2018年7月20日 18:00
両親の死と直面。映画『悲しみに、こんにちは』が描く少女の再生物語
ちなみに、エイズという単語を出さなかったのは、子どもの視点で物語を伝えたかったので、そういう手法を取ることにしたんです。
スペインが抱えていたエイズの問題とは?
―スペインでは80年代半ばから90年代の初頭にかけて、ドラッグの蔓延によってHIV感染者が増加。ヨーロッパでもエイズの発症率がもっとも高い国となっていたほど、大きな問題となっていたそうですが、そういう時代の雰囲気を実際にはどのように感じていましたか?
監督
子どもたちの間では、エイズに対する恐怖というのはあまりなかったように思います。それに、私は両親がエイズで亡くなったことを初めて知ったのは、12歳のときで、それまではまったく知りませんでした。
なぜ叔父と叔母が私に黙っていたかというと、幼い私がその事実を知ってしまったら、みんなに話してしまって、田舎中に広まってしまうと考えたからだと思います。そういう意味では、大人たちには恐怖心があったかもしれないですね。
それから、フリダがケガをして血を流すシーンでは、感染を警戒して周りが過剰な反応をしていますが、あれは実体験ではありません。映画のなかでは、そういったフィクションのエピソードをいくつか入れていますが、それは観客に「フリダの両親はエイズで死んでしまったんだ」