都響とギルバートとのケミカルは疑いようもなく、聴衆もさらなるパートナーシップを期待したのだ。
首席客演指揮者就任披露公演ではマーラー『交響曲第1番《巨人》』(2014年クービク新校訂全集版・ハンブルク稿にもとづく『花の章』つき)とシューベルト『交響曲第2番』を演奏する。都響とマーラーの強い結びつきは桂冠指揮者エリアフ・インバルとの2回にわたるツィクルスでファンの記憶に刻印されているが、ギルバートがいたニューヨーク・フィルとも縁が深く、マーラーは常任指揮者として死の直前までこのポストにあった。すでに2年前の5番で都響のマーラーの卓越したレスポンスを経験済みのギルバート。「巨人」の謎めいた部分や、妖精や異形のキャラクターが飛びかう幻想性を描き出してくれそうだ。
7月21日(土)には東京・東京芸術劇場でドヴォルザーク『交響曲第9番《新世界より》』バーンスタイン『ウエスト・サイド・ストーリー』より『シンフォニック・ダンス』、ガーシュウィン『パリのアメリカ人』というプログラムも組まれ、すべてニューヨーク・フィルで初演された作品を都響と演奏する。こちらはニューヨークからの風を感じる活気ある演奏会になりそうだ。都響とギルバートの新しい船出となるセレモニーを聞き逃すべからず。
文:小田島久恵(音楽ライター)