2022年5月29日 22:30
柚木麻子、新作『ついでにジェントルメン』で古くさい男女観を気持ちよく粉砕!?
「はじめての独立短編集が出せて本当に嬉しいです」と、柚木麻子さん。新作『ついでにジェントルメン』は一編一編独立した話を収録した作品集だ。刊行を喜ぶわけは巻頭の「Come Come Kan!!」を読めば分かる。新人作家・覚子(さめこ)が、単発作品として書いた短編を元に連作集を書けと言われてスランプに陥る話なのだ。編集者からのダメ出しと説教に疲弊する彼女に、ある日突然話しかけたのは文藝春秋の創業者、菊池寛の幽霊。気ままな寛に振り回されながら、覚子は少しずつ解放されていく。
女性も男性も解放してくれる、豪快で痛快な初の独立短編集。
「私もデビュー当時、書くつもりのない連作集の依頼が続いて、断れずに悩んでいたんです。
この短編を書いたことで勇気が芽生えて、これを収録する本は連作にしたくない、と伝えることができました」
収録されるのは一話完結だからこそのユニークな設定&展開の作品ばかり。どれも女性陣は逞しく生きていて痛快。一方男性陣は、ホテルで子ども連れの客に翻弄される老作家や、独善的な考えで女性専用車両に乗り込む迷惑男もいれば、女性に協力的な人物も。たとえば「あしみじおじさん」では、秘密裡に貧困女性をサポートしようとする男性が登場。