2015年12月25日 17:45
北大、分子モーターのエネルギー変換の仕組みをデータサイエンスで解明
なかでも、結合ATPの加水分解については、反応生成物の結合解離過程と比べて回転に必要なトルク発生への寄与が少なく、放出するエネルギーも全体から見てわずかであることがわかっていたが、結合ATPの加水分解がF1-ATPaseの反応サイクルのなかでどのような役割を果たしているのかについてはよくわかっていなかった。
今回の研究では、F1-ATPaseの回転時系列データから回転停止時間とその間の回転角度揺らぎの統計を解析するため、ノイズの性質をできるだけ仮定しない変化点解析とファジークラスタリングを組み合わせた手法を開発。同手法とマイクロ秒時間分解能でのF1-ATPase一分子の回転観察を組み合わせて、結合ATPの加水分解反応およびリン酸解離待ちに相当する階段状の回転時系列データの回転停止プロセスの詳細な速度論に着目し、その加水分解反応が果たす役割を詳細に調べた。
この結果、結合ATPの加水分解反応に伴って、回転停止プロセスの間に回転角度が反時計回りに20度ほど有意に変化していることがわかった。これは同反応が、回転角度の変化によりリン酸解離反応の反応障壁を大きく減少させることで、ATP加水分解→リン酸解離といった正しい反応順序を維持するための「鍵」