【石子と羽男 第5話 感想】今を生きる全ての年代の人へのエール
だがたとえ疎遠になったとしても、弁護士を介してではなく、直接伝えに来て欲しかったのだ。今回の訴えも、会長に不本意に進められていただけだった。
こうして無事に内容証明は取り下げられたのだが、石子と大庭は、想い合う二人がこのまま疎遠でいることを心残りに思っていた。
そして羽男も巻き込み、3人は重野が万寿江に会わなくなった理由を探り当てたのだった。
重野は慢性腎不全を患っていた。万寿江に会わなくなったのも、これから衰えていくだけの自分が迷惑になると感じていたからだ。
「高齢者が恋なんてみっともないでしょう?」
重野はそう言い、寂しそうに笑う。そこで一番に声をかけたのが、今、全力で石子に恋をする大庭だ。
「好きな人には好きって言っていきましょうよ。何歳だろうがいいじゃないですか!」
誰にだって健康診断の結果を知るのが怖くなる日がやってくる。
お酒に弱くなり、朝の目覚めが謎に良くなって、物忘れが多くなるのを感じる日が来る。
そういった歳を重ねることへの恐怖が、いつの日か、愛おしく思えるようになれたら。
そう願う人々が、いくつになっても自分らしく楽しく生きている人を素敵だと感じるのは、自分の未来こそ、年老いた者達の今だからなのだろう。