2020年6月2日 19:00
ぶっとんだ不条理&ユーモアに満ちた『動物たちのまーまー』
と出会って…。
「そもそも、この現実世界はわからないことだらけだと私はいつも感じています。ずっと前から現実と非現実との関係をあれこれ考えていて、書いてみたその結果のひとつとして、こういう形になりました。ロシアのヴィクトル・ペレーヴィンという作家がそういった主題の作品をたくさん書いているのですが、読者としてとても波長が合います。そのせいか、作中のタクシー運転手の名前が、ヴィクトルになってしまいました」
一見不条理な世界も、一條さんにとっては「自分にとって自然なものを自然に書いている」だけらしい。
「もしかしたら世間のみんなは、この現実世界のことをちゃんとわかっているのかもしれない、わからないのは自分だけなのかもしれないとも思ったりもします。だとしても、自分にもどうしようもありません。病院へいってもだめかもしれません」
テノリネコ、ネコビト、吸血鬼…。
彼らに翻弄される世界は楽しい。
いちじょう・じろう作家。1974年生まれ。2015年、新潮ミステリー大賞受賞作『レプリカたちの夜』でデビュー。絶賛された一方で「これはミステリーなのか」と物議を醸したという伝説も。
『動物たちのまーまー』カバー装画は木原未沙紀。