2020年4月17日 11:00
大ヒット漫画『鬼滅の刃』と50年前のエンタメ界の共通点
(C)吾峠呼世晴/集英社
“悪”にだって理由はあるかもしれない。完全なる“勧善懲悪”の時代は過ぎた。今の時代は一度“受け入れる”ことが求められているーー。
今、エンタメの世界では『鬼滅の刃』が社会現象を巻き起こしている。コミックはシリーズ累計4,000万部を突破、アニメも人気の作品で、家族4世代にわたって楽しめることから「朝ドラのようだ」とも評される。
物語は、鬼に家族をみな殺しにされた少年が、唯一、生き残りながら、鬼にされた妹を人間に戻すため“鬼狩り”の道を進みながら成長していく、というもの。
「しかしそれが“正義 vs. 悪”という勧善懲悪の構図ではなく、悪=鬼にも悲しい理由があり、悪側にも気持ちを寄せているのが、この作品の特徴なのです」
爆発的人気の理由をこう解説するのは、日経BP総研の上席研究員を務める品田英雄さんだ。
「じつはこれ、50年ほど前のエンタメ界にも起きていた現象です。
ベトナム戦争の時代。アメリカでは“国=正義”という図式がくずれ、『アメリカンニューシネマ』と呼ばれる、戦争に反対する若者たちの心情をとらえたジャンルが人気になりました。実在した強盗の逃避行を描いた映画『明日に向かって撃て!』など、社会からはみ出した主人公の生き方が共感を得たのです。