と、同時にこうも感じたんですよ。自分の努力もないとできないよなって」
そう言って、中村は続ける。
「なんでもかんでも誰かのおかげですって言う人は好きじゃないんですよ。嘘つけって、お前が歯食いしばってやってきたからだろうって思う。たぶん日本人的な美意識がそんなに強くない方なんです、僕は。おかげさまでって言葉があんまり言えないタイプなんで(笑)」
耳心地の良い綺麗事だけで語らない。ちょっとひねくれた部分も厭わず見せる。そんなところもまた中村倫也のいとおしさだ。
「本当なら、他人のミスを自分の責任だと捉えて、自分の成功を他人の手柄だと思えたらいいんですけどね。でもそればっかだと、模範解答してんじゃねえよってなっちゃうので、僕みたいな性格の人間は特に(笑)。だから、誰かのおかげも自分のおかげも両方必要なんじゃないかなっていうのは、いつだったか同時に思いましたね」
旬や流行が過ぎ去ることは怖くない
天才監督・王子を演じた中村。芸能界という才能がひしめき合う世界で生きてきたからこそ、自分の才能にも他者の才能にも敏感なところはあるはず。この世に「天才」というものははたしているのだろうか。