2015年12月24日 21:00
小林聡美&市川実日子と一匹の猫が織り成す穏やかな日常「何か隙間を作ることで生まれてくるもの」
――やはりある程度、自分で意識して作り出さないといけないものですか。
小林「そうじゃないですか、特に今の時代は」
市川「パソコンやスマホがあるから隙間を埋めようと思えばいくらでも出来てしまう分、自分で意識しないと"余裕"って生まれませんよね。そうやって埋め続けていると、自分が今、何を感じているのかさえ分からなくなるくらい麻痺してしまうというか」
小林「年寄りみたいなこと言いますけど(笑)、ゲームとかケータイって、人と人のつき合いから想像力を奪っていますよね。どんなに疲れていても『元気』って書いてメールすれば、いくらでも嘘がつけるし」
市川「なにより自分に嘘をついてますもんね」
小林「昔の映画を見ると、手紙を送って返事が戻ってくるのが3カ月後だったりするんですよ。でも、その3カ月の間、返事を待つ気持ちって、悲しんだり喜んだり感動したり、今の若い子たちには想像も出来ないような気持ちのバリエーションがあったような気がするんです。そう考えると、モノがないことって、逆に豊かなんだなって」
市川「だからこそ、この作品をはじめ石井さんの書く世界に多くの人が惹かれるのかも」
――最後、ラストシーンのハナのセリフにオスカー・ワイルドの「自由、本、花、月がある……これで幸せでない人間がいるだろうか」