【『ファイトソング』感想8話】孤独と向かい合って生きる強さ・ネタバレあり
その恋の形をした経験の終焉に、花枝は自分からお別れ会を提案する。
その場で改めて春樹から「作曲のことは抜きにして別れたくない」と懇願されるが、花枝は自分の気持ちを「私はそこまでじゃないです」と断言し、恋に引きずられて何かを変えたくないと毅然と言い放って去ってしまう(春樹に対しても、視聴者側に対しても、未練や悲しみを見せずに立ち去る演技は実に清原果耶らしい硬質な美しさにあふれていた)。
花枝は入院の準備を淡々と一人でこなし、幼い頃に自分を捨てた父親への想いにもきちんと決着をつける(耳が聞こえなくなる娘が生き別れた父親の声を記憶に残したいと、声だけを求めて友人の助けで電話越しに声を聴くというエピソードは、まるで美しい一本の映画のようだ)。
手術の付き添いは頼んだとしても、頭部にメスを入れるような手術の準備を一人でこなすのはどれほどタフなことか(頼めばきっとみんなが手伝ってくれるはずだし、花枝もそれは分かっていると思うが)。相手の暮らしに介入せず顔を合わせないまま、一人残った肉親への感情にけりをつけるのがどれほど難しいことか。
終わった恋の相手に、未練を残させないように淡々と切り捨てることが、どれだけ苦しいことか。