2017年4月9日 06:30
「誤発注しました!助けて!」誤発注が嘘だったら購入者は返金を求められる?
■この「誤発注商法」はどのような罪になる?
誤発注という事実をもって「騙された!」という方もいそうですので、詐欺罪が成立するのか、という観点から検討しましょう。
詐欺罪は窃盗罪などと同じく財産に対する罪ですが、その財産的損害をどのように考えるかが問題です。
つまり、たとえ誤発注であっても1,000円相当の商品を1,000円で購入をしているような場合には、「獲得しようとしたもの」と「給付したもの」は等価値とみることもできます。
他方、誤発注という虚偽の事実の告知がなければ、購入することはなかったというのであれば、購入者は1,000円という財産上の損害を受けたということもできそうです。
このことは、つまり財産上の損害を形式的に捉えるのか実質的に捉えるのかという問題として整理されますが、裁判例は、基本的に形式的な損害があれば詐欺罪の成立を肯定しつつ、実質的な財産的損害がない場合には詐欺罪の成立を否定するものもみられます。これらからすると、少なくとも詐欺罪が全く成立しないとは言いにくいでしょう。
なお、これに関連して、最高裁は、第三者を装って預金口座開設を申し込み、結果として預金通帳の交付を受けた事案においては、預金通帳の財産的価値を認めて詐欺罪の成立を肯定し(最決平成14年10月21日)