2023年5月8日 12:40
初代尾上眞秀の初舞台も 歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」初日レポート
も現れ、源平物語でおなじみの登場人物たちによる巻物を巡っての「だんまり」を展開。「だんまり」は、暗闇のなか善悪入り乱れた登場人物たちが無言で宝物を探り合う歌舞伎独特の演出の一つ。美しい絵面で展開される、歌舞伎らしさを感じられるひと時だ。本作の特徴である主役の傾城浮舟太夫は、男の盗賊という自らの正体を明かすと、上半身は男、下半身は女の姿で、男の勇ましさと遊女の色っぽさを同時に表現する「傾城六方」で花道の引っ込み、独特の風情をみせた。
続いては、春をよぶ二月堂お水取り『達陀(だったん)』。「お水取り」で知られる東大寺二月堂の修二会の行を題材に、二世尾上松緑が創作し、昭和42(1967)年に初演された舞踊劇。舞台となるのは、修二会の法会が行われている奈良・東大寺の二月堂。法会を取り仕切る僧の集慶(尾上松緑)が東大寺に所縁ある故人たちの名を記した過去帳を読み上げるところへ、どこからともなく青衣の女人(中村梅枝)が現れる。
この女は、集慶のかつての恋人。やがて女人は幻想の集慶(尾上左近)の手を取り昔の思い出を踊り……。
東大寺に伝わる僧集慶と青衣の女人の伝説が巧みに取り入れられた本作は、幻想的な雰囲気と艶やかな情感が漂う前半から、降り注ぐ火の粉を物ともせずダイナミックな群舞を見せるクライマックスまで、圧巻の舞台が続く。