くらし情報『満を持して挑むベートーヴェン 長谷川陽子35年』

満を持して挑むベートーヴェン 長谷川陽子35年

共演のピアノは松本和将(かずまさ)。新しい扉を開けてくれる、と信頼を寄せる。
「音があたたかくてどこにも力が入っていない。飄々としていて、でもどんな球を投げてもうまくキャッチしてくれる。それがすごく魅力的です。音楽性は私と正反対かもしれないのですが、それがかえって互いの長所を引き立てあうのだなあと実感しています」
高校1年生で日本音楽コンクール第2位入賞。2年後の1987年にデビュー・リサイタルを開いた。
「ずっと手ほどきを受けた井上頼豊先生は、音楽をゼロから作る力を身につけなさいと、レコードで聴くような有名曲はあまり弾かせませんでした。
真似をしてしまわないように。ところがデビューしてお仕事で弾かせていただくのは有名な曲ばかり。刺激的でした。憧れだった曲を次々に弾けて、とにかく楽しかったという記憶しかありません」
弾くのが楽しい。彼女はそのピュアな感覚をずっと変わらず持ち続けている人だと思う。ナチュラルな音楽家だ。
ベートーヴェンはリサイタルに合わせてCDもリリース。充実した録音ができたと手応えを語る。
経験を重ねて初めて正面から向き合ったベートーヴェン。ライヴもCDも、名演奏・名盤の予感が漂う。
(取材・文:宮本明)
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