再就職ママが餌食に? やりがいを搾取するブラック企業の実態と注意点
こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。
今回は、子育ても一段落して「そろそろまた働いてみようかな」と考えていらっしゃるママのみなさんへ、「やりがいの搾取を目論んでいるブラック企業にご注意を」というお話です。
「時給は安いがパティシエへの道が開けるかも」といったうたい文句でアルバイトのスタッフをこき使う洋菓子店。
「お年寄りから“ありがとう”と言われたときの喜びはお金なんかに代えられません」というフレーズで低賃金のケアスタッフを募集する介護事業者。
都内でメンタルクリニックを開院する精神科医のT先生(50代女性)は、『やりがいという人間なら誰もが持っている自己実現欲求に巧みに付け入って、少ない報酬で労働力を搾取することは犯罪行為に等しい』と警鐘を鳴らしています。
●“やりがいの搾取”って何?
そもそも“やりがいの搾取”とは何でしょうか。
“やりがいの搾取”とは、今から10年ほど前に教育社会学者の本田由紀先生が提唱した概念で、人間が誰でも持っている「生きがい」や「やりがい」といった自己実現への欲求を利用して勤労者を低報酬でとことん働かせる企業運営の仕組みや構造のことを指します。
最近話題になった例でお話ししますと、2016年の11月に全日本教職員組合(全教)が発表したアンケート調査の結果で、全国の公立小中学校の図書館で非正規で働く司書の人の半数以上(52%)が年収100万円に満たない ことがわかりました。
司書の資格を取る人は本が好きで子どもの世話をするのが好きな傾向があるため、司書として働くことができているというそれだけで「やりがい」「生きがい」を感じる場合が多いのです。
非正規とはいっても司書である以上する仕事は正職員の司書とほとんど同じですし、拘束時間にしても正職員の司書と比べて極端に短いわけではありません。
それなのに年収が100万円にも満たない。
これではいくら仕事にやりがいを感じているとはいっても、それでもって自立した生活を営むための職業とはなりえません。
●子育て卒業再就職ママにとっても無関係の話ではありません
「別に、わたしの収入だけで生活していこうってわけじゃないし」「生活設計はあくまでも夫の収入がベース。わたしがまた働こうと思う理由は、子どもが手を離れたことでできた時間を使って自分の自由になるお小遣い程度のお金だけでも稼ごうかなって思ったから」。