萩尾望都『スター・レッド』が描く“迫害される超能力者”の悲劇
迫害から逃れ、故郷に帰った火星人を待っていたのは……
(c)Flóra
「人は」なのか「日本人は」なのかわかりませんが、「滅びゆくもの」への強烈な思慕ってありますよね。破滅へ向かっていくことが読者にはわかっているけれど、それに立ち向かって命をかける者たち……新選組とか特攻隊とか。
『スター・レッド』はまさにそれ。宙に浮いた階段————しかも途中で崩れているような————を下っていくような、ヒリヒリした緊張感があります。火星の未来を知ってしまったセイと謎の異星人エルグが、行動を共にしながら火星、ひいては宇宙の仕組みに迫り、自分たちの運命に逆らっていくのです。萩尾望都作品は全体的にアンニュイなムードなのも心奪われる理由ですね。
70年代は、「超能力者を迫害する」という話がめちゃくちゃ多いです。というか、「超能力者は迫害するもの」と決まっていたかのような勢い。
異端に対する畏怖の念からなのか、なにか排他的な意識を感じますね。
性差別も大きかった時代ですから、男性を社会の中心と考えると、異端である女性の考えや主張は排除されるという鬱憤を、マンガで晴らしているとも考えられます。たいてい主人公は迫害される側なんで、少女マンガではひたすら「差別はいけないよ」