猫が見守る天才ピアニスト『シャイン』【映画ライター渡まち子の「猫目線」映画レビュー11】
映画の中に登場する猫に注目して、作品の見どころや猫ポイントと共にご紹介するこのコラム。今回ご紹介するのは、オーストラリア映画「シャイン」(1995年)。実在の天才ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットが、一度は精神を病みながらそれを克服し、一流のピアニストとして復活する姿を描く感動の音楽ドラマ。
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◆あらすじオーストラリア在住の青年デヴィッド・ヘルフゴットは、子どもの頃から天才ピアニストとして活躍しますが、息子を束縛する父親の支配下にありました。しかし彼は、友人の励ましに支えられ、父の反対を押し切り、英国の王立音楽院に留学することになります。めきめきと才能を発揮するデヴィッドでしたが、昔、父から課題として与えられたラフマニノフの難曲に取り組むうちに、あまりのストレスから精神に異常をきたしてしまいます。母国に戻り精神病院で過ごしていたデヴィッドに転機が訪れたのは、ある女性との運命的な出会いでした…。
◆困難を乗り越えて輝いたピアニストの生き様に感動オーストラリア出身の天才ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットの苦難に満ちた半生を描く感動的な伝記映画は、音楽映画としての魅力はもちろん、ハンディキャップを乗り越えて強く生きた人間の実話として見ごたえたっぷりの秀作です。ゆがんだ愛情で息子を支配した父親の呪縛から主人公を解き放ったのは、やがて彼の妻になる女性ギリアン。彼女のおおらかな愛情が、繊細な魂を持った天才を穏やかな幸福へと導きます。
劇中に登場するピアノ曲はすべてデヴィッド・ヘルフゴット本人による演奏で、その超絶技巧の演奏テクニックは、まさに神業です! 主人公を演じるジェフリー・ラッシュは、オーストラリア出身で、舞台でのキャリア20年以上の大ベテランの名優ですが、本作で見事にアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。「人生は続く。途中で捨てたりせずに生きていく」というラストの言葉に、誰もが勇気をもらうことでしょう。