2022年1月14日 22:30
笑いと哀愁まじる漫才も…大阪の芸人たちとの交流を描く『パラソルでパラシュート』
昨年、短編集『スモールワールズ』で話題をさらった一穂ミチさんが長編『パラソルでパラシュート』を上梓した。大阪で暮らし、お笑いが好きな一穂さんらしい題材の一冊。
「何年か前から漠然と、芸人さんを書きたいと思っていたんです。当事者としての芸人さんを描くのは難しいので、彼らを外側から見ている主人公にしました」
大阪の企業の受付で働く29歳の柳生美雨(やない・みう)が出会ったのは、売れない芸人の矢沢亨。彼や、彼と古い一軒家に暮らす芸人仲間や、亨の相方の弓彦との交流が始まって…。
「漫画の『じゃりン子チエ』が好きなんです。癖の強い人がたくさん出てきて、みんな自分勝手でクール。あの他者との距離感が私にとってすごく心地いいので、ああいう感じを自分でも書きたかった」
美雨は30歳になると仕事の契約が切れるが、この先、特にやりたいこともなく、結婚願望もない。
「目指すものがあって頑張るのは素晴らしいけれど、目標がないと人間として何か欠落しているように語られてしまうのは息苦しい。もうちょっと、ふらふらしたり、ゆっくり考えて決める自由みたいなものがあってもいいなと感じています」
舞台で漫才をやりたいだけの亨をはじめ芸人たちの人生観もさまざま。