿を消してしまう。しかし、それは怪盗ルパンの名を借りた何者かによる陰謀。身に覚えのない罪を着せられた本当のルパンは、名誉を守るため、その策略を暴こうと決意する……。姿の見えない犯人を追う緊張感のあるストーリーに、ルパンの密かな恋を絡めて展開していく。男のリアリズムを追求する正塚晴彦の演出。頭のキレる怪盗紳士ルパンが、少し影のあるクールな男として描かれている。そのルパンを演じるのは、男役トップスター龍真咲(りゅう・まさき)。シルクハットに長いマントのルパンスタイルが、龍にピッタリだ。令嬢カーラの後見人アルベールとして生活し、怪盗を封印していたルパンが、自らの名誉を守るため、そして愛する人を守るために再び危険を冒していく。公演前に「怪盗だけど、紳士的であることを強く意識したい」と龍が言っていたように、ルパンは誰に対しても冷静でスマートな印象。その中にも秘めた熱がきちんと伝わるように演じている。カーラ役の娘役トップスター愛希(まなき)れいかは、強い芯を持ちながらも、女性としての儚さを表している。しっとりとした空気が流れるステージで笑いを誘うのが、警部ガニマール役の星条海斗(せいじょう・かいと)だ。ルパンを追い続けるも、うまくかわされて捕まえられないもどかしさを、絶妙な表情や動きで表現して心をくすぐる。憧花(とうか)ゆりの演じるフラヴィ判事とのコミカルなやり取りも見ものだ。ほかにも、専科から北翔海莉(ほくしょう・かいり)が作家モーリス・ルブラン役で出演し、舞台の空気をピリッと締めている。一方、第二幕のショー『Fantastic Energy!』は、オープニングからトップスピード!入れ替わり立ち替わりの、まさにめくるめく展開。ロック、ラテンにスパニッシュ……と、ノンストップでエネルギッシュに展開していく。黒燕尾服での群舞もスタイリッシュかつ男らしさあふれる1曲。コスチュームもカラフルで夏らしくパワフルなステージに、こちらのパワーがチャージされるはず!兵庫公演は8月12日(月)まで上演中。また、8月30日(金) ~ 10月6日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは7月28日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を7月22日(月)11時まで受付中。取材・文:黒石悦子
2013年07月18日2001年のフランスでの初演以来、世界中で上演されているミュージカル『ロミオとジュリエット』。日本では2010年に宝塚歌劇星組により初演、その後、雪組、月組でも上演されてきた人気作が再び登場。初演でロミオとジュリエットを演じたトップスター柚希礼音(ゆずき・れおん)、夢咲(ゆめさき)ねねコンビを中心とする星組公演として、5月31日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。宝塚歌劇星組 『ロミオとジュリエット』のチケット情報シェイクスピアの純愛物語『ロミオとジュリエット』を、現代的なロックテイストあふれる作品に彩った本作。一度聴くだけで耳に残る楽曲の数々に、アグレッシブなダンスパフォーマンスが魅力のミュージカルだ。宝塚歌劇では、そのフランス版をより美しく華やかにタカラヅカらしくアレンジ。対立するモンタギュー家とキャピュレット家のダンスシーンはカッコよく迫力たっぷりに、仮面舞踏会では華やかさを印象付ける。そして、フランス版でも登場する「死」を象徴するダンサーに加え、「愛」を象徴するダンサーを取り入れるなど、演出家・小池修一郎の手で、悲恋の物語を美しい愛が溢れる作品に仕上げている。主人公のロミオは、ベンヴォーリオやマーキューシオら喧嘩っ早い仲間の中でもひとり違うタイプで、争いを嫌い、本当の愛を求める純粋な青年。柚希はその真っ直ぐなロミオをとびきり爽やかに演じ、ジュリエットへの一途な愛を温かく表現する。一方、ジュリエット役の夢咲は、幸せな結婚を夢見る少女の可憐さと、親に反抗してまでもロミオを愛し抜く芯の強さをバランスよく見せる。フレッシュで初々しいカップルの雰囲気をまとったふたりは、歌のハーモニーも言葉の掛け合いもダンスも抜群に息が合ったベストカップル。殺伐とした空気の中で、ふたりの繋がりが強くなるほど、争いの愚かさと愛の大切さがより強く浮かび上がってくる。今回は、ティボルト、ベンヴォーリオ、マーキューシオほか、複数の役を役替わりで上演。この日、ジュリエットの従兄ティボルトを演じた紅(くれない)ゆずるは、クールな雰囲気が一匹狼のティボルトの印象にピッタリ。登場するだけで緊張感を漂わせる危うさが印象的だ。また、ロミオの親友ベンヴォーリオ役の礼真琴(れい・まこと)、マーキューシオ役の壱城(いちじょう)あずさ、死のダンサー真風涼帆(まかぜ・すずほ)らも好演。星組メンバーのフレッシュなパワーが生きたステージは、配役を替えた公演も観たくなるほどそれぞれの魅力があふれている。未見の人はもちろん、前回公演を観た人もきっと、その愛と熱に心震わされるはず。兵庫公演は7月8日(月) まで上演中。また、7月26日(金) ~ 8月25日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは6月23日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2013年06月06日2011年に宝塚星組で上演され、好評を得た『オーシャンズ11』が花組で再演。2月8日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。宝塚歌劇花組『オーシャンズ11』のチケット情報原作は、天才詐欺師ダニー・オーシャンと10人の仲間たちが、ラスヴェガス最大のカジノの金庫破りに挑む犯罪アクション映画。主演のジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツら豪華スターの共演でも知られるヒット作だ。服役中のダニー・オーシャンは、仮釈放になると同時に、ラスヴェガスへと向かう。愛する妻テスをホテル王ベネディクトから取り戻す、壮大な計画を実行するために……。第1幕はトップスター蘭寿(らんじゅ)とむ演じるダニーと、北翔海莉(ほくしょう・かいり)演じるラスティーによる仲間探しや、ベネディクトの企みを中心に展開。第2幕はカジノに潜入し、金庫破りの計画を実行する、コミカルかつ緊張感のあるシーンが続く。初演同様、イリュージョンも取り入れた、華やかでスリルあふれるステージは、観客をグイグイと引き込む要素が満載。蘭寿を中心とする、黒スーツをまとった男役のクールなダンスにうっとりし、11人のメンバーがズラリと並んで颯爽と去っていく後ろ姿には男の色気を感じ……。そんな男役の魅力をたっぷりと堪能しつつ、望海風斗(のぞみ・ふうと)演じるベネディクトの鼻を明かすチームプレイに爽快感を覚える。蘭寿は、持ち味である柔らかく落ち着いた雰囲気を漂わせながら、クールでアダルトに“チョイ悪”なダニーを演じる。透明感が魅力の娘役トップスター蘭乃はなは、歌手でダニーに離婚を要求している妻テス役。ベネディクトとダニーの間で揺れ動く気持ち、知性のある女性を繊細に表現している。さらに、ダニーの親友ラスティー役の北翔は、芸達者ぶりをいかんなく発揮。ときには爆笑が起こるほどの演技で楽しませてくれる。蘭寿と北翔がふたり並べば、抜群のコンビネーション。安定感のあるふたりのもと、演技力の高い元詐欺師ソールを演じる悠真倫(ゆうま・りん)、ヨーヨーの達人イエンを演じる華形ひかるほか、個性あふれる“イレブン”たちがそれぞれの魅力をアピールしながら演じていく。また、ベネディクトを演じる望海も、冷徹な悪人を表情豊かに好演している。壮大にショーアップされたラスヴェガスの華やかさと、宝塚歌劇の煌びやかなステージがピタッとはまった『オーシャンズ11』。花組の豊かな男の色気と痛快なステージングに引き込まれるはずだ。兵庫公演は3月11日(月)まで上演中。また、3月29日(金) ~ 5月5日(日・祝)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは2月24日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を2月18日(月)11時まで受付中。取材・文:黒石悦子
2013年02月13日1974年に宝塚歌劇で初演された、池田理代子原作の『ベルサイユのばら』。当時“ベルばらブーム”に火をつけるほどの大ヒットを記録し、その後も再演が重ねられてきた宝塚の代名詞的作品が、1月より月組で上演される。主人公を変えたさまざまなバージョンがある中でも今回は『オスカルとアンドレ編』。そこで、月組を率いるトップスター・龍真咲(りゅう・まさき)に、この大作にかける想いを訊いた。宝塚歌劇月組『ベルサイユのばら』チケット情報2001年に「フェルゼンとマリー・アントワネット編」で初舞台を踏んだ龍は「強い巡り合わせとご縁を感じます」と目を輝かせる。しかも今回挑むのは、男装の麗人オスカルと、オスカルを愛するアンドレの二役。準トップスター・明日海(あすみ)りおとの役替わりで演じるのが見どころのひとつだ。オスカルを演じるにあたっては、男役ならではの壁を感じたと語る。「女性でありながら男として生きる男装の麗人。男役のキャリアを積んできた中で、この役柄を演じるのは難しいと感じました。だからこそ、手応えも大きいです」。舞台は王妃マリー・アントワネットが生きた18世紀のフランス。その絢爛豪華な世界観や登場人物たちのさまざまな愛を巡るストーリーが、宝塚の雰囲気にぴたりとハマる。だからこそファンが多く、期待も大きい。「原作ファンの方、宝塚歌劇の『ベルサイユのばら』ファンの方、そしてそのどちらも愛する方、それぞれきっと心は同じ。キャラクターの心情やセリフについて強いイメージを持たれていると思うので、より理想に近づけられるように心がけたいです。プレッシャーも大きいですが、この二役を演じられることを幸せに思い、どんなに苦しんでも作り上げたいと思います」。初演から繰り返し上演されてきた本作だが、今回はさらにクリーンアップ。パワーアップした月組バージョンが観られるという。「説明ゼリフがほとんどなくなっていますし、プロローグがまた新しく作られていますので、今までご覧になられた方も新鮮な目で観て頂けると思います。あと、馬車に乗って飛んでいくラストシーンがいちばんの見せ場。かなり高いところまで昇っていくので、2階席のお客様にも喜んで頂けると思います」。前作の『ロミオとジュリエット』で、龍を中心とする月組がスタート。そこで大きな一歩を踏み出せたことが“組”としての自信に繋がっている。「『ロミオとジュリエット』を経て、月組のエネルギーがさらに上昇しています。来年はもっと組の一人一人の顔を観て頂けるように、下級生も個々をアピールしてほしいです。私自身は、オスカルと同様、自分の信念をまっとうして進んでいきます」。1月1日(火)から2月4日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、2月15日(金)から3月24日(日)に東京宝塚劇場にて。チケットぴあでは東京公演のインターネット先行抽選を12月25日(火)11:00より受付スタート。取材・文:黒石悦子
2012年12月25日舞踊『宝塚ジャポニズム~序破急~』、ミュージカル『めぐり会いは再び2nd~Star Bride~』、レビュー『Etoile de TAKARAZUKA(エトワール ド タカラヅカ)』の3本立てで贈る宝塚歌劇星組公演が11月16日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。宝塚歌劇星組『宝塚ジャポニズム~序破急~』のチケット情報第1幕の舞踊は、能楽の基礎である「序破急」をテーマにしたショーで、序・破・急と約15分ずつで展開していく。「序」は1984年の初演からタカラヅカで受け継がれ、海外公演でも披露されてきた“桜のボレロ”。男役トップスター・柚希礼音(ゆずき・れおん)を中心に、桜の若衆に扮したスターたちが、桜の花びらをはらはらと散らしながらしっとりと舞う。そして次々と隊形を変化させながら、桜が咲き誇る中での総踊りへと展開する様は壮観。続く「破」では、“祈り”をテーマに、大日如来を中心とした仏たちの踊りが繰り広げられ、「急」では、迫力ある立ち回りを絡めての場面構成。全体を通して、繊細で美しい和の魅力を改めて感じさせてくれるとともに、宝塚でしか表現し得ない和物の群舞に圧倒される。第2幕のミュージカルは、昨年上演された『めぐり会いは再び』の続編。花婿選びの騒動を描いた前作から1年後、柚希演じる貴族の青年ドラントと、夢咲(ゆめさき)ねね演じる婚約者・シルヴィアの結婚前夜の様子が描かれる。互いに想い合いながらも素直になれないふたりは、些細なことで衝突。そんな彼らを見かねた周りの仲間や家族たちがひと芝居をうつことに……。前回同様、少女漫画のラブコメ仕立てのストーリーやキャラクター設定で気軽に楽しめる。それぞれコミカルで漫画チックな演技も微笑ましく、心和む作品だ。そして第3幕のレビューは、フランス語で「星」を意味する「Etoile」がタイトルにつけられているように、星をイメージした宝塚らしいステージ。柚希が輝く星のように大階段に浮かび上がり、柚希を中心とした黒燕尾のボレロが展開。スター総出の“ザ・タカラヅカ”なプロローグに心が踊る。続いて、12星座をイメージしたシーンが繰り広げられていく。柚希と夢咲のデュエットで魅せるおひつじ座からスタートし、真風涼帆(まかぜ・すずほ)を中心にクールに踊るおうし座、身体の半分が男、半分は女の衣装をまとった紅ゆずるが声のトーンを変えながら歌い、客席の笑いを誘うふたご座……とバリエーション豊かな演出で見せていく。きらめくステージの中で、星にまつわる宝塚のショーナンバーを歌い継いでいくレビューもあり、テンポの良い展開に惹き込まれているうちにフィナーレを迎える。公演前に柚希が「ここまで宝塚らしい作品は初めて」と語っていたように、2013年の台湾公演を見据えた本公演は、“宝塚歌劇”がじっくりと味わえる内容に仕上がっている。兵庫・宝塚大劇場公演は12月15日(土)まで上演。その後、2013年1月2日(水)から2月10日(日)まで、東京宝塚大劇場にて上演。こちらのチケットは12月2日(日)より一般発売。取材・文:黒石悦子
2012年11月22日11月16日(金)に兵庫・宝塚大劇場で開幕する宝塚歌劇星組の次回作は、舞踊『宝塚ジャポニズム~序破急~』、ミュージカル『めぐり会いは再び 2nd~Star Bride~』、レビュー『Etoile de TAKARAZUKA(エトワール ド タカラヅカ)』の3本立てで上演する。舞踊とレビューは、2013年4月に行われる台湾公演でも上演される演目だ。自身初の3演目に挑戦する男役トップスター・柚希礼音に心境を訊いた。宝塚歌劇星組『宝塚ジャポニズム~序破急~』ほかチケット情報「3本立てのお稽古は頭がこんがらがります」と、笑顔で話す柚希。1幕目の和物ショーは、序・破・急を15分ずつで展開していく。2年ぶりの和物への挑戦に「50人、60人が全員同じ振りで踊るのがタカラヅカの和物ショーの素晴らしいところだなと、改めて思いました。華やかで、日本人でよかったなとお客様に思っていただけるようにしたいです」。ダイナミックなダンスと男らしい色気が魅力の柚希だが、和物では“色っぽさ”を意識するという。「タカラヅカの男役が演じる日本物の若衆は、はんなりしていて、押したらふわ~っと倒れそうな感じがするんです。なので、お芝居や洋物のショーで作ってきた男役像とはまた違う雰囲気を出したいと思っています」。2本目のミュージカルは、貴族の男女が繰り広げる恋の騒動をコミカルに描いた作品で、昨年星組で上演された『めぐり会いは再び』の続編。“魅せる”ショーと舞踊の間で、ホッと心和む演目になりそうだ。「昨年も『ノバ・ボサ・ノバ』のエネルギッシュなショーの後で、みんなが伸び伸びと演じている雰囲気がありました。リラックスしている時がいちばんいいものが出ると思いますので、お客様にも和んでいただきつつ、私たちも肩の力を抜いて演じたいですね」。そしてレビューは、タイトルに“TAKARAZUKA”と付けられているように、タカラヅカらしさあふれる展開。「大階段の黒燕尾から始まり、“星”にまつわる懐かしい曲のメドレーもあります。こんなにもタカラヅカらしさあふれる作品は、私自身初めてのような気がします。今までいろんな作品に出演してきました。根本に戻って、タカラヅカの男役にしか出せない黒燕尾の美しさや、群舞で踊る美しさを観ていただき、やっぱりタカラヅカっていいなと思っていただけるような公演にしたいです」と力を込める。4月に控える台湾公演に向けても「力を入れすぎずに楽しみながら、これがタカラヅカだというものをお見せしたいです。皆様とより深く繋がれるきっかけになれたら」と語る柚希。“宝塚歌劇”の魅力が存分に堪能できるステージになりそうだ。公演は11月16日(金)から12月15日(土)まで兵庫・宝塚大劇場にて、チケットは発売中。その後、2013年1月2日(水)から2月10日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。チケットは12月2日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2012年11月13日緻密に作り込まれた劇構造の中、絶妙なアンサンブルでユルい会話を繰り広げ、笑いに繋げる京都の人気劇団、ヨーロッパ企画。彼らの新作『月とスイートスポット』が、11月9日(金)の滋賀・栗東芸術文化会館さきら 中ホールでのプレビュー公演を皮切りに、7都市で巡演される。その構想について、脚本・演出の上田誠に話を訊いた。「最近は、企画性やシステムを中心に据えて、その周りで物語や世界観を積み上げるスタイルに興味があるんです」と語る上田。“移動コメディ”と銘打った昨年の『ロベルトの操縦』では、移動することを軸に、そこから生まれる面白さを追求。砂漠を舞台に、大きな乗り物に乗った兵士たちがコーラを買うために疾走する様を描き出した。続く今回は、“漂流コメディ”と銘打ち、空間のねじれを軸に、時空間を漂流するチンピラたちの物語を展開するという。「演劇はセリフに重きを置かれることが多いと思うんですが、僕は空間から話を作りたいと常々思っています。それで今回は高架下とか路地裏のような、世の中の裏をイメージする場所を舞台に、チンピラたちが泣きぬれるという設定にしました。前回は乾いた砂漠を鉄の乗り物で疾走するという、あまりにもドライな雰囲気だったので、今回はウェットな話に仕上げたいと思っています」。タイトルの“スイートスポット”は、今作で音楽を手掛けるバンド・moools(モールス)の曲からヒントを得た。「元々、僕がすごく好きなバンドで、マニアックなことをしていながらも遊び心があるんです。その中でも、「このままここに僕は残る」とか、「それぞれがそれぞれの場所に座って行きつけの過去に寄り添う」というような歌詞に惹かれて。そんな、どこか甘い雰囲気が漂う空間とか場所をイメージしての“スイートスポット”です」。前作が「コーラを買いに行く話」だったように、大がかりな仕掛けの中で、小さなことをああだこうだと言いながら展開するのも彼らの面白さのひとつ。「大きな劇場で何をしたら芝居が成り立つかとか、大きくすべき部分としなくてもいい部分はすごく考えます。内容自体は芝居にすることでもないちっちゃなことをやっていますが、それを大きな仕掛けを使って機能させるのは面白いですね。そのバランスを観ている方にも楽しんでもらえるとうれしいです」。滋賀公演の後、京都、広島、福岡、名古屋、東京、大阪にて公演を行う。チケット発売中。取材・文:黒石悦子
2012年10月30日輝く笑顔が魅力的な宝塚歌劇雪組トップスター音月桂(おとづき・けい)、舞羽美海(まいはね・みみ)のサヨナラ公演が10月12日(金)、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。ラストステージを飾る演目は、ミュージカル『JIN-仁-』と、ショー『GOLD SPARK!-この一瞬を永遠に-』だ。宝塚歌劇雪組『JIN-仁-』のチケット情報漫画家・村上もとかの大ヒット作で、大沢たかお主演のドラマも記憶に新しい『JIN-仁-』。幕末の江戸を舞台に、現代からタイムスリップした医師・南方仁と町の人々との人間模様を描いた作品だ。江戸の町に蔓延するコロリ(コレラ)、花街・吉原の感染病、花魁・野風の病気など、数々のエピソードをアレンジしながらテンポ良く展開。仁の恋人・結命と、江戸で出会う橘咲を舞羽、坂本龍馬を早霧(さぎり)せいな、橘恭太郎を未涼亜希(みすず・あき)、勝麟太郎(海舟)を専科・北翔海莉(ほくしょう・かいり)……と、さまざまな人物が登場し、舞台を彩る様子を眺めるだけでも面白い。さらには、艶やかさや華やかさ、殺陣の躍動感など和物ならではの美と粋が堪能できる。現代で恋人を亡くし、空虚な心を埋められないでいた仁が活力と笑顔を取り戻していく様を、緩急つけて表現する音月。咲と結命のふた役を、どちらも意志の強さを持たせながら、真っ直ぐな咲と知的な結命として演じ分ける舞羽。熱く豪快な龍馬を豊かな表情とアクションで表現する早霧。そして北翔や未涼が、どっしりと安定感のある落ち着いた演技と歌唱で舞台の空気を締める。突然タイムスリップしたことに戸惑いながらも、病や怪我、災難に苦しめられる江戸の人々を笑顔に変え、慕われ、愛されていく仁の姿は、“トップスター音月桂”の姿に自然と重なり、ぐっと胸に迫る。咲との絶妙な距離感、龍馬との友情、恭太郎や勝との信頼関係を描く中で、サヨナラ公演を意識したセリフや演出が散りばめられる。仁を中心に、舞台がどこか温かい空気に包まれているのは、その存在で周りを明るくしてきた音月を中心とする雪組だからこそ出せる空気感だろう。第2幕のショーは、煌めく衣装をまとった音月のソロからスタートし、心躍るようなリズムのナンバーで躍動感あふれるダンスが繰り広げられる。ダークファンタジーのようなストーリー性のあるシーンに、“イケメン”たちがスタイリッシュなダンスと歌で魅せるシーン、赤い鳥たちが歌い踊るシーンなど、彩り豊かに展開。中でも、音月自らが希望したという大階段での黒燕尾の群舞は惚れ惚れするカッコよさ。舞羽と音月のデュエットも美しく、ずっと観ていたくなるほどだ。ショーでもまたサヨナラ公演ならではの演出に心揺さぶられる場面もあるが、雪組生があふれる笑顔で放つイキイキとした輝きに、自然と笑みがこぼれる。兵庫公演は11月12日(月)まで上演。また、11月23日(金・祝) ~ 12月24日(月・祝)まで、東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは10月21日(日)一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2012年10月18日漫画家・村上もとかによる大ヒットコミックで、大沢たかお主演のドラマ版でも話題となった『JIN -仁-』が宝塚歌劇で舞台化される。音月桂(おとづき・けい)、舞羽美海(まいはね・みみ)の雪組トップコンビのサヨナラ公演として、ショー『GOLD SPARK ! -この一瞬を永遠に-』との2部構成で上演。雪組一筋で15年、常に笑顔で宝塚の舞台に立ち続けてきた音月に、本公演にかける思いを訊いた。宝塚大劇場公演『JIN-仁-』/『GOLDSPARK!-この一瞬を永遠に-』チケット情報「大好きな日本物でワクワクしますね。すごく楽しんでやっています」。雪組は“日本物の雪組”と称され、音月自身も気合十分だ。しかし、音月が演じる医師・南方仁は、現代から江戸時代へとタイムスリップするため、あくまでも現代人として舞台に立つ。「現代人の役柄ですが、着物を着ると、どうしても背中にスッと一本筋が通ったようになるんです(笑)。でもこの作品では現代と江戸時代の違いをリアルに出さなければならないので、ピシッとしたい気持ちを抑えて、着物も敢えて乱した方がいいかなと思っています。下級生は立回りもあるので、私が学んできたことをしっかりと伝えていきたいです」。本作で描かれるのは、江戸の町で出会った舞羽演じる橘咲との時空を超えた愛や、早霧(さぎり)せいな演じる坂本龍馬との友情を軸にした、江戸の人々との人間模様。卒業公演ならではの、仁と音月がリンクするようなセリフや楽曲、ステージングが用意されている。「演出の齋藤(吉正)先生が、すごく愛を持ってセリフや歌詞を作ってくださっています。仁は江戸の町で暮らす人たちの温かさに触れて成長していきますし、私自身も15年間、いろんな方との出会いがあってここまでこられました。そういう意味では演じていて感情が入りやすいですし、これまでの集大成をお見せできればと思います」。一方、ショー『GOLD SPARK !』は、タイトル通りキラキラとした“輝き”をイメージしたステージが展開する。中でも黒燕尾のシーンは音月たっての願いだと言う。「大階段での黒燕尾の場面はどうしてもやりたかったので、嬉しいです。今すごく充実している雪組が、もっともっと輝けるショーにしたいですね」。最後に、雪組のトップとして過ごした時間について尋ねた。「とても濃厚で、毎日が充実していました。振り返ると本当にあっという間に感じます。いろんなものに触れたり発見したり、お客様に温かい拍手を頂いて感動したり。それは主演になる前からですが、特にこの2年間は、支えてくださるファンの方々、スタッフ、組子たちがいたからこそ、こうして笑顔で舞台に立てるんだということが実感できました。ですから、恩返しをするためにも、最後まで全力投球したいと思います」。公演は10月12日(金)から11月12日(月) 兵庫・宝塚大劇場、11月23日(金・祝)から12月24日(月・祝)まで東京宝塚劇場にて上演される。宝塚大劇場公演のチケットは発売中。東京宝塚劇場公演のチケットは10月21日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2012年10月03日