2017年8月16日 21:15
30歳の「ラスト・チャンス」|12星座連載小説#140~乙女座 11話~
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。
文・脇田尚揮
【12星座 女たちの人生】第140話 ~乙女座-11話~
重たい足取りで自宅へと戻る。ドアを閉めてカチャリと鍵をかける。
統制の取れていた“自分の世界”が、少しずつ壊れていく。
だけど、頭では理解できても、実際にそれができるかと言えば別問題。
『もしも、私がもう少し柔軟だったら……』
“真司さんと上手くいったかも”とは、声に出せなかった。
声にすると、一気に何かが溢れ出してきそうで怖かったから―――
彼は、いつも言っていた。
「仕事、忙しいだろうから合わせるよ」
「いつでも頼ってね」
「たまには俺に甘えて」
それなのに、自分ひとりで勝手に背負い込んで、上手くやろうとして……。
―――大切な人を傷つけ、捨てた。
身体が重たい……。