吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。本気になると道が開ける(最近、本気になったことがあるだろうか)音楽大学のミュージカル科の卒業公演『RENT』のサポートしながら、ふと思いました。指導、演出している大人たちはプロ中のプロフェッショナル。バンドのメンバーも、普段はアーティストのステージで演奏する人たちです。指導陣が目指すところに学生たちのパフォーマンスをどこまで持っていけるか。学生たちはどこまで進化できるのか、進化したいのか。発表会でなく公演として成立させるハードルは、お互いにとって高い高いものです。「大人が本気にならなくて、どうして学生たちが本気になれるのか。学生たちの本気度が甘いのは、大人の本気度が甘いからだ。本気になることがかっこいい!と、示していこう」演出家のこの言葉に、ハッとしました。私は、最近本気になって何かをしただろうか。熱いくらいの本気度……。それは情熱という言葉に置き換えられるかもしれません。日々の中で手応えを感じているか。ああ、何だか本気から遠ざかっている気がする。これには焦りを感じます。仕事をするとき、学生に教えるとき、コンテンツを考えているとき、もちろん本気で取り組みます。適当に何かができるほど、器用ではありません。でも、何かが足りない。それは、今感じている本気度を超えていこうとする気概です。東宝ミュージカル『RENT』の日本語詞を書くのは難儀しました。自分の不甲斐なさに、作詞家になって初めて涙が出ました。英語の楽曲に日本語を載せる。ミュージカルの歌詞は台詞なので、情報を入れ込まなければなりません。例えば、I love you.という歌詞は3つの音にのります。日本語で正確に伝えようとすると「わたしはあなたがすきです」と、8つの音が必要になります。もちろん「すきよ」と3つの音でも伝えられますが、あくまで一例として。言葉を凝縮し、意味を保ち、なおかつ歌詞として成立させていく。今思い出しても厳しい仕事でしたが、多くのことを学び、多くのインスパイアを受けました。時間は限られている。その中でどれだけ本気になれることと出会っていくか。本気になると、道が開ける。それは、人生の宝物になります。そして、日々の仕事にも、ごはんを作ることにも、掃除をすることにも本気をこめる。本気になったときに見えてくる風景を楽しみながら、進化していきましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年02月27日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言(ひとりごと)』にお付き合いください。花待ち月の二月寒いですねぇ…。建国記念日の前後が一番寒さが厳しいように思います。春待ち心も 日一日と期待感を増して来ています。梅一輪一輪ほどの暖かさ嵐雪すみずみに残る寒さや梅の花蕪村春を告げる花は、先ずは梅でしょうが、その他にも、フクジュ草、サクラ草、コブシなどがあります。それらは『報春花、迎春花』などと表現されています。葉のない冬枯れの枝いっぱいに、黄色の花をつけるマンサクは、余寒の続く早春、万花に先がけて咲きます。マンサク「先ず咲く」が訛(なま)ってマンサクと言われていますが、花弁のちぢれた黄色の花は、春の先ぶれのように思われます。そして早春、まだ花の少ない北国で、花を咲かせ始めている白い花があります。新芽の出ない灰色の裸木に、白い六弁の大型の花を咲かせる『コブシ』です。「こぶし咲く、あの丘北国の…」千昌夫さんが唄う北国の春…。あのコブシです。雪解けの北国の山で咲いているのを一度見たことがありますが、冬枯れの中で灰色の裸木に、白い六弁の大形の花を、枝木の一つ一つにびっしりとつけたコブシの姿は、北国の冬の青空に映えて、それは実に美しく、一瞬心を奪われるほどの壮観なものでありました。コブシの花寒風吹きすさぶ花の無い時季に、一番に花をつけるコブシや梅は、やはりそれなりの『値打ち』があるように思われます。春を待つ花は、スミレ、タンポポ、レンゲ草、椿、桃、桜など多種多彩ですが、本日は 北国でしっかり見た『コブシ』の印象を書かせていただきました。<2022年2月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2022年現在、アナウンサー生活64年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2022年02月22日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。スープの魔法寒い日が続きます。体が縮こまっているせいか、朝からだるくて元気が出ない。マッサージに行こうか、熱いお風呂に入ろうか……。(そうだ、スープを作ろう)そう思い立った途端、なぜか身体がスッと動き始めます。冷蔵庫にあった南瓜と玉ねぎ半分、そして人参で、ポタージュスープを作ることにしました。玉ねぎを炒めて、南瓜と人参を加えて炒め、ひたひたの水を張りくつくつと煮ます。十分に柔らかくなったところで火を止めて、冷めたところでブレンダーにかけます。そしてお鍋に戻し、牛乳を入れ、味を整えて出来上がり。そして熱々のスープをひと口、ふた口、すると体の内側から暖かくなるのがわかります。なんともほっとします。スープには味や栄養や温かさだけでなく、何か心まで満たしてくれる魔法があるようです。童話の『三匹のくま』に、お父さんくま、お母さんくま、こぐまの三つのスープが出てきます。お父さんの大きなお皿に入っていて熱々。お母さんのスープは中くらいのお皿に入っていて冷めている。こぐまのスープは女の子にちょうどいい大きさで、ちょうどいい温かさ。女の子はこぐまのスープを飲んでしまいます。小さい頃にこのお話を読んだときも、娘に読み聞かせをしたときも、『スープ』という響きに命を守るというイメージが広がりました。日頃食べているにもかかわらず、何か特別大切なもののように思えたものでした。料理研究家の辰巳芳子さんは、命に向けられた『スープ』を提唱されます。良い素材を使い、丁寧に丁寧に仕上げていく。手間を惜しまない。丁寧さや手間をかけるのは自分の心を整え、心を込めることなのです。「愛する者のために、トマトを買ったり、煮たり、そんな日々は、思うより短いのです」父親のためにガスパチョを作ったときのことについて、インタビューの中でこう話されています。手軽に、手短に、簡単に、時短で……と、料理も合理性が求められている中、辰巳芳子さんの言葉は大切なことを思い起こさせてくれます。とんとんとんと野菜を切る音、ことことと煮込んでいる香り。そしてひと口食べたときに身体中に広がる温かさ。作り始めたときから癒しが始まっているのかもしれません。もちろん誰かが作ったスープにも、ほっこりの癒しの魔法がこもっているのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年02月20日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。母の強さが教えてくれたこと母の遺品を整理していて、30年前の母の動画を見つけました。クリスマスの家族での食事会の光景を撮ったもので、クリスマスプレゼントのパジャマを開けている場面です。母はとても優しく穏やかな表情で、ちょっとはにかみながらリボンをほどいています。そしてスモーキーピンクのパジャマを胸に当て、「似合う?」と。今の私よりも若い母がそこにいました。当然のことながら母はずいぶんと大人に思えたものです。30歳の私には57歳というのは遠い未来で、その年齢になった自分は想像できませんでした。それが若さの特権なのかもしれません。だからこそ、恐れることなく無茶なこともやれたのかなあと思います。母の荷物の中には育児日記もありました。私の夜泣きがひどいのは自分のせいではないか。「未熟なママでごめんなさいね」「どうしたら泣きやむのか。どこか痛いの?わかってあげられなくて悲しい」自分を責めるような言葉に、母のさまざまな思いがこもっているようで胸がいっぱいになります。初めての子育てに戸惑っている様子が綴られていますが、母は実に強い人でした。母が大学2年生の時、癌の手術、治療をするために九州から東京に出てきた祖父をひとりで看病しました。そして余命幾ばくもない祖父はどうしても九州に帰ることを希望し、寝台列車でつれて帰ることになったのです。母は医師に同行をお願いし、停車駅ごとに交代の医師に待機してもらいました。どうしてこんなことを思いついたのでしょうか。20歳だった母の機転に感服するばかりです。そしていよいよ祖父の状態は悪くなり、大阪で降りることになります。そのときも駅に救急車に待機してもらい、受け入れ先の病院を手配したのです。携帯電話もない時代に、どうしてそんなことができたのか。おそらく車掌さんに頼んで連絡をとってもらったのだと思います。祖父は大阪で亡くなりました。荼毘に付し、遺骨を抱いて祖父が観たがっていた歌舞伎を観て、九州に連れ帰ったのです。動画の中で穏やかな笑顔を見せていた母は、晩年までさまざまな困難に見舞われました。最後は大病をし身体が不自由になっても、堂々とした母でした。「生き抜くとはこういうことよ」意識のなくなった母は光に包まれて、こう全身で伝えているように私には思えました。強さというのは外に対して発するものではなく、自分の内に向けるもの。それが生きる強さになる。その言葉を超えたメッセージは、言葉以上に心に響いたのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年02月13日2021年8~10月に開催された、エッセイコンテスト『grape Award 2021』。『心に響く』というテーマを軸に、コロナ禍により変化した生活スタイルが続く中、自分の周りであった心温まるエピソードや、心が癒されるような体験談を募集しました。寄せられた376本もの応募作品の中から、最優秀賞が1作品、タカラレーベン賞が1作品、優秀賞が2作品、選ばれています。今回は、応募作品の中から優秀賞に選ばれた『心も温まるラーメン屋さん』をご紹介します。「今日のお昼ご飯は、何ですか?」「ラーメン」週末、電車の中で交わす息子との会話。息子は11歳。知的には1歳。自閉症。単語は少し言えますが、パターンになっていない会話は難しい。急に大きな声を出すこともあります。コロナ禍になり、マスクをすること、静かにすることが当たり前の世の中になった。しかし、両方苦手な彼にとってストレスな世の中になってしまった。そんな中でも、週末に通うトランポリン教室が楽しみだった。教室へ行く途中、外食をするのが習慣だった。しかし、コロナ禍になり、店内での飲食は、大声禁止。難しくなった。電車で教室に向かっている途中、西新井駅のホームへ降りた。立ち食いラーメン店があった。ここなら、外だし、電車が通るから大きな声を出しても誰も気にしないかも。しかし、彼にとって、食事は座ってするもの。立って食べることができるだろうか?ドキドキしながら挑戦。大丈夫だった。しかも、このラーメンをとても気に入った。それから、週末通うようになった。常連になり、店員さんと話すようになった。いつも息子に「こんにちは」「元気?」「おいしかった?」彼が答えることはほとんどないが、普通に話しかけてくれる。大体の人は、息子の障がいがわかると、私に話しかけてくる。もしかして、障がいがあることに気づいてないのかも?と思っていたある日、「ここにはいろんな人が来てね、ヘルパーさんと一緒にラーメンを食べにくる子もいるよ。ホームで大きな声でアナウンスの真似をしている子もいるよ。いつも大きな声で独り言を言っているから、聞こえないときは、今日はいないのかなと寂しくなってしまう。」と。私は、息子がいつも大きな声を出すたびに、ハラハラドキドキして、一生懸命止めていた。周りからの視線も気になり、皆に迷惑がられていると思っていた。それを、その子の存在と思ってくれる人がいてくれることに、とても心が救われ感動した。帰り際、いつも通り息子に「いつもいっぱい食べてくれるね」と。私は「ありがとうは?」と言葉を促した。すると、「言わなくてもわかっているから大丈夫」と、彼のペースを尊重してくれた。こんなに彼のことを理解してくれていることに、感謝の気持ちでいっぱいになった。私たち家族が安心して出かけることができる心のオアシスとなった。今週も、西新井の駅が近づくと車窓から外を見て、ワクワクする息子。らーめんの看板をみつけ、下車した瞬間「キー」と大きな声で叫びながら、ラーメン店に走っていく。その声を聞いて、「今日も来てくれたね」と、優しくほほえみかけてくれる店員さん。コロナ禍にならなかったら、なかった出会い。西新井駅のホームには、心も温まるラーメン店があります。grape Award 2021 応募作品タイトル:『心も温まるラーメン屋さん』作者名:イルミ※この作品は、3分7秒からご聴取いただけます。ほかの受賞作品も知りたい人は、こちらをご覧ください!grape Award 2021受賞作品が決定!心に響くエピソードがPodcastで楽しめる『grape Award 2021』詳細はこちら[文・構成/grape編集部](function($) { $(function() { if (window.playerjs) { var p = new playerjs.Player( document.getElementById("award_player") ); p.grid = location.href.match(/[0-9]+/)[0]; p.psnd = false; p.on(’play’, function() { if (window.gtag && !this.psnd) { gtag(’event’, ’play’, {event_category:’Audio’, event_label:this.grid + ":心も温まるラーメン屋さん", value:1}); this.psnd = true; } return; }); } return; });})(jQuery);
2022年02月09日2021年8~10月に開催された、エッセイコンテスト『grape Award 2021』。『心に響く』というテーマを軸に、コロナ禍により変化した生活スタイルが続く中、自分の周りであった心温まるエピソードや、心が癒されるような体験談を募集しました。寄せられた376本もの応募作品の中から、最優秀賞が1作品、タカラレーベン賞が1作品、優秀賞が2作品、選ばれています。今回は、応募作品の中からタカラレーベン賞に選ばれた『エール』をご紹介します。父は気難しい。言いたいことはいつも顔に書いてある。ドアを強く閉めることもあれば、階段をドスドス駆け上がることもある。私が「弁当店をやりたい」と言った時も、テレビのボリュームを一気に上げた。反対とは言わないまでも言いたそうな素振り。たまらず「もういい!」と出ていこうとすると「失敗しても帰ってくんなよ」とボソリ。以来父とは顔を合わせていない。そんな私が飯能に店を出したのが十年前。小さな町の、小さな店だ。当初はほとんどお客さんが来ず、手書きのチラシをあちこちに配り歩いた。お客様は一日に十人。それに対し十万円の赤字。やっと赤字から脱出できたのは三年後。そこにはひとりのお客様の存在があった。ふじの。その人は開業当初から買いに来てくれるお客様だった。そして年に一度、決まって7月3日に弁当を大量注文する。やり取りはいつもFAX。取りに来るのはいつも代理の方だった。「いつもありがとうございます。しかしこんなに沢山のお弁当、どなたが食べるんですか」ある時私が尋ねると「まあ、いいじゃないですか」と代理人は言葉を濁した。その後も弁当を取りに来てはすぐに帰っていく。車のナンバーが地元ではないことから近隣の住民でないことは明らか。ひょっとして転売目的?でもなあ、と思う。たまにお菓子の差し入れをする様子を見ると悪い人ではなさそうだった。やがて弁当店が軌道に乗り始めると『ふじのさん』からの注文はパタリとなくなった。それでも毎年7月3日には必ず弁当を200食注文する。それは店にとって大変ありがたいものだった。しかし昨年。コロナウイルスの感染拡大によって事態は一変。予約のキャンセルが相次ぎ、店の経営は一気に傾いた。店舗の家賃に、光熱費。休業しても伸し掛る毎月の支払い。気力より先に貯金が底をついた。『誠に勝手ながら今月末で閉店させて頂きます』結局、私は廃業の道を選んだ。悲しくて、悔しくて。コロナに胸ぐらがあったら掴んでやりたい。何度も思った。だがそうもしていられず、店の撤去作業に追われた。自らペンキを塗った看板。何枚も配り歩いたチラシ。分厚い顧客リスト。それらを見ては涙に暮れ、悲嘆に暮れた。お客様からのFAXをシュレッダーにかける時は、身も心も刻まれるようだった。そんなある日、店にFAXが届いた。FAXの主は『ふじのさん』だった。見れば『7月3日シャケ弁200食』とある。だがその日にはもう店はない。ないんだ。私は切なさいっぱいに、その旨をFAXで伝えた。店を立ち退く日。その日は朝から別れの挨拶に訪れるお客様で賑わった。その中に『ふじのさん』の代理人がいた。大きなダンボール箱を抱え「これはヤッサンから」と差し出した。中身は伊予柑だった。「いい予感、ってことだそうです。またがんばって下さい」いい予感、か。私たちは顔を見合わせて笑った。「そう言えばいつも7月3日にご注文を頂いていたのですが、あの日は何があったんですか」するとそれまで私を見ていた代理人さんが、すっと目をそらした。そしてたったひと言。「誕生日だから」と言った。途端に頭が真っ白になった。年に一度の大量注文。それは私へのハッピーバースデーだった。おめでとう。がんばれよ。声にならない『ふじのさん』のエールが聞こえた気がした。ありがとう。わたし、がんばるよ。なんかいい予感がするよ。ダンボール箱を抱きしめて、私は、ちょっとだけ、泣いた。『ふじのさん』は、父だ。 grape Award 2021 応募作品タイトル:『エール』作者名:こまゆみ※この作品は、19分34秒からご聴取いただけます。ほかの受賞作品も知りたい人は、こちらをご覧ください!grape Award 2021受賞作品が決定!心に響くエピソードがPodcastで楽しめる特別協賛企業のご紹介株式会社タカラレーベン株式会社タカラレーベンは全国で新築分譲マンションを中心に展開する不動産総合デベロッパーです。「幸せを考える。幸せをつくる。」を企業ビジョンとして掲げ、幸せをかたちにする住まいづくり、街づくりを実現しています。本コンテストでは、『心に響く』をテーマとした全応募作品の中から特に「幸せ」が感じられる作品に、『タカラレーベン賞』が贈られました。『grape Award 2021』詳細はこちら[文・構成/grape編集部](function($) { $(function() { if (window.playerjs) { var p = new playerjs.Player( document.getElementById("award_player") ); p.grid = location.href.match(/[0-9]+/)[0]; p.psnd = false; p.on(’play’, function() { if (window.gtag && !this.psnd) { gtag(’event’, ’play’, {event_category:’Audio’, event_label:this.grid + ":エール", value:1}); this.psnd = true; } return; }); } return; });})(jQuery);
2022年02月09日2021年8~10月に開催された、エッセイコンテスト『grape Award 2021』。『心に響く』というテーマを軸に、コロナ禍により変化した生活スタイルが続く中、自分の周りであった心温まるエピソードや、心が癒されるような体験談を募集しました。寄せられた376本もの応募作品の中から、最優秀賞が1作品、タカラレーベン賞が1作品、優秀賞が2作品、選ばれています。今回は、応募作品の中から優秀賞に選ばれた『母の宇宙ステーション』をご紹介します。夕飯の支度を始めかけた時、電話が鳴った。ディスプレーには母の名前があった。最近の母からの電話と言えば、一人暮らしをする孫娘達の心配ばかりだ。暗いニュースが続くせいで、心配はさらに膨らんでいる。「どうしているんやろ」や「連絡はないの」ばかりを繰り返す。今回もそれだろうと思い、小さくため息をつきながら受話器を取った。「もしもし、元気ですかぁ。」母が明るい声で私の近況を問う。私は適当に返事をし、「連絡はない。ないのが元気な証拠だ」といういつもの言葉を準備した。しかし母は、「今夜なぁ、宇宙ステーションが見られるんやって。」と、全く予想外の話を始めた。思わず、「なにそれ。どうしたん。」と、大きな声を出した。母は様々な事に興味を持つ人だった。いくつもの習い事に通い、友達とあちこちへ出かけもしていた。しかし、母の口から「宇宙ステーション」などという言葉が出てきたことは、本当に驚きだった。母によると今夜、宇宙ステーションが日本の上空を通るらしい。その時間に空を見上げると、宇宙ステーションが光りながら飛ぶのが見えるというのだ。「さっきのニュースで聞いてん。だから教えてあげようと思って。」と、母は嬉しそうに言った。思ってもいなかった話題に、母の事が少し不安になった。それでも、「みんな元気にしてるんかなぁ。連絡は何かないの。」と、最後には孫娘達の心配になる。やはりいつもの母だと安心し、準備通りに素っ気なく返事をした。電話を終え、夕食の支度を始める。全て終えて時計を見たら、母の言っていた時刻が近い。用事は済んだし、見たいテレビもない。それならとさんだるをひっかけ、近くの高台へと向かった。外灯の少ない場所を探し、空を見上げる。本当に見えるのか。母の事だから、時間を聞き間違えていないか。あれこれ考える。そのうちにふと、「母も今、空を見上げているのだろうか」と思った。実家の周りは車も多く、星は見えにくいだろう。そんな中で空を見上げる母を想像する。母は、一人きりで立っていた。九年前に父が亡くなり、母はずっと一人だ。今日も母は一人で夕食を食べ、一人で空を見上げている。今更のように気づき、奥歯がぐっとなった。しかし母が、自分の寂しさを話す事はほとんどない。母からの電話はいつも、私たちの事ばかりだ。私が趣味にしている投稿が新聞に載った朝には、必ず母から電話が来る。朝一番にかかってくる電話に、「大袈裟や」と笑い飛ばす。それでも母は「よかったね」と、笑って言ってくれる。そしてどんな話をしていても、最後には必ず孫娘達の心配をし、仕事で毎日忙しい妻を気遣ってくれる。ずっと一人きりなら、あれこれ思う事もあるだろう。しかし、母がそれを口にすることはなかった。今日の電話でも母は、「嫌なニュースばっかりやけど、上を向いていられるようにと思って電話してん。」と言っていた。切れる前には、「上を向いて暮らしてくださいね。」とも言ってくれた。適当な返事ばかりをしていた。空を見上げたまま、唇をかんだ。結局、宇宙ステーションは見えなかった。薄い雲がかかっていたし、見る方角が正しかったかどうかも分からない。あきらめて家へ戻る。たまにはこっちから電話してみようか。歩きながら思った。「宇宙ステーションは見えへんかった。ずっと上向いてたんやけどなぁ。」そう言えば母は笑ってくれるだろうか。立ち止まり、また空を見上げた。grape Award 2021 応募作品タイトル:『母の宇宙ステーション』作者名:嶋田 隆之※この作品は、11分10秒からご聴取いただけます。ほかの受賞作品も知りたい人は、こちらをご覧ください!grape Award 2021受賞作品が決定!心に響くエピソードがPodcastで楽しめる『grape Award 2021』詳細はこちら[文・構成/grape編集部](function($) { $(function() { if (window.playerjs) { var p = new playerjs.Player( document.getElementById("award_player") ); p.grid = location.href.match(/[0-9]+/)[0]; p.psnd = false; p.on(’play’, function() { if (window.gtag && !this.psnd) { gtag(’event’, ’play’, {event_category:’Audio’, event_label:this.grid + ":母の宇宙ステーション", value:1}); this.psnd = true; } return; }); } return; });})(jQuery);
2022年02月09日ウェブメディア『grape』では、2021年8~10月にかけて、エッセイコンテスト『grape Award 2021』を開催。コロナ禍により変化した生活スタイルが続く中、『自分の周りであった心温まるエピソード』や『心が癒されるような体験談』を募集しました。今回のコンテストでは、13歳から85歳までの幅広い年齢の応募者から、376本もの応募作品が寄せられる結果に!2017年から始まり、今回で第5回目となる『grape Award』。誰かにちょっと話したくなるような、心に響く受賞作品が決定しました。受賞作品を人気アナウンサーたちが朗読!Podcast番組の配信が決定受賞作品の発表は、今回初の試みとなるPodcast(ポッドキャスト)特番『grape Award ~心に響くエッセイ~』の配信で行います。Podcastといえば、スマホやパソコンがあれば、いつでもどこでも自由に配信番組が楽しめるのが魅力ですよね。※写真はイメージ特番のパーソナリティーを務めるのは、ニッポン放送の東島衣里アナウンサーです。東島アナウンサーをはじめ、番組には上柳昌彦アナウンサーや増山さやかアナウンサー、箱崎みどりアナウンサーが出演。『最優秀賞』『タカラレーベン賞』『優秀賞』に選ばれた4作品の朗読を行います。収録中の東島衣里アナウンサー人気アナウンサー陣による、受賞作品の朗読は耳に心地よく、聴くたびにエピソードを追体験するかのような気分が味わえるでしょう。配信番組は2022年2月9日から、いつでも視聴できます。こちらから、ぜひお楽しみください!『grape Award 2021』受賞作品一覧『grape Award 2021』の受賞作品をご紹介します。最優秀賞『お菓子便』/作者:笹井 純子お菓子作りが大好きで、ちょっぴり人見知りな中学生の『はなちゃん』。コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、不安定な環境の中、はなちゃんは近所で一人暮らしをするおばあさんのことが気になって…。ほほ笑ましくも温かい、近所に住む中学生とおばあさんのやり取りは31分45秒から聴くことができます。タカラレーベン賞『エール』/作者:こまゆみ父親の反対を押し切って、弁当店を始めた女性。赤字が続く厳しい経営状況の中で、心の支えになっていたのは『ふじの』という客の存在でした。毎年必ず決まった日に、弁当を大量に注文する『ふじの』という客の正体とは…。驚きの結末を迎えるエピソードは、19分34秒からお楽しみください。優秀賞『母の宇宙ステーション』/作者:嶋田 隆之いつも電話をかけてくる母親に、適当な返事ばかりしていた息子。母親から予想外な話題を振られたのをキッカケに、あることに気が付きます。多くの人が共感するであろう、親子のつながりを、丁寧につづった作品は11分10秒から聴くことができます。優秀賞『心も温まるラーメン屋さん』/作者:イルミたびたび自閉症の息子を連れて、外で立ちながら食べるラーメン店を訪れる母親。息子に話しかけてくる店員の、何気ない声かけに、心を救われたといいます。優しい触れ合いに、胸がジーンとなるエピソードは、3分7秒から。ぜひ聴いてみてください!『grape Award ~心に響くエッセイ~』日時:2022年2月9日(水)~配信:Podcast特別協賛企業のご紹介株式会社タカラレーベン株式会社タカラレーベンは全国で新築分譲マンションを中心に展開する不動産総合デベロッパーです。「幸せを考える。幸せをつくる。」を企業ビジョンとして掲げ、幸せをかたちにする住まいづくり、街づくりを実現しています。本コンテストでは、『心に響く』をテーマとした全応募作品の中から特に「幸せ」が感じられる作品に、『タカラレーベン賞』が贈られました。『grape Award 2021』詳細はこちら[文・構成/grape編集部]
2022年02月09日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言(ひとりごと)』にお付き合いください。体操(鉄棒)の内村航平選手引退誠に残念であります。『体操ニッポン』の一時代を築いた内村航平選手が 現役を引退しました。記者会見でも涙は無く、最後も笑顔で手を振って 体操30年の正に見事な『着地』でありました。当方、中学生の頃、体操の時間で、鉄棒の逆上(さかあが)りや足掛(あしか)け上りは出来ましたが、蹴上(けあが)りは出来ませんでした。同級生の内(うち)、1人、ズバ抜けて鉄棒の得意な友人がいて、蹴上りから大車輪まで、見事にこなすのを、憧れというか尊敬の念(ねん)すら覚えながら見つめていたものです。そんな当方ですので、内村航平選手の鉄棒は、いつも食い入るように見入っていました。※写真はイメージその内村選手が、30年の体操に、No.1の鉄棒に、別れを告げました。実に淋しく残念なことであります。ファンとすれば、例え技の難易度が落ちても、着地の乱れがあっても、彼が鉄棒で舞っている姿を見ているだけで大満足なのですから…。でも世界に君臨した王者にとっては、少々なミスでも人前では見せられないものなのでしょうね…。「30年間の16年を日の丸を背負ってきたのは誇りでした…」と笑顔で話した時は、当方ジーンと来ましたねぇ…。思えば当方も30年間、内村選手の鉄棒を見てきたことになる訳ですね。※写真はイメージ男子の体操は、ゆか、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の6種目があり、内村選手は、夫々(それぞれ)に高得点をマークしている訳ですが、鉄棒は断トツ、ピカ一の実力者です。まだまだ、彼の力感ある華麗なる体操や鉄棒を見たいものですが、今後は、日本体操界初の『プロ選手』として3月12日に東京体育館で引退試合を開くそうです。内村航平選手、30年間の感動、ありがとうございました。<2022年2月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2022年現在、アナウンサー生活64年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2022年02月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。人生が変わる瞬間をつかまえよう生きていると、人生が変わる瞬間を何度か体験します。自分で舵をきる場合もあれば、思いがけず遭遇することもあります。24歳のとき、サンミュージックのプロデューサーを紹介してもらい会いにいきました。その場でアイドルのアルバムの歌詞を2曲書くことが決まったとき、(ああ、人生はこんなふうに瞬間的に変わるのだ)と思いました。広告代理店に勤めていた私が、作詞家へ一歩踏み出した瞬間でした。人生は決して平坦ではなく、ひと色でもありません。常に変化をしているものです。そしてすべて自分の望むようになるわけでもありません。波乗りをしているような、ジェットコースターに乗っているような。時には思いもかけない出来事に遭遇します。そんな人生の流れの中で、どんなことがあっても自由意志を発揮することが大切です。ただ流されるのではなく、ただ運を嘆くのではなく、その時々に自分にとって最善、最高を選びとっていくこと。困難なことの中に、自分を成長させる何かを見つけていくこと。そこを意識していくと、意味のないことは起こらない、という境地に至るのです。受験、就職、転職、転勤、結婚、出産、離婚……大きな節目になるような変化もあれば、日々の中での大きな気づきも変化をもたらすものです。たとえば、多くの人に支えられていたことに気づき感謝があふれてくる瞬間、胸が震えるような感動を覚えた瞬間。そんな価値観が変わるような体験があるものです。ただ、気づかずに通り過ぎてしまうことも多い。それではもったいないので、心を柔らかく、自分の感覚に意識を向けることが大切です。片岡鶴太郎さんは今や画家としての活動にシフトされているように見受けられます。数年前に、絵を描くようになったきっかけについて伺いました。絵を描いたこともなかった鶴太郎さんは、ある日隣の家の椿の花の美しさに衝撃を受けたそうです。車を降りたとき、目の前に椿が咲いていてあまりの美しさに動けなくなり、絵に描いてみたい、と思ったと。まさに、この椿の花との出会いが鶴太郎さんの人生を変えたのです。正確に言えば、「絵に描いてみたい」という強い思いを行動に移したところから、画家としての人生が始まったと言えるのでしょう。人生が変わる瞬間をつかまえる。そして、その瞬間、目の前に現れた扉を開ける。日々の中にある小さな瞬間にも心を向けると、新しい自分に出会う可能性が広がっていくのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年02月06日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『思い込み』と『うっかり』は老化の始まりか4歳になる姪の息子くんが、誰も教えていないのに指を使って足し算をしていました。親も気づかなかったそうで、どうしてそんな知恵が湧いたのか、子どもの成長していく過程は驚くことばかりです。いろいろなことができるようになり、理解できるようになるのを成長と言うなら、できなくなっていくのは何と呼ぶのか。これからそんな年代に入っていくのですが、これを衰退と言うのは悲しいので、私は「新しいフェーズ(段階)に入る」と表現します。新たな段階ですから、注意深く自分を観察しつつ、驚きながらもできるだけキープできるように努めようと思っています。……が、自分でも意味がわからないことをしてしまうと、さすがに考えてしまいます。先日、ご近所の洋食レストランでランチのお弁当を買ったときのこと。『チキン』のお弁当(のはず)なのですが、いつもと違って固いのです。焼き過ぎなのか、チキンの種類が今回は違うのか。固いと思いつつ、あまり深く考えずに、おいしくいただきました。二日後、お財布を整理したとき、お弁当のレシートを見てみると、そこに『ポークジンジャー』と印刷されています。え?ポーク?あれはポークだったの??固かったのは、ポークだったからか……。新しいフェーズに入ったのか。ソースがかかっていたので間違えて買ったのは仕方がないとしても、食べたときに気づかなかったのはかなりまずい気がします。最初からこれは『チキン』だと思い込み、思い込みの間違いに気づかなかった。こうだと思い込んだら疑うことなく突き進む。命に関わるようなことや、問題を引き起こすことにつながるかもしれません。うっすらとした不安を覚えながら、この件で私は新しい自分に出会った気がしました。よくある『うっかり』かもしれません。しかしこの『うっかり』に甘えてはなりません。思い込みは視野が狭くなっているのかもしれません。頑固さという言葉にも置き換えられるかもしれない。思考の柔軟性を意識して、余裕を大切にして。焦らず、落ち着いて……。子どもが成長していくように、新しいフェーズの歩み方も進化しながらいきたいものです。例えそれが老化や減退ということであっても、精神的には成長していきたい。チキンだと思ってポークを食べていた一件は、思いの外大きな決意に発展したのでした。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年01月30日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ふと目にした光景の中に学ぶこと古びたビニールのバッグを簡易カートにくくりつけ、肩にも重そうなバッグをかけ、ぶつぶつと何か怒っているおじさんとすれ違いました。そんな人と行き交うとき、できるだけ近くにならないように、目を合わせないようにしてしまいます。このときも何気なく避けるようにすれ違いました。きっと多くの人が関わりをもたないように、このおじさんを避けて来たのかもしれません。推測の域を出ませんが、孤独に生きてきた人なのかもしれません。社会の理不尽さに怒りがこみ上げている……のかもしれません。おじさんの怒りは悲しみにも似ているような。あくまで私の想像です。買い物を済ませた帰り道。あのビニールバッグをくくりつけた簡易カートが道端に。そこにこんな紙が貼り付けてありました。「ただいま仕事中です。荷物が重いのでこちらに一時的に置かせていただいています。すぐに戻りますのでご容赦ください」大きく丁寧な文字。あたりを見回すと、あのおじさんがチラシの束を抱えてポスティングをしているのでした。「荷物が重いので……」ぶつぶつと怒りを口にしながら歩いていたおじさんの、丁寧な断りのメッセージを見たときに、生きていくということの大変さと、生きるということへの誠実さを見た気がして、外見だけで判断していた自分の狭量を恥ずかしく思ったのです。あらゆる場面で、私たちは多くの判断、ジャッジすることを求められます。いい、悪い。美しい、美しくない。自分の中の、無意識に形成された価値観や判断基準によって、私たちは日々、必要なものを選びとり、仕分けていきます。それぞれの価値観は尊重されるものですが、時に思い込みや偏見だけでジャッジしてしまうことがあります。もちろん、それもひとつの価値観のあり方ですから、よい悪い、で判断できるものではありません。ただ、私はこのおじさんの姿を通して、丁寧であるという誠実な在り方を受け取りました。何か、大切なこと。ついなおざりにしてしまうことが自分の言動、考えの中にあるのではないか。生きるということへの敬意を持つこと。ふと目にした光景が教えてくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年01月23日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言(ひとりごと)』にお付き合いください。お正月の初雪令和4年新年のまだ松の内、6日に、今年の初雪が東京地方に降りました。その初雪を窓越しに眺めながら、今回のペンを執りました。音もなく降り積もる雪をボヤっと見ている内に、庭の緑があっという間に白くなり、階下に見える歩道も白っぽくなりました。郵便物を取りに行くのを忘れていましたので、勝手口の外階段を10段降りて、郵便箱の裏から年賀状を含めた郵便物を、ガサゴソ集めている内に、頭髪や上着の肩口にあっという間に雪が積りました。10段の階段を上って勝手口のドアの前に戻った時は、「エッ、こんなに頭髪や洋服が白くなるものか?」と、その雪の降る量に改めて驚きました。水分の多い『ベタ雪』ではなく、サラッとした雪は、ほんの10数秒で積るものなんですね。この原稿でペンを執る30分ほど前は、ハラハラと舞う感じで、「お正月の初雪はいいもんだなあ…」と思っていたのですが、ペンを執って10分後には、庭も屋外も白銀の世界に変っていました。この分(ぶん)だと坂道や高速道路は、危険が待っているなと思っていました。ふと階下の歩道に眼をやると、傘を差して歩いていたご婦人2人の1人が、歩道で滑って転びました。ハンドバッグと手下げ袋が車道に飛びました。幸い車が通っていなかったので事無きを得ましたが…。白い雪は見た目には綺麗ですが、積ると怖いものですね。豪雪地方の友人は、雪を『白魔』と言っていました。その日の夜のニュースでは、高速道路ではスリップ追突事故、歩道では滑って転んで怪我人が幾人か、出たそうです。短時間のハラハラ、チラチラは詩情もあり季節感もあって良いものですが『白魔』になる雪は、ご遠慮願いたいものですね。初雪や、水仙の葉の撓(たわ)むまで芭蕉<2022年1月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2022年現在、アナウンサー生活64年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2022年01月18日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。地震の夢が教えてくれたこと世界各地で地震が起きている夢を見ました。初夢ではありませんでしたがまだ松の内。初夢と同じくらい、一年の指針となるメッセージがこめられている夢だと捉えました。一富士二鷹三茄子。日本人は昔から初夢を神仏のお告げとして大切にしてきました。そういう意味で日本人と初夢は親和性が高いのです。私たちの深い意識から発せられる夢は、現状を伝えているもの、健康に関すること、その内容から問題の解決方法が導き出されます。奇妙キテレツな夢のストーリーに戸惑いますが、絡んだ糸を吟味しながら解くように解釈していくと、腑に落ちるメッセージが見えてくるものです。さて、松の内に見た地震の夢。実際、世界各地で地震が起きていることからとても気になります。夢のストーリーはこうです。ヨーロッパ、アメリカ、南アメリカの各地で地震が頻発していると、誰かが話している。その話を聞いて私はほっとして、「環太平洋ではないね」と言っている。ここでポイントとなるのはもちろん『地震』、そして私が「環太平洋ではないね」と言ったところです。『地震』が私の現状の何を指しているか、ということが問題です。地震とは地殻変動が起こすものです。では、私の身体の中で地殻変動が起きているのだろうか。今のところ体調は悪くありません。では次に、私の心の在り方、行動、現状に関係しているのではないか。ここに考えが至ったとき、この夢が伝えようとしていることが手にとるようにわかりました。この2年、仕事について積極的になれない感がありました。コロナ禍のせいにしてはいけないのですが、意欲的になれない自分がいました。ゆるゆるとしすぎていることをわかっていても、動きたくない理由を見つけていたような。夢はそんな私に、地殻変動を起こせ!動け!と言っています。「環太平洋ではないね」というのは、他人事のようにまだ覚悟のできていない今の私を示しています。ほっとしている場合じゃないでしょ!夢はそうして私に警告しているというわけです。夢は意識の深い領域から発せられるもの。それを顕在意識でしっかりと受け止めて行動すると、自分自身の在り方が進化していくのです。怖い夢、ハラハラする夢、夢に感情が揺さぶられますが、夢のストーリーと現状を重ね合わせてみると、腑に落ちる何かがあるのです。なぜなら、夢は夢主だけのものですから。さて、今年は地殻変動を起こさねば。何から始めようか、新年のto doリスト作りから始めます。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年01月16日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。令和4年虎年の新年皆さま、明けましておめでとうございます。今年もこの拙欄をどうぞよろしくお願い申し上げます。「虎は千里を走る」と言いますが、「猛虎」といわれるぐらいに猛猛(たけだけ)しい動物です。勇猛という表現はこの虎から来ているのかも知れませんね。地球上の最強の動物といわれる獅子と虎。ライオンとタイガー。この両者にズ(ス)をつけると、ライオンズとタイガースとなり、いわばプロ野球に変身します。今年はタイガースファンは期する所、大と思いますねぇ…。何しろ当たり年の虎年ですから!ところで大阪以西の方は殆どの方がタイガースファンですね。タイガー「ス」と濁(にご)りません。東京はライオン「ズ」と濁りますが関西の発音は、おおむね清音(せいおん)で発音します。当方の苗字も関西以西では押阪(おしさか)で 押阪(おしざか)ではありません。山崎(やまざき)さんも山崎(やまさき)さんです。今年虎年の甲子園には、阪神タイガースの活躍で、『六甲おろし』が、度々鳴り響き渡るような気がしております。プロ野球解説者の面々もタイガースが強いと 特に巨人が頑張るから、プロ野球が大いに盛り上る… プロ野球の人気は、阪神タイガースが握(にぎ)っていると発言しています。大リーグの大谷翔平選手を凌駕(りょうが)するような阪神タイガースの活躍を今年は見聴(みき)きしたいものだと期待しております。虎視眈々(こしたんたん)という表現があります。虎が獲物を狙って目を見張り、じっとその機会を窺(うかが)っているさまをこう言います。2月に入るともうキャンプインです。南国ハワイか沖縄か宮崎に入り、きっと今年の阪神タイガースの選手は『寅年』を意識し、気合の入った練習風景をきっと見せつけることでしょう。<2022年1月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2022年現在、アナウンサー生活64年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2022年01月07日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。言葉に命を吹き込むことを冬の夕方、くっと冷え込み街に明かりが灯ると、なんとも言えない心細さが胸に広がります。その感じは、冬に一人旅をして異国を歩き回っていたときの感覚によく似ていて、家には家族がいることがわかっていても「ひとりぼっち」であることが胸に迫るのです。冬の黄昏時は、自分が帰る場所を恋しく思う時でもあるのです。と同時に、この寒空の下で本当にひとりぼっちでいる人たちのことをふと思います。クリスマス、お正月を家族や友人が集まる時期、ひとりでも多くの人が温かい明かりの下に集まることができたらいいのに、と。何もできずにこんなことを思う自分を、偽善的だと感じることもあります。毎年、我が家の近くの教会に無洗米を献品します。今年もクリスマス前に持って行ったところ、教会の玄関には鍵がかかっていて中に入れませんでした。仕方なく、玄関横の傘立てに二袋を置き帰ろうとしたときです。通りの向こうからマーケットの袋を下げた女性が歩いてきて、「何か御用ですか?」と声をかけられました。その方は教会の牧師先生で、献品を届けに来たことを伝えると、とても喜んでくださいました。毎年、年末に3カ所で炊き出しとお弁当を配るために、お米はとてもありがたいと。年に一度だけの罪滅ぼしのようで心が苦しくもあることを伝えると、牧師先生はこう言われました。「お心を寄せてくださり、ありがとうございます」美しい言葉だなあと思いました。心から発せられる言葉のぬくもりに、許されているような感じがしました。そうか、言葉を伝えるとはこういうこと。伝えるのは言葉の持つ意味だけでなく、言葉の手触り、発する人の心の温度なのですね。「『ありがとう』は魔法の言葉」という文言が流行ったことがありました。ただ「ありがとう」と言うだけでなく、そこに心をこめる。すると、「ありがとう」に命が吹き込まれる……そのエネルギーは目には見えませんが、受け取った人の心につながっていくのではないでしょうか。「心を寄せてくださり、ありがとうございます」「お支えをありがとうございます」……「ありがとう」に一言を添える。それだけで、心のぬくもりを伝えることができるのです。教会の帰り道、必要としている人に何ができるのか考えました。できることはきっとたくさんある。でも、何かすることを必要としているのは、もしかしたら私自身なのかもしれない。心をただただ慈しむということに明け渡す。そのときに、私の言葉に命が吹き込まれるのかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月26日2021年のウーマンエキサイトの「コミックエッセイ」記事を閲覧数別TOP10にして発表! 現役ママたちに支持されたコミックエッセイを一挙に紹介します!■【第1位】 小学生のお友達トラブル/じゃがいもころりんさん子どもにはお友達とのトラブルがつきもの。しかし、もし大切なわが子が怪我をして帰ってきたら…。実体験を元にしたじゃがいもころりんさんのエッセイが、2021年もっとも読まれたコミックエッセイ第1位に輝きました! 【じゃがいもころりんさんの受賞コメント】このたび、コミック大賞を受賞する事ができ心より嬉しく思います! 第一子の時のエピソードなので、私自身どうしたら良いのやら迷い悩みつつではありましたが、「罪を憎んで人を憎まず」という言葉を忘れないように心がけた記憶があります(笑)。今となっては、(重大な取り返しつかないことでなければですが)子どもに起きたトラブルは親子で経験値を積むチャンスだと思っています。読んでくださった皆様本当にありがとうございました! >>この作品を見る ■【第2位】 親に整形させられた私が、母になる/グラハム子さん中学を卒業した春、「あなたのためになんでもしてあげる」と実の母親から言われ、整形させられてしまう主人公。それから20年、主人公が結婚して母になるまでのストーリーが描かれます。母になった自分自身と、そして実母とどう向き合っていくのか…。最終回を迎えたばかりの本作は一気読み必須です!【グラハム子さんの受賞コメント】こんなにたくさんの方に読んでいただけたなんて嬉しいです。この作品は、虐待まではいかないけれど、親の過干渉により心が少しずつ歪んでいってしまう女の子の話です。フィクションは混ぜていますが、私の体験談でもあります。どこまでが親の愛や教育で、どこからが虐待という明確な基準がないからこそ、親子関係は難しいんですよね。読者の皆様からいただいた感想もとても嬉しかったし、励みになりました。どうもありがとうございました! >>この作品を見る ■【第3位】 サヨナラ、心がくじけたパパ/もりりんパパさん家では育児、会社では新しい仕事…。あらゆるプレッシャーを抱える中、自分の病気が見つかり…。心がくじけてしまったパパの目線で描かれるリアルストーリー。今回のTOP10内で唯一パパ目線で描かれた作品です!【もりりんパパさんの受賞コメント】ま…まさか僕の記事がランクインしてしまうとは。編集部の方からご連絡を受けた際に、驚きすぎて時間がとまってしまいました。これも読者の皆様や編集部の方々のおかげです。本当にありがとうございます。当時はとにかく大変な時期でしたが、子ども達も含めて家族が一丸となることでどうにか乗り越えることが出来ました。今も似たような状況でまた大変なのですが、また乗り越えてみせます!これからもどうぞ宜しくお願い致します! >>この作品を見る ■【第4位】 娘が夜驚症になった話/ケイコモエナさん夜中突然スイッチが入ったように泣き出してしまう「夜驚症」。医師に原因はないと言われるものの、お友達のマリーが関係しているような気がして…。原因がはっきりしないがゆえに悩んでしまう母の葛藤が描かれています。【ケイコモエナさんの受賞コメント】とてもとても嬉しです! ありがとうございますー!人間関係って自分のことならどうにかなるものですが、我が子のこととなると、そんなわけにも到底行かず…。あーだ、こーだ悩みまくって、一母のリアルな心の葛藤をそのまま描いてみました。今では問題になったマリーとは大大大親友で、この時のお話が嘘のようです。 >>この作品を見る ■【第5位】 産後バセドウ病になった話/まつざきしおりさん「いいお母さんになるんだ」と張り切っていた産前。しかし、実際に育児が始まると現実は理想通りにはいかず…。ある日体が悲鳴を上げしまい、バセドウ病であることが分かり…。【まつざきしおりさんの受賞コメント】この度は、このような素敵な賞をありがとうございます! 病気について書くのは今回が初めてで、デリケートな題材でもあるので、筆を執るのもとても悩み、試行錯誤しつつドキドキしながら描きました。私自身、当時病気の原因がわかるまで本当に怖くて不安だったので、私の体験が少しでもみなさまのお役に立てたら幸いです。本当にありがとうございました!! >>この作品を見る ■【第6位】授乳が気持ち悪い…「私は母性がないの?」と苦しんだあの感覚の正体がわかった/オギャ子さん授乳している時間が尊い、わが子がおっぱいを飲む姿が愛おしい…。そんな感情は母親なら感じて当たり前? 授乳が苦痛で仕方がなかったオギャ子さんは、その不快な感覚に名前があることを知り…。同じような悩みを持つママたちから多くの共感を呼んだコミックエッセイがラインクイン!【オギャ子さんの受賞コメント】この度は6位に入賞をさせて頂きまして大変光栄です。言葉にできなかった授乳時の不快感に名前があることがわかり、大変多くの反響があったように感じています。同じような経験をしてきたお母さん同士が共感しあえる場所を作る事ができ、まるで当時の私の気持ちも浮かばれたような気がしています。そして何より私の「授乳が辛かった」というつぶやきに対して「それってD-MERじゃない?」と教えてくれた読者さんに何より感謝しています。 >>この作品を見る ■【第7位】4年間の不妊治療の記録〜私の願いと夫の気持ち〜/にわゆりさん当たり前のように子どもができると思っていた夫婦が、4年近くかけて不妊治療に挑んだリアルストーリー。治療をステップアップしていくたびに、夫婦が感じるプレッシャーやゴールの見えない辛さ…。そして最後に迎えた結末とは…!【にわゆりさんの受賞コメント】この度は7位に選んでいただきありがとうございます! 不妊治療というデリケートなテーマ。全体を通して治療過程での苦労や感情の流れを丁寧に、時には涙ぐみながら描きました。とても思い入れが強い作品なので、たくさんの方に読んでいただけてとても嬉しく思います。そしてこのお話の主人公となった本人も、大変喜んでいます!本当に、読んでいただいてありがとうございました! >>この作品を見る ■【第8位】お風呂を促すのやめてみたら…子どもたちはいつ動き出すのかを実験してみた!/ホリカンさん5人の子どもを育てるホリカンさんの課題は、子どもたちがすんなりお風呂に入ってくれないこと。そこでお風呂に入ることを促すのをやめてみたところ、子ども達はある理由で自主的にお風呂に入ることが分かり…。【ホリカンさんの受賞コメント】この度は誠にありがとうございます!わが家のお風呂事情を(笑)沢山の方に読んでいただけて嬉しいです!全員が幼かった頃はいっぺんにまとめて入れていましたが、大きくなってくるとそういうわけにもいかず。人数が多い分、一人一人がいかに素早く入るかが毎日の課題なんですが…なかなかすんなりいきません(笑)子どもたちの【なんでやねん(怒)!】ということほど観察すると面白い発見があったりするので日々学びだな~と思う今日この頃です! >>この作品を見る ■【第9位】それは違う…親の職業について問われた息子がまさかの回答を!/ちょっ子さんデザインの仕事をしているちょっ子さんご夫婦は、日ごろから公表できない制作物を手掛けているケースもあるため、息子のきゃん太くんを仕事部屋には入れないようにしていたとか。そしてある日、友達に両親の職業を聞かれるとまさかの回答が…!【ちょっ子さんの受賞コメント】この度のランクイン、大変うれしいです。いつも読んでくださる読者さまと、編集部の皆さまに感謝です!両親に言われたことを守らなければと、おそらく息子なりに一生懸命考えて出したこの返答…。息子に必要以上に気をつかわせてしまっていたのかな、と少し申し訳ない気持ちにもなった出来事でした。ちなみに今も我が家は息子のお友達から「怪しい家庭」と思われたままだと思います。 >>この作品を見る ■【第10位】やって良かった習い事は…? 何度も間違ってようやく本質に気がついた!/tomekkoさん同じマンションのお友達に誘われて入ったサッカーチーム、体力づくりのためにもと始めたスイミングスクール…。しかし、どちらも長男くんは辞めたいと言い…。初めての習い事、親がわが子に身につけさせてあげたいことや、苦手そうなことの克服のために習い事を勝手に選んでしまった後悔の後、行き着いた着地点とは…!【tomekkoさんの受賞コメント】習い事って子どものためのはずなのに、ついつい親のコンプレックスやエゴを押し付けてしまったり、子ども自身のモチベーション低下にイライラしてしまったり…そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。今回は毒親道まっしぐらだった長男幼児期からの大反省会のようになってしまいましたが、習い事で得られる本当のメリットって、身につける内容とはまたちがうところにあるのかも…と描きながらつくづく実感しました。私の失敗談が読んでくださった方の参考になれば幸いです。ありがとうございました。 >>この作品を見る 以上、2021年に読者の皆さんに読んでいただいたコミックエッセイランキングTOP10でした! コミックライターのみなさんが綴るエッセイは、現役ママたちが抱える悩みや葛藤から笑いや感動まで、さまざまな感情が動かされるテーマばかりです。2022年も引き続きウーマンエキサイトのコミックエッセイをお楽しみに!
2021年12月25日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。今年の10大ニュースは?師走12月に入り、プロ野球やJリーグ、大相撲等は終わりましたが、コロナ禍は依然として続いています。本当に気の抜けないしつこい病気、疫病ですね。師走とともに、コロナ禍も走り去って欲しいと願いたいものです。ところでその師走ですが、私共が子供の頃は、師走12月に入ると黒い袈裟(けさ)姿のお坊さんが、檀家(だんか)から檀家へと忙しく走るように回って行く姿を眺めたものです。それで12月は『師走』と言うのだと教えられました。でもこの時世(じせい)は、どこを見てもお坊さんが走る姿は見られませんね。年末供養の檀家廻りは、ご自分の車かタクシーが多いようです。※写真はイメージさて今年も、10大ニュースが話題になる頃です。おそらくスポーツ関連がトップニュースでしょうが、皇室真子さまのご結婚もあり、大リーグの大谷翔平選手の大活躍もあり、政界再編成もあり、コロナ禍継続もあり、5大ニュースぐらいは当たるかな、と思ったりしております。そしてこのニュースの中からの一文字が、年末恒例の京都清水寺のご住職が健筆をふるう『今年の一文字』になるのではと考え、当方のドタ勘では、大リーグの大谷翔平選手の大活躍もあり、今年はスポーツ界からの輝く一文字が選ばれるのでは、と思っておりましたところ、今年は『金』に決まりました。さて、今年も拙欄をお目通し戴き、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。それでは皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さいませ。<2021年12月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年12月21日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。たったひとつの思い出を持っていけるとしたら……「もしも無人島にたったひとつだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?」このような質問をよく見かけます。ある人は無人島にサバイバルナイフを持っていくと言います。ある人は夢の辞書を持っていくと。どんな状況に陥っても、夢のメッセージは自分にとって最善のアドバイスを送ってくる。夢に対する深い信頼があるからこその選択です。「家が火事になったときに、何を持ち出すか」こんな質問もあります。貯金通帳と印鑑、現金、携帯……。究極の状況に陥ったときに自分がどういう行動に出るかわからないのですが、いざというときのために時々考えることは必要かもしれません。東日本大震災の年、石巻で若いお母さんと出会いました。地震が起こったとき、生まれて数ヶ月の赤ちゃんと実家にいたそうです。津波が押し寄せ、両親と共に流され、しっかり抱いていた赤ちゃんも波にのまれてしまいました。最後にお父さんが「笑って生きなさい」と言って、見えなくなってしまった。なんという愛でしょうか。赤ちゃんは数日後に見つかったそうです。その人は、携帯の中に保存している赤ちゃんの写真を見せてくれました。「これが、たった一枚残った写真です」友人に送ったその写真だけが残ったのでした。年をずいぶんと重ねたからか、自分にいつ何が起きても不思議はないと思うことが多くなりました。あたりまえのように日常を送っていますが、あたりまえのことなど一つもないことに気づきます。強い地震が起こればライフラインが止まり、食料の供給も滞る。異常気象で作物に被害が出ることもある。スーパーマーケットの棚に物が溢れているのは、決してあたりまえではないのです。すべて与えられたもの。恵みです。心からそう思えると、何もかもがありがたい。感謝しかありません。私たちの身に起こることも、恵みだと捉えることができるかもしれません。つらい体験をその後の生き方の強さにできたとき、その体験も恵みになる。人生には厳しいことがありますが、その向こうには光がある……と信じています。私が問いたい究極の質問です。「大切な思い出、大切な光景をひとつだけ持って旅立てるとしたら、何を持って行きますか?」この『ひとつの大切な思い出』は、人生の宝物、まさに胸を震わす恵み、幸せ感に満たされます。どの思い出を持って行こうか、慌ただしい季節、あたたかい部屋でゆっくり思いを巡らす時間を作ってみてはいかがでしょうか。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月19日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。私のこの両手で何ができる?〜クリスマスに思うこと〜12月、クリスマスが近くなると思い出すことがあります。娘が小学校2年生の頃、16年前のある日、学校から帰ってくるなり娘が言いました。「パパの古い靴下ある?」話を聞いてみると、学校の帰り、駅にホームレスのおじさんがベンチで寝ていたそうです。そのおじさんはいつもそこにいて、寒いのに裸足だった。パパの靴下をあげてもいい?と。寒そうにしているのに、誰も何もしない。どうして助けないの?娘なりの憤りを感じているようでした。靴下を集めるためのチラシを作って、駅で配ろうかな。自分にできることは何か、考えをめぐらせていました。日々の生活の中に、考えるきっかけになることがたくさんあります。大人は面倒なことであればスルーすることができ、なかったことにしてしまうこともできます。でも、その寒そうなホームレスのおじさんを見てしまったことを、子どもはスルーすることはできません。社会の中での正義感が芽生えた出来事だったのだと思います。その正義感をつぶさないように、いい方向へ持っていくにはどうしたらいいのか。助けたい!という気持ちを尊重しつつ、「何かをあげることはその時は助かるけれど、根本的な解決にはならないのではないか」ということを話しました。その上で、できることを考えよう、と。子育てにおいて、子どもに与えられたテーマは、同時に親の力量が試されるテーマです。受容する力、忍耐力、クリエイティビティを同時に発揮しなければならない。生きる力を与え、培っていくための、時には水先案内人になる……まさに親の成長ポイントです。当時、ここはとても大事なところだなと思ったことを、よく覚えています。我が家では、その年のクリスマスにはケーキを買うのをやめました。そして、ケーキを買うささやかなお金を教会に献金することにしたのです。我が家の近くの教会では、毎年クリスマスにホームレスの人たちの炊き出しをするのです。今、私たちにできることは何?娘とふたりで考えた『できること』でした。そのクリスマスから16年、今年も無洗米とお餅を教会に届けます。靴下をあげるだけでは解決しないのと同じように、一回の炊き出しの少しの足しになるくらいのお米が役に立つのか。自己満足、罪滅ぼし……そんな言葉が胸をよぎります。自分のこの両手で何ができるのか。クリスマスは、そんなことを考えるときでもあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月12日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。若い人達の結婚観?地方から出て来て東京で生活している若い独身男女の結婚観を聴く機会が最近ありました。その答えに古い昭和人は「あっ」と驚きました。「あっと驚く」は、亡きハナ肇さんの常套句でしたね。さて今の若い人達は、簡単に言うと、男女2人の気持ちがすんなり合うと、2人一緒の共同生活に入るという事は、そんなに高いハードルではない、という事でした。気持ちさえ合えば、共同生活は(私達の若い頃は同棲という表現を使いましたが…)住居費や食費が半分になるので、プラス面の方がかなり大きい…と言うのです。※写真はイメージ実は私の家のすぐ斜前(はすまえ)に、若い人向きのアパートがあります。当方が朝ゴミ捨てに表に出ると、そのアパートの1人、2人と顔を合わせる時があるのです。男性のAさんと、女性のBさんは、当初は別々でゴミ捨てに出ていましたが、最近は朝一緒にゴミ出しをしています。そして通勤なのか通学なのかは判りませんが、朝一緒に新婚さんのような雰囲気で、そのアパートから出て来るのです。結婚でもしたのかな?と当方思っていました。ところが、この2人に最近変化がありました。すぐ隣の小母(おば)さんの話によりますと、男性のAさんが、どうやら転勤らしく、東京を離れた、というのです。※写真はイメージそう言えば朝一緒の出勤姿?を見なくなって1ヶ月近く…。ゴミ出しもBさんがたった1人で、外出時も1人でと、どことなく淋しげな表情のように当方には映っていました。AさんBさん、一緒の姿を1年近く見ていただけに、今もそのアパートに1人でいるBさんのことが、何故か気になるのです。Bさんの幸せを願っているごく近所のオジさんの、今日この頃でございます。<2021年12月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年12月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『よくあること』という危うさ15歳になる我が家のトイプードル、1ヶ月ほど前に血便が出ました。かかりつけの病院で診察してもらったところ、血便が続くことがなければ、『老犬ではよくあること』だという診断でした。その場で結果が出る血液検査では、もともと数値が高くなっていた腎臓の機能をチェックし、その時の診察は終わりました。それから少しずつ元気がなくなって、何かいつもとは違う感じに。このままだと危ないのではないか。妙な直感が働き、少し遠方なのですが自然療法なども取り入れた治療をする友人のドクターに診てもらうことにしました。詳しい血液検査をし、レントゲン、エコー検査で、いくつもの病気を抱えていたことがわかったのです。中でも膵炎の数値が異常に高く、1週間遅かったら危なかったと言われました。なぜ膵炎になったのか。遡って考えてみると、1ヶ月の血便が原因となった可能性があったのです。『老犬ではよくあること』という言葉が、何度となく頭に浮かびます。よくあるからそのままにしていていいのか。よくあることだから、気にしなくてもいいということなのか。『よくあること』が逆転すれば、『よくないこと』になる。もしかしたら今回のように、日常的に意識することなく受け流している言葉が多いのではないか。例えば「このくらいなら……」という言い方があります。「このくらい」にはどのくらいの許容範囲があるのでしょうか。「このくらい」を超えるのは「どのくらい」なのか。曖昧な表現でも通じ合えるのは、日本語、日本人の感性の特徴です。曖昧だからこそ味わいがある。はっきりしなくても通じ合うものです。あうんの呼吸、言わずもがなという言葉と心の文化を廃らせたくはありません。『よくあること』を、本当の『よくないこと』にしないためには、意識のフォーカスを定めることが大切です。やり過ごしていいのか、はっきりさせた方がいいのか。野性の勘を発揮すること!『よくあること』をぼんやりとやり過ごしたために、我が家のトイプードルは命の危険を招いてしまいました。直感は、野性の勘。ドクターを変えなくては!という野性の勘で『よくないこと』を避けることができたのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月05日『2DK』『赤ちゃん本部長』のようなストーリーマンガも最高だが、「イケメン」シリーズのようなアイドルオタクの推し活を描いたコミックエッセイは、格別の人気ぶり。その系譜でもある本書『沼の中で不惑を迎えます。輝くな! アラフォーおっかけレズビアン!』にも痺れた。不惑と呼ばれる年頃に近づいた竹内佐千子さん。彼女が赤裸々に明かす日常や心の内に触れるうち、知らず知らずエナジーチャージできてしまう一冊だ。わかり合えなくてもおしゃべりは楽しい。これぞ女性の生きる道。「ずっと推しがいるような状態で生きてきたので、いる前提の行動が当たり前だと思っていました。なので、担当編集エイチの反応が意外すぎて。オタクと非オタクの邂逅が結実したマンガですね」本書の準主役でありながら、〈おっかけ要素もオタク要素も持ち合わせていない〉エイチさん。ゆえに竹内さんと「お互いの言うことはわかるけれど、実際のところはまるでわかっていない」という噛み合わなさを生み出し、笑いと共感を生む。「とりあえずネタがたまるまで、5時間でも6時間でも話をしましたね。打ち合わせとか話し合いというより、おしゃべりに近かった。少年アヤさんが(本作の)書評で『だれがなんと言おうと、わたしたちのおしゃべりには価値がある』と書いてくれたのはうれしかったですね」鋭い考察が詰まっているが、とりわけ第4話「あつまれ! 農民の沼」には首肯すること多し。「推しを推したいがために、語学や創作などいろいろなスキルや能力を高めていく。エイチが『すごい』と褒めてくれたけど、私は言われるまでわかっていませんでした。エイチの発言がヒントになって、沼の民には農民タイプと狩猟民族がいるというのにも気づきました(笑)」また、大書しておきたいのが、本書は金言の宝庫だという点。たとえば、あなたなんてまだ若い、と言われたときも〈こちとら生きてきた中で今日が一番年とってんだよ!!〉と一刀両断。「年上の友人に年齢マウントされたときの感情を、素直に書きました」その他、親との関係、結婚観、将来への不安など、女性にとって関心の高いトピックがいっぱい。「エイチとのやりとりで、関係性を築いていくのにわかり合う必要はないんだなと強く感じました。むしろわかり合えないもの同士だからこそ会話が盛り上がるという経験を、お裾分けしたかった。何でもオープンにする必要はないけれど、この本が『こんなことも話していいのかな?』と思う人の気持ちのアクセルになってくれたらいいですね」竹内佐千子『沼の中で不惑を迎えます。輝くな! アラフォーおっかけレズビアン!』実家暮らしの独身アラフォー女性が、人生に惑いまくるさまを描いたコミックエッセイ。ちょっとシュールで哲学的な最終話も、含蓄のある展開にしみじみ。集英社1540円©竹内佐千子/集英社たけうち・さちこ漫画家。東京都出身。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。コミックエッセイなど著書多数。※『anan』2021年12月1日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年11月29日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。あなたの好きなスポーツは?10月から緊急事態宣言が解除になり、第6波を心配しながらも、私達の生活は、少しずつ日常を取り戻しつつあります。このコロナ禍の運動不足を、少しでも解消したいということで、「ゴルフや、テニス、ジョギングを再開しました」という声をよく聴きます。当然スポーツの秋でもありますが、今年は東京オリンピック、パラリンピックが行われたこともありますし、大リーグの大谷翔平選手の大活躍で、野球人気も益々高まりを見せています。当方はパラリンピックの車いすバスケットや車いすテニスに熱くなりましたが、ボッチャという競技にも興味をひかれました。ボッチャそこで、ネットの『みんなのランキング、好きなスポーツ』という項目を見てみました。1位は『野球』、2位は『サッカー』です。やはり、プロ野球や、ワールドカップなどテレビで身近に見られることが、人気につながっているようですね。ところが3位は、なんと『卓球』でした。これはやはりオリンピック効果でしょうね。日本選手の活躍で初の金メダルが取れたことなどが、大きかったと思います。※写真はイメージ水谷と伊藤の混合ダブルス、手に汗にぎる展開とそのスピード感、その迫力は本当に素晴らしかったですね…。スポーツは やはり緊張感と一瞬のプレイが、正に醍醐味です。実は当方は高校時代、卓球のインター杯に出場した経験があるものですから、卓球の試合は特に気になり テレビを視る機会は多かったように思います。女子代表の石川選手や他の選手もよく頑張ってくれました。本当にご苦労様でした。そんな訳で、好きなスポーツは卓球が第3位でした。<2021年11月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年11月29日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ごはんを一緒に食べるという幸せ西島秀俊、内野聖陽主演のドラマ『きのう何食べた?』が好きすぎて、ネットフリックスで繰り返し観てしまいます。年々、ハラハラする映画が苦手になり、悪い人の出てこない、誰も死なない、何も面倒なことが起こらない映画ばかりを。中でも『きのう何食べた?』は、時にBGMのように、掃除しているときにもつけていたりします。シロさんとケンジというゲイのカップルのほろ苦く、あたたかい日常の中で、愛するということ、人を大切にするということ、家族というものについて改めて考えさせられることがある。そしてもう一つ、シロさんが毎日おいしいごはんを作り、それをケンジが「おいしい!」「幸せ!」とうれしそうに食べる。その料理を作るシーン、食事のシーンが見所です。大切な人を、大切にする。あたりまえのことのように思えるかもしれませんが、本当にできているかどうか、ふと考えます。シロさんのごはんを、ケンジはただ「おいしい」だけではなくどんなふうにおいしいか、ということを言葉にする。例えば、「人参とジャガイモにしっかり味がしみていておいしい」と、具体的に表現します。「どんなふうに」ということを伝えるここが大事なポイントです。褒めるとき、感謝を伝えるときにひとこと添えることで、より心が伝わります。「今日は会えてうれしかった」「その色、とてもお似合いで素敵です」というふうに。「そのワンピース、素敵」と言うだけだと、ワンピースだけを褒めていることになる。「とてもお似合いで素敵」というと、ワンピースと着ている人両方を褒めていることになるのです。日々、いろいろなことがあります。人間関係、仕事、ふと考えてしまうこと。気持ちが揺れることもあるし、イライラしてしまうこともある。そんなときは、大切な人を大切にするのです。身近な人に八つ当たりをするのではなく、大切にするのです。または何事も丁寧に、大切に取り組む。すると、心は落ち着き、清らかな流れができます。その清らかな流れが自分の中に流れるのを感じてみましょう。幸せは日常の中に。一緒にごはんを食べるという何でもない日常のありがたさ。ごはんを作るのは愛なのです。食べる人のことを思いながらおいしいものを作る幸せ。ごはんを一緒に食べることの幸せ。シロさんとケンジは、日々の中にあるささやかだけれど大切な、愛することの幸せを私たちにお裾分けしてくれているようです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。波打ち際のビニール袋自分の家の庭に、ゴミを捨てるか。家の中のゴミを、そのままにしておくか。ゴミ屋敷という特別な状況は別にして、さて多くの人はどうするでしょうか?先日、千葉の鴨川に姪の子どもたちを連れて一泊。海の前のホテルだったので、朝、散歩しようと砂浜に降りていくと……引き潮の波打ち際に大きなビニール袋が。そして砂浜をよく見てみると、さまざまなゴミが散在していました。ホテルのバイキングで使うビニール手袋、山葵、醤油の小さな袋、ペットボトル、プラスチックのカップ、お菓子の袋……拾っていくと、15分もかからないうちにビニール袋はいっぱいになりました。バイキング用の手袋や山葵、醤油がなぜ砂浜に落ちているか謎です。食べ物を持ち出して、砂浜で食べようとしたのでしょうか。漂着ゴミの状況も惨憺たるものです。以前、沖縄の久米島へ行ったとき、白砂のビーチにはなぜこんなものが?と思うようなゴミが打ち上げられていました。ペットボトル、醤油の瓶、お酒の瓶、洗剤の容器、注射器、蛍光灯、カップラーメン、お菓子の袋、漁網、ブイ、浮き……。そのほとんどが中国、韓国からのものでした。海洋プラスティック問題が大きく取り上げられてはいますが、『人間たち』はどのくらいの危機感を持っているのでしょうか。国連の持続可能な開発目標SDGsでは、2025年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止、大幅に削減する、と謳っています。国や市町村、市民団体で取り組むことももちろんですが、「ゴミを平気で捨てる」というのは、個人の意識の問題です。美しい海にゴミを捨てることは平気なのか。胸は痛まないのか。自分の目の前からゴミがなくなればいいと思っているのでしょうか。犬の散歩をしながら、ゴミを拾っているおじいさん。家の前を掃きながら、両隣の家の前の掃き掃除をしているおばあさん。そんな人生の先輩の姿を見ていると、このような美しい気遣いをつなげていかなくては、と思います。失われた精神性を取り戻すのは、とても難しい。例えば「はしたない」という言葉が聞かれなくなるとその精神性まで失われ、はしたないことへの箍(たが)が外れるのです。姪の子どもたちと一緒に、砂浜のゴミ拾いをしました。遊びたかっただろうに、一生懸命に拾ってくれました。環境に対する意識を高めるには、理論や単なる道徳心ではなく、こうした日頃からの実践的な積み重ねが大切なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月21日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。若さを保つ「かきくけこ」若さを保つために「かきくけこ」を大切にして毎日を過ごす。これが健康と幸せの秘訣。今年90歳になった大村崑さんから伺った言葉です。大村崑さんと言えば、「元気ハツラツ!オロナミンC」「うれしいと、メガネが落ちるんですよ」というCMでおなじみです。昭和のCM、若い人もどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。自分が携わったCMに負けないように、ずっと元気でいたい。4年前、86歳からジムでトレーニングを始め、今の健康年齢は60代半ばだそうです。若さを保つための「かきくけこ」。「か」は感謝、感動。「き」は興味。「く」は工夫をする。「け」は健康に。そして「こ」は恋をする。感謝できると、心がありがたさで満たされます。感動は心が震えます。工夫をするには頭を使うし、アイディアを考えるとまた楽しいことが増えるでしょう。健康であることは、もちろんのこと。そして恋をする。心がときめくと、何だか細胞が活性化するような気がします。そして、毎日に喜びやどきどきをもたらします。恋といっても、若い頃のような恋でなくてもいいのです。アイドルでも俳優でも、アスリートでも、大好きな人がいるだけで楽しくなります。それなら、いろいろな場所にお気に入りの人がいるのもいいですね。恋とは言えませんが、私にもアスリートや俳優に特別なお気に入りが何人かいます。そんなお気に入りが結婚したときには、軽い喪失感を味わってしまう。これはある意味疑似恋愛のようで、年齢とともに鈍くなってしまいそうな感受性を保つための苦肉の策と言えなくもありません。それに作詞家ですから、心が柔らかく動くことは必須なのです。恋する気持ちを大切にしていると、きれいでいたい、かっこよくいたいと思うものです。外見だけでなく、心も魅力的でありたい。そんなふうにポジティブな欲も出てくるのです。アメリカの海洋学者であるレイチェル・カーソンは、子どもたちが持っているような『Sense of wonder』(神秘さや不思議さに目を見張る感性)を大切にすることを提唱しました。子どもたちの世界は生き生きとして、新鮮で、毎日が驚きであふれています。しかし、大人になるにつれ多くのものを失っていく中で、世界に向けて窓が大きく開いている。そして小さなことも喜び、感動を覚える。理想のベクトルをほんの少し上げるだけでいいのです。するといつも喜んでいる自分でいられる。「かきくけこ」心して!※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月14日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。自分を愛するということ自分を愛するように、誰かを愛する。まだ作詞家になって3、4年目の頃だったか、ラブソングを書いているときに胸に落ちてきた言葉です。結ばれない恋であったけれど、最上級の愛し方はどういうことだろうと考えていたときに、ああそうか、自分を愛するように愛していくことなのだと気づいたのでした。自分を愛するように?ここに疑問符をつける人は多いかもしれません。このとき私が考えた最上級の愛し方は、まず自分を愛することが前提なのですから。「自分を愛する」ということは「自己愛」「自己中心」「自分大事」とは異なります。ここを同じことと考えると、自分を愛するように誰かを愛するというのは、とても傲慢な感じがしてしまいます。私たちはこの世界において唯一無二の存在です。誰かになりたくてもなれない。私たちは『自分』しか生きることはできません。それを否定したり、卑下したり嫌っていては、いったいどう生きたらいいのか。自分に自信があれば、自分を愛することができるのか。自分に自信を持つことと愛することは異なります。ダメダメな自分であっても、自分を愛することです。唯一無二、かけがえのない命としての存在であること。それを否定するのは、私たちをお創りになった創造主を否定することと同じです。まず自分を愛すること。大切にすること。世界にたった一人きりになっても、誰にも理解されなくても、愛することです。ですから、その自分と同じように誰かを愛するということは、最高の愛し方なのではないか。若かりし日の私はそう考えました。自分を愛するとはどういうことでしょうか。自分と対話し続けること。本当に自分が望むように生きること。私たちは本音で生きているような感覚でいますが、本当の本音は意識の奥の奥にあるような気がします。以前、質問を重ねながら本当に望んでいることを引き出すセッションをしたことがありました。「仕事頑張りたい」「きっとできる」「でも不安もある」……などと、思っていることを掘り下げていったとき、最終的に私が行き着いた答えは、何と「楽したい」でした。楽したい、と言葉にできて、とても気が楽になりました。不本意なことはしない。そう思えたことも、自分を大切にすることだったと思います。自分を愛するように、誰かを愛する。自分を愛するように、世界を愛する。愛についての考察はまだまだ深くなりますが、まず自分の心の声に耳を傾けることから始めたいと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月07日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。大谷翔平選手を思うベイブルース、ジョーディマジオ、そんなアメリカ大リーグの選手ぐらいしか知らなかった昭和の野球ファンが、今は大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の、その日の戦績が気になる大谷ファンになってしまいました。95年、大リーグに挑戦したトルネードの野茂英雄投手、華麗な守備と走力で人気を勝ちとったイチロー選手、ワールドシリーズでホームランの松井秀喜選手…。彼らには武士の気骨というか、大和魂というか求道者的な雰囲気があったように思うのですが、大谷選手には全くそれがありません。ホームランを打っても三振に倒れても、そこには常に彼の爽やかな『笑顔』があるのです。当方は、王、長嶋世代の野球ファンですが、大谷選手のような常に笑顔のある選手は見たことがありません。しかも、前人未到の投打の『二刀流』です。彼が投打の二刀流で日本のプロ野球で活躍しはじめた頃、プロ野球の著名な諸先輩は、口を揃えて、「ダメだ! 肩を壊す!!」と非難したのがウソのようですね。不言実行、球界の常識を覆し、世界へ大きく羽撃いた大谷翔平選手です。投打の魅力は当然ですが、もう一つ、走塁があります。ヒットで1塁を走り抜け、その時の判断で2塁を落とし入れた時、塁上で 「ヤッター」と両手を叩くあの姿を見るのが大好きです。投手で走るというのは、呼吸が乱れ、次の投球に影響を及ぼすのでタブーとされていることですが、彼はそれをケロリとやってしまうのです。大リーグでの日本人の誇り、大谷翔平選手の更なる活躍に期待したいと思います。<2021年11月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年11月01日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。人生の『雨の夜』もマイペースで雨の夜の、高速道路を走るのが苦手です。苦手と言うより、「怖い」と言った方がいいでしょうか。車は好きですし、運転することは大好きです。大学生の時に免許をとってから40年以上、車はなくてはならない相棒のようです。20代の頃は少々無茶もしたし、思い立って真夜中に首都高速を走って気分を変えたりしたこともありました。怖いものがなかったとはあの時代のこと。スピードを出すことが心地よかった。あれこれと悩んでいたことがちぎれていくような感覚があって、万能感に満たされるような感覚もありました。怖さを感じることがなかった、怖さ。若いということは、そんな怖さがあることすら知らない時代なのかもしれません。だから、冒険という名の無茶もできた。海外の知らない街を歩くことは怖くなかったし、森の中に一人で入っていくことも怖くなかった。それが、子どもが生まれてから、夜道を歩くことが怖くなり、車でスピードを出すことが怖くなった。ひとりで海外にいったときも、夜は早々にホテルに戻ったり。臆病なくらい、慎重に動くようになっていました。そんな自分を自覚したとき、自分のためだけに生きてきた時代が終わったことに気づいたのです。人生の歩き方にも、それぞれのスピードがあり、それぞれのタイミングがあります。アクセルを踏む時期、緩める時期。無意識のうちにそのように動いているのですが、時にアクセルを踏む時期ではないのに踏み続けてしまうことがあります。自分の中の焦りや欲が先走ってしまう。すると、物事がボタンを掛け違えたように空回りしてしまうものなのです。若い頃にはできませんでしたが、自分がいまどんな流れの中にいるのかを客観的に知ることは大切です。そして、しなくてもいい無理を課さないこと。そんなことを思ってか、最近の私はゆるゆるとしたペースで歩んでいて、こんなのんびりとしていていいのかしらと思いつつ、アクセルを踏み込むタイミングが来たら逃さないように。この感覚は運転しているときにも通じます。法定速度で走る快感、高速道路ではどんどん抜かされますが、我が道を淡々と進んでいる感覚を覚えます。早いスピードの『怖さ』を避けるためには、それがいちばんなのです。感覚を研ぎ澄まし、自分自身に寄り添いながら進んでいく。人生の『雨の夜』も、無理せず、自分のペースを守りながら。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月31日