盛夏にふさわしい怪談ほか賑やかな演目がそろう歌舞伎座『八月花形歌舞伎』開幕
八月花形歌舞伎は、古典の通し上演や、歌舞伎の様式美に溢れる狂言、そして盛夏にふさわしく怪談など、賑やかな演目が出そろう。
第一部は『加賀見山再岩藤』。「三代猿之助四十八撰」屈指の人気作で「骨寄せの岩藤」の通称で知られる。御家騒動が起きた多賀家当主の大領は愛妾・お柳の方に心奪われており、御家は様々な陰謀に巻き込まれている。これらすべて側室・お柳の方と、その兄・弾正が仕組んだことだった。一方、二代目尾上となった召使いのお初の前に、突如岩藤の亡霊が現れ……。岩藤のエピソードに焦点を当てた「岩藤怪異篇」として上演する。
第二部一幕目は怪談噺『真景累ヶ淵』。
富本節の師匠豊志賀は、20歳ほど年の離れた弟子の新吉と恋仲になるが、顔に腫れ物ができる病にかかってしまう。新吉と若い娘お久の仲を勘ぐっては嫉妬に狂って……。三遊亭円朝の人情噺を脚色した作品。怖ろしい豊志賀の執着や、男と女の複雑な心情を描くゾッとするような怪談噺だ。
二幕目は『仇ゆめ』。川のほとりにすむ狸が島原の深雪太夫に恋をする。ある日太夫が憧れている舞の師匠の姿に化け、秘めてきた恋心を伝えて大喜びする太夫と連れ舞をするのだが……。恋に落ちた狸の気持ちをユーモラスな踊りで見せる前半から、後半では一途な狸の思いと姿、それに応える太夫のやさしさがしっとりと描かれる。