2021年11月10日 19:00
激しい音楽と痛ましい青春…『麻希のいる世界』主演に、元アイドルの新谷ゆづみと日高麻鈴が起用された訳
自己中心的で自滅的な麻希の生き方に振り回され続けるが、由希は強烈な意志で諦めない。彼女らと微妙な関係にある軽音部の祐介(窪塚愛流)を間に挟んで、物語は思わぬ方向に二転三転する。才能を秘めた人物を、主人公が智恵と勇気で成功に導くサクセスストーリー……を期待しても、そんな話ではないと気付かされる。状況はあまりにも困難で、次から次へと由希を傷つけようとするし、周りの人達もみな傷ついていく。
それでも忖度も損得もなく、ひたすら自分の想いに忠実であろうとする由希、麻希、祐介の強烈なエネルギーに感電したかのように、見る者の心を痺れさせる。向井秀徳が手がけた劇中歌は、麻希の澄んだ歌声が余計に思春期の孤独を際立たせる。そんな強烈な映画だ。
『さよならくちびる』で残した爪痕
新谷ゆづみと日高麻鈴の映画デビューは、塩田監督の前作である『さよならくちびる』。
小松菜奈と門脇麦が演じるフォークデュオ「ハルレオ」の解散ツアーを描くロードムービーで、2人を追いかける中学生ファン由希と麻希を演じた。
その出演時間は合計でもほんの数分。しかし、ここで強烈な爪痕を残す。「ハルレオ」のさまざまなファンが登場して思いを語る短いカットの積み重ね。