2022年5月22日 06:00
75歳、人生の繁忙期 歌人・永田和宏「天の妻はきっと褒めてくれる」
最愛の妻・裕子さんについて語る永田さん
【前編】『ふたりの人を愛し…』歌人・永田和宏語る故・河野裕子さんとの青春から続く
「愛する人を失った悲しみとは、伴侶や恋人の前で輝いていた自分がいなくなってしまった悲しみなのではないかと思う。河野を失ったとき、僕も僕自身が失われたに等しい思いでした」
そう語ったのは、永田和宏さん(75)。日本を代表する歌人で、細胞生物学研究の第一人者だ。「河野」と呼ぶのは10年8月12日に乳がんで亡くなった最愛の妻・河野裕子さん(かわの・享年64)のことだ。
裕子さんは20代前半から歌人として頭角を現し、23歳で角川短歌賞を最年少受賞するなど活躍。夫妻は09年に宮中歌会始詠進歌選者をそろって務めて「初の夫婦同時の選者」となるなど上皇陛下、美智子さまをはじめ、皇族方との親交もつづけてきた。
晩年の裕子さんは、そんな永田さんの「その後」を案じていた。
《私が先に死んだら、あの人、どうするかなあって。
多分、お酒を飲みすぎて泥酔してお風呂で溺死するでしょうね》(『私の会った人びと』より)
いっそ自分も天に昇ってしまえば。そう思わなかったのかと問うと、永田さんは即座に答えた。