くらし情報『毎年『弁当を200個注文する客』を疑う店主 結末に、涙腺が緩む』

毎年『弁当を200個注文する客』を疑う店主 結末に、涙腺が緩む

そこにはひとりのお客様の存在があった。

ふじの。

その人は開業当初から買いに来てくれるお客様だった。そして年に一度、決まって7月3日に弁当を大量注文する。やり取りはいつもFAX。取りに来るのはいつも代理の方だった。

「いつもありがとうございます。しかしこんなに沢山のお弁当、どなたが食べるんですか」

ある時私が尋ねると「まあ、いいじゃないですか」と代理人は言葉を濁した。
その後も弁当を取りに来てはすぐに帰っていく。車のナンバーが地元ではないことから近隣の住民でないことは明らか。

ひょっとして転売目的?でもなあ、と思う。たまにお菓子の差し入れをする様子を見ると悪い人ではなさそうだった。

やがて弁当店が軌道に乗り始めると『ふじのさん』からの注文はパタリとなくなった。

それでも毎年7月3日には必ず弁当を200食注文する。それは店にとって大変ありがたいものだった。

しかし昨年。
コロナウイルスの感染拡大によって事態は一変。予約のキャンセルが相次ぎ、店の経営は一気に傾いた。店舗の家賃に、光熱費。休業しても伸し掛る毎月の支払い。気力より先に貯金が底をついた。

『誠に勝手ながら今月末で閉店させて頂きます』

結局、私は廃業の道を選んだ。

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