2021年2月14日 21:10
史上最多の応募作から! 文藝賞受賞の『水と礫』は「構成の妙が光る」作品
誰にフォーカスされるかは運動性に任せているところがあります。繰り返しといっても、書き始めが違えばプロセスは変わっていき、内容も変わっていくのが自然。指がキーボードを何度も往復し、僕自身も知らない物語を紡ごうとしているような感覚で書いていました」
クザーノをはじめ、一族の男性の名前は葉巻から取った。
「クザーノ ドミニカン コネチカット チャーチルとか、ロメオ イ フリエタとか。この作品を執筆中、葉巻に凝っていたので(笑)」
タイトルにある礫は、石の砂漠=礫砂漠を意味する。
「東京の水が体内に溜まって…という感覚は僕自身の実感なんです。小説を書くにあたって、いろんな湿度のようなものと闘っていかなくてはいけないと思っています。最初に水があれば、礫は最終地点にならざるを得ない。
砂の砂漠は憧れなんですが、礫砂漠は憧れを超越している。そんな物語が書けたかなと」
次回作も、固定観念を覆すような実験的な作品になるらしい。
『水と礫』ラクダのカサンドルと出た砂漠への旅路。砂漠の向こうにある、生まれ故郷とニアリーイコールな町に居着いたクザーノは…。河出書房新社1400円
ふじわら・むう作家。