2022年4月18日 20:40
ちょっぴり不思議な気象学の研究者とその家族を描く、連作集『博士の長靴』
立春や立冬など二十四節気ごとに独自の行事がある藤巻家。この風変わりな家族の4世代にわたる物語が、瀧羽麻子さんの『博士の長靴』だ。
「最初は編集者さんと、理系の人を書こうと話していたんです。家族というテーマにも興味があったので、理系の学者を軸とした家族の物語になりました。数世代の話にすることで、時代や価値観、家族観の変化も書けたらいいなと思っていました」
第1章の舞台は1958年。スミが奉公する藤巻家の息子・昭彦は気象学の研究者。いつも空を見上げてばかりのちょっぴり不思議な青年だ。
「空のことで頭がいっぱいで、地上のことにはあまり興味がない人、というところからイメージを膨らませていきました」
そんな彼もやがて結婚し、子どもが生まれ…。
令和に至るまでの藤巻家が描かれるが、各章の視点人物は家庭教師や隣人の主婦など、主に家族外の人物である。
「家族の外の人から見たほうが、この一家の不思議なところ、面白いところがより鮮やかに伝わるかなと」
章を進めるごとに親子の関係も変わっていく。時にはすれ違ったり、疎遠になったりすることも。
「家族の中でも変化ってありますよね。小さい頃は反発していても、大人になるにつれ親心が分かったり、子どもが生まれてメンバーが増えて関わり合い方が変わったり」