2022年10月19日 17:00
【インタビュー】ヴィム・ヴェンダースはなぜロードムービーを撮ったのか──「世界文化賞」受賞
「ロードムービー」とは端的に言えば、旅の映画だ。この用語を聞いて真っ先に名前が浮かぶ映画作家がいる。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『夢の涯てまでも』など数々の話題作を発表してきたドイツ出身のヴィム・ヴェンダース監督(77)だ。世界の芸術家を顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(主催・公益財団法人日本美術協会)の演劇・映像部門に、2022年の第33回はヴェンダース監督が選ばれた。10月18日に東京都内で開かれた受賞会見では、本人の原点とも言うべきこの表現ジャンルや日本映画にも触れた。23年には東京・渋谷の公共トイレを舞台にした作品が公開されるなど世界を旅して活躍する巨匠は、なぜロードムービーを撮ったのか──。
「ロードムービーを見つけたことは運が良かった」
ヴェンダース監督の名声が一気に高まったのは、息子と共にクルマで妻を捜す男を描く1984年の『パリ、テキサス』だろう。その年の第37回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルム・ドール」に輝き、日本でも公開されてヒットした。
個人的なことを明かせば、この作品を87年に名画座で鑑賞して以来、ヴェンダース監督の映画は観続けている。特に『パリ、テキサス』の魅力はあせず、劇場で観てきた1000本以上の中で一位の座を譲らない。