2022年9月13日 18:41
指導者の横暴を黙認する保護者も問題、日本サッカー育成年代の間違った熱血指導による暴力問題の本質
今年の春、秀岳館高校サッカー部のコーチが男子部員を暴行する動画がSNSで拡散されました。しかし、その後に部員が顔出しで謝罪動画を公開し、暴力は日常的なものではないとメディアで報道されている内容を否定しました。
その後、監督がテレビに出演し「謝罪動画は部員の主体的な行動によるもので、自分は関与していない」と釈明しましたが、数日後に監督が指示したという事実が発覚し、指導者としてあるまじきことであると大きな問題として取り上げられました。
筆者は、長年育成年代を取材してきた経験からこのような問題はまだ氷山の一角で、表に出てきていないことはたくさんあると感じています。
今回は、日本の育成年代で度々起こる暴力問題の本質を紐解いていきたいと思います。
(構成・文:KEI IMAI)
<<関連記事:「お前たちが考えていることはどうでもいい」監督にもコーチにも相談できない学生プレーヤーたちの苦悩
サカイク公式LINEアカウントで
イベントや最新情報などをお届け!
■古いままの指導観、アップデートされない教育観
まず、日本の学校教育を筆頭に教育観がアップデートされていないという問題があります。
欧米ではより科学的にスポーツ指導が行われ、サッカー以前に人間性を育む指導が当たり前になっていますが、日本は未だに根性論が根強く、暴力を伴う行き過ぎた指導が散見されます。
熱血指導、暴力をともなう強制的な指導は、軍隊教育の名残だと言われています。
日本野球界の偉大な指導者、野村克也さんは著書「指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論」の中でこう書かれています。
「私が現役の頃、『指導』には暴力がつきものだった。当時は軍隊を経験した人たちが指導者となるケースが多かった。軍隊は生死を懸けた戦いの場所だ。とくに太平洋戦争を経験された人は、さぞかし苦労されたと思う。
そうしたなかでも特筆すべきことは、一般社会では例を見ないほどの『行き過ぎた上下関係』が、軍隊で行われていたことに尽きる。俗に言う『しごき』の類は、ここで体験したことを、戦後になって『教育』という名のもとに、一般社会に持ち込まれてしまったからに他ならない。」
出典:指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論著者:野村克也
サッカー以外のスポーツでも根強く残る、いき過ぎた熱血指導は古いままの指導観、教育観が原因であると感じています。