2016年10月21日 16:00
発達障害と医療、新しい薬や治療法の情報をどう受け止めれば良い?-児童精神科医・吉川徹(10)
医療は日進月歩。その進歩はニュースになりやすい一方で…
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10237000223
医療は日進月歩です。他の領域に比べて、新しい発見や新開発の治療法の情報がニュースになりやすいのは、医療領域の一つの特徴であると言えるでしょう。けれども本人やご家族は、その新しいニュースを見聞きする度に一喜一憂することになります。
また、ニュースで報じられるような新しい治療法は、受けられる機関がとても限られています。本当に新しいニュースを追い続ける必要は果たしてあるのでしょうか。
医療で採用される新しい診断法、治療法などは、とても慎重に、何度もその有効性と安全性が確かめられてから、一般的な医療機関に採用され、また日本では健康保険が適用され、安価に利用できるようになります。この数年でも発達障害に含まれる障害に対して、新しく正式に適応が承認されたお薬がいくつかあります。
その一方で、ニュースになった多くの新しい発見や治療薬は、まだまだ開発のごく初期段階に留まっているものがほとんどです。その後の研究の中で、実はあまり有効ではないことがわかったり、思ったより安全ではなかったりすることがしばしばあります。自閉スペクトラム症の領域では、これまでにも数多くの薬剤が颯爽と登場しては消えていくという経過を繰り返しています。
こうした新しい診断法や治療法に期待することは悪いことでありません。また新たな方法の開発を担当するような医療機関に通院している方には、ぜひその研究に協力していただいて、新しい支援の道を開くことを助けていただきたいという思いもあります。
けれどもそれはむしろボランティア、社会貢献という位置づけです。残念ながら本人やご家族に利益をもたらすとは限らない、それが研究途上の新しい医学的手法なのです。
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もう一つ、残念ながら現在の日本の状況では、医学による厳密な効果や安全性の検討を受けない、あるいはあえてそうした検討を避けて、宣伝されたり使われたりする物質や薬物も少なくありません。