消費者の「食べたい」に合わせて農家が食品を生産する、という“間違った”構造に終止符を打つレストラン
実際、ファームトゥーテーブルを実践するシェフは自分たちの取り組みに胸を張る。しかし、アメリカ・ニューヨークにあるレストランBlue Hill(ブルーヒル)のシェフで、10年以上世界中の農業コミュニティについて研究をしているダン・バーバーは、ファームトゥーテーブルでは食の根源的な問題を解決できていないと指摘する。彼がシェフを務めるBlue Hill(ブルーヒル)は「ファームトゥーテーブル」スタイルのレストランとして有名だが、なぜこう指摘するのだろうか。
「食べ手の都合」から逃れられないファームトゥーテーブル
ダン・バーバー氏
そもそもファームトゥーテーブルは、食べる人がより新鮮で栄養価の高い食べ物を食べられるようにと考えた末に生み出された、農業流通システムである。実際、多くの場合は周辺の農家から直接仕入れを行うため、食べる人が嫌がる不健康な農業が行われていたらすぐに明らかになる。よって農家は注意を払い、さらに比較的フードマイレージも低くすることができるために、あらゆる食の問題を解決する取り組みとして知られている。Blue Hillの場合はレストランのそばに自分で農園を運営し、そこから仕入れを行っているため、一見すればファームトゥーテーブルの仕組みをとっている。