22歳で起業した女性林業家「女性チーム」で斜陽業界の救世主に
天に向かって真っすぐ伸びた綾杉の森。綾杉は杉の女王だ。太さはまちまちだが、どの幹もきれいにまん丸。美しい間隔を保って整然と立っている。
ここが、野中優佳さん(28)の仕事場だ。黒い防護服にオレンジ色のヘルメット、チェーンソーを2台抱えて悠然と、山道を登っていく。熊本県の最北端、山鹿市鹿北町にある野中家は、100年以上続く山主(山の所有者)だ。先祖代々、木を育て、山を守り、木材生産を行ってきた。
優佳さんは5代目。株式会社ゆうきの代表取締役でもある。
「チェーンソーは4.5kgほどですが、父の仕事を手伝ったころは重くて、持って山を登ったり、作業することができなかった。でも、いまでは2台でも平気です」
樹齢100年を超える巨木を見上げてそう言った。
林業が斜陽産業になって久しい。手間ひまかかる、後継者がいない、生業として維持できないなどの理由から、山主であっても、伐採や管理を林業従事者に依頼する家がほとんどだ。林業をまったく知らない山主も少なくない。そんななか山主が自分で林業を行う“自伐林業”を続ける野中家は、珍しい存在だ。
林業家が木を伐る(間伐)のは、残した木の成長をよくするためと、伐った木を売るためだ。