2023年2月5日 06:00
『夢芝居』はいいかげんに作ったら大ヒットしてびっくり 異色のシンガーソングライター小椋佳
という異色の音楽家だ。
小椋佳(本名・神田紘爾)が生まれたのは’44年1月18日。音楽の素養は、父親譲りだったという。
「今の若者がギターを弾くように、はやりものだった琵琶が好きでね。琵琶を持ち出しちゃあ、歌ってましたね。で、これはうまかった。味のある声でね。コブシも品のある、いい歌だったなあ」
学校の行き帰り、トイレや風呂の中でも、いつでも流行歌を歌っていた。
「鶴田浩二さんは耳を押さえて自分の声を聴いたっていうけど、ボクは学校で黒板に口を近づけて、跳ね返ってくる自分の声を聴いてた。おかげでPTAでは変な子がいるって問題になったんですよ」
■銀行に就職するも「創造的な活動をしたい」と曲を作り歌ううち、デビューが決まる
東京大学に進学した小椋。やがて、就職活動が始まったが、
「“ボクの人生こんなんでいいのかな”とか考えるように。それで生きた証しっていうのは、創造的な作業をすることしかないっていう思いに駆られたんです」
小説を執筆したり、絵を描いたり、コンサートや芝居、映画を見て回ったりするうち、寺山修司作のミュージカルに出合った。
「学生が主役の、退屈な芝居だなとは思ったんだけどね、幕が下りたときに、とんでもない寂しさが襲ってきたんですよ。