2019年12月16日 11:00
世界仰天の偉業成し遂げた医師 60歳を前に起業決断した訳
14年9月、目の難病患者にiPS細胞を使った網膜移植手術が行われ、成功した。これは史上初の快挙で、世界中に大きな驚きとともに報道された。
プロジェクトを率いたのは、眼科医で研究者の高橋政代さん(58)。偉業を成し遂げるまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。しかし06年から、理化学研究所で多くの患者の気持ちを胸に研究に励んでいた彼女はついに手術を成功させたのだ。その果敢な行動力から“日本のキュリー夫人”、“ブルドーザーに乗ったサッチャー”等と称えられることとなった。
そんな高橋さんは、大阪府豊中市の生まれ。
両親の意見も汲み取って京都大学医学部に進学した高橋さんが眼科医を志した当時、胸にあったのは決して前向きな理由だけではなかったと語る。
「やはり母親から、『いずれ家庭を持って、子供を産むんだよ』とも言われてきたので、眼科ならば家庭と両立できそうかなと。このころは、何かを成し遂げようという野心もなかったです。ただ、授業や実習で目の中を顕微鏡で覗くと、ピカピカでオレンジ色の網膜があって。その小宇宙のような美しさと神秘に惹かれたのもあります」
その後、同じく医師の夫と結婚し、2人の娘も誕生した。