「自分で監督したかった!」製作者マシュー・ヴォーンが語る『ロケットマン』
ちなみに撮影に際し、映画のモデルになっているエルトン・ジョン本人は作品に対して干渉したり、自分を美化して描くように要求することは一切なかったという。「彼はこの映画を作るにあたって、自分の良い時も悪い時も誤魔化さずにすべて描いてほしいと、何かを改変することは絶対にしないでくれと言ってくれました。ですから、この映画におけるエルトンの最大の貢献は“この生を生きてくれた”ことですね。彼が生き抜いてくれたから、この物語が僕たちのもとにやってきたわけですし、素晴らしい音楽もつくってくれました。そして何よりもこの物語を僕たちに綴らせてくれた……これも大きな貢献ですね」
映画で語られるエルトンの人生は決して順風満帆なものではない。幼少期に両親から愛されずに育った彼はいつも本当に自分を直視できずに、現実から遠く離れた華やかな場所や時間を求めて疾走する。結果的に彼はロック・スターになるが、彼の中の孤独や哀しみが消えることはない。ヴォーンは「王様であっても、ただ道を歩いている人であっても不安を感じたり、人とのつながりを感じたり、泣いたり笑ったりするのは同じ」という。
「エルトンと私たちもそうです。彼は自分のことを否定されたり、依存症になってしまう人生を歩んできましたが、私たちも人生の中で自分を受け入れられなかったり、愛を求めているけどその愛を手に入れられなかったり、不幸せな気持ちなってしまった経験をしていると思います。