2023年12月18日 14:15
「子どもの成人後も子育ては終わらない」臨床医が始めた知的障害当事者と家族のための活動とは【児童精神科医 三木崇弘先生】
臨床で感じた問題意識
勤務医として臨床を行いながら、漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』の医療監修やさまざまな社会活動に取り組んでいる三木崇弘先生。今回は、2020年に開始した、知的障害のある子どもとご家族を支援する企画活動プロジェクトについて詳しく伺いました。
――三木先生は「知的障がいのあるこどもとその家族。もっとうけいれられるせかいへ」を掲げ、研究や企画活動を行う「あいプロジェクト」のリーダーを務められていますが、2020年立ち上げにあたって特別なきっかけがあったのか、またどのような思いからだったのか教えてください。
三木先生:もともと知的障害のある方について、何かできることはないだろうかと考えていました。発達障害があり知的障害のない患者さんは高校生や社会人になると一人で外来に来ますが、知的障害のある方は成人しても保護者の方が付き添って来院されます。そうした様子を見て「ああ、親御さんたちの子育ては終わらないんだな」と問題意識を感じていました。
その後、早稲田大学ビジネススクールに進学した際に「ソーシャルビジネス」の授業でこのテーマを私が提案し、同級生でコンセプトに共感してくれた仲間と一緒に「あいプロジェクト」を立ち上げ、活動をしています。
https://allyforid.com/
あいプロジェクト
――主に保護者の方を対象とする茶話会を開催されていますね。
三木先生:2023年12月23日(土)に開催予定のものも含めて、計30回ですね。
――これまで、どのような方が参加されていますか?
三木先生:「親の会」に参加するのが難しかったり、子どものクラスのママ友と気が合わなかったりといった方も多いようです。子ども同士の利害関係のない場で悩みを共有できることに安心感を抱いてくださっているようです。
――グループディスカッションを通じて、新しいつながりが生まれているのですね。
三木先生:そうですね。話題は、知的障害のある子どもの子育てに関することが多いです。また就労プロセスや支援のあり方についてなど、ミクロからマクロまで幅広く話しています。
ただ「無理をさせない」「配慮する」ではなく、大切にしたいこと
――一人ひとり違うという前提ではありますが、知的障害のあるお子さんの今と将来のために、どのような環境や支援が必要だとお考えでしょうか?
三木先生:教育現場での特別支援はかなり充実してきていると思いますので、それ以外の世界に目を広げるためのインクルーシブ教育や、あるいは就労環境の整備、社会生活を豊かにするための仕組みづくりが必要かと思います。