2021年12月7日 20:10
「NYタイムズ」ベストブックにも選出! 文字のない絵本『旅する小舟』
生物学を学んだ後、カリブ海域のケイマン諸島で2年間ネイチャーガイドをしていたと聞いて納得しました。イマジネーションだけでなく実地の知識も合体したクリーチャーたちの造形が素晴らしい。どのページも見た瞬間から引きつけられますが、やはり一枚描くのにものすごく時間がかかると言っていました」
絵を眺めるだけでも十分没入できるが、小舟とさまざまな生き物の出合いには物語性も感じられ、そこでも楽しませてくれる。
「何も説明されない分、こちらの推理力が働くんですよね。よく見ると同じ生き物が別のページに出てくるなど、あれっ?と思う箇所がたくさんある。きっと私もまだ気づいていない細かな描写があるんじゃないかな。手元に置いて、何度も何度も読みたくなります」
どのページも壮大な光景が広がるからこそ、シンプルな紙の舟の心許なさと、世界の大きさと不思議さの対比も浮かび上がる。
「著者は、自分たち人間もこれくらいちっぽけで非力なんだと表現したかったそうです。
小舟が隅っこに描かれているページもあり、この絵本は小舟だけでなく“世界”も主人公なんだと感じます」
表情もなく、言葉ももたずに旅を続ける小舟に、いつの間にかすっかり感情移入してしまう。