2020年10月27日 12:44
すぐに癇癪を起こす子供 感情のコントロールが苦手な子の『思い』とは【きしもとたかひろ連載コラム】
みんなが強いことを望んで傷つけ合うよりも、弱さを認め合って支え合えたら。甘いと言われようと、僕はそうありたいと思うのだ。
余談ですが
別の日の帰り道に、「泥棒って、ご飯食べてるんかなあ」と尋ねてきた。
不意に問われたその意図が分からなかったので、なるべく断定するような答えにならないように「どうやろうなあ」と返すと「食べてないんやったら、カップラーメンにお湯入れてあげたいわ」とその子は言った。
ただカップラーメンをあげたい、ではなく「お湯入れてあげたい」という具体的な優しさが、哀れみとか同情ではなくその子の本当の思いであることを感じさせた。
「泥棒ってお金ないんやろ、だからカップラーメンに」と繰り返す。
生まれながらに悪い人、ではなく、お金がないから悪いことをしてしまう。そんなふうに考えられる人がどれだけいるだろう。
悪い人の代名詞である泥棒だけれど、その子にとっての泥棒は悪い人ではなく困っている人なのだ。
犯罪を犯すのはその人のせいで、貧乏なのは自己責任だと叩かれるこの社会で、この子は泥棒のカップラーメンにお湯を入れてあげたいと言っている。
それを聞いてぼくが抱いた感情を、なぜだろう、うまく言い表せられない。