『雨女』(矢口史靖監督)
間もなく開催がスタートする第38回PFFぴあフィルムフェスティバル。今回の映画祭でひとつの目玉企画となるのが“8ミリ・マッドネス!!~自主映画パンク時代~”だ。この特集は、現在第一線で活躍する映画監督の原点となった8ミリ自主映画の傑作を集めたもの。『雨女』は矢口史靖監督が1990年に発表し、同年PFFでグランプリに輝いた一作だ。
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矢口史靖監督の名から浮かぶ、作品イメージはどんなものだろう? 出世作となった『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』など、いずれにしても“明快なエンターテイメント”というイメージはあるのではなかろうか。そのイメージをもって矢口監督が自主映画として発表した『雨女』を観ると、ちょっと驚くかもしれない。表面だけでみると、あまりに“明快な娯楽”とは映像も内容も程遠いので。
ただ、それはあくまで表層上に過ぎない。
『雨女』のひとつひとつをつぶさに見ていくと、実は矢口監督ののちにしっかりとつながる優れた“エンターテインメント性”がこの時点で随所に発揮されていることに気づくはずだ。
『雨女』は簡単に説明すると、本作の翌年、奇しくも公開される『テルマ&ルイーズ』と重なるような、ふたりの女の子が暴走する物語。